<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> エネルギー政策
<小項目> 電力政策
<タイトル>
電力需要の時間的・季節的変動 (01-09-05-07)

<概要>
 電気事業者における月別の負荷曲線は、気候・気温などの自然条件や、産業構造の変化あるいは景気の動向などによって変化するが、負荷の季節的変動にはほぼ一定した特性がある。1965年代の初めまでは年間最大電力は冬季の点灯時(夕方)に発生することが多かったが、業務用や家庭用の冷房需要が急増したことにより、近年では最大電力は夏季の13〜15時頃に記録されており、夏ピークと冬ピークとの格差は次第に拡大してきている。
 最大需要電力に対する平均需要電力の百分率を表す年負荷率は、1983年以降は60%を下回り欧米主要国と比較しても極めて低く、これが電力供給コストの増加要因となっている。
 あらゆる経済活動の基盤となる電力については、特にその経営の効率化が最優先で取り組むべき緊急課題であり、電力需要が最大となる夏季昼間の需要を他の時間帯にシフトさせる等の負荷平準化対策を推進する必要がある。
<更新年月>
2005年07月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.電力需要の動向
 わが国の電力需要は、景気動向などを反映しその伸び率は近年鈍化傾向にあるものの、着実に増加している。2004年(平成16年)度における10電力会社合計の用途別需要電力量(販売電力量)は、電灯・電力合計で8654億kWhに達し、これを39年前の1965年(昭和40年)度と比較すると、実に6倍以上にもなっている(図1)。
 高温多湿な夏を快適に過ごすための冷房需要の一層の増加など生活水準の向上やアメニティー志向の高まりやコンピューター、通信などをはじめとする高度情報化社会の進展などにより、近年では民生用需要の伸びが産業用需要を上回っており、気温の影響を受けやすい需要構造となっている。暮らしや社会における電気の役割はますます大きくなってきており、今後10年間も年平均2%のペースで更に伸び続けるものと見込まれる。
 近年の需要動向をみると、2004年(平成16年)度の10電力会社の販売電力量は、2003年(平成15年)度(8343億kWh)に対し、3.7%増加した。用途別にみると、民生用需要では、電灯は、全国的に夏季の気温が高めに推移し、冷房設備の稼働増がみられたことなどから4.1%増、業務用電力は3.2%増と堅調な伸びとなった。
 産業用大口電力は、穏やかな景気の上向きにより2.8%増となった(表1)。
2.電力需要の時間的・季節的変動
 昭和40年代半ばまで(〜1972年)旺盛な伸びを示してきた電力需要は、昭和48年(1973年)と昭和54年(1979年)の再度にわたる石油危機を契機とする経済成長の減速や省エネルギー技術の進歩などにより、その増勢を大幅に減速させている。これを用途別でみると、電灯・業務用電力の生活関連需要の割合が増加している反面、産業用の中心である大口電力の割合が減少している。
 図2は、真夏の1日の電気の使われ方の推移(日負荷曲線)の一例を示したものである。総合負荷には各種の需要が含まれているので、需要内容の相違により総合負荷曲線の形も変化する。しかし、需要内容が変化しなければ、毎日の負荷変動にはほぼ一定の特性がある。1日の電力使用状況からみて、総合負荷の大きくなる時刻、すなわち、だいたい8時から20時までの間に現れる負荷を尖頭負荷といい、一般の負荷は、大体においてこの尖頭負荷時に使用される。
 図3は電気事業者における月別の年負荷曲線を示したものである。年間の負荷曲線は、気候・気温などの自然条件や、産業構造の変化あるいは景気の動向などによって変化するが、負荷の季節的変動にはほぼ一定した特性がある。昭和40年代(1965年〜1974年)の初めまでは年間最大電力は冬季の点灯時(夕方)に発生することが多かったが、業務用や家庭用の冷房需要が急増したことにより、近年の年間最大電力は、冷房設備がフル稼動する夏季の13〜15時頃に記録されている。9電力会社合計の年間最大電力でみても、昭和43年(1968年)度以降、それまでの冬型のピークから夏型のピークに転換してきたことがわかる。夏季の使用電力量は、年平均電力量を上回る増加を示してきた。このため、夏ピークと冬ピークとの格差は次第に拡大してきている。この様子を図4に示す。
