<大項目> 国際協力・原子力関連機関
<中項目> 核をめぐる動向と保障措置・核物質防護
<小項目> 保障措置
<タイトル>
放射性廃棄物中の核物質の測定技術 (13-05-02-16)

<概要>
 核燃料サイクルを完結するためには、核燃料サイクルの各施設から発生する放射性廃棄物の処理処分は避けられない課題である。したがって、これらの放射性廃棄物中に含まれている核物質の量を施設側が確定し、これを査察側が検認することは保障措置上の重要な課題となる。そこで、直接測定可能であるという観点から、気体、液体および固体等の廃棄物に含まれる核物質を確定するための測定法として化学分析を必要としない非破壊測定(NDA)技術に限定して解説する。
<更新年月>
2006年12月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.非破壊測定(NDA:Non-Destructive Assay)
 直接核物質量を確定できるNDA手法に限定し、パッシブγ線法、パッシブ中性子法およびアクティブ法について以下に示す。
1.1 パッシブγ線法
 核物質のほとんどの同位体は、α壊変やβ壊変に伴って、それぞれ固有のγ線を放出する。したがって、そのγ線を測定することにより、核物質の分析計量ができる。これがパッシブγ線法であり、通常のγ線測定装置を用いてある程度の分析が可能であり、最も一般的な方法である。
 検出対象がγ線であるため、試料容器や試料自体による吸収があり、定量分析を行うには吸収補正を行う必要がある。特にエネルギーの低いγ線の場合には試料容器による吸収が大きくなり測定が困難になる。吸収補正を行う方法として、外部γ線源を使用してその吸収を測定する方法と、試料中の同一核種から放出されるエネルギーの異なるγ線強度を測定して核データと比較することにより吸収を評価する方法とがある。235Uの186keVのγ線はウラン燃料の濃縮度測定に使用され、また、239Puの分析には約350keVから415keVのγ線が一般に使用される。このエネルギー領域には241Amなどのγ線も含まれるため、分解能の高い検出器を使用する必要がある。Puの同位体比測定には、100keV以下のエネルギーの低いγ線も利用されるが、対象試料は試料形状や容器の厚さを薄くすることができる溶液などに限定される。
 γ線検出器として、エネルギー分解能の良いGe検出器あるいはエネルギー分解能は劣るが安価で保守性の良いNaI(Tl)検出器が使用される。Ge検出器を使用した装置で代表的なものにはSGS(Segmented Gamma Scanner)法がある。また、半導体検出器の1種であるCdTe検出器も用いられ始めている。
1.2 パッシブ中性子法
 U、Puの同位体のあるものは、ある割合で自発核分裂を起こし中性子を放出する。また、α壊変をするものでは、放出された数MeVのエネルギーを有するα粒子が試料中の軽元素と反応して中性子を放出する。この(α、n)反応を起こす軽元素としては、酸化物燃料では17O、18Oが、フッ化物では16Fが知られている。これら自然壊変に伴って放出される中性子を計数して核物質の定量を行う方法がパッシブ中性子法である。検出対象が中性子であるため、試料容器その他に対する透過性が、一般的にγ線より高く、鉄、鉛などを含む可能性のある廃棄物などの測定にも利用される。
 パッシブ中性子法には、大別して2つの方法がある。1つは試料から放出される中性子を単純に計数する全中性子計数法であり、他は自発核分裂で放出される複数個の中性子を適当なゲート幅で同時計数して、(α、n)反応で単発的に発生する中性子と弁別し、自発核分裂性物質の測定を行う同時計数法である。(α、n)反応で発生する中性子量は試料の化学形態により異なり、したがって、全中性子計数法はその影響を受けるが、同時計数法はその影響を受けない。中性子検出器としては、10B検出器あるいは3He検出器が用いられるが、3He検出器の方が高感度のためよく用いられている。
1.3 アクティブ法
 試料を中性子、γ線などで照射して核物質に核反応を誘起し、その結果発生する放射線を計数することで核物質の分析を行う方法がアクティブ法である。核反応としては(n、f)、(n、γ)、(γ、f)反応等が利用されるが、放射性同位元素の中性子源や小型加速器による中性子発生装置が利用しやすいこと、反応断面積が大きく高い分析感度が期待できることなどから(n、f)反応が最も一般的に利用される。
 アクティブ法は照射線源強度を増大することにより分析感度を高めることができるので一般にパッシブ法よりは感度が良い。また、高速中性子を用いれば透過性が高いので、大きな試料や高濃度の試料の測定が可能である。
 最も一般的な中性子核分裂法の場合の計数対象は核分裂で発生する即発中性子、遅発中性子、遅発γ線などである。遅発中性子、遅発γ線を計数対象とする場合には、計数時に照射線源からのバックグラウンド放射線が検出系にできるだけ入らぬよう配慮が必要である。即発中性子計数の場合には照射用中性子との弁別が必要である。この方法としては、線源から発生する中性子と試料から核分裂で発生する中性子のエネルギー弁別法や減速材中の中性子消滅時間差を利用するDDT法(Differential Die-away Technique)、核分裂中性子放出の同時中性子を利用した同時計数法などがある。
2.放射性廃棄物に対するNDA手法
 低γ線量および高γ線量の固体廃棄物、固化体、ハル(溶解工程から出る燃料被覆の廃材)、液体廃棄物、気体廃棄物の測定手法について以下に示す。
2.1 低γ線量の固体廃棄物
(1)パッシブγ線法
 測定対象として、4リットルの容器から200リットルのドラム缶まであるが、紙、布のような低密度の廃棄物に限定される。廃棄物の他にフィルタに付着したPu量をNaI(ヨウ化ナトリウム)型シンチレーション計数器を使用し、Puの300〜450keVのγ線、235Uの186keVのγ線を測定しているのが大部分である。
