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<概要>
 日本における核燃料物質保有量については、国から毎年発表されるデータをもとに、海外における核燃料物質保有量については、各国がIAEAへ報告したデータをもとに記述する。
<更新年月>
2006年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.日本における核燃料物質保有量
 原子力基本法において明らかにされているとおり、原子力の研究、開発及び利用は、厳に平和の目的に限って行うことを基本的な方針としている。我が国は「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT)を締結し、「国際原子力機関」(IAEA)によるフルスコープの保障措置を受け入れ(SG査察)、核物質や施設の厳格な管理を実施するとともに、1999年12月には保障措置を強化する「日・IAEA保障措置協定追加議定書」を率先して締結している。
 日本における核物質保有量について、表1に「原子炉等規制法」上の規制区分別一覧を、表2に国籍別一覧を示す。また、表3に日本のプルトニウム管理状況を示す。
 六ヶ所再処理工場の稼働に伴い相当量のプルトニウムが分離、回収されることとなる。このため、プルトニウム利用に係る透明性向上を図る観点から、2003年8月に原子力委員会は「我が国におけるプルトニウム利用の基本的考え方について」を決定した。本決定においては、プルトニウムの利用目的を明確に示すため、再処理に先立って事業者がプルトニウム利用計画を公表することとなっている。
 2005-2006年度に六ヶ所再処理工場及び東海再処理工場で回収されるプルトニウム利用計画については、電気事業者と日本原子力研究開発機構から公表され、2008年1月に原子力委員会で確認された。なお、電気事業者は、海外に所有しているプルトニウムの量を公表し、これを用いてのプルサーマル実施に向けての取り組みなども説明している。
2.世界におけるプルトニウム保有量
 1970年に「核兵器の不拡散に関する条約(NPT)」が発効してからおよそ30年余りが経過した。しかし、世界各国における核燃料物質の保有量が、まとめて公式に発表されたことはなかった。プルトニウムおよび高濃縮ウランが初めて生産されてから50年を経過するが、未だにこれらについての年報の類は存在しない。これは、その大部分を保有する国々がNPTで公式に核兵器国として扱われており(米国、旧ソ連(現ロシア)、英国、フランスおよび中国)、これらの核兵器国がNPT上自国の核物質・核施設について情報を提出する義務を負っていないためである。NPTでは、それ以外の締約国は、すべて非核兵器国として扱われ、自国内のすべての核物質を国際原子力機関(IAEA)の保障措置対象とされ、在庫量をIAEAに報告することになっている。核兵器国のIAEAとの保障措置協定は自発的なものなので、これら核兵器国の核物質はほとんど申告ないしは査察されていない。
 しかし、1994年2月に、プルトニウム利用の透明性を向上させるため、9か国(米国、ロシア、英国、フランス、中国、日本、ドイツ、ベルギーおよびスイス)によって国際的枠組みの検討が進められ、1997年12月に「国際プルトニウム指針」(指針)が採択された。この指針では、関係9か国が、自国の民生用プルトニウムの利用方針を明らかにするとともに、自国の民生用プルトニウムの管理状況、すなわち、施設の区分ごとに存在するプルトニウムの量を共通の形で公表することなど(民生用プルトニウムの管理について)を定めている。1998年3月に、IAEAは、この指針に基づき報告された各国のプルトニウム保有量などを公表した。2003年末現在の各国のプルトニウム保有量を表4に示す。
 しかし、この指針は、まだ完全ではなく、当然のことながら核兵器国の軍事用在庫は入っていない。そこでストックホルム国際平和研究所が1997年春に発表した、1994年末時点のデータではあるが、核兵器保有国および事実上の核兵器国(イスラエル、インド、パキスタン、北朝鮮および南アフリカ)における軍事用(兵器級)プルトニウムおよび高濃縮(兵器級)ウランの推定保有量を表5に示す。また、2005年1月現在の世界の核兵器保有量を表6に示す。
<図/表>
表1 日本における核燃料物質保有量一覧(規制区分別)
表1  日本における核燃料物質保有量一覧(規制区分別)
表2 日本における核燃料物質保有量一覧(国籍区分別)
表2  日本における核燃料物質保有量一覧(国籍区分別)
表3 日本のプルトニウム管理状況(2003年末現在)
表3  日本のプルトニウム管理状況(2003年末現在)
表4 国際プルトニウム指針に基づき公表された各国のプルトニウム保有量(2002年末現在)
表4  国際プルトニウム指針に基づき公表された各国のプルトニウム保有量(2002年末現在)
表5 核兵器保有国および事実上の核兵器国における軍事用のプルトニウムおよび高濃縮ウランの保有量
表5  核兵器保有国および事実上の核兵器国における軍事用のプルトニウムおよび高濃縮ウランの保有量
表6 世界の核兵器保有量(2005年1月現在)
表6  世界の核兵器保有量(2005年1月現在)

<関連タイトル>
核兵器不拡散条約(NPT) (13-04-01-01)
包括的核実験禁止条約(CTBT) (13-04-01-05)
保障措置のあらまし (13-05-02-01)
保障措置の強化・効率化方策 (13-05-02-18)

<参考文献>
(1)原子力産業会議(編):原子力ポケットブック2002年版(2002年11月8日)、p.351-352
(2)原子力委員会:原子力白書(平成16年度)(平成17年3月)
(3)D.Albright,F.Berkhout,W.Walker:SIPRI,PLUTONIUM AND HIGHLY ENRICHED URANIUM 1996,Oxford Univ. Press(1997)
(4)原子力委員会:原子力定例会議議事録(2006年1月)
(5)SIPRI Yearbook 2005:Armaments,Disarmaments and International Security Pocket-size Summary Edition
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