<本文>
昭和61年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された事故・故障等の件数は19件であった。このため、一基当たりの年平均報告件数(報告件数を基数で割ったもの)は 0.6件(前年度0.6 件)であった。
表1 に事故・トラブル等報告件数(法律対象)を、
表2 に内容別報告件数を、
表3 に
原子力発電の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)を示す。
19件の内訳は運転中(営業運転中、調整運転中及び試運転中、以下同じ)に自動停止したもの 5件(前年度 4件)、運転中に手動停止したもの 6件(前年度 8件)、
定期検査中(調整運転は除く、以下同じ)に発見されたもの 8件(前年度 7件)となっている。19件の主な原因を管理要素別に分類すると、製作管理が不適切であったもの 8件、
保守管理が不適切であったもの 9件、その他のもの 2件であった。
なお、以上のいずれの事故・故障等についても、
原子力発電所の周辺環境への
放射能の影響はなかった。
このほか、昭和52年3月3日付け通商産業大臣(現経済産業大臣)通達に基づき報告された軽微な故障が30件(前年度28件)であった。
原子力発電所の故障・トラブル等の概要(法律対象)発生年月日 | 発電所名 | 概要 |
61. 5. 7 | 関西電力美浜発電所 2号機 | 定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、U字状曲部の振れ止め金具部及び小径U字状曲部に、有意な信号を発見。 |
61. 5.21 | 関西電力高浜発電所 2号機 | 定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に、有意な信号を発見。 |
61. 7. 7 | 関西電力大飯発電所 1号機 | 定格出力運転中、屋外の開閉所と発電所保護継電器質の間のケーブル点検作業において、誤って主変圧器保護装置用のケーブルを損傷させたため、発電機保護装置のひとつが作動し、発電機が自動停止したことにより、引き続き原子炉自動停止。 |
61. 8.22 | 関西電力高浜発電所 2号機 | 調整運転のため、発電機併入準備中、蒸気タービンの回転数を上昇させる際、操作手順を誤ったため、主蒸気流量が増加し、蒸気タービンの回転数が上昇した。このため、蒸気タービンを手動停止させたことにより、原子炉自動停止。 |
61. 8.25 | 東京電力福島第一原子力発電所 5号機 | 調整運転中、給水制御系の不調により、給水流量が増加したため「原子炉水位高」により、原子炉自動停止。 |
61. 9. 1 | 日本原子力発電敦賀発電所 2号機 | 試運転中、巡視点検において、B電動主給水ポンプ出口弁軸封部からの漏洩を発見、補修のため原子炉手動停止。 |
61. 9. 9 | 関西電力大飯発電所 1号機 | 定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管支持板部、管板拡管部及び管板拡管境界部に有意な信号を発見。 |
61. 9.24 | 九州電力玄海原子力発電所 1号機 | 定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に有意な信号を発見。 |
61.10.10 | 日本原子力発電東海発電所 | 調整運転中、発電機保護装置の動作設定値が不適切であったため、 2台のタービン発電機が自動停止し、原子炉自動停止。この時の圧力変動により補助海水循環系配管に損傷発生。 |
61.10.11 | 九州電力玄海原子力発電所 1号機 | 定期検査中、一次冷却材系統の浄化運転を行っていたA余熱除去ポンプに異音が発生。分解点検の結果、当該ポンプの主軸の折損を発見。 |
61.10.13 | 東京電力福島第二原子力発電所 1号機 | 定格出力運転中、相分離母線ダクト部に異音発生。点検、補修のため発電機解列。なお、原子炉はその後手動停止。 |
61.10.23 | 四国電力伊方発電所 1号機 | 定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部に有意な信号を発見。 |
61.11. 3 | 東京電力福島第一原子力発電所 2号機 | 定格出力運転中、原子炉格納器内床ドレン量に漸増傾向が見られたので、点検のため、原子炉手動停止。ドレン量増加の原因は、原子炉再循環系(B)の配管に取付けてある小口径配管に振動による疲労割れが生じたため。 |
61.11. 4 | 東京電力福島第一原子力発電所 6号機 | 定期検査のため出力降下中、高圧復水ポンプ用しゃ断器の動作検出機構の不動作のため、誤信号により運転中の他の高圧復水ポンプが停止し、「原子炉水位低」により原子炉自動停止。 |
61.11.21 | 関西電力高浜発電所 1号機 | 定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、小径U字状曲部、管支持板部、管板拡管境界部及び管板拡管部に、有意な信号を発見。 |
61.11.25 | 日本原子力発電東海発電所 | 定常出力運転中、燃料取替作業時、燃料体の取手部が当該燃料体からはずれたため、燃料体がつかめず、点検のため原子炉手動停止。 |
62. 2.13 | 関西電力美浜発電所 3号機 | 定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部及び管板拡管境界部に、有意な信号を・発見。 |
62. 2.20 | 東京電力福島第一原子力発電所 5号機 | 定格出力運転中A原子炉再循環ポンプの軸封部の温度にわずかな上昇傾向が見られたので、点検のため、原子炉手動停止。点検の結果、温度上昇の原因は軸封部の摺動面に微細な傷が発生し、再循環水の一部が軸封部に流入したため。 |
62. 3.31 | 日本原子力発電東海発電所 | 定常出力運転中、燃料取替作業時、燃料体の取手部が当該燃料体からはずれ、燃料がつかめない状態が発生(2月10日)したが、当該燃料が計画燃焼度に達するまで運転を継続することとし、定常運転に復帰。当該燃料が計画燃焼度に達する前の4月3日に原子炉を手動停止し、燃料取替えを実施することを決定。。 |
<図/表>
表1 故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表2 内容別報告件数
表3 原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)
<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
昭和61年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-07)
昭和61年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-07)
<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1988):昭和61年度の原子力発電所における事故・故障等の概要、昭和62年版原子力安全白書、252-257.
(2)(社) 火力原子力発電技術協会(1987): 事故・故障の状況、昭和62年版(昭和61年度実績) 原子力発電所運転管理年報、85-300.
(3)科学技術庁原子力安全局(1987): 昭和61年度の原子力発電所における事故・故障等について、原子力安全委員会月報 6号、通巻第105 号、6-11.