<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
米国エネルギー省環境管理局が進めるサイト・クリーンアップ (14-04-01-37)

<概要>
 米国エネルギー省DOE)の環境管理局は、冷戦終了後の核兵器生産の中止に伴い、核物質生産によって環境汚染されたサイトのクリーンアップを進めている。2002会計年度までに、74のサイトのクリーンアップを完了したが、これらは皆小規模かつ技術的困難のないサイトで、残っているのは大きく難しいサイトである。DOEの1995年の基準環境管理報告書では、クリーンアップ・プログラムの完了は2065年まで75年かかると見積もっていた。2001年8月、クリーンアップ・プログラムの遅れを改善するため、クリーンアップ・プログラムの広範囲なレビューを実施する「徹底レビュー」チームを編成し、2002年2月4日に「徹底レビュー」報告を提出した。報告は4つに分類される改善策を示し、これに従ったリスクベース・クリーンアップ・アプローチの下に、クリーンアップは進められている。
<更新年月>
2004年01月   

<本文>
1.はじめに
 米国エネルギー省(DOE)の環境管理局は、核兵器生産、原子力艦船及び商用の原子力エネルギー生産の副産物として残された、汚染されたサイトをクリーンアップし、放射性廃棄物を処分するという遺産的使命を進めている。ここでは、核兵器の安全な処分、冷戦の環境遺産の処理、放射性廃棄物の安全な貯蔵及び環境と公衆の保護を実施するが、核兵器生産の遺産による危険と災害を緩和するという使命は、最も規模が大きく広範なものである。
 1987年12月、ゴルバチョフ旧ソ連大統領とレーガン大統領は、中距離核兵器削減条約に署名した。また、核廃棄物政策法(改正)(Nuclear Waste Policy Amendments Act)はネバダ州ユッカマウンテンを高レベル放射性廃棄物と使用済み燃料の米国最初の地層貯蔵の候補サイトとして、科学的な調査をするよう指定した。
 1989年11月、DOEは、環境回復廃棄物管理局(Office of Environmental Restoration and Waste Management:OERWM)を設立することによって、核物質生産から環境のクリーンアップ、公開性、開放性へと重点を移した。同年、コロラド、ロッキーフラッツの核兵器生産とオハイオ州のフェルナルドの原料物質生産は中止され、施設のクリーンアップに業務を変更した。その後、OERWMは環境管理局(Office of Environmental Management)と改称され、上述の業務を担当している。
 EM(Environmental Management)プログラムの役目は核兵器の研究、開発、生産、テストを実施していた114のサイトを浄化することである。全部で200万エーカーの広さを包含しているがこれはロードアイランドとデラウェア州を合わせた面積にひってきする。2002会計年度の開始時点で、DOEは74のサイトのクリーンアップを完了したが、これらは皆小さく技術的困難のないサイトで、残っているのは大きく難しいサイトである。
 DOEの1995年の基準環境管理報告書(BEMR)では、クリーンアップ・プログラムの完了は2065年まで75年かかると見積もっていた。1996年5月の環境回復加速レポート(Environmental Restoration Acceleration Report)では、サイト・クリーンアップの80%が2021年までに完了されると見積もり、基本戦略を提案した(文献2)。1998の報告書「終結へのパス」では、クリーンアップ・プログラムのライフサイクル・コストを1470億ドルと評価したが、この数字は楽観的であり、スケジュールの評価もまた、楽観的に過ぎることが明らかになった。今は2200億ドルに置き換えられている。仕事のプロセスにブレークスルーがなければ容易に3000億ドルを超えると予測されている(文献4)。
 図1に環境管理局の組織図を示す。
2.EMプログラムの「徹底レビュー」(Top−to−Bottom Review)
 2001年、DOE長官はEMのクリーンアップ・プログラムの現状が芳しくないと国会で証言し、環境管理担当次官補に急速に改善するため、クリーンアップ・プログラムの広範囲なレビューを実施するように指示した。レビューチームは2001年8月に設立され、2002年2月4日に「徹底レビュー」報告を提出している。報告書は、プログラムの活動には、実際に作業者、公衆及び環境のリスクを低減するよりも、管理上のリスクに重点を置くという系統的な問題があったとし、大別して4つに集約される勧告を行った(文献4、5)。
・DOEの契約管理の改善。
・リスク優先順位に基づくクリーンアップ加速戦略に切り換える。
・リスク優位順位に基づいたクリーンアップ加速戦略を支援するようにDOEの内部手続の調整。
・EMプログラムを再編成し、その視野がリスク優位順位に基づいたクリーンアップ加速戦略および終結の使命と一致するようにする。
 レビューチームは、4項目にわたる勧告に対してつぎの12の課題を明らかにした。
2.1 DOEの契約管理の改善
(1)成果ベースの契約から多くの成果を獲得する。
2.2 リスク優先順位に基づくクリーンアップ加速戦略に切り換える。
