<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の一次エネルギー
<小項目> 天然ガス
<タイトル>
LNGの生産と利用 (01-03-03-02)

<概要>
 LNG液化天然ガス)は天然ガスを超低温に冷却し、液化したものである。天然ガスは発熱量が高くクリーンな燃料として古くから使用されてきたが、気体であるため輸送と貯蔵が不便であり、燃料資源としての利用は限られていた。しかし、近年になって天然ガスの冷却液化・輸送・貯蔵技術の開発が進み、未利用ガス資源の利用の道が開けた。天然ガスの主成分であるメタンは1気圧の下で−162℃以下に冷却すると液化する。この液化プロセスには多くの方式が開発、実用化されている。LNGはタンカーで輸送され、専用タンクに貯蔵される。利用する際には気化を行うが、LNGの持つ冷熱の有効利用も行われている。化石燃料の中でもCO2排出量の少ない天然ガスは、地球温暖化対策の進展とともに利用が急増し需給逼迫と価格高騰の可能性が懸念されていたが、LNG生産能力の増強及び米国におけるシェールガス生産の本格化によって需給安定化の見通しが開けた。日本でも石油危機以降、発電用燃料と都市ガス原料としてのLNGの需要が増加してきており、石油代替エネルギーとして重要な役割を担っている。
<更新年月>
2011年09月   

