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<概要>
 米国を中心とする原子力先進国で、これまで30〜40年としていた原子力発電所の運転期間を60年まで延長する動きが本格化した。日本でも軽水炉技術の成熟もあって、設備利用率が格段に向上し、運転期間の延長は現実的な課題となってきている。2月8日、通産省(現経産省)は、日本原電、関西電力、東京電力3社の3つの発電プラントを対象に「定期検査、点検の充実により、安全に原子力発電所を長期間運転することは可能である」とする報告書をまとめた。
 6月28日原子力安全委員会は全炉心MOX燃料 ABWRの安全性については現行安全審査指針の適用可能との判断を示した。
 9月30日、核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で臨界事故が発生し、現場作業者2名が死亡、これは日本が原子力平和利用に着手して43年間に初めての犠牲者を伴う事故であった。手順を無視した違法な業務を日常的に行なっていたJCOは世論から手厳しく非難されるとともに、監督官庁の科学技術庁(現文科省)に対しても非難の声が高まった。原子力防災特別措置法と安全規制強化を定めた改正原子炉等規制法が、12月13日参議院本会議で可決、成立した。一方、産業界も原子力産業の安全文化を共有するため、電力会社が中心となって、燃料加工、原子炉メーカー、原子力研究機関など35社が参加する「ニュークリアセイフティネットワーク(NSネット)」が12月9日発足した。
<更新年月>
2001年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>

1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1999年
(平成11年)
1/7   高レベル最終処分を可能にする新たな廃棄物政策法案が米下院に提出
1/14 総合エネルギー調査会原子力部会が高レベル処分制度化に向け法整備を、とする中間報告書案を策定▼小渕改造内閣が発足、科技庁長官に有馬朗人氏が文部大臣兼任で就任 独で連立を組む社会民主党と緑の党、新規原子力発電所の建設と再処理禁止で原則合意
1/26 中央省庁等改革大綱が決定  
1/27   フィンランド・エネルギー産業連合会(FINERGY)、同国の98年の原子力発電電力量は、前年比4.7%増の210億kWhと、全電力の27.4%を占めたと発表
1/28 資源エネルギー庁が総発電電力量に占める原子力の割合が過去最高の35.2%に達したとする平成9年度エネルギー需給実績を発表  
2/2   仏国民議会の科学技術評価局(OPECST)、2010年代から本格化する原子力発電所のリプレイスに備え、99年内にも欧州加圧水型炉(EPR)を発注するよう政府に勧告
2/4   仏ラ・アーグ再処理工場へ移送する核燃料輸送車で基準値を上回る汚染が発覚
2/8 東京電力・関西電力・日本原電の3社、運転開始後30年以上経過のプラントについて、60年の運転を想定しても安全性に問題なしとする報告書を通産省に提出  
2/24 東京電力、新潟県知事らにプルサーマル計画の事前了解願いを提出  
2/25   ロンドン衛生医科大学と大英医科大学の研究チーム、BNFLのセラフィールド施設の従業員約1万4,000人を対象に、1947年から75年までの28年間のがんの死亡率を調査、全国平均より低いと発表
3/15   使用済燃料の貯蔵、最終処分を求める廃棄物政策法案が米上院に提出
3/18 東京・東北電力が東通原発計画をBWRからABWRに変更  
3/19 中部電力、浜岡5号機(ABWR)を着工  
3/22   米DOE、仏COGEMA社のコンソーシアムと余剰プルトニウム処分で契約
3/23 総合エネルギー調査会・原子力部会が高レベル廃棄物処分の実施主体などについての中間報告書を公表  
