<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 地球環境問題
<小項目> 地球環境問題
<タイトル>
アジア地域におけるCO2排出量の予測(科学技術政策研究所) (01-08-01-10)

<概要>
 科学技術政策研究所は、アジア各国の2000、2010年のエネルギー消費に伴う地球環境影響物質(SOx、NOx、CO2)排出量を推計することで、地球環境への負荷の見通しを把握し、地球・環境への負荷を軽減する要因について検討する基礎資料とするため、将来のCO2の排出量を推計した。その結果、CO2排出量の安定化のためには、エネルギー消費に関して特別の政策をとらない自然体ケースよりも、省エネルギーおよび環境負荷の小さい新エネルギー開発・普及を目指す技術進歩ケースの方が望ましいことが、明らかになった。
 最近のアジア・オセアニアのCO2排出量の推移、また、主要な国のCO2排出原単位の予想を参考のため示した。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 CO2(二酸化炭素)やメタンなどは、温室効果ガスとも呼ばれている。産業革命以前は、これらの総量は比較的安定していたが、産業革命以降、世界の人口増加、工業化の進展、農業の発展につれて、著しく増加した。温室効果ガスによる地球温暖化が引き起こす影響としては、温暖化に伴う海面上昇による沿岸・河川の洪水、地滑り、暴風雨、台風等の気候の変化、熱波による死亡、伝染病の増加、森林分布の変化などの生態系への影響がある。アジア地域では、近年、人口増加と経済発展が顕著で、エネルギー消費が増大している。そこで、科学技術政策研究所は、地球環境影響物質の排出量推計を行った。
1.地球環境影響物質の排出量推計の設定条件
 アジア各国の2000、2010年のエネルギー消費に伴う地球環境影響物質(SOx、NOx、CO2)排出量を推計することにより、地球環境への負荷の見通しを把握し、地球・環境への負荷を軽減する要因について検討する基礎資料とするため、環境対策について次の3ケースを想定し、アジア地域におけるエネルギー消費の予測における2ケースに対し表2に示す組み合わせで将来の排出量を推計した。
・ケースA:現状固定ケース
 現状のままで推移し、今後新たな環境対策が実施されないことを想定したケース
・ケースB:対策普及ケース
 各国の国情に見合った環境対策が普及・実施されたことを想定したケース
・ケースC:日本並ケース
 2000年、2010年において、現在の日本で行われている環境対策がアジアの全ての国で実施されたことを想定したケース
 ケースAでは、エネルギー需要の増大に伴い、地球環境への負荷は更に増大していくことが見込まれる。これは、現在の技術水準で実施可能な範囲で環境対策が普及(ケースB)し、または日本と同等の環境対策が行われた場合(ケースC)に、環境負荷にどう影響するのかを把握するための比較資料とする。なお、CO2については環境対策を想定せず、エネルギー消費量のみに影響されるものとした。これは、排出される量が余りに大量であり、将来何らかの方法で廃棄または固定化するにせよ、輸送も含めてその処理のためにさらに大量のエネルギーが必要となり、これに伴ってさらなるSOx、NOx、CO2が排出されるという悪循環となるとの観点から、CO2への対応は省エネルギー等により排出量を抑制することが最も望ましいと考えたためである。
2.CO2排出量の推計方法
 国別CO2排出量の推計は、エネルギーの利用形態によって排出量も異なってくることから、27燃料種類、17消費部門(表1参照)別に推計することとした。各ケース毎に燃料単位消費量当たりの排出量(排出係数)を設定し、燃料消費量との積により排出量を推計した。なお、各エネルギー消費量は予測値(4燃料分類、12消費部門)をトレンドによる比率で、さらに細分して用いている。
・ケースAにおける排出係数の設定
 本ケースは、環境対策等において改善がなされないケースであり、1987年時点における排出係数をそのまま使用する。ただし、日本については、現状においてかなりの環境対策等が実施されていることから、将来においても同程度の環境対策等が行われているものと考え、独自の排出係数を使用する。ここで設定したCO2排出係数を、 表2 に示す。
3.CO2排出量の推計結果
 アジア地域の2000年、2010年におけるCO2排出量について、表3の組み合わせに基づく推計結果を以下に述べる。
(1)CO2排出量の地域別将来動向
 表4にアジア各国及び中国、インド国内の地域別のCO2排出量の推計結果を示した。なお、CO2排出量の推計は、含有するC分が全て排出されるものとしており、その削減は専ら省エネルギーによって実施されるものとしていることから、次のとおりケース1とケース2の対比のみとした。
ケース1(自然体ケース)
 エネルギー消費に係る特段の追加的な政策がとられない場合で、各国の既往のエネルギー見通し又は実績の傾向をトレンドしたケース。
ケース2(技術進歩ケース)
 全消費部門において、エネルギー消費に係る新たな技術革新がとられることによる省エネルギーおよび環境負荷の小さい新エネルギー開発・普及が図られるケース。
 また、化石燃料と異なり、植物性燃料から放出されるCO2は、植物性燃料自身の再生産の過程で大気中からCO2を吸収しているので、燃焼しても元に戻すだけでネットとしては0と考えた。植林等により消費に見合った再生産がなされる場合には、地球環境保全に有効なものと取り扱えられるが、将来経済が発展し生活水準が上昇するに従い、必ず植物性燃料から化石燃料への転換が加速されるものと考えられる。このため、開発途上国の植物性燃料の消費を今後どのように位置づけていくのかを明らかにしていく必要があることから、ここでは植物性燃料からの排出量も含めて整理している。
 1987年におけるCO2排出量は14.6億トンと推計されているが、その後(2000年、2010年)の推移について2ケースについてみる。
