<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ブルガリア
<タイトル>
ブルガリアの核燃料サイクル (14-06-06-06)

<概要>
 ブルガリアは、自国の需要を賄える量のウラン資源を保有しているが、ウラン産業が大幅な赤字を抱えていることから、政府はすべてのウラン鉱山とウラン製錬会社の閉鎖を決定し、1994年にすべての生産を中止した。再処理はブルガリア−旧ソ連間の契約に基づき、1988年までロシアで行われていた。ロシアは1994年6月にコズロドイ原子力発電所5、6号機(VVER-1000×2基)、1995年3月に同1〜4号機(VVER-440×4基)からの使用済燃料の再処理に同意した。コズロドイでの高レベル廃棄物乾式貯蔵施設建設の入札がブルガリア国有電力公社(NEC)により1996年2月に行われた。ブルガリアは2006年に、ロシアとウクライナ政府によりコズロドイ原子力発電所に新燃料を供給し、その使用済燃料を原子力発電所からロシアにある処理プラントまで輸送するという協定に署名した。
<更新年月>
2010年03月   

<本文>
1.ウラン資源
 ブルガリアの探鉱および生産活動は1946年から1994年まで在来法および浸出技術の両方を用いて実施してきたが、1992年に政府は経営破綻を理由に、ウラン生産活動の終了とウランの生産および処理サイトの整理を命じた法令第163号を成立させ、1994年にすべての生産を中止した。1994年の法令第56号により、地域の原状回復を行う包括的な計画の実施に関する規則および規制が制定され、生産施設の解体のほか、技術的・生物学的なリクラメーション(生物学的修復、鉱山および地表流水の浄化、モニタリング)が実施されている。ほぼ50年間の操業中に16,720tUが生産され、残存資源量は確認資源(RAR)で7,930tU、推定追加資源(EAR-I)で8,400tUと推定されている。また、ドイツのウラン売買会社であるNUKEM社は、将来確実なウラン生産能力を700t/年と予測していた。鉱石処理プラントはブホボ(Bukhovo:ソフィアの北東20km)とエレシュニッツァ(Eleshnitza:ソフィアの南120km)の2ヵ所で運転されていた。
2.ウラン濃縮・燃料の成型加工
 ブルガリアのウラン濃縮および燃料の成型加工はすべて旧ソ連に依存しており、その後ロシアに移行しても、契約体制そのものに変更はない。
 ブルガリア国有電力公社(NEC、ブルガリア語ではNEK)は1993年3月にロシアとの間で燃料供給に関する5ヵ年契約を調印し、ハードカーレンシ(流通硬貨:他国でも流通する通貨、例えば米ドル)で支払うことになった。1995年6月の算定では、コズロドイ原子力発電所の濃縮ウラン購入費用は3,200万ドルとされている。その結果、コズロドイ原子力発電所4、5号機用の燃料は、ウクライナを経由して1995年10月末にはロシアからブルガリアに輸送され、同発電所3号機用の燃料は一時ルーマニアに保管されたものの、12月初めには到着した。ロシアからの燃料は従来ドナウ川で輸送されていたが、1996年6月に2号機用燃料が初めて空輸された。
 また、NECは1996年8月に、6号機用燃料の製造費3,200万ドルのうち1,200万ドルを支払ったが、NEC支払額2,000万ドルの銀行保障をロシア側が望んだことから、5号機用の燃料供給が遅延したと報じられている。
 ロシア原子力省は1996年12月、借款によるブルガリアへの燃料供給に同意している。この借款の支払いは、ブルガリアから外国への27億kWhの電力輸出により得られる収入で行われる。
 表1にブルガリアの原子力発電所一覧を示す。また、図1にブルガリアおよび周辺原子力発電所マップを示す。
3.コズロドイ原子力発電所の核燃料サイクル完結
 ロシアとウクライナ政府が承認した「コズロドイ原子力発電所に新燃料を供給し、その使用済燃料を原子力発電所からロシアにある処理プラント(processing plant)まで輸送する」という協定に、ブルガリアは2006年3月16日に署名した。使用済燃料がウクライナを通過することについては、2006年4月27日にブルガリア、ウクライナおよびロシア間で協定書が交わされた。これにより、コズロドイ原子力発電所の使用済燃料処理に目処がつき、核燃料サイクル完結が保証された。
4.使用済燃料のロシアへの輸送
 ブルガリア−旧ソ連間の契約に基づき、コズロドイ原子力発電所から発生する使用済燃料は1979年から1988年まで、21回にわたって再処理のために旧ソ連(シベリア西部にあるマヤック(Mayak)再処理工場)へ送られた。しかしこの契約の満了に伴い、VVER発電炉(44万kW)4基からの使用済燃料はサイト内で貯蔵されている。
 ロシアは1993年に、1,000ドル/kgの条件で使用済燃料の再処理受託案を示した。これに対し、ブルガリア・エネルギー委員会はコズロドイ原子力発電所付近に使用済燃料貯蔵施設の建設を行うとした。ロシアは1994年6月にコズロドイ原子力発電所5、6号機からの使用済燃料の再処理受託に同意したが、同1〜4号機の燃料については受入を拒否した。しかし、その後の協議を通じて1995年3月に、640ドル/kg、総額1,870万ドルで契約することで合意に達し、1998年9月にモルドバ共和国を経由してマヤック再処理工場へ輸送された。その後、2006年4月には、ウクライナ、ブルガリア、ロシアの政府間で、コズロドイ原子力発電所の使用済燃料をウクライナ経由でロシアに移送する契約が結ばれた。なお、コズロドイ原子力発電所に装荷する新燃料の輸送に関しては、ブルガリア・エネルギー委員会は1994年11月にモルドバ共和国がブルガリア向けのロシア製燃料輸送に同意したこと、また、ウクライナとの間で、ウクライナ領土を通過する燃料に関する長期協定を交渉すると報じた。
 さらに、1996年6月にウクライナ、ロシア、ブルガリアの3カ国は、ロシア製燃料をウクライナ経由でコズロドイ原子力発電所へ鉄道輸送する協定に調印した。モルドバ共和国とルーマニアがこの輸送に同意しなかったが、1996年9月にルーマニアは2001年9月まで領土内の通過を認めた。
5.使用済燃料の貯蔵と処分
5.1 使用済燃料の貯蔵
 ノヴィハン(Novi Han)使用済燃料中間貯蔵施設は、IAEA(国際原子力機関)の安全基準を満たさなかったため、1994年に閉鎖され、ソフィアにあるブルガリア科学アカデミー原子力研究所内で貯蔵していたが、1997年9月に270万ドルをかけて施設を改修することになった。
 改修に関しては、ブルガリアの原子力安全規制当局である原子力平和利用委員会が、すでに3つのプロジェクトに対して融資を行っている。前段階の技術的課題、安全性についての技術的分析、危機管理および使用済燃料管理は、ブルガリア科学アカデミー原子力研究所によって行われた。
 安全性、危機管理については、1997年6月に、ドイツのヘルマン社、キルヒゼーオン社がポーランド・ハンガリー経済復興援助プログラム(PHARE)の一環として、ブルガリア環境省に放射能監視システムRalloを提供した。
5.2 ブルガリアに最終処理施設の建設
 コズロドイ原子力発電所で発生する放射性廃棄物については、固体は圧縮減容、液体は濃縮してセメント固化され、ドラム缶または鉄筋コンクリート容器に入れて、それぞれの原子力発電所敷地内に保管されているが、2004年6月に、ドイツのRWE社が使用済燃料の最終処理施設の建設契約をブルガリア政府と締結した。
(前回更新:1999年3月)
<図/表>
表1 ブルガリアの原子力発電所一覧
図1 ブルガリアおよび周辺原子力発電所マップ

