<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 省エネルギー
<小項目> エネルギーの使用の合理化に関する法律
<タイトル>
日本の省エネルギーと社会制度 (01-06-02-02)

<概要>
 日本の省エネルギーは、世界的にみても非常に進んでいる。気候変動枠組み条約の定める温室効果ガス排出抑制の目標値達成のため、新しい地球温暖化対策推進大綱が決定し、これにしたがった努力が進められている。しかし、温室効果ガス削減の目標達成には並々ならぬ努力が必要である。今後の省エネルギー対策によって全体として5700万klの省エネを行い、これによって炭素換算約600万トンの二酸化炭素の排出抑制を目標としている。省エネルギーの中には、社会制度と密に係るものもある。環境省では、「循環型社会基本法」に基づく「循環型社会形成推進基本計画(循環型社会基本計画)」の策定を進めている。温室効果ガス排出抑制は社会経済発展と密に係るもので、どの発展の道筋を採るかによって将来の排出量は変化する。環境省は発展のシナリオを幾つか例示している。
<更新年月>
2004年09月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.地球環境問題をめぐる情勢
 わが国のエネルギー政策は、「環境保全や効率化の要請に対応しつつ、エネルギーの安定供給を実現し、適度の経済成長を達成する」こと、すなわち、「3つのE」:Economic Growth、 Energy Security and Environmental Protectionの同時達成にある。しかし、IEA国際エネルギー機関)の、2030年までの世界のエネルギー需給の見通しによると、
(1)世界のエネルギー需要は、2030年には2000年比で66%伸びる見込み。また、世界の一次エネルギー供給に占める化石燃料のシェアは2030年までに90%に達し、これに伴いCO2排出量は70%増大する見込み。
(2)途上国での経済成長、工業化の進展、人口の増加等により、世界の総エネルギー需要のうち途上国のシェアは現在の30%から2030年には40%以上に上昇し、OECD諸国のシェアは54%から44%に減少する。
 図1は 主要国のGDP当りエネルギー起源CO2排出量の比較を示している。わが国は、経済活動の規模に比較して、CO2の排出は非常に低く、これは、わが国の省エネルギーが他の国より進んでいることを示すものといえよう。気候変動枠組み条約の京都議定書によれば、各国とも、温室効果ガスの削減目標は1990年水準を基礎にして定められている。わが国の場合、1990年水準の6%を2008−2012年間に削減することになっている。図1は、エネルギー起源のCO2だけの数量であり、GDPの約15%の伸びを考慮すると、2000年のCO2の排出だけで既に1990年水準を15%越えている。実際、1990年1064百万t−CO2に対し、2000年1163百万t−CO2である。主要先進国もほぼ同様の状況にあるとはいえ、わが国が厳しい状況にあることには変わりはない。
 わが国は、二度の石油危機(1973年、1978年)によるエネルギー価格の高騰により、官民を挙げて省エネルギー対策に取り組み、OECD(Organisation for Economic Co−operation and Development:経済協力開発機構)主要国の中で最も高い水準の省エネルギーを達成している。省エネルギーの度合をマクロ的に把握する指標として、GDP(Gross Domentic Product:国内総生産)当たりのエネルギー消費量がある。この数値が低ければ省エネルギーの度合が高いといえる。図2は、主要国のエネルギー消費の対GDP原単位を示すもので、この中で、わが国は、非常に低い値であり、省エネルギーによって、今後、CO2の排出抑制をするためには、相当の対策を考えなくてはならない状況にあることを示している。
2.地球温暖化対策推進大綱
 2001年11月のCOP7の合意を受け、内閣総理大臣を本部長とする地球温暖化対策推進本部(総本部長:内閣官房長官、経済産業大臣、環境大臣)は、京都議定書の締結に向けた準備作業の一つとして、1998年6月に決定された「地球温暖化対策推進大綱」を見直し、京都議定書の▲6%削減約束の達成に向けた具体的裏付けのある対策を示す新しい「地球温暖化対策推進大綱」を2002年3月19日に決定した。この中で、温室効果ガス別その他の区分ごとの目標を以下のように定めた。
(1)エネルギー起源CO2→1990年度と同水準に抑制
(2)非エネルギー起源CO2、CH4及びN2O→1990年度の水準から基準年総排出量比で0.5%分の削減
(3)革新的技術開発及び国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の推進→1990年度の水準から基準年総排出量比で2%分の削減
