<概要>
慢性
被ばくとは長期間にわたり比較的低い
線量を連続して繰り返し被ばくする場合のことを言い、急性被ばくに比べてその障害の発生確率は少ないと見られている。その原因は人体の細胞の修復作用によるものとされている。これらの
被ばく線量の評価は通常使用されている検出器により評価することは可能であるが、
放射線の種類により検出器を選定する必要があり、また、測定部位についても必要に応じて選定する必要がある。
<更新年月>
2004年03月
<本文>
1.慢性被ばくの定義
慢性被ばくは何ヵ月ないし何年かに渡り比較的低い線量で連続ないし繰り返し被ばくする場合を言う。例えば職業的に受ける
内部被ばくや外部被ばくあるいは検査のために受けるX線被ばく等がこれにあたる。そのほか自然界に存在する放射性同位元素や
宇宙線(バックグランド放射線)による被ばくも慢性被ばくである。
2.慢性被ばくの測定
バックグランド放射線による被ばくから職業的に受ける被ばく線量の評価には放射線による気体や個体の
電離・励起作用を利用した検出器が利用される。外部放射線による被ばく線量は周囲の空間放射線の測定結果と滞在時間から評価する方法と個人が線量計を装着して評価する方法がある。空間放射線の測定による方法は検出器の応答が
実効線量や線量を表示するよう設計されており
電離箱、GM計数管、
シンチレーション検出器などを利用した線量計が開発されている。これらの検出器の応答は放射線の種類、エネルギー、強度により著しく異なるので測定しようとする場に応じて適当な検出器を選択して使用することが重要である。例えば、電離箱サーベイメータでは感度のエネルギー依存性の面で比較的精度の高い測定が可能であるが、
線量率の低い場で出力が不充分なこと、また
ガンマ線測定用のシンチレーション検出器は感度が高くバックグランド放射線まで測定結果を与えるが、数十μSv/hを超える線量率場での使用には適さないこと、さらにベータ線測定には表面汚染や皮膚線量の評価など個々の目的に応じて設計された測定器を使用することなどの注意が必要である。
3.個人の慢性被ばくの評価
個人が線量計を装着して評価する方法では被ばく線量測定用具として
フィルムバッジ。
熱蛍光線量計、
蛍光ガラス線量計、
ポケット線量計、半導体式ポケット線量計などが開発されている。これらの被ばく線量測定用具はいずれも線量を直接又は間接に評価するものである。装着部位は法令で定められ、男子は胸部で女子は腹部とされている。被ばく線量測定用具も放射線の種類やエネルギーによって感度が異なり使用可能な線量域も大きく異なる。例えば、ガンマ線を対象とした場合、フィルムバッジは 100μSv〜1Svの範囲で使用できるが、熱蛍光線量計では10μSv〜100Sv の範囲で使用可能である。被ばく線量測定用具の使用は作業者の被ばく線量を知るためのみならず、その結果から作業工程等の管理を行うのが目的であり、測定結果を作業中でも必要に応じて知る必要がある。フィルムバッジは記録性があり機械的にも丈夫であるが、比較的高線量率場で作業する場合や作業中に不測の被ばくの可能性のある場合などにはポケット線量計電子式線量計にアラーム機能のあるものを利用する必要がある。
<関連タイトル>
個人線量計 (09-04-03-03)
サーベイメータ(α線、β線、γ線、中性子等) (09-04-03-04)
個人モニタリング (09-04-07-01)
個人線量計の着用 (09-04-07-03)
<参考文献>
(1) 原子力安全委員会(編):平成14年版 原子力安全白書、国立印刷局(平成15年9月)