 Ge検出器を使用する場合には、20分程度の測定で、10〜200リットルの低密度の低γ線廃棄物に対しては、精度±10〜30%、Pu検出限界が1mg〜1gという性能が得られる。
 NaI検出器の場合には、10分以内の測定で、5〜200リットルの低密度の低γ線量の廃棄物に対しては、精度±5〜50%、Pu検出限界が数10mg〜200mgという性能である。NaIは安価で使用しやすいという特徴があるが、分解能があまり良くないので、ウランおよびプルトニウム混合酸化物のウラン分析には使用されていない。
(2)パッシブ中性子法
 測定対象として、20リットル容器から3,000リットルの箱型容器にわたり、測定時間が20分程度で測定精度が±15%程度、検出限界が10mgPu程度という結果が得られている。
 パッシブ中性子法は、Pu同位体比および中性子発生率の大きい242Cm又は244Cmの存在比が既知でないと精度の良い分析ができないが、単純な装置構成で高密度の廃棄物まで測定できるという利点がある。
(3)即発中性子法
 低γ線量の固体廃棄物に対する即発中性子法はDDT法を基本とした測定手法である。DDT法は、α廃棄物管理のための10nCi/gの弁別用に開発された手法で非常に高感度である(検出限界〜1mgPu)。
 測定対象としては、200リットルドラム缶およびほぼ1.2m×1.2m×2.1mの箱型容器(約3,000リットル)が大部分で、測定時間3分程度で、精度が±10%程度、検出限界が1〜20mgPuという結果が得られている。
(4)遅発中性子法
 測定対象としては、3リットル容器から200リットルドラム缶まであり、10分程度の測定時間で、検出限界が約5nCi/g(5mgPu程度)となっている。
 252Cfによる遅発中性子法は、核分裂性物質量の直接測定が可能で、しかも構造的には単純な中性子照射機構であるという特徴がある。
2.2 高γ線量の固体廃棄物
 高γ線量の固体廃棄物に対するNDA手法には、アクティブ法とパッシブ中性子法がある。アクティブ法は、再処理工場又は照射後試験施設などで超ウラン元素(TRU)を含む高γ線廃棄物の核分裂性物質量測定に、またパッシブ法は各種廃棄物のα放射能測定に使用され、プルトニウム量を評価するのに適している。核分裂性物質量の直接測定の必要性およびCmの存在の可能性がある場合は、アクティブ法が必要である。
2.3 固化体
 固化体には高レベル液体廃棄物を固化したガラス固化体、中・低レベル液体廃棄物を固化したプラスチック固化体およびアスファルト固化体等がある。
 固化体のNDA手法としては、パッシブ中性子法あるいはアクティブ中性子法が挙げられる。ところが、プラスチックおよびアスファルトは中性子遮蔽能力の高い物質であるため、この手法の適用には相当困難が予想される。また、ガラス固化体も熱中性子吸収物質であるボロンを大量に含んでいるので、中性子検出感度が極めて低い。
 このように、いずれの固化体も、他の廃棄物に比して中性子測定条件が悪い。固化前の液体状態で測定することも1つの方法として考えられるが、その場合は破壊測定(DA:Destructive Assay)手法が適用される。
2.4 ハル
 再処理工場で発生するハルに対するNDA手法は、137Cs(セシウム137)、144Pr(プラセオジム144)等のFP(Fisson Product:核分裂生成物)のγ線を測定するパッシブγ線法と遅発中性子法に大別できる。ここで、前者は装置構成が単純であるが、FPの定量結果から核物質の評価を行う間接測定であるため、核物質の検認性が低く、場合によっては測定誤差が大きくなることがある。
 現在は、上記の両測定法によるハルモニタが行われているが、核分裂性物質量を直接測定する必要がある場合には、遅発中性子法のようなアクティブ法が必要である。
 ハルモニタは、例えば直径100〜400mmの容器に対して30分程度の測定で、精度±10〜50%、検出限界が溶解前の燃料に対して0.05〜0.2%という結果が得られている。
2.5 液体廃棄物
 液体廃棄物に対するNDA手法は、Si(Li)半導体検出器でPuのL系列の固有X線を測定する方法と、Be容器に入れられた廃液から発生する(α、n)反応による中性子を測定する方法がある。
2.6 気体廃棄物
 気体廃棄物にはNDA手法は適用されていない。気体廃棄物になる可能性がある核燃料物質には、UF6ガスがある。このガスに対するNDA手法は、全中性子測定法およびパッシブγ線法が考えられる。
(前回更新:2001年3月)
<関連タイトル>
査察とその現状 (13-05-02-02)
保障措置の対象となる物質と施設 (13-05-02-03)
保障措置のための目標と技術的手段 (13-05-02-04)
保障措置に用いられる手法の設計 (13-05-02-05)
保障措置技術開発と国際協力 (13-05-02-17)

<参考文献>
(1)IAEA/SG/INF/1、IAEA保障措置用語集
(2)IAEA/SG/INF/3、IAEA保障措置−核物質の国内計量管理制度の指針−
(3)IAEA/SG/INF/5、IAEA保障措置−保障措置技術および測定装置−
(4)IAEA保障措置技術開発支援計画(JASPAS)
(5)原子炉等規制法
(6)国際規制物資の使用に関する規則
(7)核兵器の不拡散に関する条約第3条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定(略して、「日・IAEA保障措置協定」)並びに当該協定への追加議定書
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