 図5に年負荷率の推移を示す。上記のように、夏期冷房需要の拡大を背景とする夏期のピーク需要の先鋭化により電力各社の負荷率は次第に悪化しており、1980年度には62%であった負荷率が、1983年以降は60%を下回り、1994年度には55%にまで低下してたが、その後徐々に上がり始めて2000年に60%弱となり、以後はほぼ一定で推移している。これは欧米主要国と比較して極めて低い値である(図6)。
3.負荷平準化対策の必要性
 上記のように、昭和40年代半ば以降、冷房機器の普及等に伴い電力需要の負荷曲線は年々先鋭化してきた。具体的には、昼夜間、平日と休日、季節間で電力需要は大きく変動し、一般に冷房需要がピークに達する夏季の平日の昼間に最大になる。このような電力需要の変動に対応して、安定的な供給が図れる供給能力を有する必要があるが、夏季のピーク需要発生時は、1年間のうちの僅かな時間であり、この僅かな時間のために電気事業者は必要な供給能力を確保しなければならず、これが電力供給コストの増加を招いている。
 他方、わが国経済の高コスト構造の改善が強く求められている中、あらゆる経済活動の基盤となる電力については、特にその経営の効率化が最優先で取り組むべき緊急課題である。このためには、電源設備利用の効率化による供給コスト低減のため、電力需要が最大となる夏季昼間の需要を他の時間帯にシフトさせる(ピークシフト)等の負荷平準化対策を推進する必要がある。また、負荷平準化対策は、省エネルギー、CO2排出削減等に資するものであり、地球温暖化対策としても極めて重要である。
4.負荷平準化に向けた取組の強化
 平成9年(1997年)5月に閣議決定した「経済構造の変革と創造のための行動計画」において、負荷率の改善をコスト削減の中核的対策として位置づけ、電気事業者のみならず、需要家・消費者、ビル等の設計・建築関係者、メーカー等広範な関係者の努力と協力が不可欠としている(表2)。この「行動計画」を受けて、平成9年(1997年)7月、電気事業審議会(現在の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会)に新たに基本政策部会を設置するとともに、部会に電力負荷平準化対策検討小委員会をおいて、これら関係者の努力・協力を求める具体的内容および政府のとるべき対応策が平成9年(1997年)12月とりまとめられて、ここで負荷率改善の数値目標が策定された(表3)。
 また、同じく電気事業審議会需給部会の中間報告(1998年:平成10年6月)においても、負荷率の改善が、省エネルギー、CO2の排出抑制、電力供給コストの低減等に大きく資するものであることから、電力負荷平準化対策の強化に努めることが必要であるとされている(表4)。
 さらに、地球温暖化対策推進本部決定の地球温暖化対策推進大綱(1998年:平成10年6月)においては、エネルギー供給面の二酸化炭素削減対策の一環として、電力負荷平準化を推進することが盛り込まれているほか、平成10年(1998年)9月の第27回総合エネルギー対策推進閣僚会議において、前回会議(平成9年:1997年4月開催)と同様に、対策に取り組むことが了承された。
 負荷平準化に対する具体的な取組として、最も有効である氷蓄熱式空調システム(エコ・アイス)およびガス冷房の普及促進のため、平成10年(1998年)度に補助金制度が創設された(図7)。
5.省エネルギーの一層の推進
 需要家全体の省エネルギーについても、省エネルギーによるピークカットにつながることから、負荷率改善に非常に有益である。平成10年(1988年)度には地球温暖化防止対策の手段として省エネルギーを一層促進させるため省エネルギー法が改正され、この法律改正が負荷率の一層の改善に貢献することが期待されている。

[用語解説](「電気事業便覧」平成16年版、p.343-345)
負荷(ロード)と負荷率(ロードファクタ)
 電気設備中で実際に使われた電力(kW)を負荷という。
 負荷率というのはこの電力のある期間(日、月、年など)における平均(平均電力)の最大電力に対する比率をいう。この負荷率は一般に需要者側では次の式で算出されている。
           使用期間中の消費電力量
    負荷率=−−−−−−−−−−−−−−−−−−×100(%)
          最大使用電力×使用日数×24時間