<本文>
1.液化天然ガス(LNG)の製造と輸送
 天然ガスを、脱硫、脱炭酸、脱湿等の前処理をしたのち、超低温に冷却し液化したものを液化天然ガス(LNG;Liquefied Natural Gas)という。
 天然ガスはメタン(CH4)を主成分(80〜100vol%)とする可燃性ガスで天然に産するものを指す。その地質学的産状によって、在来型資源は油田系ガス、水溶性ガス、炭田ガスに大別されるが、これまで主に商業的生産の対象となってきたのは油田系ガスである。油田系ガスには、油田において原油とともに産出する随伴ガス及び油田地帯の含油地質系統中に遊離型鉱床を形成して存在する構造性ガスとがあり、量的には構造性ガスが多い。
 天然ガスは、発熱量が高くクリーンな燃料として古くから使用されてきたが、気体であるため、パイプライン以外の大量輸送手段がないことや、地上での大量貯蔵ができないことから、従来、エネルギー大量消費国から遠く離れた中東地域、東南アジア、アフリカ等の油田に産する随伴ガスは、燃料としてはあまり利用されず焼却されていた。
 近年になって、天然ガスの冷却液化・輸送・貯蔵技術の開発が進み、これら未利用ガス資源の利用の道が開けた。天然ガスは−162℃に冷却し液化することにより、常圧でも容積が約600分の1になる。この小容量化が輸送、貯蔵を容易なものにした。
 天然ガスに含まれる主成分の物理的性質は 表1に示すとおりである。LNGの性状は原料となる天然ガスの組成によって定まり、産地によって性質が異なる。
1.1 天然ガスの精製
 天然ガスには硫化水素(H2S)、二酸化炭素(CO2)等の酸性ガス、重質炭化水素、微量の水銀及び水分が合まれている。これらの成分は液化プラントの安定運転に種々の障害を引き起こすため、液化の前段で、スラグキャッチャーによる気液分離、脱湿処理、脱酸性ガス処理、水銀除去、プロパン・ブタン等の重質炭化水素回収等の前処理が必要となる。
1.2 天然ガスの液化
 天然ガスの主成分であるメタンは、1気圧のもとで−162℃以下に冷却すると液化する。加圧すればより高い温度でも液化するが臨界温度が−82℃のため、液化プロセスはいずれも深冷液化を採用している。液化プロセスには多くの方式が開発、実用化されているが、大別すると、次の3方式に分類できる。
 (1)カスケードプロセス(Cascade Cycle):エタン、エチレン、プロピレンなど異なる単一成分冷媒の冷凍サイクルを組み合わせ、多段で天然ガスを液化する方式。エネルギー効率は良いが設備費が高いためにあまり用いられなかったが、改良型の開発後は利用が増えた。
 (2)混合冷媒プロセス(Mixed Refrigerant Cycle):エタン、プロパン、窒素等からなる混合物を冷媒として冷却する方法。1系列の混合冷媒を用いるSMRのほか、動力原単位の改善のため、プロパン冷媒で原料ガスを予冷するC3-MRが開発され、現在ではベースロードの液化設備の主流となっている。
 (3)エキスパンダープロセス:窒素やメタン等を、コンプレッサーとエキスパンダーを介して圧縮・膨張を行いながら冷媒として用いる方法。プロセスが単純であるが、液化効率が劣るために、小規模プラントで採用されている。
1.3 LNGの輸送
 LNGの海上輸送は、専用タンカーで行われる。LNGタンカーは極低温のメタンを積載するため、加圧タンクと断熱層を装備している。現在主流となっているのは、複数の独立球形タンクを積んだモス方式と薄膜型タンクを船体と一体又は組み込む形で積んだメンブレン型である。
 球形タンクは表面積が小さくLNGの蒸発が少ない、構造が単純で短い工期で製造できるなどの長所があるが、空間利用効率が悪い、溶接の不備等に対して厳しい品質管理が要るなどの短所がある。他方、メンブレン型は船倉の空間利用効率が高い、タンクの建造費が小さいなどの利点があるが、船体の構造が複雑で、高精度の建造作業が必要とされる等の短所がある。
 その他、最近実用化された方式として、日本が独自に開発したSPB型がある。これは、断熱支持材の上にアルミ製で自立角型のタンクを載せたもので、タンク形状を船倉に合わせて自由に設計でき、また、タンクの点検・保守が容易であるなどの長所を持つ。
 LNGは原油に比べて軽いため、LNGタンカーの吃水(水面から船体最下部までの距離)は原油タンカーに比べてかなり小さい。このため、船長を大きくすることによって積載能力が確保されている。近年の標準的なLNGタンカーの積載容量は125,000〜150,000立方メートルであり、容量はさらに大型化する傾向にある。LNGはタンカーに積み込まれた時から気化を始め、いわゆるボイルオフガスが発生するが、LPG(液化石油ガス)タンカーとは違って経済的理由から再液化装置を装備していないため、このボイルオフガスをタンカーの推進用燃料に利用するのが通常である。
1.4 LNGの貯蔵
 専用タンカーで運ばれたLNGは港湾に隣接したLNG基地において貯蔵される。現在の日本のLNG基地を図1に示した。基地においてLNGは専用の大型タンクに貯蔵される。現在実用化されているLNGタンクは大別して、地上式と地下式に分類され、地上式には金属製二重殻タンクとコンクリート製タンクがある。
・地上式金属製二重殻タンク
 二重殻の内槽はニッケル鋼など低温じん性が高く脆性破壊を起こしにくい材料が用いられ、外槽には一般に炭素鋼が用いられる。間に断熱材を充鎮して保冷効果を高めるとともに、窒素ガスを封入し腐食対策を施す。タンクの天井部分にはドーム型とサスペンデッドデッキ型とがある(図2上)。
・地下式メンブレンタンク
 コンクリート製の底版と側壁、保冷材及び気密保持のための内壁(メンブレン)で構成されている。メンブレンにはステンレス鋼あるいは36%ニッケル鋼が用いられる。メンブレンは特殊構造のヒダをもち、冷却時に生ずる熱ひずみを吸収し応力の発生を抑える(図2下)。
・地上式コンクリート製タンク
