<概要>
立教大炉(RUR)は、1955年9月にホノルルにおいて開かれた米国聖公会総会において「世界平和の一端に寄与するため極東地域に研究用の
原子炉を寄贈しよう」との提案を受けて設置されたトリガ(TRIGA)2型炉(100kW)研究炉であり、1961年12月8日に
臨界に達した。以来、立教大学によって自主的に維持運営されているが、1974年からは東京大学との間で契約を結び、全国「国・公・私立大学共同研究」を行っており、放射化分析法の宇宙・地球科学、環境科学、生物学などの分野への応用、高エネルギー化学、フィッション・アルファトラック法の
年代測定や金属材料学への適用、
中性子ラジオグラフィの研究等に使用されてきた。
2001年12月運転を停止し、廃止措置準備に入った。
<更新年月>
2004年08月 (本データは原則として更新対象外とします。)
<本文>
立教大炉(RUR)は元の武山海兵団の跡地、約50,405平方メートル(約1万6千坪)に設置された、最高熱出力100kWの研究炉(TRIGA-2型)である。1959年2月16日付けで原子炉施設設置許可申請が提出され、建設が開始されたが、完成を数カ月に控えて、立教炉と同型のイタリア・ローマに建設された原子炉の鉄製タンクと熱中性子柱との間のエポキシ樹脂による接続部からの水漏れが発見されたため急遽、1961年7月1日に鉄製の炉心タンクの内側にアルミ製のタンクを入れ、アルミ製の熱中性子柱の容器やビーム・ポートを溶接するように設計変更の認可申請をし、同年8月15日の認可後に変更工事にはいって、1961年12月8日に臨界に達した。したがって、立教炉の炉タンクは二重構造となり、内径は当初の設計(1981mmφ)より7.3cmほど小さくなり、1908mmφとなった。高さ約6.5mである(
表1、
図1および
図2参照)。
1.原子炉の構成
炉心は円筒形で、90個の孔があいた2枚の
グリッドに
燃料要素(燃料減速棒)が装荷されており、有効直径、高さ共約36cmである。グリッドの孔は、中央実験孔、3本の
制御棒、気送管およびF
照射孔などにも使われている(
図3参照)。
燃料要素(燃料および減速棒)は
ウラン−水素化ジルコニウム合金の上下にグラファイトが入っておりウランの濃縮度は20%である。形状寸法は直径3.7cm、長さ72cmの円筒形をしており、被覆材はアルミニウムである。ウラン−235の初期装荷量は、2.16704kgであった。
制御棒は直径3.7cmの炭化ホウ素でできている。炉心の外側は
反射体であり、厚さ約30cmのグラファイトが入っている。
炉心の冷却は軽水の自然対流が用いられている。
熱中性子束は100kW運転時に、中央実験孔で最高4×10
12n/sec/cm
2、炉心平均では1.6×10
12n/sec/cm
2である。
2.実験利用設備
照射設備は、中央実験孔、回転試料棚(RSR)、気送管、F照射孔熱中性子柱があるが、その他一時的照射装置を設置することもできる。
中央実験孔は最高の中性子束が得られるが、試料は水密容器に入れて挿入しなければならない。気送管とF照射孔は炉心内のもっとも外側に位置するFリングの孔に設置されている。F照射孔ではそれぞれ同時に3個まで照射可能。ただし、位置により中性子束は異なる。気送管は炉室の隣にある測定室において試料の挿入、回収が可能である。中性子束はF照射孔と同程度である。
回転試料棚(RSR)は反射体に設置されており、その内部には炉心から等距離のところに40個の照射ホルダーが設置されている。熱中性子柱では熱中性子束のみの利用が可能である。
水平実験孔は4本あり、その中の1本には照射室が設置されている。
3.利用状況
原子炉の運転は通常1日6時間(10:00〜16:00)、1週4日(月〜木曜日)である。ただし、年間の運転日数は、定期検査その他保守点検のための休みがあり、約140日程度となる。
試料照射については、6時間照射、翌日取り出しを標準とし、それより短い時間の照射はマニュアルまたは気送管で行う。熱中性子柱での照射は、6時間より1996年度の利用実績を
表2に、1997年度の利用実績を
表3に示す。
4.解体
2001年12月運転を停止したが、炉心からの燃料取り出しが完了していないため、現在廃止措置準備中とみなされている。
<図/表>
<関連タイトル>
わが国の試験研究用および開発中の原子炉一覧(2003年12月) (03-04-01-02)
近畿大炉(UTR-KINKI) (03-04-03-02)
武蔵工大炉(MITRR) (03-04-03-03)
京都大炉(KUR) (03-04-03-05)
東京大炉(弥生) (03-04-03-06)
<参考文献>
(1)立教大学原子炉等共同利用のしおり、東京大学原子力研究総合センター(発行)
(2)TRIGA Mark-2 Reactor Description,GA-485,p.18-20
(3)立教大学原子力研究所:原子炉利用実績報告書 30、p.4
(4)立教大学原子力研究所:原子炉利用実績報告書 31、p.4
(5)原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成15年版、資料編 試験研究用炉一覧、財務省印刷局(2003年12月)、p.244