4.廃棄物問題
現在の経済社会活動が[大量生産−大量消費−大量廃棄型]となり、それが高度化するにつれ、廃棄物量の増大、廃棄物の種類の多様化および最終処分場の残余容量の逼迫等が生じている。これらに伴い、資源採取から廃棄に至る各段階での環境への負荷が高まっている。
有害廃棄物は、種類の多様化、発生量の増加により、処理費用の高い国から安い国へ、あるいは処理に伴う規制の厳しい国から緩い国へと、処理の場所を求めて越境移動する事例が増えてきている。受入れ国で適正な処理がなされない場含には、その国の生活環境や生態系に影響を及ぼすおそれもあり、地球規模での有害廃棄物の移動が問題となっている。この問題は先進国から開発途上国への移動という図式を見せはじめたため、国連環境計画(UNEP)を中心に国際的なルール作りが検討され、1989年、スイスのバーゼルにおいて「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」(Basel Conveation on the Control of Transboundary Movements of Hazardous Wastes and Their Disposal)が採択された。日本は、バーセル条約の議定を履行するための国内法を1992年に制定し、1993年に条約に加入した。
5.自然環境問題
森林は、世界の陸地の約4分の1を占めており、1995年時点で34億5,400万haの森林が存在している。しかし、国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations)によると地球上の森林は熱帯林を主として、1990年から2000年の間に、年平均940万haの森林が失われている。これは日本の面積(3,770万ha)の約25%の面積に相当する。森林面積は、1990年から1995年の間に先進国(ロシア連邦を除く)では878万ha増加しているのに対し、途上国ではこの7倍を超える6,515万ha(年平均1,303万ha)が減少している(図4、図5)。途上国のなかでも特に熱帯地域で森林衰退が進んでいる。途上国の非熱帯地域における1990年から1995年の間の年平均森林減少面積が43万haであるのに対し、熱帯地域の同期間の年平均森林減少面積は1,259万haとなっている。図6は、森林面積の年当たり増減を熱帯地域と非熱帯地域について示す。熱帯林減少の原因は、途上国における貧困、人口増加、土地制度等の社会的経済的な要因がある。樹木は光合成により大気中の二酸化炭素を有機物に変えるため、熱帯林は二酸化炭索の吸収源としても重要な役割を果たしている。また、熱帯林は、地球上に生存している生物の50〜80%が生息するといわれ、生物多様性の保全にも重要な役割を果たしている。熱帯林の減少によりこれらの動植物種が亡びたり、種の維持が困難なほど生息域が狭められたりすることが懸念されている。
6.野性生物種の多様性問題
国連環境計画(UNEP)によれば、未知の種も含わせると種の総数は300万種から1億1,100万種に及ぶとも推定されており、そのうち現在確認されている数は約175万種程度である。このような種の多様性の他、遺伝子レベルの多様性、生態系の多様性をも合めて、生物多様性と呼ばれる。生物多様性には、人類を含む生物自身にとって良好な環境を保つ生存基盤としての価値、食物や薬等資源としての価値、また、自然とのふれあいを通して心の安らぎを得、さらにレクリエーションやスポーツを楽しむ場としての文化的価値がある。しかし、このような生物多様性は、生息・生育地の破壊により急速に失われている。このままの割合で森林破壊が続くと熱帯の閉鎖林に生息する種の4〜8%が今後25年の間に絶滅するという試算もある。わが国においても多くの種が絶滅のおそれに瀕している(表3)。
今までも、種の絶滅は自然界の進化の過程で絶えず起こってきたが、その速度はきわめて緩やかであった。今日の種の絶滅は、自然のプロセスではなく、人類の経済社会活動が主たる原因であり、地球の歴史始まって以来の速さで進行している。種の絶滅は地球環境問題の重要な課題として捉えられ、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora:ワシントン条約)」は、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引を規制することにより、それらの種を保護することを目的としている。1973年に採択され、日本は1980年に条約に加入した。
上述した環境問題をまとめると、観測された変化については表1のように、また地球温暖化に伴う影響の予測は表2のようになる。<図/表>