<本文>
1.運輸部門におけるエネルギー消費の推移
日本の運輸部門は乗用車、バス等の旅客部門と陸運、海運、航空貨物等の貨物部門に大別され、2002年度のエネルギー消費量は3839PJで、これは最終エネルギー消費全体の24%にあたる(
表1)。旅客部門のエネルギー消費は、1973年の第1次石油危機以降も堅調に増加を続けてきたが、1986年以降は景気の拡大とともに更に高い伸び率となっている。機関別の消費では、自家用乗用車のシェアが80%以上を占め、旅客部門のエネルギー消費の増大は、ほぼ自家用乗用車の伸びが反映された形となっている。旅客輸送量は、高度経済成長期に大きく伸び、第1次石油危機以降鈍化したが、1987年以降は景気拡大で自動車の保有台数が増加して再び高い伸びを示している。貨物部門のエネルギー消費は、産業活動と密接な関係にあり、第2次石油危機以降数年間は減少傾向であったが、1980年代後半から経済活動の活発化とともに高い伸び率となった(
図1参照)。
近年は、多頻度小口配送、ジャスト・イン・タイムサービスの普及等を背景にした積載率の低下により、輸送効率が悪化したため、トンキロ当たりの原単位は増加傾向で推移している(
図2参照)。
輸送機関別では、産業構造の変化に伴って、海運・鉄道からエネルギー消費効率の悪い自動車へのシフトが進み、自動車による輸送が占める割合は輸送量全体の約5割に達している。(
図3、
図4参照)
2.運輸部門の省エネルギー対策
運輸部門の省エネルギー対策としては、1990年代の輸送部門におけるエネルギー増加の約9割を占める自家用乗用車対策に重点が置かれ、また、交通・物流の円滑化と自動車交通量のマネジメントに注力している。
2.1 自動車燃費の改善強化
1998年に改正された省エネ法においては、トップランナー方式の考え方を導入し、自動車の燃費基準を策定している。また、LPガス乗用自動車の燃費基準を2003年7月に算定した。今後は、これらの新基準に基づき、例えば、ガソリン乗用自動車の燃費については2010年までに1995年度比約23%程度の向上を目指す。
2.2 クリーンエネルギー自動車等の普及促進
新エネルギー利用促進、省エネルギーの推進、運輸分野におけるCO
2排出抑制及び都市地域等におけるNO
x、PM(Particle Matter:粒子状物質)等有害物質の排出抑制を図るため、「クリーンエネルギー自動車等導入促進事業」、「低公害車普及促進対策費補助制度」、「自動車燃料消費効率改善システム導入促進事業」を実施している。これらの事業は、天然ガス自動車、ハイブリッド自動車、アイドリングストップ自動車等の導入や燃料等供給設備(エコ・ステーション)の設置等を行う地方公共団体や民間事業者等に対し、導入費用の一部を補助するものであり、これにより天然ガス自動車、ハイブリッド自動車、アイドリングストップ自動車等の初期導入コストの低下を促すことによって普及促進を図っている。また、クリーンエネルギー自動車や、低燃費かつ低排出ガス認定車(省エネ法の燃費基準を達成し、かつ最新排出ガス規制値よりも排出ガスを75%以上低減したガソリン自動車等)について、自動車税の特例措置(いわゆる自動車税のグリーン化)を講じるとともに、自動車取得税の特例措置を講じている。こうした政府による普及促進策と自動車メーカーの開発努力などが相まってクリーンエネルギー自動車や、低燃費かつ低排出ガス認定車の普及台数は、急速に増加している。
2.3 個別輸送機器のエネルギー消費改善
鉄道、船舶、航空機のエネルギー消費効率の向上を図るための技術開発、エネルギー消費効率の優れた機器の導入を促進するための財政投融資等を実施。
2.4 技術開発の推進
既存のガソリン、軽油以外の石油代替燃料を用いた次世代低公害車の技術開発を実施。
2.5 物流効率化、交通対策
個々の輸送機器のエネルギー消費効率を改善すると共に、物流の効率化や交通流の円滑化、公共交通機関の利用促進等の交通対策を実施。
(1)物流対策
・トラックの積載効率向上
・トレーラー化及び車両の大型化の推進
・鉄道・内航貨物輸送の推進
・港湾整備による国際海上コンテナ貨物輸送の推進
・物流の情報化
・商慣行の改善
(2)交通対策
・公共交通機関の利用促進
・交通需要マネジメント(TDM)施策の推進
・高度道路交通システム(ITS)の推進
・信号制御による自動車交通の円滑化
・路上工事の縮減や駐車場整備による自動車交通の円滑化
2.6 テレワークの推進等
情報通信を活用した在宅勤務やサテライト勤務等の場所にとらわれない働き方であるテレワーク及びテレビ会議システムの普及を促進することにより、交通代替を推進。
3.運輸部門の省エネルギー対策効果:1690万kl
・現行対策の効果:1590万kl
トップランナー規制による機器効率の改善:540万kl
クリーンエネルギー自動車の普及促進:80万kl
交通システムにかかる省エネ対策:970万kl
・新規対策の効果:100万kl
トップランナー基準適合車の加速的導入:50万kl
ハイブリッド自動車等車種の多様化の推進:50万kl
<図/表>
<関連タイトル>
省エネルギーの必要性 (01-06-01-02)
日本の産業部門における省エネルギー対策 (01-06-03-02)
日本の民生部門における省エネルギー対策 (01-06-03-03)
<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月21日)、p.52-90
(2)資源エネルギー庁:インフォーメーション、統計情報、需給関連、2002(平成14)年度エネルギー需給実績(確報)、本文(PDFファイル),
(3)資源エネルギー庁:施策情報、目指すべきエネルギー需給像に向けた対策、長期エネルギー需給見通し概要
(4)資源エネルギー庁省エネルギー対策課(監修):省エネルギー便覧 2003年版、(財)省エネルギーセンター(2003年12月)、p.70-110
(5)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004 資源エネルギー年鑑(2003年1月)、p.23-29、p250-258