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このEurobarometerの放射性廃棄物に対する公衆の認識と態度の調査が、2001年10月13日〜11月19日の間に、
表1に示す15の欧州連合(European Union:
EU)メンバー国で、ほぼ16,000人の人々にインタビューして実施された。この調査の結果と1998年の調査結果を、この分野の理解と意見の分布に顕著な変化があるかどうか、必要に応じて比較してある。示される割合は、意見を表した人数に対してではなく、調査した全サンプルに関するものである。[知らない]の数が多い所では、実際に意見を表した人々の割合とした場合もある。以下の表で、ドイツとあるのは統一ドイツ、連合王国はイギリスと北アイルランドである。また、欧州連合の値は人口(
表1)を荷重とした平均である。
1.放射性廃棄物の情報のレベル
回答者が問題について[どの位よく知らされているか]から[全く知らされていない]までについて尋ねた(
表2)。男女間に差があり、一般に男性はよく知らされていると考えており、教育の水準の高い回答者も同様である。類似した傾向は、メディアに触れる機会の多い回答者にも認められる。
個々の国を比較すると、欧州連合平均の数字からの大きい変動がある。例えば、[全く知らされていない]のカテゴリーは、デンマーク(10%)、スウェーデン(12%)とフィンランド(16%)のような国と比較して、ベルギー(48%)、ポルトガル(47%)とスペイン(43%)の国の回答者との間に非常に大きい違いがある。
2.情報源の信頼度
この問題に関して、回答者の母国の情勢に関する場合とEUの他国の情勢に関する場合について、何が信頼できる情報源であったかを判定した(
表3)。
最も信頼の低い情報源は、原子力産業(10.2%)と欧州連合(11.0%)である。
各国の中で、スウェーデンではNGO(非政府組織)を最も信頼し(70.1%)、ポルトガルではNGOの信用は低い(19.1%)。イタリアでは、独立の科学者を信用することが少なく(15.7%)、デンマークでは、それを最も信じている(49.5%)。欧州連合と原子力産業は、広く同程度に信頼されている。欧州連合に関しては、反応はフィンランド(6.1%)からスウェーデン(19.9%)まで変動する。スウェーデンは、原子力産業に最大の信頼を置き(36.2%)、イタリア、オーストリアは最低である(4.4%)。
1998年の調査では、各国政府が最も信頼される情報源で(45.2%)、メディアがこれに続き(42.5%)、EUの環境省は22.0%に支持された。政党(10.8%)と他の情報源(3.8%)は、信頼が最も低かった。
今度の調査では、放射性廃棄物管理に責任がある担当機関は、スウェーデン(59.5%)で信頼されるが、スペイン(14.4%)では少ない。これらの機関は多くの国であまり知られていないかもしれない、また、そのような機関が実際に存在しなくても、他の国(例えばデンマークの45.5%)では、それらは信頼できるとみなされている。
3.放射性廃棄物に関する基礎知識
原子力発電所が放射性廃棄物を発生させるかどうか質問されたとき、ヨーロッパ人の91%は正解の[正しい]と思うを、2%は[間違い]を選び、6%は[確信がない]を選んでいる(
表4)。[知らない]が多いのは、ポルトガル(15%)とギリシャ(11%)である。
問題がより技術的になると、[知らない]が明らかに多くなってくる。例えば、69%の回答者は、病院が放射性廃棄物を発生させることを知っている。しかし、欧州連合全体に亘っては、[知らない](16%)、[発生させないと思う](15%)である。また、44%は、石油工業も放射性廃棄物を生産すると認識している、ほぼ3分の1(30%)は[知らない]と答えている。
[全ての放射性廃棄物は危険である]という設問が正しいかどうか質問されたとき、肯定的に答える人の割合は1998〜2001年の間に、79%から75%へわずかに減少した。正しく[no]と答えた人々は、この期間に10%から14%へ増加した。放射性廃棄物が他の危険な廃棄物の種類よりも、生産量が少ないかどうかの質問に、3分の1より多くの回答者が、[知らない]と答えた(37%)。約45%の回答者は、正しく[yes]と答えた。
1998年と今度の調査の中に現れた質問([病院は、放射性廃棄物を発生させるか]、 [放射性廃棄物は数種類あるか])では、感知できるような変化はなかった。
4.
