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<概要>
 金属燃料再処理には高温冶金法、高温化学法などと呼ばれている再処理技術が適用される。これらの再処理法は、水を用いないことから乾式再処理法と総称されている。乾式再処理技術はまだ実証されたものではないが、成功すれば高速増殖炉の実用化を加速出来ると期待されている。その理由は、安全性を損なうことなく施設を小型に出来ると予想出来るからである。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.金属燃料とその再処理の核燃料サイクル上の特徴
 高速炉用の金属燃料は現在用いられているMOX燃料と比較して、増殖率と安全性に関係する原子炉特性の改善が期待できるほか、燃料加工や再処理に新しい技術を適用することにより、高速炉の経済性を大きく改善できる可能性を持っている。
 金属の一般的な性質は、熱や電気を伝え易く、延性や展性に富み、望みの形状に成型・加工し易いことにある.金属燃料とは、これらの性質を活かそうとする考え方から出てきた概念である。とくに熱を伝え易いことは燃料の原点とも言える基本的な特性であり、金属燃料は混合酸化物燃料よりも約10倍も熱を伝えやすい。また、金属燃料を用いれば、高温冶金法あるいは乾式再処理法と呼ばれる再処理技術が適用できる。この乾式再処理では、500度程度の高温での操業技術の確立が不可欠ではあるが、設備・機器の削減や施設の大幅なコンパクト化が図れると予想されるので、現在の高速炉の湿式再処理を凌ぐ経済性が達成出来ると期待されている。
2.金属燃料再処理の概要と開発状況
 金属燃料が有望と考えられていた1960年代には、世界中で色々な種類の乾式再処理技術が研究開発されていた。実際、アルゴンヌ国立研究所では使用済みの金属燃料ピンを累積で約35,000本再処理し、新燃料として原子炉にリサイクルした経験がある。現在の金属燃料サイクルで提案されている技術は、燃料の組成や再処理の方法で最新の技術が取り入れられており、過去の多くの経験も活かされていて技術の内容は大きく進歩している。すなわち新しい乾式再処理では、アルミニウムやマグネシウムの精錬法と類似の電解精製と呼ばれる工程で再処理する。電解精製では、使用済み金属燃料が一旦塩化物に転換され、この塩化物を電気化学的に分離し、 図1−1 および 図1−2 に示すようにウランプルトニウムを金属の形態で回収する。
 湿式再処理では、硝酸などの水溶液に燃料を溶解したあと、ウランとプルトニウムの化学的な性質の差を巧みに利用してそれぞれを分離精製する。
 このように、乾式法と湿式法とでは適用する技術概念が根本的に異なり、それが施設のプロセス構成に大きな差異をもたらす。
 再処理工程においては、絶対に臨界にならないように設計する必要がある。臨界になると、核分裂連鎖反応が始まりエネルギ−が発生する。このエネルギ−は量的には大きいものではないが、急激に放出される可能性があるので、施設を設計する際に厳重にチエックされる。臨界にならないようにするためには、仮にプルトニウムのような核分裂性の元素が一か所に集まったとしても、臨界質量と呼ばれる量を越えないように設計しておけばよいことが判っている。臨界質量は普遍的な量ではなく、周りの物質条件によって大きく影響され、水(水素と酸素の化合物)の様な軽い元素から成る物質があると極端に小さくなる。
 湿式法では、全工程にわたって臨界質量を越えることがあり得ないように、随所にプルトニウム量を制限するための特殊な小型タンクが設置され、臨界安全性が確保される。その結果施設は複雑で大型となる。
 一方、乾式法では、水溶液を一切用いないために、臨界質量が大きい。このことは各工程で、プルトニウム量を制限するための特殊タンクなどの設置が不要なことを意味する。結果的に単純な小さい機器で相当量の燃料を安全に扱えることになり、施設全体も単純かつコンパクトとなるのである。
<図/表>
図1−1 金属燃料の乾式再処理プロセスの概要
図1−1  金属燃料の乾式再処理プロセスの概要
図1−2 金属燃料の乾式再処理プロセスの概要
図1−2  金属燃料の乾式再処理プロセスの概要

<関連タイトル>
IFR(一体型高速炉)/MFC(金属燃料サイクル)の開発の現状 (07-02-01-04)
高速増殖炉燃料(金属燃料) (04-09-02-08)

<参考文献>
(1)常磐井守泰ほか:「FBR金属燃料サイクル技術−その魅力と実現性」、原子力工業、36(6)、14-61 (1990)
(2)Y. I. Chang : "INTEGRAL FAST REACTOR", NUCLEAR TECHNOLOGY, 88, 129 (1989)
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