<大項目> 海外情勢
<中項目> 中南米各国
<小項目> ブラジル
<タイトル>
ブラジルの核燃料サイクル (14-08-03-03)

<概要>
 ブラジルは、国内に豊富なウラン資源を有している。しかし、ウラン濃縮設備が不十分で、運転中のアングラ原子力発電所1号機と2号機の燃料は、国内だけで賄うことができず海外から輸入している。
 リオデジャネイロ州レゼンデのウラン濃縮施設は国産技術による遠心分離法を採用して建設された。同プラントは、2002年12月からブラジル原子力産業会社(INB)により、第1ステージ(115トンSWU/年)を運転、2006年5月から本格稼働している。第2ステージでは200トンSWU/年に設備容量が増強される予定で、将来的にはウラン燃料をすべて自給するとともに、海外への輸出を目指している。
<更新年月>
2015年03月   

<本文>
 ブラジルは旧西ドイツとの協力協定(1975年発効)に基づく積極的な国際協力によって原子力開発を進めてきた。同協定は15年間の協力期限が切れた後も自動延長された。ドイツとの協定には、核燃料サイクルと原子力発電全般を含む幅広い分野での協力及び技術移転が明示されている。ブラジルは現在原子力発電所の設計・建設・運転及び燃料製造等の核燃料サイクルの知識を有し、ドイツのほか、アメリカ、ロシア、チリ、ペルー、イギリス、中国等とも幅広い原子力協定を持っている。表1にブラジルの原子力発電所を示す。
1.ウラン資源
 ブラジルは豊富なウラン資源を持ち、ウラン探査は1970〜1980年代に始まった。これまでに国内の4分の1程度しか探査が行われていないにもかかわらず、世界第7位の埋蔵量が確認されている。今後の探査の進展とともに著しく増加することが予想されている。
 現在のウラン資源量(ウラン鉱床における資源量で276,700トンU)は、ブラジルの原子力発電所アングラ2号機(135万kW)級の大型PWR発電所30基を30年間運転するのに十分な量の燃料である。将来的にウラン採取技術、燃料利用効率が著しく改善されれば、ウラン資源の利用効率を大幅に向上することが可能であると期待されている。採掘コスト80ドル/kgU以下の確認埋蔵量(RAR)は約15.6万トンU、推定追加資源量(EAR-I)は約7.3万トンUが確認されている。ブラジルの主な鉱床はポソスデカルダス(Pocos de Caldas - CIPC)、ラゴアレアル(Lagoa Real)、イタタイア(Itataia)である。図1に主な鉱床・鉱区を、表2にウラン鉱山の操業状況を示す。
 ポソスデカルダス鉱山の製錬所(360トン/年)は1982年〜1990年の間に合計846トンUのウラン精鉱を生産したが、生産コストが高すぎるため、1990年に生産を休止した。1993年末に生産を再開、1995年10月まで運転を継続し、合計1,030トンUのウラン精鉱を生産して1997年に閉鎖された。1999年からは同製錬所に替わって、容量340トンU/年のラゴアレアル精練所が商業用燃料サイクル事業を担うブラジル原子力産業会社(INB:Industrias Nucleares do Brasil)によって稼働されている。
2.転換・燃料加工・濃縮
 リオデジャネイロ州レゼンデ(Resende)にウラン転換、濃縮、再転換、成型・加工を含む核燃料サイクルセンターが1977年から建設され、原子力委員会(CNEN)の原子力技術開発センター(CDTN)が研究を行っている。また、1980年代初頭からブラジル海軍がウラン濃縮を中心に強力に原子力研究開発を推進してきた。主な原子力関連機関の所在地図を図2に示す。
 転換施設としては、サンパウロ(Sao Paulo)にU3O8からUF6に転換する90トンHM/年のパイロットプラント(1984年〜1993年)が、2000年からはUF6からUO2ペレット及びUO2粉末を製造する120トンHM/年のFabrica de Combustivel Nuclearが運転中である。また、レゼンデにはU3O8からUF6に転換する500トン/年の工場を2015年6月の完成を目指して建設中である。ブラジル海軍技術センター(CTMSP)はサンパウロ州イペーロにあるアラマール(Ipero、ARAMAR)で、UF6転換工場のパイロットプラント(処理能力40トンHM/a)を2012年に完成した。
