<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> EU
<タイトル>
EUの放射性廃棄物管理に関する世論調査およびPA (14-05-15-05)

<概要>
 欧州連合(EU)の原子力発電は、EU域内の総発電電力量の1/3以上を供給している。EUは、原子力利用を進める上で、放射性廃棄物の問題解決が重要な課題として、放射性廃棄物に関して、公衆への情報提供および意思決定プロセスでの公衆参加に関する検討を進めてきた。2005年2月〜3月、25の欧州連合メンバー国24,708人を対象に原子力と放射性廃棄物についての世論調査が行われ、前回2001年10月〜11月の15の欧州連合メンバーに行われた世論調査との結果とも比較検討した。
 世論調査結果では、公衆が放射性廃棄物に関する知識が希薄なため、放射性廃棄物の存在を懸念し、ひいては原子力産業への不信に繋がるとしている。今後、原子力関連施設から出る非汚染物質のリサイクルを推し進め、最終処分場建設を決定するなど、課題は多く、公衆への十分な情報提供は欠かせないとしている。また、欧州連合内で協調性のある政策がとられるよう、監督・指導することが欧州委員会に求められている。
<更新年月>
2005年10月   

<本文>
1.世論調査(EB63.2)
 原子力と放射性廃棄物についての世論調査が2005年2月9日〜3月20日の間、25の欧州連合(European Union:EU)メンバー国24,708人を対象に実施された。
 欧州委員会(EC)は、すでに1998年に第1回調査(EB50)を、2001年10月〜11月に第2回調査(EB50−2)を、15の欧州連合約16,000人を対象に、放射性廃棄物に関する世論調査を行っている。今回の調査(EB63.2)は2004年5月以降、25か国拡大EUとして初めての原子力と放射性廃棄物についての世論調査である。世論調査は(1)放射性廃棄物や原子力に関する情報提供レベル、(2)放射性廃棄物のリスク、(3)放射性廃棄物の管理、(4)高レベル放射性廃棄物の最終処分、(5)放射性廃棄物の欧州規模の管理について行われた。
1.1 放射性廃棄物や原子力の情報提供レベル
 放射性廃棄物や原子力の情報提供レベルは、ほぼ4分の3の回答者が不十分と感じている。よく知らされていると感じる人は、4年前の調査より4ポイント増加した(図1参照)。情報の満足度は、比較的男性に多く、40歳以上、教育水準が高く、政治に関心があり、行政職や管理職、都市に住んでいる人にその傾向が見られる(表1参照)。
 国別の情報提供レベルは、スウェーデン(51%)、スロベニア(46%)、フィンランド(43%)が高く、ポルトガル(15%)とスペイン(15%)、イタリア(16%)、ギリシャ(16%)が低い。EU平均は25%である。
 また、放射性廃棄物に関して質問を行った(図2参照)。その結果、回答者の8割が放射性廃棄物は全て危険とみなしており、7割が研究所や病院でも発生すること、放射性廃棄物にもレベルがあることを知っている。放射性廃棄物の知識は、原子力に無関係な施設での廃棄物の発生が66%、原子力施設以外での高レベル廃棄物の発生が35%、放射性廃棄物と他の危険物の発生量は同程度が37%となっている。EU平均の正解率は53%で、18%がわからないと答えた。
 国別にみると、正解率はスェーデン(65%)、ベルギー(64%)、スロベニア(64%)、フィンランド(62%)、オランダ(61%)とチェコ(60%)が高く、原子力に馴染みのないキプロス(42%)、マルタ(41%)、ポルトガル(40%)は低い。リトアニア(39%)は国内電力の80%を原子力発電で賄っているにもかかわらず、低い。
 原子力発電へ賛成または比較的賛成が37%であり、反対、比較的反対が55%に達する。賛成は男性が49%であるが、女性は17ポイント低い。知識の普及が、原子力産業への不信感を一掃できるものとしている。
 国別ではハンガリー、スウェーデン、チェコおよびリトアニアで6割を超える。それぞれ原子力政策は様々で、スウェーデンでは40年間脱原子力政策をとり、チェコでは発電所建設中である。一方、オーストリアでは88%、スペインでは71%、イタリアでは66%の人たちが原子力に反対している(図3参照)。
