<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の新エネルギー
<小項目> 新エネルギー技術開発
<タイトル>
石炭の液化・ガス化 (01-05-02-02)

<概要>
 石炭の液化・ガス化は固体燃料である石炭を灰分、硫黄分を除去したクリーンで取り扱い易い液体燃料または気体燃料に転換することによって幅広い利用を可能にするものである。特に、石炭液化は石油に直接代替し得る液体燃料を供給する技術であり、その確立は石油を輸入に頼っている日本の脆弱なエネルギー供給構造を改善するとともに石油価格上昇の抑止力になることが期待される。石炭のガス化は石炭から都市ガスあるいは複合発電システムに使用できる気体燃料を製造するものである。
<更新年月>
2004年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.石炭の液化・ガス化(Coal Liquefaction・Gasification)の意義
 石炭の液化・ガス化は固体燃料である石炭を灰分、硫黄分を除去したクリーンな液体または気体燃料に転換することによって、都市ガスあるいは複合発電システムなど幅広い用途での利用を可能にしようとするものである。すなわち、石炭液化は、石油に直接代替し得る液体燃料を供給する技術であり、その確立は、石油の大半を中東地域に依存しているわが国のエネルギー供給構造を改善し、同時に石油価格上昇の抑止力となることが期待されるが、さらには石油の大量消費国であるわが国の長期的エネルギー戦略における国際的責務でもあると考えられる。
2.石炭液化の技術開発
 石炭の液化・ガス化は原理的には高分子有機化合物の低分子化を行うことである。固体質石炭は、図1に示すように主として炭素、水素および酸素等の多数の原子で構成されているが、原子間結合の弱い−CH2−結合部を切断すると、六角形の芳香環2〜4個からなる石炭液化油ができることになる。結合を切断する主な力は、熱エネルギーであることから、液化反応には400〜450℃の温度を必要とする。この温度では、図1の所々に見られる−CH2−の結合が切れ易い状態になり、切断された結合部は他の原子と手を結んで安定化しようとする。
 この安定化のために、液化では一般に水素を用いる。しかし、切断された結合部が全て水素を取り込んで安定化するとは限らないところに石炭液化反応の難しさがある。水素と結合しなかった結合部は、再度結合部同志が再結合する。すると、分子は巨大化する。しかも巨大化した分子は、六角形芳香環の集合が大きくなる。この現象を炭化またはコーキングと呼ぶ。このように石炭液化では、石炭の低分子化と炭化という全く逆の反応が同時に起こる。したがって、炭化防止法の確立は、石炭液化技術にとって重要な課題である。
 石炭液化とは、加熱することによって石炭分子の化学結合を切れ易い状態にし、次いで切断点に水素を添加することによって低分子化するプロセスであると言える。石炭を液化し、石油を補完する燃料油を製造する技術として、サンシャイン計画では、瀝青(れきせい)炭液化技術と褐炭液化技術について研究開発を行ってきた。
 瀝青炭液化技術については、化学結合の切断点にどのような水素を供給するかの違いによる次の3つの方式について研究開発を実施してきた。
(a)直接水添液化法:石炭の有機高分子成分に直接水素を反応させることによって液状油を得る方法である。
(b)溶剤抽出液化法:石炭とリサイクル油を混合して、圧力100〜150気圧、温度400〜450℃で熱処理し、石炭から可溶分を抽出するとともに、リサイクル油の水素供与性を利用して石炭に水素を供給する方法である。したがって、この方法では、リサイクル油に水素供与性を与えるために、リサイクル油の水添工程が必要である。
(c)ソルボリシス液化法:石炭を常圧〜数十気圧という低圧で液化油の一部を使って数分〜10分程度の極めて短時間の反応で液化する方法であるが、反応条件が穏やかであるだけに、得られる液状物は重質であり、油分を得ようとすれば、さらに第2段目の水添工程を加える必要がある。
 日本では、NEDOL法として、「直接水添法」、「溶剤抽出法」、「ソルボリシス法」の3つの瀝青炭液化法のそれぞれの長所を集めた技術的・経済的に優れた液化技術を独自に開発した。NEDOLプロセスの概要を図2に示す。この手法による瀝青炭液化技術については、石炭処理量150t/日能力のパイロットプラント(図3参照)を1996年6月に建設完了し、7月から運転開始、1998年9月に所期目標を達成し、1998年度でプロジェクトを終了した。
