<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
米国原子力規制委員会の許認可プロセスとその適用状況 (14-04-01-35)

<概要>
 1960年代に制定された商用原子力発電所の許認可手続では、建設と運転のそれぞれの時点で許認可申請手続が求められていたため、各段階で生じた安全問題の解決のためにスケジュールの遅れと建設コストの上昇が発生し、原子力発電所の新設が進まない事態が生じていた。このため、アメリカ原子力規制委員会(NRC)は、1989年に商用原子力発電所の新しい許認可プロセスを確立した。これは建設許可と運転認可を統合することにより、発電所の建設手続の初期段階で、安全、環境及び認可上の諸問題の解決を図ろうとするものである。新しい許認可プロセスは、原子炉設計認証、早期のサイト許可、建設/運転の統合認可、建設されたプラントの一連の点検、テストと分析から構成される。2012年1月時点では原子炉の設計認証については既に5件が認証されている。早期のサイト許可では、4件が受理されて、2件の審査が進行中である。
<更新年月>
2012年01月   

<本文>
1. 新認可プロセス
 1960年代に制定された商用原子力発電所の許認可手続では、建設と運転のそれぞれの時点で許認可申請手続が求められていたため、各段階で多くの安全問題が生じ、その解決のためにスケジュールの遅れと建設コストの上昇が常態化し、原子力発電所の新設が進まない事態が生じていた。このため、アメリカ原子力規制委員会(NRC)は、従来の許認可手続の抜本的な見直しを行い、建設許可と運転認可を一連の許認可に統合した新しい許認可プロセスを1989年に確立し、発電所の建設手続の初期段階で、安全、環境及び認可上の諸問題の解決を図ることとした。新しい許認可プロセスは4つの基本的要素からなる。
・原子炉設計認証:NRCはルール作成プロセスにより、15年間有効な標準原子炉設計の認証を行う。サイトに依存する部分は除外して、基本的に完全な原子力発電所の設計の安全性問題の審査を行う。
・早期のサイト許可:建設承認申請または建設運転統合承認申請とは切り離して早期のサイト許可を発行する。10〜20年有効で、複数の原子力発電所を建設することができる。
・建設/運転の統合認可:技術的要件及びITAAC(INSPECTIONS, TESTS, ANALYSES, AND ACCEPTANCE CRITERIA)を満たすものについて、原子力発電所の建設と条件付運転を認可する。
・運転開始前の建設されたプラントが全ての認可基準に適合することの確認(ITAAC)。
 図1に新旧の許認可手続を示す。
 なお、先進型原子力発電プラントに関しては、認可のガイダンスを提供し認可プロセスの中で早期に問題を確認し解決するために、認可申請以前の段階で、NRCと原子炉設計者との間で早めの議論を行うことをNRCは奨励している。設計認証のためのこの申請前の期間中に、NRCは先進型原子炉設計を議論する公聴会(申請前レビュー)を開催し、以下の諸点を確認する。(1)NRCスタッフに対するNRCの政策ガイダンスが必要となり得る主要な安全問題。(2)NRCスタッフが既存の規制またはNRCの政策で解決できる主要な問題。(3)確認された問題の解決のために必要な研究。
2. 先進的な原子炉設計認証の状況
 米国では革新的な安全機能を持つ、8つの先進的原子炉設計が、検討されている。このうち、5つの原子炉設計は、すでにNRCの安全証明を得ている。3つの設計は、NRCによる申請前レビューの段階にある。
2.1 設計認証を取得した事例
 これまでに以下の5件について原子炉設計が認証されている。
(1)GE Nuclear EnergyのAdvanced Boiling Water Reactor(1997年8月)
(2)WestinghouseのSystem 80+(前はABB-Combustion Engineering)(1998年6月)
(3)WestinghouseのAP600(2000年3月)
(4)AP1000(2006年1月)
(5)AP1000修正(2011年12月)
2.2 設計認証審査進行中の事例
 2012年1月現在、NRCはEconomic Simplified Boiling Water Reactor(ESBWR)、USAPWR、EPRについて、設計認証の審査を行っている。
 NRCは、特定サイトとは独立したルール作成プロセスによって標準原子炉設計の同意と認証を行っている。設計認証は15年間有効である。設計認証の申請に際しては、サイトに依存する設備の設計を例外として、基本的に完全な原子力発電所の設計を提示しなければならない。
2.3 申請前レビュー
 2012年1月現在、NRCは、幾つかの原子炉やサイトについて申請前審査を行っている。設計認証については、NGNP炉(エネルギー省)、NuScale炉(NuScale Powers社)、B&W mPower炉(バブコック&ウィルコックス社)等について審査を進めている。立地については、クリンチリバー(TVA)の立地許可に向けた事前審査が行われている。なお、TVAは二段階許認可システムを視座に入れた、6基のmPower炉を計画している。
 NRCは上記以外の炉、4S炉(Super Safe Small and Simple、東芝)、PRISM(Power Reactor Innovative Small Module、GE-日立)、HPM(Hyperion Power Module、Hyperion Power Generation社)等についても申請前審査を実施している。
3. 早期のサイト許可の状況
 早期サイト許可プロセスによって、申請者は原子力発電所の将来の建設と運転の可能性のためのサイトに関連した問題、例えば環境への影響を解決することができる。申請が承認されるならば、許可証は最高20年間有効であり、1基以上の原子力発電所を建設することができる。
 申請の技術的審査では、特定の原子力発電所の設計認証とは独立に、サイト安全、環境保護と非常事態への対処計画の審査に宛てられる。安全評価と環境影響評価報告の発行を受けて、NRCの原子力安全・許認可評議会(Atomic Safety and Licensing Board)は、問題点についての公聴会を実施する。
 2012年1月現在、クリントン発電所(エクセロン・ジェネレーション社)、ノースアンナ発電所(ドミニオン・エナジー社)グランドガルフ発電所(システムエナージー・リソース社)及びボーグル発電所(サザンニュークリア・オペレーティング社)について早期立地許可が発給されている。また、ヴィクトリアカウンティ発電所(エクセロン・ニュークリア・テキサスホールディング社)及びPSEG発電所(PSEG発電社)について、早期立地許可申請が提出され、審査が行われている。
 それぞれについて、公聴会が開催されており、例えばノースアンナ湖サイトの公聴会では以下の諸点が問題となった。
(1)使用済燃料の現場貯蔵、使用済燃料の輸送、地層貯蔵所サイトの成功の見込み
(2)安全確保(航空機の脅威、他の2、3箇所で行われた安全確保の理由からの、アンナ湖への公衆の近接の禁止の可能性)
(3)NRCの独立、NRCの規制の役割及び駐在検査官の役割
(4)緊急時計画(避難をサポートする地方道路システムの能力)
(5)環境の問題、大部分は追加の原子力発電所を扱うアンナ湖の容量と水質に関する問題
 また、NRCスタッフはノースアンナ湖が安全確保のために閉鎖されるかもしれないとの懸念について調査すること、及び懸念を表明している公衆に対して回答を用意することを要請されている。
4.建設と条件付運転の一括許認可
 一括許認可は、基本的に10 CFR Part 50に基づく従来の建設許可と同様な内容を有する「建設許可」と、建設後ある条件が満足された場合に運転を認めるという「条件付の運転認可」を一括して発給するものである。その条件とは、建設後の検査、試験、解析の内容、及び、合格基準(ITAAC)で示されるもので、審査の段階で定めるものである。ITAACの内容及び合格基準は、それが満足される場合、プラントが一括許認可に従い建設され運転されることを保証するのに十分なものでなければならず、設計認定で検討された事項や防災計画に関連する事項を含む必要がある。また、財務状況、新規電力の必要性、反トラスト法の観点からの検討も含まれる。
 一括許認可の申請では、標準設計認証と早期立地許可を先だって取得することが義務付けられるものではないが、それらを取得しておくことにより新たな許認可プロセスのメリットを最大限に活かすことができる。この場合、標準設計認証及び早期立地許可の審査過程において解決された問題は、再度審査されることはない。検討の中心となるのは、これらの審査の段階ではサイト特有の条件(例えば、取水口や最終除熱方法など)のために仮定した条件と実際の条件の比較検討である。NRCはAP1000修正に関して6件の一括許認可申請を審査している。
 表1に2011年12月時点の一括許認可申請一覧を示す。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 新規原子炉の一括許認可申請(2011年12月現在)
図1 新旧許認可プロセスの比較

