3.保障措置
ブラジルは、軍事政権時代に秘密の核兵器研究開発計画を進めてきたが、1988年の新憲法の導入を契機に核開発の放棄を宣言した。ブラジルとアルゼンチンは、1990年11月に両国において核兵器の生産と実験を禁じる共同宣言を行い、1967年に署名のために開放されたトラテロルコ条約(ラテンアメリカ非核化条約)に基づく包括的保障措置協定受け入れに関して、国際原子力機関と交渉を開始した。なお、1990年に、両国政府によって核物質計量管理機関(ABACC:Brazilian-Argentine Agency for Accounting and Control of Nuclear Materials)が設置された。上記の共同宣言に基づき、1991年1月に両国にあるすべての原子力施設と核物質のリストを交換し、共通計量管理システムの下での第1回査察を実施した。
さらに、ブラジル、アルゼンチン両国は1991年12月13日、ウィーンのIAEA本部で最終的にフルスコープ保障措置協定に調印した。同協定は、アルゼンチン、ブラジル、IAEA、ABACCの4者の間で結ばれ、両国内のすべての原子力活動にかかわる全核物質、及び核物質の輸出に対して、IAEAによる保障措置が適用される。
ブラジルは1998年7月13日、核不拡散条約(NPT)と包括的核実験禁止条約(CTBT)を批准し、F.カルドーゾ大統領が署名した。同国の批准により、NPT条約国は187カ国、CTBT条約国は16カ国となった。
ブラジルは、アングラ1号機を例外とすれば、主に旧西ドイツとの原子力協力協定(1975年発効)に基づく国際協力によって原子力開発を進めてきた。同協定は最初の15年間の協定期限が切れたものの、自動延長されている。ドイツとの協定には、核燃料サイクルと原子力発電全般にわたる幅広い分野での協力及び技術移転が明記されている。
ブラジルはドイツのほかに、ロシア、アメリカ、アルゼンチン、チリ、ペルー、イギリス、中国等とも原子力協定を結んでいる。1994年9月に、ブラジルとロシアは原子力の平和利用に関する協力協定に調印した。両国は、基礎研究、制御熱核融合、研究炉、放射性同位元素(RI)の製造、放射線防護、及び原子力安全の各分野で協力することになった。また、ブラジルとロシアは2000年7月、原子力発電の開発、特に小型炉の建設について協力する協定を新たに結んだ。また、ブラジルは2010年5月にトルコ、イランとの間で研究炉向けの核燃料の交換協定を締結している。
日本との原子力協力協定については2014年現在、締結交渉が継続中となっている。
(前回更新:2003年1月)<図/表>