(4)代替フロン等3ガス(HFC,PFC,SF6)→1995年に対して基準年総排出量比プラス2%程度の影響に止める
(5)森林経営による吸収量→基準年総排出量比約3.9%程度度の吸収量の確保
 上記の目標により▲6%削減約束を達成していくが、第1約束期間において目標の達成が十分に見込まれる場合には、引き続き着実に対策を推進するとともに、今後一層の排出削減を進める。なお、国としての京都議定書上の約束達成義務及び京都メカニズムが国内対策に対して補足的であるとする原則を踏まえ、国際的動向を考慮しつつ、京都メカニズムの活用について検討する。表1-1及び表1-2にエネルギー起源CO2及び非エネルギー起源CO2の目標を示す。
○京都議定書の目標達成は決して容易ではなく、国、地方公共団体、事業者および国民全ての主体がそれぞれの役割に応じて総力を挙げて取り組むことが不可欠である。特に、民生・運輸部門の対策を強力に進める。(各界各層が一体となった取り組みの推進)
○アメリカや開発途上国を含む全ての国が参加する共通のルールが構築されるよう、引き続き最大限の努力を傾けていく。(「地球温暖化対策の国際的連携の確保」)
3.今後の省エネルギー対策
 産業部門の主要業種のエネルギー消費原単位の推移を図3に示す。これによると省エネは鉄鋼、窯業以外はほぼ限界に達しているように見える、「経団連自主行動計画」によって省エネが進められているが、今後も一層の努力をしなければならない。産業部門では、省エネルギー対策で2050万klの省エネルギーが考えられている。
 民生部門のエネルギー消費原単位の推移を図4図5に示す。業務用では床面積当たりのエネルギーは減少する傾向があるのに対し、民生用の半分以上を占める家庭用では、世帯当たりの消費量が年とともに増加しているので、この部分の省エネルギーに力を注ぐ必要がある。家庭用電化製品は消費電力の少ないものに替わっているが、機器の大型化の傾向や今後のライフスタイルの変化を考慮すれば、世帯当たりの消費量は増加してゆくものと思われる。民生部門としては、1860万klの省エネを目標としている。
 運輸部門のエネルギー消費原単位の推移を図6に示す。エネルギー消費では、自家用乗用者は運輸部門のシェアの82.7%を占めている。運輸部門の消費の伸びは、ほぼ自家用乗用車の伸びが反映された形である。また、貨物部門では貨物自動車がエネルギー消費の90.3%を占めている。自家用乗用車対策、物流対策、もっと広く考えれば、交通体系全体について考えなければならない段階にあるといえよう。運輸部門の省エネルギー対策で1690万klの省エネが見こまれている。
 この他に、部門間の横断的対策として100万klの省エネが見込まれており、全体で5700万klの省エネとなる。これは家庭部門の最近のエネルギー消費量、約5500万klを上回る規模になる。これによる二酸化炭素削減量は、炭素換算約600万トンになる。
4.省エネルギーと社会システムの関わり
 省エネルギーには、社会システムあるいは社会制度との関わりのある対策・問題が多い。直接的関わりのある問題は、サマータイム制度のような問題があるが、これは、国民の大多数の賛成を得るに至っていない。各部門の対策の中にも、社会システムとの関わりのある問題がある。
 産業部門に関しては、経団連の環境自主行動計画(廃棄物対策編)がある。これは、リサイクルと関係し、自動車や、パソコン、家電機器等のリサイクルと、コスト−効率的な省エネルギー的なリサイクルシステムの在り方の問題を含んでいる。また、産業構造を変え、ライフスタイルを変える問題も含んでいる。ゴミ問題は大きい問題として国民の関心は高くなっている。また、民生部門とも関わるが、住居・事務用ビルの構造の問題もある。省エネルギーよりも1歩進めて、ヒートアイランド現象までも解消するための方策と関連させようとすると、多層の集合住宅で入居者が相互依存と干渉を強め、職住接近型の環境の中で暮らすか、情報通信を活用した在宅勤務やサテライト勤務等のシステムを利用するようなことを考えなくてはならない。また、輸送部門の省エネを考えるならば、公共交通機関の選択肢を増やし、長距離輸送に頼る流通システムの変革を考えるなども必要であろう。これらの実現は、既に現在の社会システムが、現在の社会のニーズに応えるソリューションを提供しているだけに、組替えて実現するのは容易なことでなく、徹底したシステム分析・評価によるステップバイステップの前進が必要となると思われる。
5.循環型社会形成推進基本計画