高レベル放射性廃棄物処分施設の立地
この質問は、各国が自分の設備をもたなければならないかどうか、あるいは、地域の共有サイトが開発されなければならないかどうかに関連がある。
欧州連合に亘って全体として、全ての回答者の63%は、廃棄物の最も危険な分類の物を生産するヨーロッパの各国がそれ自身の処分サイトを開発する責任を持たねばならないという考えを肯定する(
表5)。しかし、これが最高の戦略であると信じた1998年の調査の75%と比較して、63%はかなりの減少である。
この同じ期間に亘って、地域的サイトの受入の増加は、EU12%から18%、[知らない]の同様の増加であった。ギリシャ、スペイン、フランス、アイルランドおよびポルトガルで地域的サイトへの支持は1998年の調査からほぼ2倍になり、[知らない]の数で同様な増加があった。
オランダのように、地域的サイトに最も多く賛成している国では、国独自の戦略の支持者は、絶対多数ではなかった。1998〜2001年の間で、[知らない]の数の相当な増加が、スペイン(14%から24%へ)とポルトガル(12%から26%へ)で顕著である。最も高い数値は、アイルランド(1998年の27%に対し34%)で表われている。
一般に調査を通してスペインとポルトガルでは[知らない]の数は平均値よりかなり高いことに注意されたい。
5.高レベル放射性廃棄物の処分の停滞
1998年の調査では、回答者に何故どの国も高レベル放射性廃棄物を処分することができなかったかの理由に関連した4つの[yes/no]の質問をした。大部分の回答者の意見が一致した理由(回答者の83%が選んだ)は、そのような処分の実施が政治的に不評判だったということであった。4分の3は、別の理由として単にこの廃棄物を処分する安全な方法がなかったということと信じていた。
3年後の今度の調査では、回答者は、前回と異なりこれらの3つの理由のうちの1つを選ぶよう求められた(
表6)。
欧州連合を通して14%は、何故どの国もまだ廃棄物の処分をしていないかについて意見を持っていない。しかし、この平均の数値は、スウェーデンで4%からポルトガルで34%まで、国毎に広く変動している。
[政治的に評判が悪い]と[オプションと
リスクの評価]のカテゴリーは、それぞれ回答者のおよそ20%が選択している。しかし、46%は、何故最も危険なカテゴリーの放射性廃棄物の処分が実施されないかの理由は、単に安全な方法が存在しないからと信じている。
6.地下処分場の近隣に関する公衆の不安
1998年と今度の調査で、回答者は放射性廃棄物の処分場が近隣に設置されることに関して、彼らの不安について尋ねた。1998年の調査では複数回答形式をとったが、今度の調査は最も重要な不安だけについて尋ねた。
1998年に最も不安が多かった問題は、健康(74%)と地域の環境への影響(71%)で、長期の危険(67%)もまた、非常に重要であった。
今度の調査は、サイトが運転するときの漏れの危険(39%)と、将来の世代(すなわち数千年も後の)に対する長期の危険(38%)への不安を浮き彫りにしたが、いずれも実質的に同等と考えられる(
表7)。
欧州連合平均で11%だけが廃棄物輸送の危険に関心があり、フィンランド(19%)とスウェーデン(25%)は両方とも、サイト運転と関連した短期の危険よりも重要としている。地方の財産価値の大きな下落は、ほとんど関心(3.5%)がないと見られる。
7.現在の
低レベル廃棄物の処分プログラム
調査では、回答者に自国が実施する低レベル廃棄物や短寿命廃棄物の処分方法について聞いた。これも1998年の複数回答形式と異なり、1つだけ選択肢を選ぶよう求めた。
英国、フランス、スペイン、スウェーデンとフィンランドでは、浅地層処分サイトへの埋設が最も共通の処分法である。この方法は、上述の国だけで実施されているが、当面、EUにおいて、多量の廃棄物に使われる共通の方法である。他の全て国(多分ルクセンブルクを除いて)では、現在、実施されている一時的な貯蔵が管理戦略である(
表8)。
1998年の調査から3年間にいくつかの国の[知らない]の増加は相当大きい。ポルトガル(34%から50%へ)、アイルランド(29%から42%へ)、イタリア(27%から42%へ)とスペイン(31%から42%へ)である。
