<大項目> エネルギーと地球環境
<中項目> 日本の一次エネルギー
<小項目> 天然ガス
<タイトル>
日本の天然ガス情勢 (01-03-03-01)

<概要>
 日本の天然ガス利用は、1969年に米国(アラスカ)からLNGを輸入したのを皮切りに年々増加し、現在では、一次エネルギー総供給の約15%を占めるに至っている。しかし、日本国内の天然ガス生産量は、国内消費量の4%程度(2006年度)に留まり、使用する天然ガスの大部分をLNGの形で海外から輸入している。用途別には、日本では天然ガスの大部分が発電用と都市ガス原料として用いられ、発電分野では石油代替エネルギーとして、原子力とともに大きな役割を果たしてきた。また、環境面からは、天然ガスへのシフトは大気汚染物質の排出低減、並びに二酸化炭素の排出低減にも寄与している。温暖化問題に対して厳しい対応が求められる中で、今後とも天然ガスの需要は増加する見込みであり、こうした需要の増大に応えていくために、生産から輸送、貯蔵に至る天然ガスの供給、利用体制の整備が重要な課題となっている。
<更新年月>
2009年02月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.天然ガスの特徴
 天然ガスとは、天然に地下から産出し、地表条件では気体となる物質であり、メタンを主成分とする低級の(分子中の炭素数の少ない)パラフィン系炭化水素ガスを指す。
 在来資源はその地質学的産状によって、油田系ガス、水溶性ガス、炭田ガスに大別される。油田系ガスには、油田において原油とともに産出する随伴ガス、および油田地帯の含油地質系統中に遊離型鉱床を形成して存在する構造性ガスとがある。水溶性ガスは、原油又は石炭の鉱床を有しない地質系統中で主として地層水中に溶解状態を形成して存在するものである。また、炭田ガスは石炭の生成過程で生じたメタンを主成分とする天然ガスで、石炭に吸着、吸収されて存在するとともに、炭層の上下岩石層に浸透し保存される。これらのうち、これまで主に商業的生産の対象となってきたのは油田系ガスであり、特に量的には構造性ガスが多い。
 他方、非在来資源として炭層メタン(コールベッドメタン)、稠密地層ガス(タイトフォーメーションガス)、メタンハイドレートなどがある。米国ではすでに炭層メタンの商業的生産が行われるなど一部は利用され始めているが、非在来資源の本格的な利用が始まるのは低コストで生産できる在来資源の消費が進み、生産コストが高くなってからと考えられている。
2.日本の天然ガス利用
 日本ではかつては国内の生産地周辺のみで天然ガスが利用され、一次エネルギー総供給に占める割合は1%程度に過ぎなかった。
 しかし、1969年にアメリカ(アラスカ)から18万トンの液化天然ガス(LNG)を導入したことを皮切りに、1972年にブルネイ、1977年にUAE(アブダビ)とインドネシア、1982年にマレーシア、1989年にオーストラリア、1997年にカタール、そして2000年からはオマーンからの輸入が開始され、石油代替エネルギーとして天然ガスを大量に利用する時代に入った。天然ガスが一次エネルギー総供給に占める割合は、2006年度には約15%にまで増加した。この間、国内ガス資源の開発利用も進められたが、その生産量は国内消費量の4%程度(2006年度)に留まり、使用する天然ガスの大部分をLNGの形で海外から輸入している。
 天然ガスも石油と同様に供給を海外に依存しているが、天然ガスの主要な供給元は、インドネシア、マレーシア、オーストラリア、カタール、ブルネイである(図1)。このようにアジア・太平洋地域からの輸入が多く、中東地域への依存度が低い点が石油とは異なっている。この意味で天然ガスの利用の増大は、エネルギー源の脱石油、多様化のみならず、供給元の分散によるエネルギー供給安定性の向上にも貢献してきた。ただ、在来の天然ガスの残存埋蔵量は中東地域とロシアに多いため、長期的には供給元がアジア・太平洋地域から次第に中東、ロシアにシフトしていく可能性が強いと考えられている。
 用途別にみると、日本では天然ガスの大部分が発電用と都市ガス原料として用いられ、特に欧米と比べて発電用の消費量が多く、産業部門の消費が少ない(図2)。これは、上記のように日本が天然ガスの大部分をLNGの形で輸入してきたことと関係している。LNGプロジェクトの立ち上げには大きな初期投資を必要とするとともに、プロジェクト開始後には安定的な需要が確保されることが必須であり、日本では大規模で安定的な需要を抱える電力産業、および大手都市ガス事業者を中心にLNGの開発導入を進めてきた。その結果、天然ガス火力発電所立地点や都市ガス需要地域を中心にLNG基地の建設、パイプラインの整備が行われ、比較的分散している一般産業施設での利用が相対的に遅れることとなった。これに対して、欧米ではパイプラインで天然ガスを輸入し、国土幹線、地域幹線パイプライン、各種供給ラインのネットワークを介して、小口の産業需要家にも容易に供給できる体制が整っていることが、発電用以外での利用が進展している要因となっている。
 上記のとおり特に発電用の天然ガス消費量が大きいが、発電分野では石油危機以降に石油火力の代替電源として天然ガス火力の導入を急速に進め、天然ガスは原子力とともに、石油消費量の低減に大きな役割を果たしてきた。また、環境面からは、二酸化硫黄等の大気汚染物質の排出低減、並びに地球温暖化の主要な原因物質とされる二酸化炭素の排出低減にも寄与している。
 また、都市ガス分野では、かつては石炭系ガスが都市ガス原料の主役であったが、国内炭の供給の不安定化等を背景に、LPG等の石油系ガス、天然ガスの利用が増加し、現在では原料の9割以上が天然ガス、その大部分がLNGに切り替わっている(図3)。
3.今後の課題
 化石燃料はまだ当分の間、エネルギー源の主役であり続けると考えられているが、燃焼時の排ガスに含まれる汚染物質による局地的又は地域的な大気汚染、さらに二酸化炭素の排出による地球温暖化等の環境問題への対応が求められている。そこで、化石燃料の中では大気汚染物質の排出量が少なく、クリーンな天然ガスの需要が先進国、発展途上国の双方で今後一層高まることが予想されている。こうした需要の増大に応えていくためには、新規資源の開発を進めて供給力に余裕を持たせるとともに、生産から輸送、貯蔵に至る天然ガスの供給、利用体制の整備が課題となっている。特に、一般産業で幅広く天然ガスを利用していくためには、欧米のように幹線パイプラインと供給ラインの広域ネットワークの整備を進める必要がある。
 また、2度にわたる石油危機を経て、各エネルギー需要分野では石油代替エネルギーが導入されてきたが、輸送用燃料の分野ではまだ石油への依存がきわめて強い。これは、天然ガスのような「ガス体エネルギー」には輸送上、貯蔵上の難しさがあり、自動車用燃料としても使いにくいことが原因となっている。そこで、天然ガスを原料としてDME(ジメチルエーテル)、GTL等の新燃料の開発が進められている。現在、自動車用には多種多様な新技術、新燃料の開発が進められつつあり、今後の展望は不透明であるが、これらの合成燃料が低コストで製造できるようになれば、自動車、航空機といった輸送分野においても天然ガスが石油の代替エネルギーとなり、石油依存度を一層低下させることができると期待される。

