<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 国際条約・協定等
<小項目> 国際条約
<タイトル>
包括的核実験禁止条約(CTBT) (13-04-01-05)

<概要>
 包括的核実験禁止条約(CTBT)は、従来の部分的核実験禁止条約(PTBT)が禁止の対象としていなかった地下核実験を含む、すべての核実験を禁止するという点において、核軍縮・不拡散上で極めて重要な意義を有する。発効の要件として、日本を含め主要44か国の批准が必要であることを規定しており、一部の発効要件国の批准の見通しが立っておらず条約は未発効である。CTBTは、1996年(平成8年)9月10日の国連総会で圧倒的多数の賛成で採択され、9月24日には条約が署名開放された。日本は、核兵器を保有する5か国に続き、同日、署名を行い、また、1997年(平成9年)7月8日に条約の批准書を国連に寄託し、4番目の批准国となった。1996年(平成8年)11月19日には、署名国会議の決定により、CTBT機関準備委員会が発足し、国際的な核実験監視のための検証体制の整備に向けて、核実験を監視する国際監視制度、監視データを解析する国際データセンター、データ伝送を行う広域通信網、現地査察の実施手順書等の整備が進められ、2000年には、すでに稼働している監視観測所からの監視データを解析した結果等が、国際データセンターから、批准国・署名国へ配信された。CTBTの発効要件を満たさず署名開放後3年を経過したので、2006年8月までに発効促進会議が4回開催されている。
<更新年月>
2006年11月   

<本文>
1.包括的核実験禁止条約(CTBT)とは
 包括的核実験禁止条約(CTBT:Comprehensive Nuclear−Test−Ban Treaty)は、締約国の義務として、核兵器の全ての実験的爆発および他の核爆発を禁止するとともに、仮に、これらの実験的爆発および他の核爆発が行われた場合には、国際的な監視制度による監視活動と現地査察により、核爆発の事実を確認する仕組みを規定するものである。
2.CTBTの交渉の経緯
 核兵器の開発およびその質的改善を行う上で、核実験を行うことが重要であることから、核実験の禁止は、核軍縮推進上重要な措置と考えられてきた。1958年(昭和33年)以来、国連総会において、毎年多くの核実験禁止に関する決議が採択されてきており、日本が共同提案国となったものも多い。環境汚染への懸念もあって、1963年(昭和38年)8月に成立した「大気圏内、宇宙空間および水中における核兵器実験を禁止する条約」(部分的核実験禁止条約:PTBT=Partial Test Ban Treaty)により、大気圏内、宇宙空間を含む大気圏外および水中での核兵器の実験的爆発および他の核爆発が禁止されたが、地下核実験だけは禁止されないまま、核兵器保有国による核実験が繰り返された。このため、地下核実験を含む全ての核実験の禁止が、国際社会の大きな軍縮課題の一つとされてきた。
 1970年(昭和45年)3月に発効した核兵器の不拡散に関する条約(核不拡散条約:NPT:Treaty on Non−Proliferation of Nuclear Weapons)では、第6条で、核軍備競争の停止、核軍縮の効果的措置および全面完全軍縮条約に関する交渉を行うことが規定されている。また、1992年10月には、米国大統領が、1997年(平成9年)以降の核実験を全面的に禁止する法案に署名している。これらの流れを受け、1993年(平成5年)の国連総会において、CTBTの交渉を開始することを求める決議が採択された。
 1993年(平成5年)8月、ジュネーブ軍縮会議の下に核実験禁止特別委員会が設置され、ここでCTBTの交渉が行われることとなり、1994年(平成6年)1月に条約交渉が開始された。1995年(平成7年)4月のNPT再検討・延長会議において、NPTの無期限延長が合意されるとともに、同時に合意された「核不拡散と核軍縮のための原則と目標」において、CTBT交渉を1996年中に妥結することが謳われた。1996年6月、核実験禁止特別委員会議長が最終条約案を提出した。関係国の協議に基づき条約案の一部が修正され、合意が図られたものの、全会一致を原則とする委員会においてインドが最終的に反対したため、同年8月、核実験禁止特別委員会は、軍縮会議の本会議に、条約案が採択できなかったとする報告書を提出し、軍縮会議において条約案を採択することが断念された。CTBTの交渉中であるにもかかわらず、フランスは、1995年(平成7年)9月、それまで4年余り中断していた核実験を再開した(1996年:平成8年1月終了)。また、中国も核実験を続け(1996年:平成8年7月一時停止を表明)、国際的反発を受けた。しかしながら、CTBTの成立を望む多数の国(日本を含む127か国)が、第50回国連総会再開会期に同条約案の採択を共同提案した。この結果、1996年(平成8年)9月10日、同会期において同条約案を採択する旨の決議が圧倒的多数の賛成で採択された(賛成は158か国、反対は、インド、ブータン、リビアの3か国、棄権はモーリシャス、タンザニア、レバノン、キューバおよびシリアの5か国であった)。