 褐炭液化技術については、世界に大量に賦存する褐炭について、オーストラリアのビクトリア州の褐炭を対象に、50t/日のパイロットプラントを1981年から1990年度まで建設・運転を実施し、1991〜1993年度にかけて解体研究、成果の取りまとめを実施し終了した。代表的な褐炭の液化法を図4表1に石炭の液化方式の比較を示す。
 石炭の液化の研究開発は、ベンチスケール、パイロットプラント、デモンストレーションプラント、商業プラントと逐次スケールアップを行い、効率の向上と低コスト化を図っていく必要があるが、技術開発の主要な段階であるパイロットプラントまでを考えても、所要資金が膨大で、技術開発リスクが大である。このため、研究開発には、長期的視点から計画的な取り組みを行っている。
(d)海外の技術開発動向
 第2次世界大戦以前から技術開発が活発に行われていた旧西ドイツ、その技術を引き継いだ米国等で石炭液化に関する研究が行われてきた。
 米国ではGulf Oil社が中心となり、旧西ドイツ、日本などが参加したSRC−II法のプロジェクトが中止されるなどのエネルギー政策の変更があったが、今までExxon社を中心としたEDS法、Ashland社を中心としたH-Coal法についてパイロットプラントの運転研究が行われてきた。現在、パイロットプラントの運転研究は終了し、プロセス改良のため実験研究を実施中である。
 EDS法は、水素供与性の溶剤を用いて液化する方法で250t/日パイロットプラントがテキサス州ヒューストンで運転された。日本石炭液化技術開発(株)のほか独ルールコーレ社等が参加した。この方法は、溶剤を事前に水添することによって1次水添を触媒なしで、かつ反応圧カも下げることをねらいとしている。H-Coal法は、Co-Moなどの触媒を用いて沸騰床型反応器で水添液化する方法で、200〜600t/日(運転条件により能力が異なる)のパイロットプラントをケンタッキー州キャトレッバーグで運転研究を行った。この方法は、高活性の触媒による水添効果をねらいとしているが、触媒の被毒、沸騰状態の維持など難しい問題を残している。また、Gulf Oil社を中心としたSRC-II法については、6000t/日のデモンストレーションプラントの基本設計を行ってプロジェクトを終了した。この方法は鉄分に富んだ石炭に適している。
 ドイツにおいては、戦争中に開発されたIG法以来、触媒を利用する直接水添により、燃料油、化学原料等を製造するプロセスについて、反応圧力の低減(700気圧から300気圧)、熱経済性向上、大量処理プラントの実現、鉄系の安価な触媒の利用などを技術開発の目標に研究開発が行われている。ルールコーレ社が中心となり、ボトロッブにおいて実施した200t/日のパイロットの運転研究を終了し、重質油の分解や廃棄物の処埋用プラントとして運転を継続中である。また、2500t/日級デモンストレーションプラントの概念設計を終了している。この技術は商業化技術として確立するまでには、なお改善の余地を残している。
 米国、ドイツ以外の国々、例えば英国、南アフリカ連邦などにおいても研究開発は進められてきた。またカナダ、オーストラリア、中国は、自国の豊富な石炭資源を有効に利用するための方策として石炭液化に関心をもっている。
 英国のCREが取り組んだ石炭液化技術は2段の転換プロセスから成っている。2.5t/日のパイロットプラントの運転研究を実施してきたが、1995年5月で終了した。
 南アフリカ連邦では、特殊な経済的条件のもとで、フィッシャートロプッシュ合成法による間接液化が実用化している。この実用プラントは第1号機石炭処理量15000t/日、第2号機42000t/日、第3号機42000t/日であり、第1号機は老朽化のため停止された。石炭はまず、ルルギー法ガス化炉でガス化され、次に合成工程で液化される。この方法は既存技術の組み合わせであり、技術的には一応確立されているが、エネルギー効率が低いこと、合成反応の選択性が低いことなどの問題がある。
 表2に欧米における石炭液化法の開発状況を示す。
3.石炭ガス化の技術開発
 石炭ガス化の歴史は、古く19世紀初頭にさかのぼり、現在でも商業的に運転されているものもある。ニューサンシャイン計画や欧米で新たに開発されている各種ガス化法のいずれも、原理的には巨大高分子化合物である石炭を高温(800〜1600℃)で安定な微小分子に分解するプロセスを採用している。この温度では、石炭は図1に示すような形態を維持することができず、大きな縮合芳香環を単位とするチャー又はコークスと呼ばれるものになる。すなわち、炭化が可成り進行した状態で安定するが、この過程で水素、メタン、一酸化炭素等の可燃性ガスを放出する。