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
アメリカの原子力開発体制 (14-04-01-03)
アメリカの原子力安全規制体制 (14-04-01-04)
原子力許認可プロセスの改革と1992年エネルギー政策法の成立 (14-04-01-16)
米国エネルギー省環境管理局が進めるサイト・クリーンアップ (14-04-01-37)
米国エネルギー省と原子力産業界の軽水炉開発共同計画 (14-04-01-39)

<参考文献>
(1)2011 New Reactor Program:
http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML1200/ML12004A009.pdf
(2)NRC:Future Licensing And Inspection Readiness Assessment, SECY-01-0188, Attachment,pp.II-4〜II-12,(2001),
http://www.nrc.gov/docs/ML0121/ML012140585.pdf (Sep. 2001).
(3)NRC:Fact Sheet on Nuclear Power Plant Licensing Process, (2003),
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/fact-sheets/licensing-process-fs.html, (Feb. 2011).
(4)NRC:Fact Sheet on Next-Generation Reactors, (2003),
, (Jan.2004).
(5)NRC:Semiannual Update of the Status of New Reactor Licensing Activities, SECY-03-0005, (2003),
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/commission/secys/2003/secy2003-0005/2003-0005scy.pdf, (Jan. 2003)
(6)NRC:Final Safety Evaluation Report Related to Certification of the AP600 Standard Design,NUREG-1512, (1998)

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