 1996年(平成8年)9月24日、同条約は署名開放され、同日、日本は核兵器を保有する5か国(アメリカ、イギリス、中国、フランス、ロシア)に続き6番目に署名を行い、1997年7月8日に条約の批准書を国連に寄託し、フィジー、カタール、ウズベキスタンに次ぎ4番目の批准国となった。
3.発効促進会議
 1998年(平成10年)5月には、インド、パキスタン両国がそれぞれ2回の核実験を行い国際的非難を受けた。1999年(平成11年)10月には、第1回CTBT発効促進会議が批准国・署名国等の参加の下に日本を議長国として開かれ、関係国にCTBTの早期批准を要請すること等が宣言として採択された。核兵器保有国では、核実験こそ行っていないものの、コンピュータによるシミュレーション実験、未臨界実験等を行っていると伝えられており、多くの国が懸念を表明した。このCTBT発効促進会議の直後にもかかわらず、米国上院本会議がCTBT批准案を否決した。
 第2回発効促進会議は2001年11月11日から13日までニューヨークで開催された。会議最終日には、各国に対する条約の早期署名・批准の呼びかけや核実験モラトリアムの維持等を盛り込んだ「最終宣言」(表1−1表1−2および表1−3参照)を採択して終了した。117か国が参加したが、CTBT批准反対の米国、条約未署名のインド、北朝鮮は参加しなかった。
 第3回発効促進会議(2003年9月3日〜5日、ウイーン)及び第4回発効促進会議(2005年9月21日〜23日、ニューヨーク)では、各国に対する条約の早期署名・批准の呼びかけや核実験モラトリウムの継続等を盛り込んだ最終宣言を採択した。
 CTBT発効促進会議(2年に1度開催)が開催されない年にCTBT発効促進の機運を維持・強化するために非公式にフレンズ外相会合が開催され、各国にCTBT早期署名・批准を求める共同声明を発出している。2006年10月9日、北朝鮮が核実験を実施したと発表した。
 2006年8月8日現在のCTBTの署名国、批准国を表2−1表2−2および表2−3に示す。署名は176か国、批准は135か国である。発効要件の44ヶ国については、署名が41ヶ国、批准が34ヶ国、署名済み未批准が7ヶ国(米国、中国、インドネシア、コロンビア、エジプト、イラン、イスラエル)で、未署名が3ヶ国(北朝鮮、インド、パキスタン)である(表3参照)。一部の発効要件国の批准の見通しが立っておらず条約は未発効である。
4.CTBTの概要
 表4に包括的核実験禁止条約(CTBT)の概要を示す。
4.1 条約に基づく締約国の基本的な義務
 本条約の締約国は、核兵器の実験的爆発又はいかなる他の核爆発も実施しないこと、これらの核爆発を禁止し及び防止すること、並びにこれらの核爆発の実施を実現させ、奨励し又はこれに参加することを差し控えることを約束する。
4.2 条約の実施のための組織
 条約の実施機関として、包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)をウイーンに設置する。機関の組織は、締約国会議、執行理事会および技術事務局(国際データセンターを含む)で構成される。締約国会議は、条約実施上の最高意志決定機関であり、全ての締約国によって構成され、毎年定期的に開催される通常会期と特別会期とがある。執行理事会は、国際監視制度の運用、現地査察の実施等日常的な業務について検討し、方針を決定する機関であり、51か国の理事国で構成される。技術事務局は、締約国会議および執行理事会の決定を受けて、日常的な業務を実施するとともに、締約国を援助する。また、締約国会議および執行理事会の会議の開催時には、会議が円滑に運営されるよう補佐する。技術事務局には国際データセンターが設置され、国際監視制度から得られるデータが処理され、解析され、結果が締約国に報告される。なお、核実験の疑いがあるかどうかの判定は、各締約国が、国際データセンターからの報告、締約国独自の解析等に基づいて行う。
