<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 地球環境問題
<小項目> 地球温暖化問題と対策
<タイトル>
米国の温室効果ガス政策 (01-08-05-25)

<概要>
 気候変動問題に関する米国の政策は、エネルギー省が中心になって作成されている。それは単に、温室効果ガスの排出削減を目的とするのでなく、エネルギーシステム、産業・農業・輸送等あらゆるシステムを見直して、エネルギーの独立、安全保障、原子力や水素経済の拡大・導入を含め、長期の米国社会の発展を視野に入れた政策である。その中心には、近年の大統領の気候変動政策が据えられており、ここ10年来米国が用意してきた施策が政策を構成している。
<更新年月>
2004年06月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.温室効果ガス政策の概要
 米国エネルギー省DOE)が中心になって温室効果ガス対策と気候変動政策が進められている。
 DOEの政策・国際協力局(Office of Policy and International Affairs)は、気候変動に言及した大統領のイニシアティブ(Global Climate Change Policy:地球気候変動政策、以下「気候変動政策」という。)のフォローアップに向けられている。
(1)2002年2月14日にブッシュ大統領は、DOEと他の機関に1992年のエネルギー政策法の1605(b)の自主的排出削減登録プログラムvoluntary emission reduction registration program)を改訂するよう命じ、DOEは、商務省、農務省、環境保護庁、諸機関を先導し−利害関係者を含めて−このプログラムの精度、信頼性並びに排出と排出削減データの立証可能性を強化しつつある(後述)。
(2)「気候変動 VISION(Voluntary Innovative Sector Initiatives:Opportunities Now)計画」−2003年2月にDOEによって開始された大統領の気候変動政策−は、特にエネルギー集約型の産業による温室効果ガス排出の増加を減らすために、コスト効率の良い戦略を進めるために策定された自主的な官・民(政府と産業界)の協力計画である。
 産業団体及び他のグループによる作業を通して、計画は産業が温室効果ガスを吸収・隔離する効率的な技術を実施し、エネルギー技術開発、改良プロセスを加速しようとするのを支援する。VISIONはこれらの目標を、技術開発、商業化と結びつけ、また、民間部門並びにDOEや他の参加機関を含む政府が支援する商用化実施活動に結びつける。VISIONが開始されて以来、産業部門を代表するビジネス協会とビジネス円卓会議が連邦政府とのパートナーになり、各々、温室効果ガス排出原単位低減という目標を達成する意思を示した。これらのVISION計画のパートナー−幾つかの米国有数の会社を含む−は、以下のように幅広く産業部門を代表している;
 石油・ガス部門、発電部門、鉱業部門、鉄道部門、林業製品部門、及び、自動車、セメント、鉄鋼、マグネシウム、アルミニウム、化学製品と半導体を含む製造業部門。
 2003年12月10日、VISION計画のウェブサイト「www.climatevision.gov」が開設された。サイトは、温室効果ガス削減活動の情報源としての機能を果たし、また、他の気候変動プログラム及び気候変動政策(大統領命令・声明など)、例えばDOEの自主的排出削減登録プログラムに関する情報も含んでいる。
(3)大統領はまた、内閣レベルの気候変動科学技術統合委員会(Committee on Climate Change Science and Technology Integration,CCCSTI)を設立した。エネルギー省と商務省長官が交互に議長を勤める。CCCSTIの機能は、
・大統領に気候科学と技術に関する勧告を用意し、
・関連の連邦研究開発問題を扱い、そして、
・委員会の勧告に関して行政管理予算局(Office of Management, Budget & Evaluation)と協力することにある。
 気候変動技術プログラム(Climate Change Technology Program,CCTP)は、CCCSTI内の技術サブグループである。DOEの指導によって、CCTPは長期の排出削減に重要なエネルギーと隔離技術の研究開発を扱う。
(4)DOEも、気候変動と関係する広範囲の研究開発計画を実施している。DOEの化石燃料局(Office of Fossil Energy)は、地球規模の気候変動に寄与する炭素排出を削減するために2つの主要な戦略を進めている;
