<大項目> 原子力発電
<中項目> 軽水炉(BWR型)原子力発電所
<小項目> 原子炉冷却設備
<タイトル>
BWRの原子炉冷却系統 (02-03-03-02)

<概要>
 沸騰水型原子力発電所BWR)では、原子炉圧力容器内で炉心(核燃料)の熱により原子炉冷却材(軽水)を沸騰させて蒸気をつくり、この蒸気で直接発電する方式、すなわち直接サイクル強制循環方式を採用している。このBWRの原子炉冷却系統では、原子炉圧力容器の外部又は内部に配置した再循環ポンプを介して原子炉圧力容器内の冷却材を循環し、高温高圧の蒸気(運転圧力約71気圧、運転温度約286℃)を発生させ、気水分離器、蒸気乾燥器を介しタービン・発電機に送気している。タービンを駆動し発電を担った蒸気は復水器に送られ、海水によって冷却して水に戻し、給水加熱器及び原子炉給水ポンプにより昇温、昇圧を行い、再び原子炉冷却材として原子炉圧力容器内に戻される。
<更新年月>
2013年08月   

<本文>
 沸騰水型原子力発電所(BWR)の発電のしくみを図1に、主要系統の概要を図2に、基本仕様を表1に示す。BWRは、原子炉圧力容器(以下、原子炉容器)内で炉心に置かれた核燃料の発熱によって原子炉冷却材(軽水)を沸騰させて蒸気をつくり、この蒸気を直接タービン・発電機に送る単純な基本構成をしている。BWRは加圧水型原子力発電所(PWR)に比べ、飽和蒸気を直接利用することから原子炉容器がより低圧で設計されおり、気水分離器と蒸気乾燥器を原子炉容器内に収納しているので原子炉容器の寸法は大きくなっている。また、タービンに送られる蒸気は放射性物質を含んでいるため、タービン側の機器でも放射線防護対策が必要となっている。
 BWRには、原子炉容器の外部に配置する再循環系ループを用いたBWR型と、原子炉容器に再循環系を内装した改良沸騰水型BWR(ABWR)とがあるが、原子炉冷却系の観点からは原理は同様なので、以下では、現在でも多く利用されているBWR(1100MWe級)を例にとって記述し、最後にABWRにふれる。
1.BWRの原子炉冷却系統
 BWRの原子炉冷却系統概要図を図3に、原子炉容器内構造図を図4に示す。原子炉冷却系統は、原子炉容器、原子炉再循環系(再循環系ループ)、主蒸気配管、タービン・発電機、復水器、給水加熱器、原子炉給水ポンプなどで構成されている。炉心(核燃料)で加熱され沸騰した原子炉冷却材は蒸気(約6.93MPa(70.7kg/cm 2g)、約286℃)となってタービン・発電機に送気される。タービンで発電を担った蒸気は復水器に導かれ、海水(海外では河川水が多い)で凝縮して水に戻し(復水)、給水加熱器及び原子炉給水ポンプによって昇温、昇圧し、再び原子炉容器に冷却材として戻される。
(1)原子炉容器内冷却材の流れ
 原子炉容器の主要仕様を表2に、原子炉容器内の原子炉冷却材の流れを図5に示す。原子炉容器は、炉心(燃料)、ジェットポンプ、気水分離器、蒸気乾燥器などを収納している(図4参照)。炉心シュラウド外周の円環状部分に配置されたジェットポンプのノズルから高速で噴出された原子炉冷却材は炉心下部プレナムに送られ、炉心(燃料集合体)を下方から上方に流れるうちに加熱されて炉心上部プレナムに集められる。気水混合物の原子炉冷却材は気水分離器と蒸気乾燥器を経る間に蒸気と水とが分離され、蒸気は蒸気出口ノズルから出てタービン・発電機に送られる。一方、蒸気と分離された水は、給水スパージャからの給水と混合され、炉心シュラウド部を下降し、その一部は冷却材再循環水出口ノズルから原子炉容器外の再循環系ループに取り出されて再循環ポンプにより昇圧され、冷却材再循環水入口ノズルよりジェットポンプに供給される。
(2)原子炉再循環系(再循環ポンプ、再循環系ループ、ジェットポンプ)
 再循環系統主要機器の主要仕様を表3に、再循環系統の概要図を図6に、再循環ポンプ構成図を図7に示す。BWRでは、原子炉冷却材を強制循環させて炉心(核燃料)で発生する熱を取り出すため、主蒸気・給水系統とは別に、原子炉容器内に収納したジェットポンプと原子炉容器外部に設置した再循環ポンプとを組み合わせた再循環系統設備(再循環系ループ)が設けられている。再循環系統は、1100MWe級BWRでは再循環ポンプ2台(2ループ)とジェットポンプ20台で構成されている(表1参照)。
 炉心を循環する原子炉冷却材のうち、約3分の1はこの再循環系ループに取り出され、再循環ポンプで昇圧された後、ジェットポンプの駆動流体として冷却材再循環水入口ノズルよりジェットポンプに供給される。残りの約3分の2はジェットポンプに吸引されて駆動流と混合された後、炉心に流入する。再循環ポンプはポンプモータへの供力給電源の周波数を変えることにより回転速度を制御し、原子炉冷却材の再循環流量を変化させて原子炉出(蒸気発生量)の制御を行っている。
(3)主蒸気・タービン系
 主蒸気系とも呼ばれる。また、原子力蒸気供給システム(NSSS)と呼ばれることもある。主蒸気・タービン系統図を図8に示す。原子炉容器から主蒸気管を通してタービンに送られた高温高圧の蒸気(タービン入口で約6.57MPa(67kg/cm2g)、約282℃)は主蒸気止め弁・蒸気加減弁を経て高圧タービンに導かれる。なお、主蒸気管は原子炉容器に直接接続されており、主蒸気管破断時の蒸気(原子炉冷却材)の放出を防ぐため、格納容器の内側、外側にそれぞれ主蒸気隔離弁を設けており、閉鎖信号を受けてバネの力で数秒以内に全閉する。高圧タービンで仕事(発電)を担った蒸気は、湿分分離器で改質され、低圧タービンに導かれて再び発電を担う。低圧タービンで発電を担った蒸気は復水器に導かれ、ここで海水(海外では河川水が多い)が通っている多数の細管の表面で冷却、凝縮されて水に戻される(復水)。復水器で蒸気を冷却した海水は温排水となって海へ放出される。復水は、復水ろ過装置と復水脱塩装置により浄化され、空気抽出器等における蒸気から熱回収を行い、復水ポンプ、タービンの抽気による給水加熱器及び原子炉給水ポンプを通して昇温、昇圧され、再び原子炉容器に冷却材として戻される(給水)。また、原子炉の起動時・停止時及び平常運転時・過渡状態時において蒸気圧力(原子炉圧力)を調整するため、原子炉容器からの蒸気をタービンを通さずに直接復水器に逃がす働きをするタービンバイパス系が設けられている。詳細は「原子力発電所のタービン・発電機と付属設備(02-02-02-06)」を参照されたい。
2.改良型BWR(ABWR)の原子炉冷却系統
 ABWRにおける原子炉冷却系統の概要図を図9に、原子炉容器内の原子炉冷却材の流れを図10に示す。原子炉冷却系統としての原理はBWRと同じであるが、ABWRでは、BWRで設置されている再循環系ループが無く、原子炉冷却材再循環ポンプとしてインターナルポンプが原子炉容器下部に内装されている(1356MWe級で10台、表1図3及び図5参照)。このインターナルポンプの採用に伴い、BWRにおいて想定している再循環系配管原子炉冷却系の大口径配管破断事故を想定する必要がない設計となっている。ABWRは、東京電力(株)柏崎刈羽原子力発電所6、7号、中部電力(株)浜岡原子力発電所5号及び北陸電力(株)志賀原子力発電所2号に採用されている。
<図/表>
表1 BWRの基本仕様
表2 BWR原子炉容器の主要仕様
表3 BWR再循環系主要機器の主要仕様
図1 沸騰水型原子力発電所(BWR)の発電のしくみ
図2 沸騰水型原子力発電所(BWR)の主要系統概要
図3 BWR原子炉冷却系統概要図
図4 BWR原子炉容器内構造図
図5 BWR原子炉容器内の原子炉冷却材の流れ
図6 BWR再循環系統概要図
図7 BWR再循環ポンプ構成図
図8 BWR主蒸気・タービン系統図
図9 ABWR原子炉冷却系統概要図
図10 ABWR原子炉容器内の原子炉冷却材の流れ