(注)
DME:メタノールの脱水反応により製造される。その物性はLPGに類似しているが、LPGの主成分であるプロパンに比べて容易に液化するので、LPG代替燃料ともなり得る。また、セタン価が高く、黒煙も出にくいのでディーゼル自動車用燃料としても期待されている。
GTL:天然ガスから製造された液体燃料(Gas to Liquids)という意味でこの名称が使われるが、ナフサ、灯油、軽油等の代替品になり得る多様な燃料の製造が可能である。製造された燃料は硫黄分、芳香族分等を含まないことから環境に対してクリーンである点も注目されている。天然ガスを改質し、得られた合成ガスから石油代替燃料を製造する基本技術はすでに実用化されているが、柔軟性がより高く、低コストの技術の開発が進められている。なお、広義には上記のDMEを含めてGTLと呼ぶことがある。
<図/表>
図1 日本のLNG輸入国の推移
図2 日・米・欧州における用途別天然ガス利用状況(2005年)
図3 都市ガスの原料別生産量(一般ガス事業者)

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
日本の石炭情勢 (01-03-01-01)
LNGの生産と利用 (01-03-03-02)
都市ガス需給の現状と推移 (01-04-03-01)
世界のエネルギー資源の埋蔵量 (01-07-01-01)

<参考文献>
(1)(財)日本エネルギー経済研究所計量分析ユニット(編):EDMC/エネルギー・経済統計要覧2008年版、(財)省エネルギーセンター(2008年2月)
(2)資源エネルギー庁:平成19年度 エネルギーに関する年次報告書(エネルギー白書2008)
(3)財団法人天然ガス導入促進センターホームページ:
(4)DME自動車普及推進委員会ホームページ:http://www.dme-vehicle.org/
(5)日本GTL技術研究組合ホームページ:
(6)石油資源開発株式会社ホームページ:
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