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<概要>
 電気事業連合会(電事連)は、日本の電気事業を円滑に運営していくことを目的として、1952年11月(昭和27年)、全国9つの電力会社によって設立された。2000年3月(平成12年)に沖縄電力が加盟し、現在10電力体制で運営されている。
 電事連は、電気事業の健全な発展を図り、日本の経済の発展と国民生活の向上に寄与するを目的として、地域を代表する電力会社間の緊密な対話と交流、意見交換の場を提供するとともに、安定したエネルギー供給体制の確立に向けて多彩な活動を行っている。
<更新年月>
2006年07月   

<本文>
1.設立の経緯および目的
 電気事業連合会(電事連)は、日本の電気事業を円滑に運営していくことを目的として、1952年11月20日(昭和27年)、全国9つの電力会社によって設立された。以来、地域を代表する電力会社間の緊密な対話と交流をはじめ、新しい時代の電気事業をつくり出していくための創造的な意見交換の場として貢献している。また、電事連は日本のエネルギー産業の一翼を担うという自覚のもと、安定したエネルギー供給体制の確立に向けても多彩な活動を行っている。2000年3月(平成12年)に沖縄電力が加盟し、現在、電事連は10電力体制で運営されている。電事連の目的は電気事業の健全な発展を図り、日本の経済の発展と国民生活の向上に寄与することである。
2.組織
 電事連は、現在、北海道電力・東北電力・東京電力・中部電力・北陸電力・関西電力・中国電力・四国電力・九州電力・沖縄電力の一般電気事業者10社(表1参照)により運営されている。電事連の事務局組織図および会議体組織図を図1および図2に示す。
 なお、電気事業者は、広域運営にかかわる電源の共同開発・電力融通・送変電設備の共同運用、技術開発や災害時における資機材の融通や要員の応援などを円滑に行うため、1958年4月から「中央電力協議会」を組織している。会員は、広域運営のための送変電設備を有する9電力会社およびJ−POWER(旧 電源開発)が参加している。
 また、16〜18基のプルサーマル導入を2010年までに実施するとして、2001年6月から電力9社と日本原子力発電、J−POWER、日本原燃で構成する「プルサーマル推進連絡協議会」を設置。電事連内には「プルサーマル推進広報委員会」等を設置して、プルサーマルに対する理解活動に向けた体制を強化している。
3.行動指針
 電気事業は、日本のエネルギー基盤を支える基幹産業として、電力の安定供給を通じて、国民生活の向上と社会・経済の発展に寄与するという使命を担っていることから、電事連は、1997年10月に、「電気事業連合会行動指針」を策定、2002年12月に改訂版を発表した。行動指針の主な内容は、
(1)エネルギー基盤を支える基幹産業として、エネルギーの供給責任、安全確保、環境保全、地域貢献に取組むこと。
(2)社会から信頼される事業者として、法令遵守、かつ公正な事業活動、コミュニケーション、明朗な企業風土、トップの責務。
 また、それぞれの項目について、その基本的施策も規定している。表2にその概要を示す。
4.主な事業活動
 電事連の主な事業は、次の5項目である。
(1)電気事業に関する知識の普及、啓発および広報 。
(2)電気事業に関する資料、情報等の収集および頒布 。
(3)電気事業に関する調査研究および統計の作成 。
(4)電気事業に関する意見の表明 。
(5)その他、本会の目的を達成するために必要な事項 。
 電気事業は現在、卸電力取引所や電力系統利用協議会の本格運用、小売自由化範囲の拡大など、市場原理の一層の活用を目指した新制度をスタートさせている。こうした状況変化をふまえ、各電力会社の取組みに加えて、電力の安定供給の確保や環境保全という公益的課題に資する技術開発について、共同研究や国の研究開発プロジェジェクトへの参画など、効率的かつ着実な取組みが電事連に求められている。
 その一例として2005年度には、安全を確保した上での原子力発電の経済性の一層の向上、原子燃料サイクルの確立に向けた原子力関連技術の開発、石炭ガス化複合発電(IGCC)、ヒートポンプの効率向上のための技術開発などがある。以下、具体的に電力の安定供給と環境保全に取組む電事連の技術開発の概略を示す。
