<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
原子力許認可プロセスの改革と1992年エネルギー政策法の成立 (14-04-01-16)

<概要>
 ブッシュ前大統領の国家エネルギー戦略の1991年初頭の発表以来、約2年間の審議を経て、1992年10月に成立したエネルギー政策法は、さまざまなエネルギー関連条項を包括しているが、その中でも原子力関連条項は、米国の原子力発電所の再活性化の条件整備を行ったものとして注目に値する。特に原子力発電の許認可プロセスについては、既に1989年4月に大幅な改革を行った原子力規制委員会(NRC)規則10 CFR パート52を、法律によって追認したものと見ることができる。すなわち、これまで、建設前の建設許可と運転開始に先立つ運転認可という2段階に分けていた許認可を一本化し、建設前に一括して許認可を取得できるようになった点は画期的なことと言える。この一括許認可によって、運転開始前の公聴会を条件つきでスキップすることができるようになり、その結果、着工から運転開始まで、約6年間という、これまでの建設期間の半分以下で済むようになっている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.エネルギー政策法の成立とその影響
 原子力許認可プロセスなど原子力関連だけでなく、再生可能エネルギーや省エネルギーなども含んだ包括エネルギー法案は、ブッシュ前大統領の1991年初頭の国家エネルギー戦略の発表、および約2年をかけたその後の連邦議会審議を経て、ようやく1992年エネルギー政策法として成立の運びとなった。
 本法案の両院協議会後の下院本会議承認は1992年10月5日、上院本会議承認は10月8日、その後の大統領署名は10月24日である。さまざまなエネルギー関連条項を含む包括的なエネルギー法案の中で、原子力発電関連条項は、ほぼブッシュ政権および原子力業界の望む形で含まれることになり、原子力発電の再活性化に必要な条件が整ったということができよう。しかし、この法律の制定によって原子力発電をめぐる状況が大きく好転するというわけではなく、原子力発電の再活性化はあくまでも他のエネルギー源との競合、経済性、環境問題、およびパブリック・アクセプタンスなどのバランスの上に乗った市場合理性がその基本であることに変わりはない。
 エネルギー政策法に含まれた原子力発電関連条項は、全体としては原子力発電の再活性化にとって好ましいものとなっている。包括的なエネルギー法案の中に含まれる形とはいえ、民主党が多数を占める連邦議会において、しかも大統領選挙あるいは上下両院の議員選挙を控えた時期にあって、原子力発電にとって追い風となる主要な条項が最終的に盛り込まれたということは注目すべきである。このことは、米国では原子力発電を放棄することはできないという認識が、連邦議会で受け入れられてきていることの1つの現れとみることもできよう。
 しかし、細かくみてみると、例えば、高レベル放射性廃棄物関連条項で、当初議論されたようなネバダ州の権限を凌駕する権限を連邦政府に認めることや、監視付回収可能貯蔵(MRS)施設の建設時期に課された制約(放射性廃棄物政策修正法では、原子力規制委員会(NRC)が最終処分場の建設許可を発給するまで、MRS施設の建設は行わないこととされている)を外すという条項は盛り込まれず、代わりに、環境保護庁(EPA)に全米科学アカデミー(NAS)の勧告に基づいて処分基準を発行することを命ずることによって、現実的な環境基準の策定、ひいては処分場の円滑化を間接的に促すという条項が盛り込まれることになった。

2.原子力許認可プロセスの改革
 1992年エネルギー政策法の原子力発電関連の条項のうち、最も重要なのは、従来の建設許可と運転認可の2つに分かれていた許認可を一括して発給できるとして原子力許認可プロセスの改革を行ったことである。同法のタイトルXXVIIIによって規定されている新しい許認可プロセスの要点は、以下の通りである。
(1) これまでの建設前の建設許可と運転前の運転認可という2段階に分かれていた許認可が一本化され、建設前に一括して許可がNRCから発給されることになった。
(2) 従って、これまで運転認可に必要とされていた許認可申請者による検査、試験、分析は、緊急時計画も含めて、一括許認可の中で明確にされることとなった。
(3) 建設が始まってからの公聴会、すなわち従来の運転認可のための公聴会は、一括許認可の許可基準のうちの1つ以上が満たされておらず、しかも、そのまま運転されたな らば、公衆の健康および安全が確実に保証されないということが明確に示された場合にのみ開催されることになった。
 この一括許認可については、元々は、NRCの規則10 CFR パート52として規定されていたものを同法が法律としてそのまま追認したものである。
 パート52では、一括許認可は、“条件付き”で建設許可と運転認可を組み合わせたものと定義されている。この目的は、原子力プラントの運転と建設に関するすべての問題を、建設が開始される前に解決することである。すなわち、これまで建設許可と運転認可の手続きの各段階で提起され解決されていた問題が、1つに組み合わされた許認可手続きの中で検討されることになる。
 パート52は一括許認可の申請に関して裁定権限のある公聴会の開催を要求しており、利害関係者(公衆等)が参加する資格を持つことになる。パート52はまた、建設完了後、運転が開始される前に公聴会の機会が与えられることを要求している。しかし、この運転開始前の公聴会が扱う範囲は、一括許認可の条件との不一致が申し立てられた問題に限定される。しかし、この請願を認めるかどうかはNRCの自由裁量に任せており、たとえ認められたとしても、NRC自身が即座に停止する必要があると決定しない限り、プラントの運転には影響を与えない。
 パート52の序文では、“NRCは、原子力プラントの標準化、具体的には許認可における安全上および環境上の問題の早期の解決のための手続きを確立するという目的を守り通しただけである”と述べられている。しかし、当時のゼックNRC委員長はパート52を30年間の歴史の中で最も重要な規則策定イニシアチブであると述べており、確かに、原子力プラントの安全性を判断するための実質的な基準は変わっていないかもしれないが、その許認可手続きは大幅に変わっている。
 パート52およびそれを追認したエネルギー政策法の手続きの下で、原子力プラントの許認可および運転に先立つ建設は約6年間で完了すると考えられ、この期間は、特別注文の設計の2段階許認可手続きの下で最近の原子力プラント建設プロジェクトが経験した期間の半分以下である。さらに、この、パート52およびエネルギー政策法の施行は原子力業界による設計標準化および設計認証への取り組みを強く奨励することになろう。
 NRC規則(10 CFR パート52)およびエネルギー政策法が定めた一括許認可については、これに反対する意見が強く、事実、法定訴訟も行われた。この法定訴訟は、1991年3月に、コロンビア地区連邦控訴裁判所の棄却判決で決着がついているが、一括許認可に反対する主張は、許認可手続きへの公衆の参加が十分許されていないとするものであり、これに対し、原子力業界は、公衆参加の機会は失われているのではなく、巨額の投資が不公正にリスクに曝されることのないように、許認可手続きにおけるより適切な時点に公衆が参加するようになっていると主張している。
<関連タイトル>
海外における原子力発電所の運転認可更新の現状 (02-06-02-02)
アメリカの原子力政策および計画 (14-04-01-01)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
原子力発電所の寿命延長(NRCの運転認可更新規則) (14-04-01-17)

<参考文献>
(1) Energy Policy Act of 1992, Public Law 102−486, Oct.24, 1992
(2) 株式会社 アイ・イー・エー・ジャパン 「米国原子力情報サービス」No.146 1992年11月
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