<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 核物質管理センターは、わが国の核物質管理に関する業務の中心的な実施機関として、保障措置核物質防護に関する業務などの推進を目的として、1972年4月に設立された財団法人である。原子炉等規制法に基づいて、1977年12月、核物質管理の「指定情報処理機関」に、さらに1999年12月、「指定保障措置検査等実施機関」に指定された。センターの主な業務は、保障措置関連の情報処理、計量管理を検証するための化学分析の実施、原子力施設での保障措置検査・核物質等の試料分析、保障措置技術・核物質情報管理技術及び核物質防護評価システムなどの調査・研究開発、核物質管理に関する専門家の養成及び知識の普及、IAEAをはじめとして原子力関係諸外国・諸機関との核物質管理に関する情報交換などの国際協力である。
<更新年月>
2011年01月   

<本文>
1.核物質管理センター(JNMCC)の役割
 核物質管理センター(Japan Nuclear Material Control Center)は、わが国の核物質管理に関する業務の中心的な実施機関として、保障措置や核物質防護などに関する業務、研究開発及び国際協力を推進することを目的として、昭和47年(1972年)4月に設立された財団法人である。
 原子力基本法の下に、平和目的に限って原子力開発と利用を進めているわが国は、諸外国と平和利用の約束を含めた二国間原子力協力協定を締結するとともに、昭和51年(1976年)には核不拡散条約NPT:核兵器拡散防止条約)に加入し、昭和52年(1977年)に国内全ての核物質を国際保障措置下におくという包括的な保障措置協定を国際原子力機関(IAEA)と締結した。これを受けて、国内の核物質管理体制の整備の一環として、核物質管理センターが昭和52年(1977年)12月に原子炉等規制法に基づく「指定情報処理機関」に、さらに、平成11年(1999年)2月に「指定保障措置検査等実施機関」の指定を受けた。
 図1にわが国の保障措置実施体制における当センターの位置づけを示す。平成22年(2010年)現在、年間予算約31億円、常勤役職員175名、本部(東京都台東区)、東海保障措置センター及び六ヶ所保障措置センターにより運営されている。
2.主な業務
 (1)情報処理
 核物質管理センターは、「原子炉等規制法」に基づく指定情報処理機関として、保障措置関連情報の整理及び解析などを担当している。すなわち、法律に基づき核物質を取り扱う事業者(原子力事業者)が国に提出した核物質の在庫変動報告、物質収支報告及び実在庫明細表などの計量管理報告書の内容を確認し、その結果を国に報告するとともに、国がIAEAに提出する報告データ並びに二国間原子力協力協定締結国に基づいて提出する供給当事国別の在庫量などの報告書のとりまとめを行っている。このほか、核物質の輸出入計画、大学などが取り扱う少量の核物質の使用状況、国際規制物質である減速材などの報告書のとりまとめも行っている。
 また、原子力事業者から報告された計量管理データの査察情報を、国が施設から提出を受けたウランプルトニウムの試料の分析結果などと統計学的に比較検討を行い、その妥当性の検証を行っている。図2に保障措置関連情報処理業務の概念図を示す。
 (2)保障措置分析・測定・検査
 原子力事業者が正しく計量管理を実施していることを確認するため、国の委託を受け、査察官が施設から提出を受けたウランやプルトニウムの試料の化学分析を実施する。また、査察現場で査察官が使用する非破壊測定器の較正や調整などを行っている。
 また、平成12年(2000年)1月より「ウラン燃料加工施設」、「プルトニウム燃料加工施設」、「再処理施設」、「ウラン濃縮施設」、「研究炉」及び「その他の施設」などの国内原子力施設にIAEA査察官とともに立ち入り、保障措置検査の一部または全部を実施している。
 (3)調査・研究開発
 原子力施設に適用する効果的かつ効率的な保障措置手法を確立するための保障措置技術の調査研究・試験などの研究開発、核物質の国際移転情報と供給当事国別管理情報との整合性を取るための情報管理技術の開発、輸送中の核物質防護対応や大型再処理施設などの核物質防護評価システムの研究開発、核不拡散に関する調査研究などを実施している。表1に主な調査研究開発の項目を示す。
 (4)国際協力の推進
 核物質管理センターは対IAEA保障措置技術開発支援計画(JASPAS)の実施コーディネーターとして、国とIAEA及び国内の各プロジェクト実施機関との連絡・調整を担当している。また、IAEAをはじめとして関係諸国、諸機関と保障措置や核物質防護、核物質管理技術などに関する情報交換を実施している。
 (5)その他
 核物質管理に関連する専門家の養成、核物質管理に関する知識の普及などの活動を行っている。
3.所在地など
 本部(東京都台東区)のほかに、東海保障措置センター(茨城県東海村)及び六ヶ所保障措置センター(青森県六ヶ所村)がある。
  本部所在地:〒110-0015 台東区東上野1-28-9 キクヤビル
  電 話:03-5816-7733
  FAX:03-3834-5217
  URL:http://www.jnmcc.or.jp/
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1 核物理管理センターにおける主な調査研究
表1  核物理管理センターにおける主な調査研究
図1 核物質管理センターの位置づけ
図1  核物質管理センターの位置づけ
図2 保障措置関連情報処理業務の概念図
図2  保障措置関連情報処理業務の概念図

<関連タイトル>
日本の主な原子力関連機関一覧 (13-02-02-01)
保障措置のあらまし (13-05-02-01)

<参考文献>
(1)(財)核物質管理センター(編):(財)核物質管理センター、(2010年10月)
(2)(財)核物質管理センター(編):やさしい核物質管理読本、(2010年9月)
(3)(財)核物質管理センター:http://www.jnmcc.or.jp/
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