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<概要>
 我が国が原子力開発利用を進める上での基本条件と新長期計画での政策の柱は、国民や国際社会の理解の下に、厳に平和利用に限り、安全の確保を大前提にこれを進めていくことである。(1)平和利用の堅持:我が国が核兵器を保有することは決してない。また、原子力基本法制定以来一貫して、民主・自主・公開の原則にのっとり、今後とも、原子力開発利用を平和目的に限り推進していくとともに、世界の核不拡散体制の維持・強化に貢献していく。国際協力に当たっても、この精神を貫いて具体的に取り組んでいく。(2)安全の確保:今後とも厳重な安全規制、管理、防災対策を実施し、安全の確保に万全を期すとともに、原子力発電の高経年化を踏まえた対策、シビアアクシデント対策や安全研究などを一層充実させることにより、高度な「原子力安全文化」を構築していく。また、国際的な原子力の安全確保に積極的に貢献していく。本稿は原文を掲載する。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
第2章 我が国の原子力開発利用の在り方
2.原子力開発利用の大前提
 原子力基本法は「原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨」とすることを定めており、改めて言うまでもなく、我が国は原子力開発利用については、国民や国際社会の理解の下に、厳に平和利用に限り、安全の確保を大前提にこれを進めていきます。

(1) 平和利用の堅持
 我が国が、核兵器を保有することは決してありません。
 広島、長崎という被爆体験を持つ我が国においては、被害の悲惨さは国民意識に深く浸透しており、核兵器の開発は全く考えられません。
 また、核兵器を保有することは、我が国をめぐる国際環境を不安定化させるだけであり、我が国の平和と繁栄の維持という国の目的に何の利益ももたらしません。
 我が国は、原子力基本法制定以来一貫して、民主・自主・公開の原則に則り、原子力開発利用を厳に平和目的に限って推進してきています。また、核兵器廃絶という国民の願いを込めるとともに原子力の平和利用を促進するため、「核兵器の不拡散に関する条約」(NPT)に加入しています。
 今後とも、原子力基本法の精神に則り、我が国の原子力開発利用を厳に平和目的に限り推進していくとともに、NPTを厳守し、世界の核不拡散体制の維持・強化に貢献していきます。また、原子力開発利用に関する国際協力に当たっても、この精神を貫いて具体的な国際協力に取り組んでいきます。
 昨今、一部の海外の論調等において、我が国が核兵器を開発するのではないかとの疑念が表明されています。我が国に対するこのような疑惑の表明は、唯一の被爆国として究極的には地球上からの一切の核兵器廃絶を願う国民の気持ちを踏みにじるものであり、日本国民にとってはおよそ信じられないことです。我が国は、国際社会から信頼される国として、自由貿易体制の中で、国際協調を基調として繁栄を享受していく道を選択していきます。核兵器開発により我が国にもたらされるものは、アジアを中心にした国際的緊張と反発、総合安全保障の喪失、国際的孤立とそれに伴う国内経済社会の破綻に過ぎません。しかしながら、海外にはこのような見方も存在するということについては十分認識して、誤解を解く努力を続けつつ、引き続き原子力の平和利用に取り組んでいきます。
 原子力委員会としても、国民の負託に応えるべく原子力平和利用の確保という責務を果たしていきます。

(2) 安全の確保
 我が国においては、当初より、安全の確保なくしては、原子力開発利用の発展は有り得ないという観点から、何よりもまず安全の確保を重視して原子力開発利用に取り組んできており、この大前提は不変です。
 一般にあらゆる技術は危険性を含んでおり、人類はこれまでもその英知によりこれを克服してきました。原子力にも潜在的には危険性がありますが、現在までに培った知識や技術と安全優先の思想により、これを十分制御することができます。現に、我が国の原子力施設については、その安全は十分に確保されており、これまで周辺公衆に影響を及ぼすような放射性物質の放出を伴う事故は皆無です。その運転実績については、国際的にも高い評価を受けていますが、これに安住することなく今後とも厳重な安全規制、管理、防災対策を実施し、安全の確保に万全を期すとともに、原子力発電所の高経年化を踏まえた対策、シビアアクシデント対策などの安全対策や安全研究を一層充実させることにより、安全優先の高い意識を持った人間としっかりした技術基盤・組織体制などに支えられたより高度な「原子力安全文化」を築き上げていきます。
 安全の確保については、合理的で十分な安全水準の確保という観点、原子力人材の確保という観点、人に優しい原子力という観点を今後重視していきます。一方、安全水準の向上が必ずしも国民の安心感につながらないという実態も踏まえなければなりませんが、安全運転実績を地道に積み重ねることを基本に安心感の醸成に努めていきます。
 また、現在、旧ソ連、中・東欧を中心とした地域における原子力の安全確保の緊要性が国際的にも認識されていますが、諸外国の安全確保の状況は、我が国の原子力開発利用にも影響を与えかねないとの観点も踏まえ、我が国としても国際的な原子力の安全確保に積極的に貢献していきます。
<関連タイトル>
我が国の原子力開発利用の目標(平成6年原子力委員会) (10-01-03-01)
原子力開発利用の基本方針(平成6年原子力委員会) (10-01-03-03)

<参考文献>
(1)原子力委員会(編):21世紀の扉を拓く原子力 −原子力の研究、開発及び利用に関する長期計画− 大蔵省印刷局(平成6年8月300日)
(2)原子力委員会(編):原子力白書 平成6年版 大蔵省印刷局(平成7年2月1日)
(3)日本原子力産業会議:原子力産業新聞 第1751号(1994年7月21日)
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