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
沸騰水型原子炉(BWR) (02-01-01-01)
原子力発電所のタービン・発電機と付属設備 (02-02-02-06)
原子炉機器(BWR)の原理と構造 (02-03-01-02)
BWR原子炉容器 (02-03-03-01)
BWRの工学的安全施設 (02-03-04-01)
改良型BWR(ABWR) (02-08-02-03)

<参考文献>
(1)(社)火力原子力発電技術協会:原子力発電所−全体計画と設備−(改訂版)、平成14年6月
(2)東京電力(株):福島第二原子力発電所原子炉設置許可申請書(3、4号原子炉の増設および1、2号原子炉施設の変更)、昭和53年8月
(3)電気事業連合会(編):原子力・エネルギー図面集 −2013年版−、
http://www.fepc.or.jp/library/pamphlet/pdf/all.pdf
(4)資源エネルギー庁原子力発電課(編):原子力発電便覧1997年版、電力新報社(1997)
(5)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂第3版)、平成20年9月
(6)火力原子力発電技術協会(編):ポンプ、火力および原子力発電所に使用されるポンプ(改訂版)、昭和63年10月
(7)火力原子力発電技術協会(編):原子炉講座、昭和54年3月、−全体計画と設備−(改訂版)、平成14年6月
(8)東京電力(株):柏崎刈羽原子力発電所原子炉設置許可申請書、平成4年10月
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