 2001年7月に内閣府では「循環型社会の形成に関する世論調査」を行った。ごみ問題に対する関心の程度は、「関心がある」が89.8%(非常に関心がある31.8%、ある程度関心がある58.0%)であった(図7)。循環型社会の形成の機運は熟していると判断されよう。環境省では、「循環型社会基本法」に基づく「循環型社会形成推進基本計画(循環型社会基本計画)」の策定を進めている。2002年1月には中央環境審議会より循環型社会基本計画の策定のための指針が環境大臣あてに示された。この指針では、わが国が目指す「循環型社会」の具体的なイメージを示すことが重要であると指摘している。このような指摘を踏まえ、循環型社会のイメージとして3つのシナリオを例示している。
(1)シナリオについて
 循環型社会に至る道筋は1つだけではない。例えば、人口や経済活動の規模、技術進歩やライフスタイルなど、われわれを取り巻く状況が変われば、循環型社会の構築に向けた取組も変わってくる。また、様々な取組の組み合わせによっては、異なった循環型社会への道筋を描くことが可能である。以下では、考えられる3つの循環型社会の形成に向けたシナリオを描き、循環型社会についてのイメージを示す。
 シナリオAは技術開発推進型シナリオ(図8)で、極めて高度な工業化社会となることを想定している。そのような社会では廃棄物等は品目別ごとに収集され、高度化した静脈物流システムにより集積され、廃棄物発電などのサーマルリサイクルも活発に行われる。
 シナリオBはライフスタイル変革型シナリオ(図9)で、今までの大量生産・大量消費・大量廃棄の暮らしに慣れた我々には、多少、忍耐と努力が求められる社会かもしれない。生活のペースを今より少しスローダウンし、得られた時間で自ら家の手入れや家庭菜園などの園芸を行ったり、ものを修理しつつ大事に使う生産的消費者への変化が求められる。また、地域でのNGO/NPO活動への参加や朝市などによる地産地消といった小さな経済で充足感を得る社会になる。
 シナリオCは環境産業発展型シナリオ(図10)で、環境効率性の高い社会で産業の高次化が進むイメージである。環境産業の発展により経済成長もしながら、そのような産業が供給する環境に配慮した製品やサービスによりくらしの面でも環境負荷の低減が進むという社会になる。
 また、中央環境審議会地球環境部会、気候変動に関する国際戦略専門委員会(第3回会合)において、気候変動と社会経済の発展シナリオについて検討されている。これによると社会経済発展のモデルとして図11に示すシナリオをベースにIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change:気候変動に関する政府間パネル)の排出シナリオと同様なシナリオで、評価を行っている。二酸化炭素排出量は社会経済発展のシナリオによって、大きく異なってくることが示されている(図12)。
 社会制度の発展が、省エネルギーに大きい影響を及ぼすことが示されている。
<図/表>
表1-1 温室効果ガスその他区分ごとの対策(例)(1/2)
表1-2 温室効果ガスその他区分ごとの対策(例)(2/2)
図1 主要国のGDP当りエネルギー起源CO2排出量の比較
図2 主要国のエネルギー消費の対GDP原単位
図3 主要産業におけるエネルギー消費原単位の推移
図4 世帯当たり用途別エネルギー消費量の推移
図5 業務用床面積当たり用途別エネルギー
図6 運輸部門におけるエネルギー消費原単位の推移
図7 国民のゴミ問題への関心
図8 シナリオA:技術開発推進型シナリオ
図9 シナリオB:ライフスタイル変革型シナリオ
図10 シナリオC:環境産業発展型シナリオ
図11 予測のベースとなる社会経済発展シナリオ
図12 発展の道筋と二酸化炭素将来排出量

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
日本の産業部門における省エネルギー対策 (01-06-03-02)
日本の民生部門における省エネルギー対策 (01-06-03-03)
日本の運輸部門における省エネルギー対策 (01-06-03-04)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月21日)、p.45
(2)財団法人 省エネルギーセンター(編):省エネルギー便覧(2003年版)、省エネルギーセンター(2003年12月)
(3)環境省:平成14年度循環型白書、序章
(4)環境省:平成16年度環境白書、第2部第1章、http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h16/html/index.html
(5)甲斐沼 美紀子:気候変動問題と社会経済の発展シナリオ、中央環境審議会地球環境部会気候変動に関する国際戦略専門委員会(第3回会合)、国立環境研究所,http://www.env.go.jp/council/06earth/y064-03/mat01.pdf
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