 ブラジル国内のアングラ原子力発電所の燃料製造を目的とした濃縮施設は、レゼンデ(Resende)に建設中である。第1ステージとして4モジュール、処理能力120トンSWU/年の施設が2002年12月に完成している。ブラジル原子力産業会社(INB)はウラン濃縮工程を従来、海外に依存していたが、この工場の稼働により全濃縮工程の約95%が国内で行なわれ、年間およそ1,300万ドル(約15億6,000万円)の費用節減が見込めるという。同工場は1億4,000万ドル(約167億円)の費用をかけて建設され、第2ステージは200トンSWU/年に、最終的には350〜400トンSWU/年に段階的に拡張する予定である。アングラ1号機は年間115トンSWU、2号機は年間200トンSWUの濃縮サービスを必要とする。INB社は2014年までにアングラ1、2号機の燃料の80%を自給し、2018年を目処にアングラ3号機も含めた燃料の完全自給と輸出を図るとの計画を発表している。
 1975年当初、ブラジルはドイツとの原子力協定で、合弁会社NUCEIを設立。ジェット・ノズル法による500トンSWU/年規模のパイロットプラントを建設する計画であった。しかし、技術的なトラブルに加えて、1988年の原子力機構改革の結果、ジェット・ノズル法による濃縮計画は実質的に棚上げとなった。その代わりに、ブラジル海軍が原子力潜水艦用燃料の製造を目的に開発した遠心分離法が採用されることになった。その後、サンパウロ州の原子力エネルギー研究所(IPEN)、サンパウロ大学(USP)とブラジル海軍技術センター(CTMSP)が協力して独自に技術開発を進めてきたが、その技術はURENCO(英国、オランダ、ドイツが創設したウラン濃縮会社)の遠心分離法に類似しているといわれている。
 イペーロにあるアラマール試験場では、濃縮パイロットプラントとして1998年からBRF濃縮パイロットプラント(処理能力4トンSWU/年、235Uを1.2%から5%へ濃縮)、BRF濃縮パイロットプラント(処理能力5トンSWU/年、235Uを4.9%から19.9%へ濃縮)が運転されている。アラマールで生産された濃縮ウランは、IPEN、IEN(原子力工学研究所)、CDTNに送られ、実験炉用燃料として利用される。
 燃料加工施設としては、シーメンス社が1976年から1983年にかけて、アングラ1号機用取替燃料の供給に十分な容量(100トン/年)を持つ燃料棒及び燃料集合体組立工場(145体/年)をレゼンデに建設した。現在では240トン/年に拡張されて、ブラジル原子力産業会社(INB)により運転中である。
3.再処理
 IPENはサンパウロに再処理研究施設を持ち、1982年〜1993年まで使用していたが、現在は再処理についての明確な政策はない。
4.放射性廃棄物処分
 放射性廃棄物の管理、最終処分の責任はCNENにあるが、高レベル廃棄物の処分計画は現在のところない。
 アングラ発電所からの使用済燃料は現在発電所内のプールに貯蔵されている。また、ポソスデカルダスのウラン鉱山や製錬工場からの廃棄物は、敷地内にダムの形で保管している。研究機関や医療、工業利用による放射性廃棄物は、研究所に貯蔵されている。1987年9月に発生したゴイアニア市でのセシウム137盗難による放射線被ばく事故に関連した放射性廃棄物は、ゴイアス州アバディアの特別処分場に貯蔵されている。
(前回更新:2005年1月)
<図/表>
表1 ブラジルの原子力発電所
表2 ブラジルのウラン鉱山の操業状況
図1 ブラジルのウラン鉱床/鉱区と原子力発電所
図2 ブラジルの主な原子力関係機関の所在地図

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<関連タイトル>
ブラジルの原子力開発体制 (14-08-03-01)
ブラジルの原子力発電開発 (14-08-03-02)
ブラジル国ゴイアニア放射線治療研究所からのセシウム137盗難による放射線被ばく事故 (09-03-02-04)

<参考文献>
(1)Industrias Nucleares do Brasil(INB)ホームページ
(2)「原子力年鑑」編集委員会:原子力年鑑 2015 (2014.10)、ブラジル、p.200-202
(3)OECD・NEA/IAEA:URANIUM2011(2012).Brazil. P.159-168
(4)IAEA:Integrated Nuclear Fuel Cycle Information Systemsホームページ
https://infcis.iaea.org/
(5)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編 2014年版(2014年1月)、p.289−310
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