・より効率的な化石エネルギー・システムを作ること
・温室効果ガスを吸収し、隔離すること。
 第1のアプローチは、石炭及び石炭・天然ガス燃焼の発電所の燃料エネルギー効率を大きく改善する革新的な技術開発が狙いであり、より効率的なプラントは、発電に燃料をあまり使わず、したがって温室効果ガス排出が少ない。
 第2のアプローチは、化石エネルギー・システムから実質的に温室効果ガス排出をなくしてしまうことで、炭素の吸収・隔離システムは温室効果ガスを貯蔵し、転換し、リサイクルし、大気中の増加を防ぐ。
(5)原子力発電所は化石燃料を燃やさないので、空気の質を悪くする気候変動の原因となる物質を出さない。発電において化石燃料と置換することによって、原子力エネルギーは、米国と世界で、かなりの二酸化炭素、主要な温室効果ガス、及び他の汚染物質の排出を削減した。
 原子力科学技術局(Office of Nuclear Energy,Science and Technology)の活動は、新規の原子力発電を開発し発電量の増加によって、国が、次の10年間に米国の温室効果ガス原単位を18%減少させるという大統領の目標に応えようとしている。
(6)DOEは、米国の将来のエネルギー像が水素経済を含まねばならないと考えている。水素は、大統領の国家エネルギー政策(National Energy Policy)の目標− 環境の質を著しい改善、アメリカのエネルギー独立と安全の強化−を国が実現することができるようにするであろう。
 原子力科学技術局(Office of Nuclear Energy, Science & Technology)は、原子力エネルギーで生産された水素という重要な解答があることを実証しようとしている。新しい原子力水素研究計画では、DOEは経済的で環境にやさしい方法により商用規模で水素を生産する技術を開発する。
2.自主的排出削減登録プログラム
 プログラムは、エネルギー情報管理局(EIA:Energy Information Administration)が運営している。報告者は温室効果ガス排出を減らし、または土壌や植物に炭素を貯蔵する活動を記録する。自主的報告プログラムは報告者の活動の効果を顧客、株主、公務員及び連邦政府から認知してもらう機会を与えるもので、活動の結果を報告することは、気候変動の脅威を扱う国の努力の潮流を大きくするのに役立つ。報告者の活動が大統領の気候変動政策の下での様々な研究計画の一部であるということである。また、報告者の将来の活動を計る基準を記録する。報告は、温室効果ガス抑制の費用対効果の活動に関するデータベース拡大に貢献する。報告される部門は、電力供給、民生家庭、民生業務、産業、輸送、林業、農業である。
 国のデータベースに報告者の温室効果ガス排出及び削減と排出回避の活動を記録することもできる。報告には情報交換を目的とする詳細な報告と、要約のような短い報告がある。図1図2に短い報告の書式を示す。
 報告は、温室効果ガス排出目標を達成する色々な計画−Climate Change Action Planや、Climate Challenge、Climate Wise、及び、Motor Challengeプログラム−に参画するものとしてもよく、また、これらのプログラムとは独立の活動でもよい。
 温室効果ガス削減に関する国の政策の公開討論会に貢献するよう、データを用意することもできる。自主報告によるデータベースは、国または各部門の排出に関する完全な像を用意できるわけではないから、公開討論は、排出削減と炭素隔離プロジェクトの可能性を評価する信頼の置ける情報源となる。また、教育情報交換に参加することもできる。
 プログラムの2002年のサマリーレポートによると、温暖化ガス削減に有効なプロジェ
クト・タイプ(電力など10のタイプがある)、全部で451件の報告があり、プロジェクトの総件数は2,027件であった。プロジェク・タイプ別の報告内訳は、電力(発電、変電、送電)90件、最終エネルギー消費(産業部門、民生・農業部門、運輸部門をいう)82件、CO2削減61件、廃棄物処理(メタン削減に有効)57件、その他が161件となっている。
3.気候変動研究開発に関する報告書
 DOEは、2003年12月2日、気候変動技術プログラム(CCTP)の進捗状況を概説する報告書を発表した。連邦政府の気候変動技術開発投資に関するポートフォリオ(基準)を表す2つの報告書で、(1)研究と現在の活動(Research and Current Activities)、(2)短期・長期の技術オプション(Technology Options for the Near and Long Term)である。第1の報告書、「研究と現在の活動」は、この分野の大統領の気候変動政策及び重要な研究、技術開発、技術の展開活動を浮き彫りにするものである。第2の報告書「短期・長期の技術オプション」は、米国及び世界の研究開発活動の集大成で、包括的なものである。例えば、原子力の核分裂炉では、次世代技術として、以下の6タイプが挙げられている。