4.3 国際監視制度
 国際監視制度は、条約の義務違反を検証するため、2007年を目途に89か国、337か所に4種類の監視技術を用いる監視施設を設置し、国際データセンターに24時間データを提供するものであって、地震学的監視施設、放射性核種監視施設(公認実験施設を含む)、水中音波監視施設、微気圧振動監視施設および広域通信網によって構成され、国際データセンターの支援を受ける。この国際監視制度は、技術事務局の管理下に置かれるが、各監視施設は、設置に責任を持つ国によって所有され、運用される。
 地震学的監視施設としては、主要観測網を構成する地震学的監視観測所が33か国に49施設(他に1施設未定)、補助観測網を構成する地震学的監視観測所が61か国(1施設は2国共有)に119施設(他に1施設未定)設置される。放射性核種監視施設としては、放射性核種監視観測所が37か国に79施設(他に1施設未定)、放射性核種監視のための公認実験施設が16か国に16施設設置される。水中音波監視施設としては、水中音波監視観測所が8か国に11施設設置される。また、微気圧振動監視施設としては、微気圧振動監視観測所が34か国に59施設(他に1施設未定)設置される。
4.4 現地査察
 条約違反の懸念が発生した場合、通常、協議および説明の手続きにより懸念の解明が図られる(96時間以内)。それでもなお懸念が解消されない場合には、締約国は、執行理事会に現地査察の実施を要請することができる。執行理事会は、この要請受領後96時間以内に執行理事会の30以上の理事国の賛成により、現地査察の実施を決定する。現地査察は査察団によって、要請受領後6日以内に開始され、事象が発生した区域において、あらかじめ一覧表に掲げられている装置を用いて行われる。また、執行理事会の承認を得て、掘削を行うこともできる(現地査察の要請から実施に至る時間的枠組みについて表5参照)。
 現地査察で使用される技術としては、上空飛行等による目視、ビデオおよび写真の撮影、マルチスペクトル画像の撮影、ガンマ線測定とそのエネルギー分別解析、環境試料の採取と分析、受動的な地震学的余震の監視、共鳴地震計測および能動的な地震探査、磁場および重力場の調査、地中レーダーによる測定、電気伝導度の測定、掘削による放射性試料の採取・分析等である。また、現地において、採取された試料の分析ができない場合には、機関が指定した実験施設に試料を移送し、そこで化学的および物理的分析を実施する。
4.5 発効要件
 軍縮会議の構成国であって交渉に参加し、かつ、国際原子力機関(IAEA:International Atomic Energy Agency)の「世界の発電用原子炉」等の表に掲げられている44か国全てが批准書を寄託した後、180日で発効する。ただし、条約の署名開放後2年間は発効しない。条約の署名開放後3年を経過しても発効しない場合には、批准国により、発効促進会議を開催する。
5.CTBTO準備委員会の創設とその活動
 CTBTの発効に先立ち、あらかじめ、核実験を探知できる観測網等を国際的に整備しておくため、1996年(平成8年)11月19日、署名国会議の決定により、CTBT機関準備委員会を創設することが決定された。直ちに準備委員会の第1会期が開催され、事務局長が任命され(1997年:平成9年3月3日)、暫定技術事務局(PTS、組織図については図1参照)の設立(3月17日発足)が決定されるとともに、2つの作業部会と1つの諮問委員会が設置された。作業部会A(WGA)では、職員規則、財務規則、官房予算、各種モデル取決め等行財政事項が検討されている。作業部会B(WGB)では、国際監視制度の監視施設の設置(事前調査、施設の技術仕様の作成、機材発注計画の策定、研修等)、国際データセンター(IDC)の設置、検証関連予算、各種運用手引き書の整備、現地査察に関する事項等が審議されている。また、諮問委員会は、各国専門家により構成され、法律・財政問題、予算およびこれらに関連する問題を審議している。準備委員会等の会合は、ほぼ年3回開催されており、諸課題の検討、方針の決定等がなされている。これを受け、PTSを中心に、国際的な核実験監視のための検証体制の整備に向けて、核実験を監視する観測施設、監視データを集中管理し解析するIDC、データ伝送を行う広域通信網、現地査察の実施手順書等の整備が進められている。