(2)リスクを軽減するような廃棄物管理。現在のフレームワーク及びDOEの命令、要請、法令及び規制は、人間の健康と環境へのリスクを速やかに下げるというクリーンアップ達成の障害をつくっている。
(3)サイトの閉鎖を加速するプログラム戦略の開発。DOEサイトの将来の義務なしの閉鎖ないし個々のサイトの停止スケジュールに対してプログラムとしての戦略がない。細分化されたアプローチが、高価な重複作業と地域に優先順位を与えるという結果になっている。
(4)プログラムの成功に繋がる合意書の改善。多くの規制の合意書は、期待されるリスクの低減とサイト閉鎖の加速を達成できなかった。合意書の中の条項が最も高いリスクに重点を置いていない場合がある。
(5)安全保護と安全保障、EMサイトへの脅威の低減。特殊核物質の大半が、プログラム上必要としない多数のEM施設とサイトに貯蔵されている。大量の可燃性・分散性の超ウラン廃棄物がまた、検定と処分のため多くのEMサイトに貯蔵されている。これらの貯蔵の分散した配置は安全と安全保護の点から最適でなく、高価で、管理が困難である。
(6)公衆の健康と環境を保護するための長期間の管理責務。DOEは、クリーンアップが完了したサイトで、長期間にわたる管理責務に関するプログラムを立案する必要がある。
2.3 リスク優位順位に基づいたクリーンアップ加速戦略を支援するようにDOEの内部手続の調整
(7)リスク低減を加速する画期的事業プロセスを行使する。EMの現存の事業プロセスは最も厳しい管理(際限のないコストとスケジュールの遅れ)の課題に挑戦するように組織されていない。事業プロセスにブレークスルーがなければ、コストとスケジュール遅れは増加し、クリーンアップを妨げ、作業者、公衆と環境のリスクは低減されない。コストの見積りは、現在の2200億ドルから3000億ドルを超えてしまうかも知れない。
 1999年のEMクリーンアップ計画は2006年までに、41の汚染されたDOEサイトを完了するとしていた。丁度2年後、スケジュールは遅れて、2006年までの完了は25サイトに減少した。更に予定外のEMクリーンアップ・プログラムのコストの見積り額は1年の間に100億ドル増加した。図2はEMの活動サイトのクリーンアップ完了日を示している。クリーンアップ作業の計画と管理に使われた焦点の定まらない矛盾した事業プロセスがこの好ましくない傾向の主な原因である。コスト増とスケジュールの遅れは、2006年までに終了予定のサイトに限られていない。
(8)EMの意志決定をより一層支援するよう国家環境政策法(National Environmental Policy Act:NEPA)のプロセスを実施すること。
(9)小さいサイトのクリーンアップを加速する統合プログラム。EMプログラムには、小さいサイトに対して統合管理が適用されるならば、クリーンアップの完了が加速され、ライフサイクル・コストが低減される。
(10)加速されたリスク低減を支援するパッケージと輸送。現在のパッケージと輸送政策と手続きは、サイトからの物質の移動の遅れ、コストの増加を引き起こし、リスクの低減の遅れを招いている。
2.4 EMプログラムを再編成し、その視野がリスク優位順位に基づいたクリーンアップ加速戦略および終結の使命と一致するようにする。
(11)EMプログラムの資金をクリーンアップに集中すること。EMは、加速されたリスク基準のクリーンアップ・プログラムにとって適切でないタイプの幾つかの活動にも資金を出し管理をしてきた。結果として、予算とスタッフ並びに管理の注意がクリーンアップと終結の使命に十分に向けられなかった。
(12)科学と技術プログラムに再集中すること。科学と技術は、EMが使命を達成するに必要な支援を用意することに集中してない。
3.徹底(Top−to−Bottom Review)レビューのフォローアップ
 EM はこのレビューを受けて、改善を開始し、各サイトもそれぞれの改善計画を策定している。その結果は2003年度の予算要求へと反映されている。表1にDOE環境管理局の予算を示す。
3.1 ハンフォード・サイト(文献6)
 DOEのリッチランド運営事務所と河川保護事務所は、リスク低減とハンフォードの閉鎖を加速するために、2002年5月1日に「ハンフォードサイト加速クリーンアップ成果管理計画(Performance Management Plan for Accelerated Cleanup of HANFORD Site)」草案を2002年5月1日にDOE本部に提出し、EM担当次官補の承認を得て、8月に発行している。計画は、ハンフォードにおけるDOEの責任を、EMプログラム任務の完了の加速ばかりでなく、公衆の健康と環境を保護する高品質の広範囲のクリーンアップにも置くものである。草案は短期的な資金増があるならば、2035年までに、またはもっと早く、任務を終わらせ、数十億ドル節約するという5つの戦略的問題を示していた。公衆のコメントと部族の意見、関係部局との相談を得て、2003年12月11日現在かなりの改善をし、新しい地下水保護の問題が加えられている。計画は以下のようである。
(1)2012年までにコロンビア川を回復:50の埋設場、551の廃棄物サイト、261の余剰施設及び7基のプルトニウム生産炉を改善し、川へのリスクを減らし、サイトを85%縮小。