ガス冷却高速炉−Gas-Cooled Fast Reactor(GFR)
・鉛冷却高速炉−Lead-Cooled Fast Reactor(LFR)
・熔融塩炉−Molten Salt Reactor(MSR)
ナトリウム冷却高速炉−Sodium-Cooled Fast Reactor(SFR)
・超臨界水冷却炉−Supercritical-Water-Cooled Reactor(SCWR)
超高温ガス炉−Very-High-Temperature Reactor(VHTR)
 CCTPは、可能な限り、連邦政府以外の他の研究投資で調整を梃子入れようとしている。
 全体として、米国と世界には、現在進行中のR&Dの強固なポートフォリオがある。 これらの研究開発投資によって、全部一緒になると、実用的な技術誕生の機会が生じ、結果として、相当量の温室効果ガス排出削減を伴い、21世紀エネルギー・システムの基本的な転換と劇的な改善が起こるであろう。 この中には、80以上の技術オプションがある。表1-1表1-2表1-3に技術オプションのリストを示す。もしうまくいけば、これらの技術開発は、先進技術開発をめざした以下の一連の目標中に組織される;
(i)最終エネルギー消費とインフラ(交通、通信、電力、水道、公共施設など、社会や産業の基盤として整備される施設:社会基盤)からの排出削減
(ii)エネルギー供給からの排出削減
(iii)二酸化炭素の吸収及び隔離
(iv)他の温室効果ガスの排出削減
(v)温室効果ガス排出の計測とモニター能力の強化
 相互参照フォーマットを図3に示す。
 ここに示される各技術が実現すれば、上で示したゴールのうちの1つ以上に貢献し、技術なしの基準と比較して気候変動低減に効果をもたらす。
 しかし、これらの効果の評価は、不確実で、市場、競合する他の技術、及び時の経過とともに明らかになる他の因子を含むたくさんの変数に依存する。
 これら大部分の技術は、パフォーマンスの向上、コスト減、商業化のための投資が必要であり、市場に広く技術を広げるためには、追加の研究開発投資を必要とする。
<図/表>
表1-1 技術オプション内容目次(1/3)
表1-2 技術オプション内容目次(2/3)
表1-3 技術オプション内容目次(3/3)
図1 Voluntary Reporting of Greenhouse Gases Programの短い報告書式1
図2 Voluntary Reporting of Greenhouse Gases Programの短い報告書式2
図3 ハイブリッド車オプションの技術記述の例


<関連タイトル>
米国の温室効果ガス政策 (01-08-05-25)
地球の温暖化問題 (01-08-05-01)
温室効果ガス (01-08-05-02)

<参考文献>
(1)Voluntary Reporting of Greenhouse Gases under Section 1605(b) of the Energy Policy Act of 1992,
(2)EIA:Environment,Greenhouse Gases,Voluntary Reporting of Greenhouse Gases Program,
(3)DOE:Environment,Climate Change,
(4)Department of Energy Launches Climate Change Website:,
(5)U.S. Climate Change Technology Program-Technology Options for the Near and Long Term:
(6)EIA:Environment,Greenhouse Gases,Voluntary Reporting Program,Forms,
(7)Enhancing DOE's Registry of Greenhouse Gas Emissions and Emission Reductions:
(8)EIA:Environment,Greenhouse Gases,Voluntary Reporting Program,Summary Report,
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