 金属壁の代わりに、プレストレストコンクリート(PC)で構築されたタンクで、LNGの浸透を防ぐために、内壁にステンレス鋼の内張を設けてある。
1.5 LNGの再ガス化
 貯蔵されているLNGを利用するには、再ガス化プロセスによって、気体に戻す必要がある。再ガス化プロセスには、海水と熱交換して気化するオープンラック式、水を媒体として水中バーナーにより水温を上げ、気化するサブマージド燃焼式などがある。なお、LNGの冷熱を有効利用するため、酸素、窒素の液化の他、冷熱発電が行われている。
 現在、日本で実用化されている冷熱発電設備としては、ランキンサイクル方式、直接膨張方式、ランキンサイクル+直接膨張複合式の3方式がある。直接膨張は、高圧LNGをガス化した後、膨張タービンへ直接導入する発電設備であり、ランキンサイクル方式は、海水を温熱源、LNGを冷熱源として、気相・液相の相変化を伴う方式で、原理は通常の蒸気タービン発電と同様である。
2.LNGの需給と利用
2.1 LNGの需給動向
 世界の天然ガスの主要な消費地は欧州、北米及び日本を中心としたアジアである。石油の市場がグローバル化しているのとは異なって、これらの3つの消費地では概ねそれぞれの域内で需給が行われてきた。早期から天然ガスの利用を始めた欧州と北米では産地と需要地が陸続きのため、輸送手段としてパイプラインが主に使用されている。
 これに対し、産地から遠く、また、海に囲まれた日本ではLNGの導入が進んだ。図3に日本のLNG輸入国のこれまでの推移、図4に2009年度における国別構成を示した。石油とは異なり、アジア・大洋州からの輸入比率がきわめて高いこと、近年は中東からの輸入が増えつつあることが示されている。また、図5にLNG輸入量の大きな国を示した。日本は世界最大の輸入国であり、全体の約3割を占めている。韓国と台湾を加えると、極東地域が世界の輸入量の半分を占める。
 地球温暖化対策の進展とともに、化石燃料の中では環境負荷の小さい天然ガスの消費が増加することが予想され、米国、欧州及び新興諸国においても資源埋蔵量の大きい中東地域からのLNG輸入量が大幅に増大すると見込まれていた。特に、中東のカタールはこうした需要見通しに基づき、LNG生産能力の増強を図ってきた。
 他方、もともと非在来型天然ガス資源の開発利用を進めてきた米国で、近年、シェールガスの経済的な採掘技術が実用化され、シェールガスの生産が急増し始めた。この状況は「シェールガス革命」とも呼ばれるほど天然ガス市場に大きな影響を与え、中東産のLNGが欧州市場に流入し、この煽りを受けてロシアの西欧向けガス輸出も大幅に落ち込むとともに価格も低下した。
 シェールガスの資源は世界的に豊富で、欧州でもポーランド等が資源を保有しており、その開発が順調に進めば、西欧諸国のガス需要のロシア依存が軽減することも予想される。シェールガスの現在の生産方法については環境面からの懸念も出ており環境影響の少ない生産技術の実用化が課題であるが、このように天然ガスの供給源が多様化し、供給余力も増加しつつあることで、今後、世界的に需要が増加した場合にも、供給不足に陥る可能性は緩和されてきている。また、日本のLNG輸入はこれまでほとんど長期契約によるものであったが、これからはスポット取引の割合が増加し、さらに、価格も石油との連動性が小さくなり、安定化する可能性が出てきた。
2.2 日本のLNG利用
 日本では図6に示すように、LNGは火力発電の燃料及び都市ガスの原料として利用されている。工業用燃料としての利用(都市ガス事業者を通さない利用)もあるが、量的にはきわめて小さい。これは、長期にわたって安定した需要を見込むことができる電気事業者と都市ガス事業者がLNGを輸入し、使用していることを示している。
 電気事業者は石油危機以降、石油代替エネルギーとしてLNGの導入を進め、現在ではLNG火力発電は主要な電源の一つとなっている。2011年3月の東日本大震災によって電源開発計画の見直しが不可避となる中で、今後、基幹電源としての重要性が一層高まることが予想される。また、都市ガス事業者は国のガス種統一計画の下で、天然ガスを主成分とした高カロリーガスへの転換を進めており、2008年度末で211事業者のうち208事業者が高カロリーに転換している。
<図/表>
表1 天然ガス主成分の物理的性質
図1 日本のLNG基地
図2 LNGの貯蔵タンク
図3 日本の供給国別LNG輸入量の推移
図4 日本のLNG輸入量の国別構成(2009年度)
図5 世界の国別LNG輸入量(2010年)
図6 日本の用途別LNG販売量の推移

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<関連タイトル>
日本の天然ガス情勢 (01-03-03-01)
日本の石炭情勢 (01-03-01-01)
都市ガス需給の現状と推移 (01-04-03-01)

<参考文献>
(1)日石三菱株式会社(編):石油便覧 2000、株式会社燃料油脂新聞社(2000年3月)、p.505〜518
(2) 財)日本エネルギー経済研究所計量分析部(編):EDMC/エネルギー・経済統計要覧2011年版、(財)省エネルギーセンター(2011年3月)
(3) BP Statistical Review of World Energy 2010,

(4)財団法人天然ガス導入促進センター:天然ガスについて、

(5) 経済産業省:平成21年度エネルギーに関する年次報告(エネルギー白書2010)
(6)橋本裕:天然ガスとLNGの国際需給動向, エネルギー・資源, Vol. 32, No. 4, p.9〜13 (2011)
(7)橋本裕:非在来型天然ガス資源(シェール・ガス、CBM)の開発状況、エネルギー・資源, Vol. 32, No. 4, p.14〜18 (2011)
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