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<概要>
 BWRにおける主要な放射性廃棄物には、原子炉内で放射線分解により生成された水素ガスと酸素ガスを含む、タービン主復水器から抽気される非凝縮ガス等の気体廃棄物および機器からの漏洩水、サンプルラインの排出液、建屋内で使用した雑用水、および洗濯廃液等の液体廃棄物がある。
 また、原子炉水等の浄化系等から発生するフィルタスラッジ、イオン交換樹脂、再生廃液と同廃樹脂および床ドレンを蒸発濃縮した濃縮廃液、管理区域で使用して放射能で汚染された紙、布などの雑固体廃棄物等の固体廃棄物がある。
 これらの放射性廃棄物は、気体、液体、固体廃棄物処理設備にそれぞれ導き、再利用、貯蔵および放出のため放射能の減衰、分離、濃縮などの適切な処理を行う。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 BWRにおける放射性廃棄物の主な発生源は、原子炉冷却水系および燃料プール浄化系であり、これらに含まれる主な放射性物質は原子炉冷却材中に溶け込んでいる放射性腐食生成物および燃料被覆管に微小なピンホール等が生じた場合に放出される核分裂生成物などである。
 これらの放射性物質は気体廃棄物、液体廃棄物および固体廃棄物として発生する。
1.気体廃棄物処理
 気体廃棄物の主要発生源は、次の通りである。
  (1)タービン主復水器から抽気される非凝縮ガス
  (2)タービン・グランドシール部から排風機により排出される排ガス
  (3)原子炉起動時に発生する真空ポンプ排ガス
 これらの気体廃棄物の一般的な処理方法は 図1 に示す通りである。タービン主復水器より抽気された非凝縮ガス中には、主復水器への漏込み空気の他に原子炉内で放射線分解により生成された水素ガスと酸素ガスが含まれているため、防爆の目的で、空気抽出器の駆動蒸気で水素ガス濃度を4vol%以下に希釈する。排ガス余熱器で予熱後、再結合器に導き触媒により反応させて水蒸気にさせた後、復水器・除湿冷却器を経て排ガスの容積を減容する。さらにこの排ガスは排ガス減衰管で短半減期核種を減衰させた後、希ガスホールドアップ装置(塔)に通す。希ガスホールドアップ装置は、活性炭充填槽内で排ガス放射能の主成分であるクリプトンやキセノンなどの希ガスを吸着保持することによって、一例として、クリプトンは約40時間、キセノンは約27日保持することにより、放射能を効率よく減衰させるものである(保持時間はプラントによって多少異なる)。なお、活性炭の希ガス吸着性能を良くするため、排ガスは十分脱湿したのち活性炭充填槽に通す。活性炭充填槽を出た排ガスは放射能の崩壊により生じた固体状娘核種など微粒子状のものを高性能の排ガスフィルタで除去した後、排気筒より放出する。
 一方、タービン・グランドシール排ガスについては、タービンの軸封に対して復水貯蔵タンク水を給水としている蒸化器(エバポレータ)からの蒸気を使用することにより、この系での排ガス中の放射能を無視できる程度にしているため、そのまま排気筒より放出する。
 気体廃棄物の放出に当っては、「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」に基づき放射性希ガスおよび放射性よう素の放出管理目標値を設定し、これを超えないように、気体廃棄物処理設備によって放出放射性物質の濃度及び量を低減している。

2. 液体廃棄物処理
 液体廃棄物としては、原子炉水再循環ポンプ、弁などからの漏洩水、サンプルラインの排出液など(機器ドレンと呼ぶ)、建屋内で使用した雑用水(床ドレンと呼ぶ)脱塩装置のイオン交換樹脂の再生により発生した廃液など(再生廃液と呼ぶ)および管理区域内で使用された作業衣類などの洗濯廃液が主たるものである。
 これらの廃棄物は、廃棄物処理設備で廃液中に含まれる不純物や放射性物質を除去し、その処理済液体はできる限りプラント内で再使用するか、もしくは十分放射能濃度を低くし安全であることを確認した後、主復水器冷却水で希釈しながら海へ放出する。
 液体廃棄物処理設備の概略構成を 図2 に示す。

3. 固体廃棄物処理
 固体廃棄物としては次のものがある。
  (1)原子炉浄化系、復水浄化系、燃料プール浄化系等から発生するフィルタスラッジ、使用済イオン交換樹脂
  (2)再生廃液および床ドレンを蒸発濃縮した濃縮廃液
  (3)換気系などで使用された空気フィルタや管理区域で使用して放射能で汚染された紙、布などの雑固体廃棄物
  (4)使用済制御棒など原子炉内で使用された高放射性固体廃棄物
 これらの廃棄物は、それぞれ固有の性状を有し、その発生源により放射能レベルも大きく異なるため、区別してそれぞれに応じた適切な処理を行う。固体廃棄物処理設備の概略構成を 図3 に示す。
 (1)の廃棄物については、貯蔵タンクにて長期貯蔵し放射能減衰後、固化剤で固化処理を行い固体廃棄物貯蔵庫にドラム缶にて保管する。固化剤としてはセメント、アスファルト、プラスチックなどがある。
 (2)の廃棄物については、濃縮廃液貯蔵タンクにて、一定期間貯蔵し、放射能減衰後、(1)と同様に固化剤にて固化処理しドラム缶にて保管する。濃縮廃液のドラム缶固化体は、脱塩装置を再生する場合等に発生し、固体廃棄物の全発生量の数割を占めるものであり、これの低減は固体廃棄物発生量の低減化に有効なものとなる。その有力な手段として濃縮廃液を乾燥機により粉体化し、これをペレット化して貯蔵する方式がある。
 (3)の雑固体廃棄物については、一般に放射能レベルが極めて低いものであり、可燃物と不燃物および圧縮可能なものとそうでないものに区分けして、ドラム缶に入れ、圧縮可能なものは圧縮機にかけて減容する。なお可燃性雑固体廃棄物については、現在焼却して減容する方式が採用されている。
 (4)の高放射性固体廃棄物については、放射性レベルが非常に高いため、使用済燃料プール内に長期間貯蔵し、放射能を減衰させる。近年、使用済燃料プールでの燃料有効貯蔵を図るため、上記廃棄物専用貯蔵プールとしてサイトバンカ設備が設置されている。
 上記の固体廃棄物のうちドラム缶詰されたものを、発電所敷地内の固体廃棄物貯蔵庫に貯蔵保管し、その後必要な措置をとる。固体廃棄物の貯蔵庫は管理区域とし、周辺の放射線サーベイなどを行い厳重に管理する。なおこれらを最終的に処分する場合には関係官庁の承認を受けることとなっている。
<図/表>
図1 BWR気体廃棄物処理設備(例)
図1  BWR気体廃棄物処理設備(例)
図2 BWR液体廃棄物処理設備(例)
図2  BWR液体廃棄物処理設備(例)
図3 BWR固体廃棄物処理設備(例)
図3  BWR固体廃棄物処理設備(例)

<関連タイトル>
原子炉機器(BWR)の原理と構造 (02-03-01-02)
BWRの起動・停止方法 (02-02-03-01)

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):やさしい原子力発電、平成2年6月
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし、平成4年10月
(3)火力原子力発電技術協会(編):原子燃料サイクルと廃棄物処理、昭和61年6月
(4)中国電力:島根原子力発電所原子炉設置変更許可申請書、昭和58年9月
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