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<概要>
 BWR原子力発電所の起動操作は基本的には次の4段階にわけて行われる。すなわち(1)制御棒引抜き前の主復水器の真空度達成、(2)制御棒引抜きによる原子炉圧力上昇(核加熱)、(3)タービン起動/発電機並列、および(4)定格出力への出力上昇である。出力上昇は、発電機並列までは制御棒の引抜きにより、また並列以降は制御棒の引抜きと原子炉再循環ポンプの速度上昇(炉心流量の増加)により行われる。その間、原子炉出力あるいは原子炉圧力の上昇にしたがって、原子炉および発電機の運転に必要な機器を適正なタイミングで起動していく。停止操作はほぼ起動操作の逆手順で出力を低減していく。ABWR原子力発電所についても付記する。
<更新年月>
2010年01月   

<本文>
 図1に110万kW(1100MWe)級BWR原子力発電所の主要系統概略図を示す。通常運転に密接な関連を有する主要制御系としては、タービン(原子炉圧力)制御系、制御棒駆動系、再循環流量制御系、および原子炉水位制御系(原子炉給水制御系)がある。原子炉の圧力は出力運転中常に一定に保持するよう制御されている。これはタービン制御系に組み込まれた圧力制御装置によりタービン加減弁およびタービンバイパス弁を開閉し、タービン入口蒸気圧力を圧力設定点(定格出力運転状態で6.5MPa[gauge])に制御することによって行われる。135万kW級ABWR原子力発電所では、タービン入口蒸気圧力に代えて原子炉圧力の信号により制御される。
 原子炉の出力は、制御棒駆動系および原子炉再循環流量制御系によって制御されており、制御棒駆動系は起動時・停止時などの大幅な出力変動時に使用される。またタービン制御系と連携して、負荷設定点により自動的に原子炉出力を変更できる。
 ABWR原子力発電所では、電動駆動の制御棒駆動機構の採用により、自動出力調整系を介して原子炉再循環流量制御系と連携し、すべての出力範囲で原子炉出力を自動制御できる。加えて臨界や原子炉の昇温・昇圧の制御も自動で行う機能も追加されている。
 原子炉水位制御系は、原子炉への給水流量を制御し、原子炉出力の変動にかかわらず原子炉水位を一定に保ち、汽水分離器の汽水分離性能を維持する。給水流量の制御は原子炉水位の変動によるほか、主蒸気流量と給水流量の差から原子炉水位変動を予測し、先行的に給水流量を補正する三要素制御方式が採用されており、原子炉出力変動に対する原子炉水位の追従性を向上させている。
1.原子力発電所の起動
 図2にBWR原子力発電所起動時の運転操作の流れ(起動曲線)を示す。BWR原子力発電所の起動操作は、基本的には次の4段階にわけて行われる。すなわち(1)制御棒引抜き前の主復水器の真空度達成、(2)制御棒引抜きによる原子炉圧力上昇(核加熱)、(3)タービン起動/発電機並列、および(4)定格出力への出力上昇、である。出力上昇は、発電機並列までは制御棒の引抜きにより、また並列以降は制御棒の引抜きと原子炉再循環ポンプの速度上昇(炉心流量の増加)により行われる。その間、原子炉出力あるいは原子炉圧力の上昇にしたがって、原子炉およびタービン発電機の運転に必要な機器を適正なタイミングで起動していく。
1.1 制御棒引抜き前の復水器の真空度上昇および原子炉水の脱気
 BWR原子力発電所では、オーステナイト系ステンレス鋼の応力腐食割れ防止策として、材料の改善、初期残留応力の除去、腐食環境の改善が図られている。その一環として制御棒引抜き前に予め主復水器真空ポンプにより主復水器の真空度上昇を行い、原子炉水温度約80℃において主蒸気隔離弁を開き原子炉水の脱気を行い、溶存酸素濃度を目標値0.2ppm程度まで引下げる(脱気運転開始前は約3ppm程度)。また原子炉脱気中は気体状の放射性物質を処理するため、復水器真空ポンプから起動停止用空気抽出器(AJAE)に切替え、希ガスホールドアップ装置を通して排気する。
1.2 制御棒引抜きによる核加熱
 まず、原子炉モードスイッチを起動にし、次に制御棒を予め決められた操作順序にしたがって1本ずつ炉心から徐々に引抜く。この引抜き操作は「制御棒価値ミニマイザ」によって異常な引抜き操作にならないようになっている。
 ABWR原子力発電所では、従来の水圧駆動方式に加えて電動方式を併用した改良型制御棒駆動機構を採用しており、制御棒操作を複数本ずつ引抜く(ギャングモード)方式を採用している。
 制御棒が引抜かれ原子炉が臨界に達し、その後も原子炉出力は徐々に上昇するが、制御棒引抜きで炉心に与えられた反応度と負の温度係数による反応度変化とがバランスした時点で出力上昇が抑えられる。これ以降がいわゆる本格的な核加熱の段階である。昇温昇圧に際しては原子炉容器に過大な熱応力を発生させないよう、原子炉水温度の上昇率が規定値(約55℃/時)以下にあることを監視しながら、制御棒操作により原子炉出力を上昇させる。核加熱段階において、主復水器真空度を維持するため、所内蒸気を使用する起動用空気抽出器から原子炉蒸気を駆動源とする主空気抽出機に切替える。こうして原子炉とタービン入口までの系を定格まで昇温昇圧していく。原子炉出力が約10%に達したとき、タービンを起動し定格回転数まで徐々に昇速する。定格に達したら発電機を並列させる。