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<関連タイトル>
ブルガリアの国情およびエネルギー、電力事情 (14-06-06-01)
ブルガリアの原子力政策および計画 (14-06-06-02)
ブルガリアの原子力発電開発 (14-06-06-03)
ブルガリアの原子力開発体制 (14-06-06-04)
ブルガリアの原子力安全規制体制 (14-06-06-05)
ブルガリアのPA動向 (14-06-06-08)
コズロドイ原子力発電所(ブルガリア)のIAEAによる安全調査 (14-06-06-09)

<参考文献>
(1)米国エネルギー啓発協議会:「ソースブック−旧ソ連、チェコ・スロバキア、ハンガリーおよびブルガリア」1992年
(2)「データファイル・ブルガリア」ニュークリア・エンジニアリング・インターナショナル誌1992年11月号
(3)Source Book Soviet-Designed Nuclear Power Plants in Russia, Ukraine, Lithuania, Armenia, the Czech Republic, the Slovak Republic, Hungary and Bulgaria 1997 NEI
(4)OECD・NEA/IAEA, PNC東濃地科学センター技術開発課(訳)、「ウラン:資源・生産・需要」CD版、1997年発行
(5)日本原子力産業会議:原子力年鑑 1998/1999年版(1998年)
(6)(財)原子力安全研究協会:旧ソ連、中・東欧諸国 原子力ハンドブック、1997年3月、p.201-219
(7)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2010年版(2009年)
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