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<概要>
 昭和63年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された故障・トラブル等の件数は23件であった。
 一基当たりの報告件数は 0.6件であった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和63年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された故障・トラブル等の件数は23件であった。一基当たりの報告件数は0.6 件であった。 表1 に事故・トラブル等報告件数(法律対象)を、 表2 に内容別報告件数を、 表3原子力発電の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)を示す。
 23件の内訳は、運転中(試運転中及び定期検査における調整運転中を含む)に自動停止したもの4件、運転中に手動停止したもの9件、原子炉停止中に発見されたもの10件となっている。
 なお、いずれの事象についても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。

原子力発電所の故障・トラブル等の概要(法律対象)
発生年月日発電所名概要
63. 4.27関西電力高浜発電所 1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、小半径U 字状曲がり部、管支持板部、管板クレビス部及び管板拡管部に有意な信号を発見。
63. 5.17関西電力美浜発電所 3号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管境界部及び管板拡管部に有意な信号を発見。
63. 5.22中部電力浜岡原子力発電所 2号機定期検査における原子炉起動中、高圧注入系ドレン配管からのわずかな漏えいが認められたため、原子炉手動停止。原因は、流体による局部的な浸食・腐食作用のため。
63. 6. 6九州電力玄海原子力発電所 1号機定格出力運転中、原子炉格納容器内にある床ドレンサンプへの流入水の増加が認められたため、原子炉手動停止。原因は、余熱除去系(A)配管の溶接部からの漏えいのため。
63. 7. 1日本原子力発電東海発電所運転中、燃料取扱作業時、燃料がつかめない状態が発生したため、原子炉手動停止。原因は、燃料体の取手部がはずれたため。
63. 7.27東京電力福島第一原子力発電所 3号機運転中、原子炉格納容器内にある床ドレンサンプへの流入水の増加が認められたため、原子炉手動停止。原因は、原子炉再循環ポンプ(A)出口側の弁の空気抜き用小口径配管の溶接部からの漏えいのため。
63. 8.12中部電力浜岡原子力発電所 2号機運転中、原子炉格納容器内にある床ドレンサンプ及び機器ドレンサンプへの流入水の増加が認められたため、原子炉手動停止。原因は、原子炉再循環ポンプ(B)の冷却器用フレキシブルチューブからの漏えいのため。
63. 8.17関西電力高浜発電所 2号機定格出力運転中、蒸気発生器(C)伝熱管からわずかな漏えいが認められたため、原子炉手動停止。
63. 9.17中部電力浜岡原子力発電所 1号機定期検査中、炉内計装装置を収納している管の原子炉圧力容器底部への取付け部付近にわずかなにじみを発見。
63.10. 7関西電力大飯発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部、管板拡管境界部及び振れ止め金具部に有意な信号を発見。
63.10.14関西電力高浜発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管支持板部及び管板上面直下部に有意な信号を発見。
63.10.14関西電力大飯発電所 1号機運転中、蒸気発生器(D)伝熱管からわずかな漏えいが認められたため、原子炉手動停止。
63.12. 3東京電力福島第二原子力発電所 3号機定格出力運転中、「中性子束高」の信号により、原子炉自動停止。原因は原子炉再循環流量の変動幅が一時的に増加したため。
63.12. 6関西電力高浜発電所 3号機定格出力運転中「出力領域中性子束変化率高(急減)」の信号により、原子炉自動停止。原因は、制御棒駆動装置の制御用カードの不具合のため。
63.12.12東京電力福島第二原子力発電所 3号機運転中、主蒸気系(B)の弁に作動不具合が発生したため、原子炉手動停止。原因は、当該弁の弁棒が折損したため。
63.12.20日本原子力発電東海発電所定期検査開始のための停止操作中、「原子炉出力チャネル高」の信号により、原子炉自動停止。原因は、制御棒操作が不適切だったため。
64. 1. 6東京電力福島第二原子力発電所 3号機運転中、原子炉再循環ポンプ(B)の振動が大きくなたっため、出力降下。当該ポンプの分解点検の結果、水中軸受リング及び羽根車等の損傷を発見。
H元. 1.11関西電力大飯発電所 1号機停止中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部、管板拡管境界部及び管支持板部に有意な信号を発見。
H元. 1.13日本原子力発電東海発電所停止中、定期検査中、原子炉内の炭酸ガス温度測定用熱電対ケーブルトレイの一箇所が落下しているのを発見。
H元. 2.27東京電力福島第一原子力発電所 5号機運転中、原子炉再循環ポンプ(A)駆動用電動機の電気回路の保護リレーが動作し、同ポンプが停止したため、原子炉手動停止。原因は、計器用変流器の内部端子の接触不良のため。
H元. 3. 8関西電力大飯発電所 2号機定格出力運転中、「一次冷却材ポンプ母線電圧低」の信号により、原子炉自動停止。原因は、発電機の電圧を調整する制御用カードの不良のため。
H元. 3.20九州電力川内原子力発電所 2号機定期検査中、化学体積制御系抽出ライン元弁の弁棒の折損を発見。
H元. 3.24九州電力川内原子力発電所 2号機定期検査中、一次冷却材温度測定用配管戻り弁(C)の弁棒の折損を発見。

<図/表>
表1 故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表1  故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表2 内容別報告件数
表2  内容別報告件数
表3 原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)
表3  原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)

<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
昭和63年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-09)
昭和63年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-09)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1989):原子力発電所における故障・トラブル等の概要(昭和63年4月〜平成元年8月)、平成元年版原子力安全白書、98-111.
(2)(社) 火力原子力発電技術協会(1989): 故障・トラブル等の状況(法律対象)、平成元年版(昭和63年度実績) 原子力発電所運転管理年報、159-283.
(3)科学技術庁原子力安全局(1989): 昭和63年度の原子力発電所における故障・トラブル等について、原子力安全委員会月報4号(第12巻第4号) 通巻第127号、12-15.
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