(1)軽水炉関連技術・・・電気事業の基幹電源として、経済性の一層の向上に資する技術開発、軽水炉時代の長期化に対応した技術の開発。
(2)原子燃料サイクル体系の確立に向けた技術開発・・・ウラン濃縮再処理およびリサイクル燃料資源中間貯蔵など、原子燃料サイクル事業を支援するための技術の開発。
(3)放射性廃棄物の合理的な処理処分の具体化に向けた技術開発・・・高レベル放射性廃棄物をはじめとする全ての放射性廃棄物について、早期に安全かつ効率的な処分が行えるよう、国の研究機関や日本原燃、原子力発電環境整備機構等と連係した技術の開発。また、2005年度通常国会で行われた原子炉等規制法におけるクリアランスレベル法制化、および廃止処置安全規制の枠組みの改定を踏まえて、原子炉廃止措置で発生する放射性廃棄物の合理的な処理処分制度と、民間規格の整備の検討。
(4)高速増殖炉の実用化に向けた技術開発・・・高速増殖炉は、将来エネルギーの選択肢を確保しておく観点から、核燃料サイクル開発機構(現、(独)日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター・核燃料サイクル工学研究所)が中心となって実施している「実用化戦略調査研究」への支援。
(5)石炭ガス化複合発電(IGCC)・・・石炭をガス化し、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて発電する石炭ガス化複合発電は、従来の石炭火力(微粉炭方式)より高い46〜48%程度(送電端)の発電効率が見込まれる。現在は、商用機の1/2規模の実証機(1,700トン/日:250MW級)を開発・建設し、信頼性、経済性および運用特性を検証するための実証研究に取り組んでいる。実証機の建設は2007年度から進められる予定。
(6)高温形燃料電池・・・高発電効率、燃料多様化、耐久性が期待できる固体酸化物形燃料電池(SOFC)の技術開発。2004年度から実用化に向けて、10kW〜数100kW級の発電システムの開発に着手。2005年度はセル・モジュールの改良、システム設計。
(7)系統安定化技術・・・分散型電源の普及拡大や電力系統利用者の増加に対応し、将来的にも電力品質を維持する、系統信頼度評価方法の開発や系統安定化に資する技術の開発。
(8)超電導技術・・・超電導線材の開発、超電導電力ネットワーク制御技術(SMES)などの実用化の推進。
 そのほか、発電から流通までの様々な分野で、低廉な設備・保守運用の実現を目指した技術の開発・適用、電気の効率的利用、炭酸ガス削減による環境保全を目的にした、自然冷媒(CO2)のヒートポンプの効率向上や寒冷地での利用拡大などがある。
5.原子力関連の広報活動
 電事連から出版されている原子力関連の出版物に、「原子力・エネルギー図面集」、コンセンサス [原子力Q&A]、原子力Q&A (定期検査について、放射線の疑問にお答えします、原子力発電所防災対策について、放射性廃棄物について)、原子力発電所の運転状況や放射性廃棄物等のデータを紹介する原子力発電四季報などがある。
 また、原子力に対する理解促進のため、電源立地地域を重点に説明会・勉強会の実施、女性ネットワークと連携したシンポジウムの開催、次代を担う子供たちへのエネルギー教育支援活動として2002年度から教育現場への講師派遣などを行っている。
<図/表>
表1 電気事業連合会の会員構成の概要
表1  電気事業連合会の会員構成の概要
表2 電気事業連合会行動指針の基本的施策
表2  電気事業連合会行動指針の基本的施策
図1 電気事業連合会の事務局組織図
図1  電気事業連合会の事務局組織図
図2 電気事業連合会の会議体組織図
図2  電気事業連合会の会議体組織図

<関連タイトル>
電力広域運営の目的と実際 (01-09-05-06)
日本のプルトニウム利用計画 (04-09-02-11)

<参考文献>
(1) 電気事業連合会ホームページ:電気事業連合会の概要
(2) 電気事業連合会ホームページ:電気事業連合会行動指針(2002年12月20日):
(3) 電気事業連合会ホームページ:電気事業連合会中央電力協議会、「2005年度電力の技術開発」の概要(2005年5月23日)
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