8.自国と外国の放射性廃棄物管理への不安
回答者は、他のEU諸国、そして、欧州連合に参加したいと思う中央欧州・東欧諸国での放射性廃棄物の管理に対する不安を判定するように求められた。
EU全体で回答者の国で試されている
放射性廃棄物処理・処分の方法について[大変困惑している]の回答者は29%、しかしこの数字は、スウェーデン11%、オーストリアの33%からギリシャの65%まで広がっているので、誤解されやすい(
表9)。
1998年と2001年の間でも結果に大きな変動を示している。
自分の国の放射性廃棄物管理の方法について[大変困惑している]のEU平均値は、[かなり困惑している]が5%増加、[そんなに困惑していない]も同様に増加したのに対し、41%から29%に落ちた。
もう一度注意するとこれらの平均値は、国レベルで重要な大きい変動を隠す傾向がある。例えば、1998年にデンマークの回答者の16%が、彼らの国の放射性廃棄物管理の方法に[そんなに困惑していない]であったが、3年の後に、対立する[大変困惑している]グループの数値が46%から12%まで落ち、前者の数値は47%とほとんど3倍になった。
他の国での廃棄物の管理に関する数字に関しては、一般に自分の国よりも、他の国の管理をより心配している。
9.より広い原子力問題に関する意見
この最後のセクションでは、5つの別々の問題/提案に関する意見が査定される。
(1)メディアは放射性廃棄物問題に関する報告に公平であるか(
表10)
これに関する意見は、ヨーロッパ全体としてほとんど正確に50:50に分割され、合計41.6%が強く同意するか、どちらかといえば同意である、41.3%が強く反対するか、どちらかといえば反対である。
(2)原子力産業は放射性廃棄物の情報提供にオープンであるか(
表11)
5人のうちの1人のヨーロッパ人(18.9%)は、これに強く同意するか、同意する傾向がある。極端なのはスウェーデンで代表される世論調査された40%の人々は、「産業は情報提供にオープン」と考えており、イタリアでは10%だけがそう考えている。スペイン人のほぼ30%は、彼らは知らないと言う。
(3)原子力の利点は他のエネルギー源よりも
温室効果ガスを排出しない(
表12)
数字はスウェーデンの3.6%からスペインの55%まで変動したが、欧州連合全体で世論調査された3分の1以上は[知らない]であった。[知らない]の数字は、設問に[賛成](41%)しやすい傾向によく類似している。これは、欧州連合人口のかなりの部分にこの知識が欠落していることを示す。スウェーデンとデンマークで、回答者のそれぞれ47%と42%は、設問に[強く賛成]している。これは、12.5%に過ぎないヨーロッパの平均と対称的である。
(4)もし全ての廃棄物が安全に管理されるならば、原子力発電はEUで発電の選択肢として残るべきである(
表13)
ヨーロッパを通して、回答者の平均51%がこの設問に賛成し、うち[強く賛成する]が15%である。平均して24%が[知らない]である。したがって、[知らない]を除いた後、オーストリアを除く、ヨーロッパ全体として、3分の2が設問を支持する。オーストリアでは、欧州連合の残りに対して、対極にある。
(5)原子力を使った発電は、廃棄物処分に責任を持つべきで将来の世代の管理に残してはならない(
表14)
全体で80%の人々はこの概念に[賛成]し、[強く賛成する]が50%である。
<図/表>
<関連タイトル>
欧州連合市民とエネルギー問題 (10-05-04-02)
米原子力エネルギー協会(NEI)の世論調査(2003年5月) (10-05-04-03)
米原子力エネルギー協会(NEI)の世論調査(2004年10月) (10-05-04-04)
<参考文献>
(1) Europeans and Radioactivewaste INRA(Europe) European Coordination Office,19 April 2002,
(2) Europeans and Radioactivewaste INRA(Europe) European Coordination Office, 29 January 1999,