<解説記事ダウンロード>PDFダウンロード

<概要>
 昭和58年度における「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき電気事業者から資源エネルギー庁に報告された事故・故障等の件数は27件であった。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 昭和58年度における「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき電気事業者から資源エネルギー庁に報告された事故・故障等の件数は27件であった。表1に事故・トラブル等報告件数(法律対象)を、表2に内容別報告件数を、表3原子力発電の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)を示す。これら27件の事故・故障等の主な原因を管理要素別に分類すると、設計管理が不適切であったもの 4件、製作管理が不適切であったもの 8件、施工管理が不適切であったもの 2件、保守管理が不適切であったもの10件及びその他のもの 3件であった。
 また、これらの27件の事故・故障等のうち原子炉の運転中に発生したものが16件、定期検査の停止中に発見されたものが11件であった。原子炉の運転中に発生した16件の内訳は、原子炉保護装置等の作動により自動停止に至ったものが11件、巡視点検等ににより不具合を発見し補修のため停止したものが5 件であった。定期検査の停止中に発見された11件の内訳は、蒸気発生器伝熱管の損傷 6件、制御棒案内管支持ピンの損傷2 件、その他 3件であった。
 なお、以上のいずれの事故・故障等についても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。
 このほか、昭和52年3月3日付け通商産業大臣(現経済産業大臣)通達に基づき報告された軽微な故障が45件あった。

原子力発電所の故障・トラブル等の概要(法律対象)
発生年月日発電所名概要
58. 4.10関西電力大飯発電所 2号機調整運転中、復水器真空ポンプ(C)の不具合によりタービン復水器の真空度が低下したため給水ポンプが停止し、原子炉自動停止。
58. 4.15日本原子力発電敦賀発電所 1号機巡視点検により、主蒸気加減弁ドレン配管継手部からの漏えいを発見、補修のため原子炉手動停止。
58. 4.20東京電力福島第一 2号機巡視点検により、定期検査中、原子炉圧力容器上蓋予備ノズル(N−6B)の液体浸透探傷検査の結果、内面コーナー部に線状指示を発見。
58. 5. 6関西電力美浜発電所 3号機定期検査中、低圧給水加熱器のヒータドレン入口受衝板の損傷を発見。
58. 6. 3関西電力美浜発電所 3号機定期検査中、制御棒クラスタ案内管支持ピンの超音波探傷検査の結果、損傷を発見。
58. 6. 7関西電力美浜発電所 3号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部及び拡管境界部に異常信号を発見。
58. 6. 7関西電力高浜発電所 2号機定期検査中、制御棒クラスタ案内管支持ピンの超音波探傷検査の結果、損傷を発見。
58. 6.14関西電力高浜発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、支持板部及び管板部上面直下部に異常信号を発見。
58. 7.27関西電力高浜発電所 1号機定格出力運転中、制御棒駆動装置制御盤内の配線短絡により制御棒の一部が挿入され、「出力領域中性子束変化率高」により原子炉自動停止。
58. 8. 5関西電力大飯発電所 1号機定格出力運転中、制御棒駆動装置制御回路のカードの半田付不良のため、制御棒の一部が挿入され「出力領域中性子束変化率高」により原子炉自動停止。
58. 8.13東京電力福島第一原子力発電所 1号機主蒸気加減弁の制御油圧配管からの油漏れにより、主蒸気加減弁が閉止したため、原子炉圧力が上昇し「中性子束高高」により原子炉自動停止。
58. 8.26東京電力福島第一原子力発電所 5号機定格出力運転中、保修のためバイタル電源を予備変圧器に切替中、誤操作によりバイタル電源を喪失したため、給水流量が変動し原子炉自動停止。
58. 9. 1東京電力福島第一原子力発電所 4号機定格出力運転中、巡視点検により、発電機界磁調整器の摺動抵抗器の損傷を発見、補修のため原子炉手動停止。
58. 9. 2九州電力玄海原子力発電所 1号機定格出力運転中、落雷による送電線しゃ断のため、原子炉自動停止。原子炉停止後の点検において、加圧器逃し弁のシート漏れを発見。
58. 9. 4日本原子力発電東海発電所制御棒電源供給回路の電磁接触器コイルの焼損により制御棒保持用電源ヒューズ溶断したため、全制御棒が挿入され原子炉自動停止。
58.10. 6日本原子力発電敦賀発電所 1号機定期検査中、原子炉再循環ポンプ駆動用電動機(C)端子箱内に損傷を発見。
58.10.21関西電力美浜発電所 2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板クレビス部及び管板部に異常信号を発見。
58.10.29東京電力福島第一原子力発電所 6号機定格出力運転中、主発電機界磁遮断機の誤動作により発電機自動停止、同時に原子炉自動停止。
58.11. 1関西電力大飯発電所 1号機定期検査のため解列後、タービン過速度試験を実施中、誤操作によりタービン回転速度が急上昇しタービン自動停止、同時に原子炉自動停止。
58.11.19東京電力福島第一原子力発電所 1号機電気式原子炉圧力調整装置の不具合により、主蒸気加減弁が急開し主蒸気管圧力が低下したため、主蒸気隔離弁が全閉し、原子炉自動停止。
58.12. 2九州電力川内原子力発電所 1号機試運転中、50% 負荷遮断試験時、タービンバイパス弁駆動用空気圧力計の不具合による弁動作遅れで、蒸気発生器の水位が低下したため原子炉自動停止。
58.12.18日本原子力発電敦賀発電所 1号機調整運転中、巡視点検によりタービン軸封蒸気加熱系ドレン配管エルボ部からの漏えいを発見。補修のため原子炉手動停止。
58.12.26日本原子力発電東海第二発電所調整運転中、巡視点検により低圧給水加熱器(2A)への抽気管のドレン系配管フランジ部からの漏えいを発見。補修のため原子炉手動停止。
59. 1.17関西電力美浜発電所 1号機定格出力運転中、「一次冷却材ポンプ封水戻り流量低」の警報が発信したので、補修のため原子炉手動停止。
59. 2. 3関西電力大飯発電所 1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管支持板部及び管板部に異常信号を発見。
59. 3. 8九州電力玄海原子力発電所 1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に異常信号を発見。
59. 3.14四国電力伊方発電所 1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部に異常信号を発見。

<図/表>
表1 故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表1  故障・トラブル等報告件数(法律対象)
表2 内容別報告件数
表2  内容別報告件数
表3 原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)
表3  原子力発電所の事故・故障等の報告件数一覧(電気事業用)

<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
昭和58年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-04)
昭和58年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-04)

<参考文献>
(1)原子力安全委員会編(1984):昭和58年度の原子力発電所における事故・故障等の概要、昭和59年版原子力安全白書、237-243.
(2)(社) 火力原子力発電技術協会(1984): 事故・故障の状況、昭和58年度原子力発電所運転管理年報、133-232.
(3)科学技術庁原子力安全局(1985): 昭和58年度の原子力発電所における事故・故障等について、原子力安全委員会月報7月号、通巻第70号、9-12.
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