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<概要>
 日本原子力発電株式会社(JAPC、げんでん)は、茨城県東海村と福井県敦賀市に原子力発電所を持つ卸電気事業者である。原子力発電の開拓企業化のため、1957年(昭和32年)11月、日本で唯一の原子力発電専業の会社として設立された。東海村の東海発電所(黒鉛減速炭酸ガス冷却型(GCR)、電気出力16万6,000kW)は日本最初の商業用原子炉として1966年(昭和41年)に営業運転を開始した。現在、東海発電所は経済性を理由に1998年(平成10年)3月31日に27年間の営業運転を停止、原子炉解体が進められている。国内では、日本初の商業用原子炉解体となる。関連企業に、原電事業株式会社、原電ビジネスサービス株式会社、原電情報システム株式会社がある。
<更新年月>
2007年07月   

<本文>
1.設立の経緯と経過
 日本原子力発電株式会社(JAPC、げんでん)は、原子力発電の開拓企業化のため、1957年(昭和32年)、日本で唯一の原子力発電専業の会社として設立された。1966年(昭和41年)には、日本初の商業用原子力発電所として、茨城県東海村において東海発電所(黒鉛減速炭酸ガス冷却型(GCR)、電気出力16万6,000kW)の営業運転を開始。1970年(昭和45年)には福井県敦賀市において日本初の商業用軽水炉、敦賀発電所1号機(沸騰水型軽水炉(BWR)、電気出力35万7,000kW)の営業運転を開始した。1978年(昭和53年)には日本初の110万kW級原子力発電所として東海第二発電所(沸騰水型軽水炉(BWR)、電気出力110万kW)を、また1987年(昭和62年)には鋼板製の格納容器の代わりにプレストレストコンクリート製の格納容器(PCCV)を採用した、ほぼ完全な国産プラントである敦賀発電所2号機(国産改良標準型加圧水炉(PWR)、電気出力116万kW)の営業運転を開始した。プレストレストコンクリート製格納容器は直径約7mmの鋼線163本を束ねた緊張ケーブルを、鉄筋コンクリートの壁中にあるシース(管)に挿入して網目状に締め付けることで、鉄筋コンクリートの強度を増すとともに、小型化や軽量化、気密性、耐震性・作業性の向上を図ったものである。なお、東海発電所に関しては1998年(平成10年)3月31日に営業運転を終了して、2001年(平成13年)12月からわが国初となる商業用原子力発電所の廃止措置着手している。表1に発電設備の概要を示す。
 日本原子力発電株式会社は、原子力発電所の建設、運転操作およびこれに伴う電気の供給、およびそれに付帯する関連事業を行うことで、原子力発電の開拓企業化のための事業を営むことを目的とし、委託による原子力発電所に関する調査、設計、工事監督、建設、運転およびその他の技術援助等に関する事業を展開することが可能である。
2.組織構成
 2007年6月末現在の会社組織図を図1に示す。会社役員は取締役社長1名、取締役副社長2名、常務取締役6名、取締役11名、常任監査役1名、監査役3名から構成される。なお、会社株の持ち株比率は沖縄電力を除く9電力・電源開発(株)が約90%を占める。
 日本原子力発電株式会社は、卸電気事業者として原子力発電所の運転により発電した電力を東北電力(株)、東京電力(株)、中部電力(株)、北陸電力(株)、関西電力(株)に販売している。また、子会社である原電事業(株)には、放射線管理並びに発電所関連設備の運転・保守業務を、原電ビジネスサービス(株)には、発電所およびその付帯設備に係る運営補助業務を、原電情報システム(株)には情報処理システムの開発・保守等をそれぞれ委託している。
 なお、関連会社として2005年11月に原子力発電所から発生する使用済燃料の貯蔵・管理およびこれに付帯関連する事業を行うことを目的としたリサイクル燃料貯蔵(株)を東京電力(株)と共同で設立した。
3.発電設備
 日本原子力発電株式会社は東海発電所(廃止措置中)、東海第二発電所、敦賀発電所1号機、敦賀発電所2号機の発電設備を持つ。各発電所の運転状況、周辺環境放射線監視状況、定期検査状況等は日本原子力発電株式会社ホームページにて情報を入手することが可能である。
 なお、日本原子力発電株式会社は現在、敦賀発電所3、4号機の増設を計画中である。3、4号機はともに電気出力153.8万kW。非常用炉心冷却設備、原子炉の内部構造物、蒸気発生器に改良を加えて、安全性・信頼性・運転性能を向上させた改良型加圧水型軽水炉(改良型PWR)で、2010年10月の着工を目標に準備を進めている。3号機は2016年3月、4号機は2017年3月に運転開始を予定している。表2に2006年度(平成18年度)電源供給計画の概要を示す。
4.事業の概要
 日本原子力発電株式会社における主な事業内容を以下に示す。
(1)安全運転に向けた取組み
 トラブルの未然防止策や長期的な設備の健全性を確保するための設備保全方策および体制等の構築と拡充、プラントの高経年化対策への取組み。
(2)発電原価の低減
 経営効率化を進め、コストダウンや設備利用率向上への取組からの販売電力単価の低減。
(3)要員計画の概要
 業務の合理化、要員活用の最大化を図るとともに敦賀3、4号機の建設、東海発電所廃止措置をはじめとする各種プロジェクトへの要員増強。
(4)直営による業務の改革
 保修分野での「状態監視保全」、「保修工事直営」「設備管理の直営」の3つの直営化、設備保修の最適化、人材の強化、プラントの安全性、信頼性の向上を目指した直営業務の推進。技能レベルの向上や保修人材の育成。
(5)中間貯蔵事業の推進
 2005年(平成17年)11月に、東京電力株式会社と共同で使用済燃料中間貯蔵事業を営む新会社「リサイクル燃料貯蔵株式会社」を設立。乾式キャスク貯蔵施設の知見等の活用。
(6)プルサーマル計画の推進
 敦賀発電所2号機および東海第二発電所でのプルサーマル計画実現への活動。
(7)出力向上計画の推進
 既設発電所の設備更新により生ずる「出力向上」計画の推進。
(8)将来炉の研究開発
 日本原子力研究開発機構と電力が実施している高速増殖炉サイクル技術に係る「実用化戦略調査研究」への協力。高速増殖炉開発「もんじゅ」への技術協力。「中小型炉」への予備的基本設計の検討および要素技術の研究の推進。
<図/表>
表1 日本原子力発電株式会社における発電設備
表1  日本原子力発電株式会社における発電設備
表2 電源供給計画の概要
表2  電源供給計画の概要
図1 日本原子力発電株式会社組織構成
図1  日本原子力発電株式会社組織構成

<関連タイトル>
PWRの原子炉格納容器 (02-04-04-02)
日本原子力発電(株)東海発電所の廃止措置について (05-02-03-13)
東海発電所(GCR)の廃止措置計画 (05-02-03-14)

<参考文献>
(1)日本原子力発電株式会社:http://www.japc.co.jp/
(2)日本原子力発電株式会社:平成17年度決算概況について(平成18年5月31日)
(3)日本原子力発電株式会社:平成18年度決算概況について(平成19年5月31日)
(4)日本原子力発電株式会社:「平成18年度経営の基本計画」の概要(平成18年3月)、9/9
(5)日本原子力発電株式会社:敦賀発電所3,4号機増設計画に係る主要経緯と今後の予定
(6)日本原子力発電株式会社:組織図
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