1.3 定格出力への上昇
 発電機並列後の出力上昇は、制御棒引抜きとともに再循環ポンプ速度上昇(炉心流量の増加)によって行う。この間、発電機出力が増加し所内電力を十分安定して供給できるようになった時点で、所内動力電源を外部電源(起動変圧器)から主発電機側電源(所内変圧器)に切替える。またタービン駆動給水ポンプが給水制御系の制御範囲に入ったところで、電動機駆動給水ポンプからタービン駆動給水ポンプへ切替える。この過程では特に炉心の核熱パラメータを監視しつつ出力上昇することが肝要である。
2.原子力発電所の停止
 図3にBWR原子力発電所停止時の運転操作の流れ(停止曲線)を示す。BWR原子力発電所の停止操作は、ほぼ起動操作の逆手順で出力を低下させていく。
2.1 発電機解列に至るまでの出力の低下操作
 最初に再循環ポンプ速度の降下(炉心流量の減少)および制御棒の挿入により原子炉出力を低下させる。BWR原子力発電所は蒸気圧力一定制御原則で設計されているため、原子炉出力の低下に従いタービン加減弁が自動で絞り込まれるので、発電機出力は低下してくる。この際、タービン機内温度の急激な低下に気を付けなければならない。
 この過程におけるその他の主要操作としては、給水流量の減少により供給能力が余剰となって主給水・主復水ポンプの停止および主給水ポンプの切替え(タービン駆動給水ポンプから電動機駆動給水ポンプへ)がある。これらの操作時には原子炉水位が一時的に変動することがあるので、原子炉水位を監視しながら慎重な操作が行われる。
 発電機解列前に、所内負荷に対し十分余裕をもたせた出力レベル(定格の約20%出力)において、所内負荷の電源を所内変圧器(発電機から受電)から起動変圧器(外部電源から受電)へ切替える。
 発電機解列時の原子炉出力は原子炉圧力が変動しないようタービンバイパス弁の制御範囲とし(原子炉出力約10%)、発電機を電力系統から解列し、発電機を停止する。
2.2 原子炉の減圧と冷却
 発電機解列後は、制御棒の挿入により原子炉を未臨界とし、さらに原子炉系の減圧と冷却を行い冷態停止状態に移行する。原子炉の減圧はタービンバイパス弁を介し主蒸気を主復水器に導くことにより行う。
 核計装系のモニター範囲を切替えるとともに、原子炉モードスイッチを「運転」から「起動」へ切替える。減圧過程では炉水の温度降下率を規定値(約55℃/時)以下に抑えるとともに原子炉容器各部間の温度差が過大にならないよう注意する。制御棒の挿入により発生蒸気が減少しタービンバイパス弁が閉じかけたならば、主蒸気圧力の設定値を実際の圧力よりも下げることにより逆にタービンバイパス弁を開き、原子炉蒸気を主復水器にダンプする。その結果徐々に減圧する。タービンバイパス弁の開度は原子炉の温度降下率を監視しながら適宜調整する。原子炉圧力が1MPa[gauge]以下では、圧力調整器の制御範囲をはずれるので、バイパス弁オープニングジャッキを使用してバイパス弁を開き減圧を続ける。原子炉圧力の降下とともに電動機駆動給水ポンプおよび高圧復水ポンプを停止し、最終的には低圧復水ポンプを1台運転状態とする。
 原子炉圧力が0.93MPa[gauge]以下で残留熱除去系(RHR)のフラッシングおよびウォーミングアップを行い、0.75MPa[gauge]で停止時冷却モード(原子炉−残留熱除去系熱交換器−原子炉)にして原子炉の冷却を開始する。また原子炉水温度80℃以下までは復水器の真空度を維持し原子炉水の脱気を行う。その後原子炉系とタービン系を切り離し、排ガス系を通して主復水器内の非圧縮性ガスを排気し、主復水器真空破壊弁を開くことによりその機能を停止する。
<図/表>
図1 BWR原子力発電所の主要系統概略図
図1  BWR原子力発電所の主要系統概略図
図2 BWR原子力発電所の起動曲線(例)
図2  BWR原子力発電所の起動曲線(例)
図3 BWR原子力発電所の停止曲線(例)
図3  BWR原子力発電所の停止曲線(例)

<関連タイトル>
原子炉機器(BWR)の原理と構造 (02-03-01-02)
BWRの炉心設計 (02-03-02-01)
BWRの原子炉冷却系統 (02-03-03-02)
原子力発電プラント(BWR)の制御 (02-03-06-01)
改良型BWR(ABWR) (02-08-02-03)

<参考文献>
(1)火力原子力発電技術協会(編):原子力発電所−全体計画と設備−(改定版)、平成14年6月
(2)原子力安全研究協会(編):軽水炉発電所のあらまし(改訂3版)、平成20年9月
(3)火力原子力発電技術協会(編):やさしい原子力発電、平成2年6月
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