 ガス化剤は、炭化の過程で生成するタールや可燃性ガスの成分分布に影響を与えるが、主な役割は、チャーを分解して固体質炭素を完全に消費することにある。ガス化剤は普通、水蒸気、酸素、空気のいずれか一種を単独で用いるか、あるいは水蒸気と空気または酸素の組合せとする。また、水素をガス化剤とするガス化法もある。ガス化剤に何を用いるかによって生成ガスの発熱量がほぼ決まる。実際の炉内における反応は極めて複雑な場合が多いが、主な反応は図5のようなものである。なお、図6に石炭ガスの原理を示す。
 サンシャイン計画では、これまで高カロリーガス化技術、低カロリーガス化技術および石炭利用水素製造技術の開発を対象として取り上げ開発を終了した。1996年度からは、ニューサンシャイン計画のもと新たに石炭水素添加ガス化技術の開発に取り組んでいる。
 高カロリーガス化技術は、都市ガスとして使えるクリーンなガスを製造するもので、石炭の粉末と重質油を混合したスラリーを高温高圧下で水蒸気、酸素を加えてガス化する技術で、1984年度から1985年度まで7000Nm3/日パイロットプラントの運転研究を行い、1986年度の解体研究をもって研究開発を終了した。
 低カロリーガス化技術は、複合化発電システムに利用することを目的に開発を進めているもので、石炭の粉末を高温高圧下でガス化し、これを使用して発電を行う技術で、40トン/日の加圧流動床ガス化方式パイロットプラント、200トン/日の噴流床ガス化方式パイロットプラント(図7にパイロットプラントの全景とプラント構成図を示す)について研究を実施している。
 石炭利用水素製造技術は、安価な石炭を利用してクリーンな燃料である水素を低廉かつ大量に供給するもので、1986年度から20トン/日のパイロットプラントの設計、建設を行い、1991年度から1993年度まで運転研究を実施し、1994年度には解体研究、1995年度は補完高度化研究を行ない終了した。
 石炭水素添加ガス化技術研究開発では、1996年度から5年間の計画で、石炭水素添加ガス化炉の開発、ガス化炉周辺技術の開発、支援研究、社会適合性等に関する調査研究を実施している。
(1)燃料電池用石炭ガス製造技術開発(EAGLE)
 石炭をガス化・精製し、[燃料電池/ガスタービン/蒸気タービン]のトリプルコンバインドサイクル発電システムで利用すると、既存の微粉炭火力発電技術に比較して、大幅な発電効率向上と30%以上のCO2排出量削減が実現できる。
 NEDOでは、燃料電池に供給可能な石炭ガス化による燃料ガスの製造技術を確立することを目的に「燃料電池用石炭ガス製造技術開発(EAGLE)」を、1998〜2006年度事業として進めている。
 2003年度は、石炭処理量150t/dの石炭ガス化パイロット試験設備で運転研究を実施した。2003年度事業費は9.2億円。図8にパイロット試験設備フローを示す。
 石炭ガス化技術の開発は、海外においても高温、高圧操作による効率の向上をめざして開発されており、おもに米国、ドイツ、英国で各種プロセスを並行して大規模に開発してきたが、最近では、石炭ガス化発電技術に開発が絞られている。
 表3に欧米における石炭ガス化法の開発状況、表4に最近の欧米における石炭ガス化発電技術開発状況を示す。
<図/表>
表1 石炭液化法の比較
表2 欧米における石炭液化の開発状況
表3 欧米における石炭ガス化の開発状況
表4 最近の欧米における石炭ガス化発電技術開発状況
図1 石炭の構造モデル(W.R.Ladner)
図2 NEDOLプロセスの概要
図3 150t/日石炭液化パイロットプラント全景
図4 褐炭の液化法
図5 石炭のガス化反応
図6 石炭ガス化の原理
図7 石炭ガス化複合発電パイロットプラントの全景およびプラント構成図
図8 パイロット試験設備フロー図

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<関連タイトル>
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石炭利用技術の新体系 (01-04-02-04)

<参考文献>
(1)資源エネルギー庁(監修):1999/2000 資源エネルギー年鑑、通産資料調査会(1999年1月)p.690-710
(2)有井良和:電力各社、共同で石炭ガス化複合発電(IGCC)実証機開発に着手、エネルギー、32(9),p.67-69(1999年9月)
(3)資源エネルギー庁(編):エネルギー2004、(株)エネルギーフォーラム(2004年1月21日)、p.104-109
(4)資源エネルギー年鑑編集委員会(編):2003/2004資源エネルギー年鑑、通産資料出版会(2003年1月)、p.817-836
(5)NEDO:新エネルギー・省エネルギー・環境技術開発関連事業、石炭ガス化技術
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