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<概要>
 TMI事故によって、原子炉の安全確保に何段階もの対策をとる多重防護方式の妥当性が実証されたが、原発に事故は起らないという確信は崩れた。原発の安全確保は極めて現実的なものとなってきた。「1972年長期計画」の第2再処理工場建設の必要性、民間による運転の基本方針にそって、原子炉等規制法の一部改正が承認され、5月に日本原燃サービス(株)が発足した。動燃(現日本原子力研究開発機構)と原電の間で3月に業務協力協定が締結され、4月に民間高速炉開発会社「高速炉エンジニアリング」が発足し、高速増殖原型炉開発のための協力支援体制が整った。動燃は12月、原型炉「もんじゅ」の設置許可申請を行った。原子力安全委は、原子力発電所の公開ヒアリングの準備をすすめ、高浜(1月)、福島第二(2月)、川内(7月)、敦賀(11月)、柏崎(12月)と次々に現地ヒアリングを開催、8月に、高浜3、4号炉、福島第二3、4号炉がダブル・チェックによる初の設置許可を得た。
 
 
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>

1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1980年
(昭和55年)
1/17 原子力安全委、関西電力高浜3、4号炉増設で初の公開ヒアリング  
1/27   デンマーク政府(社民党少数派内閣)、原発建設の無期延期を決定
1/28   カーター米大統領、1981会計年度予算からクリンチリバー高速増殖炉及び廃棄物隔離パイロットプラント分を落とす
2/1 高速増殖型実験炉「常陽」、熱出力7万5000kWの定常運転  
2/9   米FFTF(高速中性子炉試験施設)、初臨界
2/12   カーター米大統領、放射性廃棄物管理総合政策を発表
2/14 東京電力福島第二原発3、4号炉増設で公開ヒアリング  
2/27   国際核燃料サイクル評価(INFCE)最終総会、平和利用と核不拡散の両立・再処理・濃縮で合意
3/1 わが国初の民間再処理会社「日本原燃サービス」が発足、第2再処理工場具体化へ一歩前進  
3/23   スウェーデンで原子力国民投票、過半数が条件付き支持(原発開発は運転中建設中発注済みまでの12基とし、25年後を目標に徐々に廃止)
3/26 自治省(現総務省)、静岡県の核燃料税認可  
4/1 高速炉エンジニアリング会社発足、高速増殖炉の民間受注体制整う 仏、運転中または建設中の原発周辺市町村に対して平均15%の電気料金を割引く「地域別料金制度」を実施
4/8   ソ連高速増殖炉BN−600、初電力併入
4/24 電気事業連合会、高速増殖炉推進会議の設置を決定  
5/6 原子力安全委、「わが国の安全確保対策に反映させるべき14項目」を安全審査に取入れることを決定  
5/21 九州電力玄海2号臨界(PWR、55万9000kW)  
5/22   IEA閣僚理事会、1990年の石油依存を40%に低下させる案・原子力利用促進を採択
6/9 工業技術院四国工業試験所、海中ウラン回収用高性能吸着材開発  
6/19   コメコン(共産圏経済援助相互会議)総会、原子力利用拡大のコミュニケを採択
6/25   第6回先進国首脳会議、石油依存率の逓減の石炭・原子力の開発促進を決める。(ベネチア宣言)
6/30 原子力安全委、原子力防災の指針を決定  
7/1 日本鉱業、ジルコニウム・スポンジー貫国産化体制を確立  
7/11 原子力委放射性廃棄物対策専門部会、処理方針を決定.太平洋投棄計画は、サイパン・小笠原など内外で問題化  
7/15   米共和党全国大会、原子力推進・許認可円滑化・FBR 促進の綱領を採択
7/17 川内原発2号炉の増設で公開ヒアリング  
7/22 原子力委食品照射研究運営会議、照射タマネギの安全性を確認  
7/23   米メトロポリタン・工ジソン社の技師2人、初めてTMI2号機の原子炉建屋内に入る
8/4 通産省(現経産省)、高浜3、4号及び福島第二原発3、4号増設の設置許可  
8/8 動燃(現日本原子力研究開発機構)、Pu混合転換施設着工  
8/11 「むつ」の遮蔽改修工事始まる  
8/15 グアム派遣の政府代表団、低レベル放射性廃棄物の試験的海洋投棄で地元の説得ならず 南太平洋地域首脳会議(グアム、8/14〜15)。日本の低レベル放射性廃棄物海洋投棄計画の停止要求を決議
8/18   NRC、新緊急時規則を発表(0CFR50付属E)1
8/25 三井物産と石塚研究所、新ジルコニウム製造法の開発に成功  
8/29 中川科学技術庁(現文部科学省)長官、「むつ」の母港問題で青森県漁連会長らと会談  
9/1 住友金属、ジルカロイ製造工場完成  
9/18 理研、トリチウムのレーザー法分離に世界で初めて成功 米の州計画審議会、廃棄物管理の基本原則を発表
9/22   仏トリカスタンのガス拡散ウラン濃縮工場、年産6000トンSWUの能力に
9/24   米上下両院、1980年磁気核融合工学法案可決
9/27 科学技術庁、小笠原で低レベル放射性廃棄物の試験的海洋処分の説明会開く(〜9/28)。9/30村議会、反対決議  
10/1 新エネルギー総合開発機構(NEDO)発足  
10/3 動燃人形峠ウラン濃縮パイロット・プラントOP−lB3000台が運転開始、合計4000台体制へ  
10/21 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)原子力部会基本政策小委員会専門委員会、原子力総合政策をまとめる  
10/23 原子力工学試験センター原子力安全解析所発足.原発安全審査関連の安全解析実施  
11/4   米5州で原子力反対住民投票(ワシントン、オレゴン、モンタナは可決、ミズーリ、サウスダコタは否決)
11/5 原研(現日本原子力研究開発機構)・電力中研など、米バツテル・パシフィック・ノースウェスト研の高燃焼時UO2燃料のガス放出研究計画に参加契約結ぶ  
11/6 関西電力高浜2号が322日間の連続運転記録樹立  
11/7   韓国、仏フラマトム社にPWR2基を発注
11/13 使用済燃料貯蔵太平洋ベースン検討はじまる  
11/20 敦賀2号炉増設で公開ヒアリング  
11/20 電気事業連合会、濃縮ウラン国産化で、電力業界主体に商業プラント建設を決める  
11/28 原子力委、廃炉対策専門部会設置  
11/29 日本原子力船開発事業団、日本原子船研究開発事業団に改組  
12/1 福島第二原発3、4号(BWR)着工  
12/3 東北電力巻原子力発電所漁業補償問題で巻町、間瀬漁協が基本合意、補償総額39億6000万円  
12/4 原子炉設置で初の第1次公開ヒアリング開く(東京電力柏崎刈羽原発2、5号炉増設)  
12/5 高浜原発3、4号(PWR)着工  
12/9 原子力委放射性廃棄物対策専門部会、「高レベル放射性廃棄物処理処分に関する研究開発の推進について」報告書を発表  
12/10 動燃、FBR原型炉「もんじゅ」設置許可申請  
12/12   米エネルギー省、放射性廃棄物管理に関する環境影響報告書を発表。地層処分法が最善
12/13   米議会で「低レベル放射性廃棄物政策法案」が通過
12/18 電気事業連合会、ウラン濃縮準備室の設置を決める  
12/21   米高速中性子炉試験施設(FFTF400MWt)、全出力運転
12/22 原子力安全委、ウラン加工施設の安全審査指針を決定  