負荷曲線(ロード・カーブ)
 ある期間中における使用電力をグラフにしたもの
尖頭負荷・夏季ピーク
 1日の負荷曲線は一般にある時刻に著しく隆起を示すもので、この部分の頂点の値を尖頭負荷(ピーク)という。
 1日の尖頭負荷の表れる時刻は需要構成や季節的条件その他によって異なるが、電灯負荷の多い系統では点灯時に、動力負荷の多い系統は昼間に表れるのが普通である。近年では、ビル冷房、ルームクーラー、扇風機などの冷房需要のため夏季の昼間負荷が点灯時負荷を上回り、季節的にも夏季尖頭負荷(夏季ピーク)が冬季尖頭負荷(冬季ピーク)を上回っている。
最大電力
 電力の使い方には、多いときと少ないときがあるが、ある期間(日、月、年)の中で最も多く使用した電力を最大電力という。
 一般には毎時間における電力量計の最大のものをいう。30分間平均、15分間平均、瞬時などを記録すれば、それぞれ30分、15分、瞬時の最大電力という。なお、期間のとり方によって日、月、年、豊水期、渇水期の最大電力がある。これが供給契約の場合は最大需要電力(マキシマムデマンド)という。
平均電力
 一定期間中の電力量をその期間数の総時間で割ったものをいう。期間の採り方によって日平均電力、月平均電力、期平均電力、年平均電力などがある。
電力系統
 多くの発電所、送・配電線路、変電所、負荷が有機的に密接に連系され、一体として運用されている電力設備のシステムをいう。
発電端・送電端電力量
 発電所おいて発生した電力量を発電端電力量といい、これらからその発電所内の補助機や所内用電灯などに使われる電力量を差引いた、実際に送り出される電力量を送電端電力という。
<図/表>
表1 電灯・電力需要実績(2004年度)
表2 高コスト構造の是正のための電力分野の行動計画(抜粋)
表3 負荷率改善目標について
表4 電気事業審議会需給部会中間報告(抜粋)
図1 販売電力量の推移と見通し(10電力合計)
図2 真夏における1日の電気の使われ方推移(日負荷曲線)
図3 1年間の電気の使われ方の推移(年負荷曲線)
図4 8月、12月の最大3日平均電力の推移(送電端)
図5 年負荷率(送電端)の推移
図6 主要国の負荷率の推移
図7 エコ・アイス導入に国の補助金制度を適用

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
各種電源の特徴と位置づけ(1995年度末) (01-04-01-02)
電力需要の変遷と需要構造 (01-09-05-03)
電力需要の平準化対策 (01-09-05-08)
平成10年度電力供給計画 (01-09-05-14)
平成11年度電力供給計画 (01-09-05-15)

<参考文献>
(1) 通商産業省資源エネルギー庁公益事業部(監修)、電力年報委員会(編集):電気事業の現状・1999年/平成11年版、(社)日本電気協会(2000年3月)、p.15-34
(2) 電気事業連合会:2004年度分電力需要実績(速報) 
(3) 資源エネルギー庁(監修):1999/2000資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)、p.515-522
(4) 通商産業省資源エネルギー庁公益事業部(編):電力需給の概要1999年・平成11年版、中和印刷株式会社出版部(2000年3月)p.167-302
(5) 電気事業連合会統計委員会(編):電気事業便覧 平成17年版、(社)日本電気協会(2004年10月)p.124-125、p.276-277
(6)(株)電力新報社(編集発行)電力構造改革・料金制度編(1999年3月)p.130-137
(7)(株)電力新報社(編集発行)電力構造改革・供給システム編(1999年3月)
(8)(社)電気学会(編):新版 電気工学ハンドブック1995(1995年5月)
(9)通商産業省のホームページ:平成9年5月閣議決定:経済構造の変革と創造のための行動計画[2000年3月アクセス]
(10)通商産業省ホームページ:平成9年12月16日公表:電気事業審議会基本政策部会電力負荷平準化対策検討小委員会中間報告[2000年3月アクセス]
(11)資源エネルギー庁のホームページ:平成10年6月4日「電気事業審議会需給部会中間報告」[2000年3月アクセス]
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