<大項目> 海外情勢
<中項目> 旧ソ連・東欧各国
<小項目> ブルガリア
<タイトル>
コズロドイ原子力発電所(ブルガリア)のIAEAによる安全調査 (14-06-06-09)

<概要>
 国際原子力機関(IAEA)は1990年秋、同11月、そして1991年6月の3回にわたり、ブルガリアのコズロドイ原子力発電所を対象に設計や運転などのレビューを行った。その結果、安全意識の欠如や発電優先主義などのセーフティカルチャーに係わる欠陥を初め、プラント設計面でも著しい欠陥が発見された。そのためIAEAは、ブルガリア政府当局に対して、同発電所1〜4号機の即時運転停止を要求した。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.1990年秋のIAEA/OSARTによるコズロドイ調査
 1990年秋、コズロドイ5号機を対象に、国際原子力機関(IAEA)の運転安全審査チーム(OSART)による限定的範囲の現地調査が実施され、運転、メンテナンスおよび技術支援活動に関する調査が行われた。この調査の結果、管理体制(運転・安全規則体制)およびプラントそのものの改善でも変更が必要とされる問題点がいくつか指摘された。OSARTの勧告には以下の項目が含まれている。
(1) 専門家の補充と彼らのプラントでの労働および生活条件の向上のための努力が必要なこと。
(2) コズロドイ発電所の管理層の不必要な官僚主義を排除すること。
(3) 組織機構をより簡素に、より効率化すること。
(4) 情報提供に関して「オープンドア」方針を拡張すること。
(5) プラント状態の管理、労働管理および文書管理を改善すること。
(6) 二次系側設備の材料の状態を強化すること。
(7) 非破壊試験設備を増強すること。
(8) 監視プログラムと運転経験のフィードバックを改善すること。

2.1990年11月のIAEA/ASSETによるコズロドイ調査
 ブルガリア政府の招きにより、IAEAの重要安全事象解析チーム(ASSET)は、1990年11月12〜13日にかけて、コズロドイ原子力発電所を調査した。この目的は、同発電所の事象防止対策と長期安全運転計画の有効性を評価することにあった。ASSETの評価の結果、いくつかの懸念事項が確認されるとともに、より信頼性の高い事象防止に向けたいくつかの必要な措置が勧告された。
 安全性に対する懸念は、次の領域において指摘された。
(1) 火災の未然防止および火災発生に関する建物内の維持管理上の問題
(2) 火災からの保護
(3) 火災影響の緩和
(4) ヒューマンエラーの防止
(5) ヒューマンエラーからの保護
(6) ヒューマンエラーによる影響の緩和
(7) 過度の被曝の防止
(8) 過度の被曝に対する防護
(9) サイト安全管理に関する責任
(10)プラント運転上の安全に係わるすべての事象を規制当局(原子力平和利用委員会)に報告する必要性
(11)規制当局の駐在主任検査官の権限をより明確にする必要性
(12)監視活動および組織の適切化
(13)あらゆる運転上のトラブルの根本原因分析と矯正措置の実施方法

3.1991年6月のIAEA/SRMによるコズロドイ調査
 IAEAはVVER−440(230型)全体を対象にした評価プロジェクトの一環としてコズロドイに安全調査チーム(SRM)を派遣し、設計および運転の評価を行った。この結果、次のような運転上の懸念が指摘された。
(1) プラントおよびプラント設備の物理的、材料上の条件が許容レベルに達していない。
(2) 安全意識の欠如と発電優先の意識がある。
(3) 労働上の安全向上意欲が欠如している。
(4) 規制当局の検査計画が非効率的である。
(5) 訓練計画が極度に不適切である。
(6) 運転手順書および緊急時手順書が不十分である。
(7) 品質管理がほとんど、あるいは全く欠けている。
(8) 保修基準のレベルが不十分である。
(9) 建物内の維持基準および清浄基準が全く不十分である。
(10)労働対価が不十分である。
また、プラント設計上の懸念として以下のような点が指摘された。
(1) 炉心設計に関する情報の欠如
(2) 炉心中性子束検出装置の欠如
(3) 機器の健全性に関する情報の欠如
(4) 原子炉圧力容器の脆弱程度に関する不明確さ
(5) 電気および計装・制御系の冗長性が不十分
(6) 電気および計装・制御安全設備の分離が不十分
(7) 環境設備に対する品質保証の不在
(8) 高い封じ込め系からの漏洩率
(9) 不十分な事故分析
(10)解析済みの事故に対処するための設備および系統の不十分さ
以上のように指摘されたコズロドイ発電所の欠陥は重大なものであり、このためブルガリア政府当局に対し、まず初めにIAEAのモリス・ローゼン原子力安全部長、続いてブリックスIAEA事務局長やその他のIAEAの幹部がコズロドイにあるVVER−440(230型)全4基の即時運転停止を要求した。
<関連タイトル>
ブルガリアの国情およびエネルギー、電力事情 (14-06-06-01)
ブルガリアの原子力政策および計画 (14-06-06-02)
ブルガリアの原子力発電開発 (14-06-06-03)
ブルガリアの原子力開発体制 (14-06-06-04)
ブルガリアの原子力安全規制体制 (14-06-06-05)
ブルガリアの核燃料サイクル (14-06-06-06)

<参考文献>
(1) 米国エネルギー啓発協議会「ソースブック−旧ソ連、チェコ・スロバキア、ハンガリーおよびブルガリア」1992年
(2) 「データファイル・ブルガリア」ニュークリア・エンジニアリング・インターナショナル誌1992年11月号所収
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