(2)タンク廃棄物計画を2035年までに終息させるよう、計画中の廃棄物処理プラントの容量を増加させ、タンク閉鎖の実証、5年以内にタンクの閉鎖開始などの短期的処置を講じる。
(3)核物質の安定化とサイト外への移送の加速。K低地に貯蔵されている使用済燃料、廃材と廃水、スラッジの撤去スケジュールを10カ月早め、余剰プルトニウムの安定化と安全貯蔵を9年早め、プルトニウム処理プラントの解体を7年早める。セシウム/ストロンチウムカプセルをガラス固化しないで直接連邦処分場に送るための利点を評価する。
(4)混合低レベル廃棄物処理・処分、超ウラン廃棄物の回収と移送の加速。
(5)中央台地のクリーンアップの加速。中央台地にある900以上の余剰施設と800以上のタンク外廃棄物サイトの処分を加速する。
(6)ハンフォード地下水源の保護。中央台地の汚染源を除去または隔離し、その他の汚染源を改善し、地下水の処理をし、モニターする。
3.2 アイダホ・サイト(文献7)
 アイダホ国立工学・環境研究所(Idaho National Engineering and Environment Lavoratory:INEEL)は、過去にスネークリバー平原の帯水層に有機洗剤と放射性核種を含む排水を直接流し、1960年代には、DOEはロッキーフラッツ核兵器プラントからのプルトニウム−汚染された廃棄物数千バレルをライナーのない窪地に捨てていた。輸送ラインからの漏れは、サイト内のタンク基地の地表に高放射性物質を放出した。1980年代には、このような管理は中止されている。1991年に、DOEは環境保護庁及びアイダホ州と汚染サイトのクリーニングのプロセスを定める協定に署名している。
 2002年5月に、DOE、アイダホ州環境品質部及び環境保護庁は加速されたリスク低減とクリーンアップを遂行する合意に関する趣意書に署名した。趣意書はINEELの加速されたクリーンアップの協力計画の基礎となるもので、1)リスクの低減とスネークリバー平原の帯水層の継続的保護、 2) 環境管理活動の統合及び節約資金のクリーンアップへの再投資という2つの目的がある。これらの目的に基づいて、以下の9項目の戦略的課題が示されている。
(1)タンク基地の閉鎖の加速化
(2)焼(強熱して灰状の物質にすること)による高レベル廃棄物(HLW)のINEELからの撤去の加速化
(3)使用済燃料貯蔵のINTECヘの統合の加速
(4)TRU廃棄物の貯蔵サイトからのTRU廃棄物の搬出の加速
(5)その他汚染区域の改善の加速
(6)サイト内でのLLW/混合LLW処理と処分の停止
(7)EM管理の全ての特殊核物質(SNM)をサイト外への移送
(8)放射性廃棄物管理関連サイトの埋設廃棄物の回収
(9)INEEL施設の統合と足跡の減少(解体)
 2020年には大部分は終わり、この活動は2035年までには完了するとされている。クリーンアップコストは190億ドルほど節約され、計画は数10年早く完了することができる。
<図/表>
表1 環境管理局の予算
図1 環境管理局(OEM)の組織図
図2 EMクリーンアップスケジュール遅延状況(2001年11月1日)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
アメリカの原子力政策および計画 (14-04-01-01)
アメリカの核燃料サイクル (14-04-01-05)
核兵器解体による余剰プルトニウム問題と米国の対応 (14-04-01-23)
米国の余剰プルトニウム処分計画 (14-04-01-26)

<参考文献>
(1)DOE:Environmental Management,
(2)DOE:Environmental Restoration Acceleration Report, May 1, 1996
(3)DOE:Environmental Management FY 2004 DOE Budget Request to Congress,
(4)DOE:A Review of the Environmental Management Program, (2002/2/4)
(5)DOE:Statement of Jessie H. Roberson, Assistant Secretary for Environmental Management, U. S. Department of Energy before the Subcommittee on Energy and Water Development Committee on Appropriations U.S. House of Representatives, March 14, 2002,
(6)Performance Management Plan for the Accelerated Cleanup Of the Hanford Site, May 1 2002,
(7)Idaho Completion Project, Accelerated Cleanup,
(8)米DOEサイトのクリーンアップ加速化の現状、米国原子力情報サービス03.04、IEA OF JAPAN、p.23−34
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