 原子力政策をとることで、エネルギーの多様化が可能(62%)、石油の使用量を減少できる(61%)と考えられている。また、62%が炭酸ガス排出削減に石油や石炭より効果があるとしている(図4参照)。これは4年前と比べると21ポイントも増加している。
1.2 放射性廃棄物のリスク
(1)低レベル放射性廃棄物の輸送に関するリスク
高い(29%)、比較的高い(42%)、低い(23%)、全くない(2%)、わからない(3%)
(2)低レベル放射性廃棄物の貯蔵に関するリスク
高い(30%)、比較的高い(44%)、低い(21%)、全くない(1%)、わからない(4%)
(3)放射性廃棄物処分場に関するリスク
環境や健康への何らかの影響(53%)、操業中の放射性物質のリーク(28%)、処分場への廃棄物輸送(7%)、テロリストからの攻撃(4%)、資産価値の下落(3%)、なし(2%)、その他(1%)、わからない(2%)
(処分場建設および操業にあたり、第3者的機関の介入を回答者の59%が望んでいる。)
1.3 放射性廃棄物の管理
(1)原子力関連施設からの汚染されていない物質のリサイクル
OK(14%)、たぶんOK(33%)、たぶんNG(23%)、絶対NG(21%)、無回答(10%)
(リサイクル製品によって受容度のパーセンテージは異なる。)
(2)放射性廃棄物処分について
自国内の放射性廃棄物処分に関して質問した(図5参照)。
 放射性廃棄物処分に関して、一時貯蔵される(66%)や、比較的危険性の少ない放射性廃棄物は固化し、ドラム缶に詰められる(56%)は比較的知られているが、最終処分場は国外(52%)や海洋投棄(35%)などと考えられており、処分場に関する知識は不足している。EU全体で見ても正解率は44%で、誤答が35%、わからないが22%となっている。
 国別に見るとスロベニアが65%、フィンランドとスウェーデンが58%、ベルギーとドイツが53%で正解率が高いが、ポルトガルとアイルランドの正解率は30%、スペインは32%と低く、その上ポルトガルは41%の人がわからないと答えた。
(3)情報源の信頼度
 回答者の自国の放射性廃棄物管理情勢について、何が信頼できる情報源であったかを判定した(図6参照)。最も信頼の高い情報源は、環境保護団体などのNGO(非政府組織)(39%)と独立科学者(38%)である。
 この傾向は2001年度の調査から表れていたが、今回はNGOが8ポイント、科学者が6%、それぞれ上昇した。IAEAなどの国際機関(30%)も8ポイント上昇した。一方、政府(19%)、メディア(13%)が10ポイント減少した。
1.4 地層処分に対する公衆の考え方
 高レベル放射性廃棄物の最終処分は、現在それぞれの国で検討中で、結論は出ていないことに対しての考え方を調べた(図7参照)。まず、放射性廃棄物の問題は先延ばしにすべきではないとする考え方は92%で、その中で現段階で考えるべきだという意見が73%と圧倒的多数である。
 しかしながら回答者の8割が安全な処分方法が見出せず、処分方法の政策的不透明性を指摘している。長期間の高レベル廃棄物の深地層処分を適切とする意見は45%であるが、反対は38%、わからないは17%であった。
1.5 放射性廃棄物の欧州規模の管理について(図8参照)
 この質問は、各国が独自の設備を持つことが前提である。回答者の91%が廃棄物管理の手法を確立すべき時期が来ていることを認識しており、放射性廃棄物の影響は他国にも及ぶことから、欧州連合全体に亘って、協調性と一貫性を持った手法の必要性を感じている。89%が欧州連合の指導力の関与を要求している。
1.6 結論
 世論調査結果では、公衆が放射性廃棄物に関する知識が希薄なため、放射性廃棄物の存在を懸念し、ひいては原子力産業への不信に繋がるとしている。一般的ヨーロッパ人の放射性廃棄物および管理に関する知識を拡充するには、第3者的な信頼できる団体からの十分な情報提供が欠かせないとしながら、2001年の調査と比較しても4ポイントしか情報提供レベルは改善されず、回答者の4分の3の人たちが不満を覚えている。