 1998年(平成10年)5月のインドおよびパキスタンによる核実験の際には、地震学的監視網が核実験に伴う事象の探知に成功しており、国際監視制度の有効性を実証している。2000年(平成12年)には、すでに稼働している監視観測所からの監視データを解析した結果等が、IDCから批准国・署名国へ配信された。
6.日本の対応
 日本は、国連総会でCTBTの採択に努力したのを始め、第1回発効促進会議では議長国となる等、CTBTの早期発効のため努力している。また、準備委員会の活動に積極的に参加しており、PTSには5名の職員を派遣している。CTBT検証・実施体制整備の関係では、これまで、核実験探知技術の向上に貢献する一方、研修事業に協力している。また、監視観測所の整備については、10ヶ所の監視施設を国内に設置することとされており、2002年から順次建設している。これまでに、高崎放射線核種監視観測所、松代地震監視主要観測所及び夷隅微気圧振動監視観測所が、それぞれCTBT機関準備委員会より認証を得て、暫定的運用を正式に開始した。これらの施設の運用を通じて、核実験の監視活動に貢献することとしている。さらに、国内データセンター(NDC)を設置し、監視データを独自に解析して、現地査察の要請があった場合に執行理事会で適切な対応が取れるように措置する一方、現地査察が実施される場合にはこれに協力する計画である。
 国際監視制度に係る監視施設の配置個所は、条約の議定書の附属書に定められている。表6に、国際監視制度における監視施設の種類とわが国の貢献を示す。水中音波監視施設は日本には設置されないことになっている。
(前回更新:2002年3月)
<図/表>
表1−1 包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議「最終宣言」(2001年11月13日)仮訳(1/3)
表1−2 包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議「最終宣言」(2001年11月13日)仮訳(2/3)
表1−3 包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議「最終宣言」(2001年11月13日)仮訳(1/3)
表2−1 CTBTの署名国、批准国(2006年8月8日現在)(1/3)
表2−2 CTBTの署名国、批准国(2006年8月8日現在)(2/3)
表2−3 CTBTの署名国、批准国(2006年8月8日現在)(2/3)
表3 CTBT発効要件国44か国(2006年8月8日現在)
表4 包括的核実験禁止条約(CTBT)の概要
表5 現地査察(OSI)の要請から実施に至る時間的枠組み
表6 国際監視制度における監視施設の種類とわが国の貢献
図1 包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会暫定技術事務局組織図

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<関連タイトル>
部分的核実験禁止条約(PTBT) (13-04-01-12)
核兵器不拡散条約(NPT) (13-04-01-01)

<参考文献>
(1)原子力委員会ホームページ:原子力白書(平成17年版)
(2)UNITED NATIONS:COMPREHENSIVE NUCLEAR−TEST−BAN TREATY、UNITED NATIONS(1996)
(3)内山 美生、田畑 好章:全面核実験禁止条約(CTBT)交渉の経緯と現状、核物質管理センターニュース、VOL.25,No.4(1996)
(4)菊池 昌廣、礒 章子:新たな核不拡散体制に向けて−包括的核実験禁止条約(CTBT)について、核物質管理センターニュース、VOL.26,Nos.3,5,6,7(1997)
(5)福井 康人:包括的核実験禁止条約(CTBT)−その後の経過と査察制度についての検討状況、核物質管理センターニュース、VOL.27,No.12(1998)、VOL.28,Nos.5,9(1999)
(6)福井 康人:包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議について、核物質管理センターニュース、VOL.28,No.12(1999)
(7)外務省ホームページ:軍縮・不拡散 包括的核実験禁止条約(CTBT)(平成18年9月)、http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kaku/ctbt/
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