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1980年
(昭和55年)
1/11 総合エネルギー対策推進閣僚会議、石油消費節減対策強化を決定(暖冷房温度、自動車通勤抑制など)、7%節約を目標  
2月 IC(半導体集積回路)の日米貿易、日本側出超に転ずる  
3/31 衆院、公害環境及び科学技術特別委員会を常任委員会に昇格することを決める  
4/1 電力・ガス料金大幅値上げ実施。電力平均50.8%、ガス平均45.3%値上げ  
5/1 非エネルギー分野における日米科学技術研究開発協力協定調印  
5/30 石油代替エネルギー開発・導入促進法公布  
6/23   第6回先進国首脳会議(〜6/25)ベネチア宣言採択
8/19 科学技術会議、ライフサイエンス研究推進に関する意見を政府に提言  
9/9   イラン・イラク戦争起る
11/4   第40代米大統領にロナルド・レーガン
11/25   EC外相理事会、対日共通強硬戦略を決定(輸出抑制・輸入増加を要求)
11/28 閣議、石油代替エネルギー供給目標を決定。1990年度の石油依存度を50%に  



<関連タイトル>
六ヶ所再処理工場 (04-07-03-07)
高速増殖炉原型炉「もんじゅ」の開発(その1) (03-01-06-04)
公開ヒアリング (11-01-01-03)
TMI事故による作業従事者の被曝 (02-07-04-04)
米国スリー・マイル・アイランド原子力発電所事故の概要 (02-07-04-01)


<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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