 今後、原子力関連施設から出る非汚染物質のリサイクルを推し進め、最終処分場建設を決定するなど、課題は多く、公衆への十分な情報提供は欠かせない。また、放射性廃棄物は自国内で責任を持って処分することが前提であるが、欧州連合内で協調性のある政策がとられるよう、監督・指導することを欧州委員会に求めている。
2.情報提供と公衆参加に関するヨーロッパの法整備
2.1 環境アセスメントによる情報提供と公衆参加
 欧州委員会指令(97/11/EC)では、従来の環境影響評価(EIA)に放射性廃棄物の処分、原子炉廃止措置を対象として加え、2001年に計画段階(計画採用前または許可手続き前)で、環境への影響評価を行い、かつ環境報告書を公開する旨の戦略的環境評価(SEA)指令(2001/42/EC)が発行されている。環境報告書は、認可手続き前に環境防護当局と公衆、隣接加盟国等が利用可能にすべきであるとしている。
2.2 「情報提供と意思決定への公衆参加、および環境事項への公平なアクセスに関する条約」の採択
 1998年6月、国連欧州経済委員会(UNECE)において「情報提供と意思決定への公衆参加、および環境事項への公平なアクセスに関する条約」が採択された。この条約は国および地方レベルの行政側が公衆に対し、
(1)環境情報へアクセスする権利(当局の環境実施策、実施された措置情報の公開など)
(2)環境に関わる意思決定の初期段階から参加する権利(市民や環境団体が環境の面から計画に対し意見提案が可能であり、またそれが意思決定に反映可能であること。当局の最終決定した情報およびその理由の開示など)。
(3)環境事項に関する公平なアクセスの権利(上記の権利行使以外での公衆の意思決定の申立てをする権利)。
以上の権利が効果的に行われるよう努めるべきとしている。
<図/表>
表1 放射性廃棄物の情報伝達レベルの回答の内訳
図1 放射性廃棄物の情報はよく知らされていると感じますか?
図2 放射性廃棄物に関する質問
図3 原子力発電で電力をつくることに賛成ですか?
図4 原子力は石油や石炭などのエネルギーより炭酸ガスの排出削減に効果がある?
図5 自国の放射性廃棄物の処分方法について
図6 自国の放射性廃棄物に関する情報源の信頼度
図7 ほとんどの国で高レベル放射性廃棄物の最終処分の方法が決定されていないことに関して
図8 欧州連合各国の放射性廃棄物の管理責任について

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
欧州連合における環境対策 (01-08-01-17)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分の概要(1)−仏、英編− (05-01-03-07)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(2)−ベルギー、スイス、カナダ編− (05-01-03-08)
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(4)−独、スウェーデン、フィンランド編− (05-01-03-17)
欧州連合市民と放射性廃棄物 (10-05-04-01)
欧州連合市民とエネルギー問題 (10-05-04-02)

<参考文献>
(1)Europeans and Radioactivewaste INRA(Europe)European Coordination Office,19 April 2002,
(2)Europeans and Radioactivewaste INRA(Europe)European Coordination Office,29 January 1999,
(3)Special EUROBAROMETER 227/Wave 63.2−TNS Opinion & Social“Radioactive waste“,September 2005,
(4)(財)原子力研究バックエンド推進センター:RANDECニュース No.64、16−17(Mar.2005)
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