a.ケース1:このケースでは、CO2排出量が2000年22.0億トン、2010年30.3億トンと対1987年比で1.5、2.1倍、年平均伸び率3.2%、3.3%とSOx、NOxと同様に飛躍的な伸びを示している。2000年を各国別にみると、大きいシェア順に中国(41.3%)、日本(16.4%)、インド(15.0%)、韓国(5.4%)、インドネシア(5.0%)となっており5か国で全体の83.1%を占め、2010年も若干、中国、日本のシェアは下がるものの同様の傾向である。また、年平均伸び率の高い国は韓国、台湾、マレーシア、タイ、シンガポール等でSOx、NOxと同様な地域を示している。なお、中国の排出量は6.4億tから9.1億t、12.3億tと拡大し、中国の国内では北京、天津、上海、江蘇、漸折江、広東等で2〜6%の高い年平均伸び率で推移、地域的拡大がみられる。
b.ケース2:このケースでは、CO2排出量が2000年18.4億t、2010年21.6億tとなり、その対1987年比は1.6、1.5倍、年平均伸び率は1.8%、1.7%と省エネルギー対策の効果が反映され、ケース1に比べて16%〜30%低減された排出量となっている。また、各国別シェアはケース1とほぼ同様である。一方、中国では2000年7.5億t、2010年8.6億tと年平均伸び率は1.2〜1.3%であるが、国内の上海、江蘇、漸折江、広東の年平均伸び率は1987年〜2000年は3〜4%で推移し、その後2000〜2010年は1.4%に低減する結果となっている。
 以上2ケースの結果を、1人当たりの排出量に換算すると 図1に示すとおりになる。1987年には532kg/人であったのが、2000年にはケース1で634kg/人、ケース2で1531kg/人、また2010年にはケース1で770kg/人、ケース2で548kg/人となる。2000年におけるCO2排出量安定化のためには、少なくともケース2の対策を実施していくことが必要である。
(2)エネルギー源別にみたCO2排出量の将来動向予測
 図2にエネルギー源別アジア地域全体のCO2排出量を示した。
 1987年の排出量は14.6億tで、その排出源別のシェアは石炭49.0%、石油26.3%、ガス4.0%、植物性燃料17.0%、セメント製造3.5%となっている。ケース1では、2000年、2010年には、石炭からの排出で排出係数がやや高い褐炭が減少することから、他に比べて伸び率がやや小さくなる。そのため相対的にシェアが若干低下する。また植物性燃料もエネルギー消費量の伸び率が小さいため同様に低下する。顕著に増加傾向を示しているのがガスからの排出量であり、1987年から2000年、2010年へと倍々と増加しており、シェアも急速に拡大している。
(3)部門別にみたCO2排出量の将来動向
 図3にエネルギー消費部門別にみたアジア地域の全体のCO2排出量を示した。
 1987年の排出量は14.6億tで、部門別にはエネルギー転換部門25.2%、産業部門34.4%、輸送部門9.5%、その他部門30.9%となっている。ケース1においては、その他部門のシェアが2000年で4%、2010年で6%減じ、他の部門はすべて増加している。特に、発電部門の増加が顕著であり、その他部門の減少した率にほぼ匹敵する増加となっている(ただし、エネルギー転換部門としては、シェアの増加はやや小さくなっている)。また、輪送部門も2%程度シェアを拡大している。ケース2では、発電部門の増加は少ないもののやはり2%前後シェアが増加している。なお、ケース1との比較において、植物性燃料のシェアが2〜4%大きくなっているが、これは植物性燃料では省エネルギーを見込んでいないため、相対的にシェアが押し上げられたものである。ちなみに、植物性燃料を除いてシェアを計算するとその他部門のシェアは1〜2%減少し、その分輸送部門のシェアが拡大することとなる。
4.CO2排出量の推移
 表5にアジア・オセアニア地域の199年〜2001年までのCO2排出量の推移を示した。
 また、比較のため表6に、世界の国々におけるCO2排出原単位の予測を示した。これは同じ製品を作るのに排出する温室効果ガスを表す量で、中国、インドは他と比較して突出している。日本はこの表にはないが、フランス、ドイツ並みである。中国、インドは世界でも突出して石炭を使っている。石炭は、石油に比べるとCO2、NOx、SOxを約2割〜3割多く排出する。世界の石炭消費は、2001年の53億トンから、2025年の75億トンへと、22億トン増加すると予想される。アジアの発展途上国で石炭使用は、この間に、19億トン増加すると予想される。一方、中国とインドは2001年〜2025年の間で世界の最終エネルギー消費全体の増加の28%を占めると考えられている。また、世界の石炭使用の増加の75%を占めると予想されている。
<図/表>
表1 対象エネルギー消費部門と燃料分類
表2 検討ケース一覧表
表3 CO2排出係数
表4 アジア地域のCO2排出量
表5 アジア・オセアニア地域のCO2排出量の推移
表6 CO2排出原単位
図1 一人当たりのCO2排出量
図2 エネルギー源別CO2排出量
図3 部門別CO2

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<関連タイトル>
アジア地域におけるエネルギー消費の予測(1993年科学技術政策研究所) (01-07-02-02)
アジア地域におけるNOx排出量の予測(科学技術政策研究所) (01-08-01-11)
アジア地域におけるSOx排出量の予測(科学技術政策研究所) (01-08-01-12)
アジア・太平洋地域における環境問題の特殊性 (01-08-04-02)

<参考文献>
(1)科学技術政策研究所:アジア地域のエネルギー利用と環境予測、大蔵省印刷局(1993年6月18日)
(2)通商産業省:エネルギー‘97、電力新報社(1997年10月10日)
(3)EIA:International Energy-Related Environmental Information,Table H1,
(4)EIA:International Energy Outlook 2003,Environmental Issues and World Energy Use,,Table28
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