3/24   英国議会上院の科学技術特別委員会、放射性廃棄物の深地層処分計画を支持する報告書を公表
3/26   米DOE、米国発の放射性廃棄物処分場としてニューメキシコ州カールスバッドに建設した廃棄物隔離パイロットプラントに軍事用超ウラン元素を処分
3/29   欧州原子力規制者協会、EU(欧州連合)への加盟を申請している東欧7か国の原子力発電所の安全レベルを公表
3/31 原子力委円卓会議が提言▼新潟県などがプルサーマル計画の事前了解を表明(~4/1)  
4/1   加オンタリオ州エネルギー競争法の発効にともない、北米最大のオンタリオ・ハイドロ社、4社に分割される
4/12   米NRC、GPUニュークリア社のスリーマイル島原子力発電所1号機のアメージェン・エナジー社(米PECOと英ブリティッシュ・エナジー社の合弁企業)への売却を承認▼国際原子力機関(IAEA)が原子力安全条約レビュー会議を開催
4/15   リチャードソンDOE長官、電力市場の完全自由化や再生可能エネルギー利用の促進などを骨子とする「元気事業再編計画」を議会に提出
4/19   加政府、CANDU炉でのMOX燃料利用は妥当との見解を発表
4/22   カザフスタンのバルギンバエフ首相、発電と海水淡水化にも利用されてきた高速増殖原型炉「BN-350」の閉鎖決定に署名
4/26 日本原燃、再処理工場の操業開始時期を2005年に変更  
5/3 日本政府、北朝鮮への軽水炉建設でKEDOを通じ、10億ドルを融資する協定を締結  
5/7 中央省庁の行政文書を対象とした情報公開法が成立  
5/12   チェコ政府、特別閣議でテメリン原子力発電所計画(97万2,000kW-2基)の建設続行を11対8で確認
5/18 原子力委、長計策定会議を設置▼サイクル機構、ロ原子炉科学研と余剰プルトニウム処分で共同研究契約を締結 独のミュラー経済相、ドイツ原産年次大会で原子炉の寿命設定問題で原子力産業界と政府が同一のテーブルにつくよう訴える
5/19   OEOD/NEA、2010年までの原子力発電開発の予測を発表
5/26   フィンランドのバックエンド会社であるPOSIVA社、高レベル放射性廃棄物の最終処分場の候補地としてオルキルオト原子力発電所近郊のユーラヨキを選定
5/28 原産、研究炉のあり方に関する報告書を公表 韓国とロシア、原子力協力協定をモスクワで締結
6/2 原子力委・長計策定会議が初会合、座長に那須翔東京電力会長▼通産省、北海道電力・泊発電所3号機増設で第一次公開ヒアリングを泊村で開催  
6/7   スイス連邦政府、使用済燃料の再処理を今後、禁止する方針を表明
6/9 使用済燃料の中間貯蔵を盛り込んだ原子炉等規制法改正案が参院本会議で可決・成立 米濃縮会社、レーザー原子法による濃縮開発計画を経済的な問題から中止と決定
6/16   スウェーデン最高行政裁判所、政府のバーセベック原子力発電所1号機閉鎖決定に対するシドグラフト社の提訴について、「政府の命令は違法とはいえず、取り消す法的根拠はない」とする判決を下す
6/17 福井県知事が関西電力高浜発電所で実施予定のプルサーマル計画を了承  
6/22   スロバキア政府、経済上の理由でモホフチェ3,4号機の建設計画を中止
6/30   加エネルギー委員会、「カナダの2025年までの長期エネルギー需給予測」を公表
7/1   中国で機構改革。中国核工業総公司が2つの集団公司に分割、原子能機構は独立
7/2 原子力委・長期計画策定会議、6分科会の設置を決める▼通産省、東京電力・福島第一3号機のプルサーマルを認可  
7/5   6月の総選挙で発足したベルギーの3党連立政権、原子力発電所の運転に40年の寿命を設けることで基本合意
7/7   米ユーティリティ・データ・インスティテュート、世界全体の原子力発電設備容量は今後10年間で6億9,500万kWに達すると予測
7/9   仏電力公社とフラマトム社、独シーメンス社の3者、欧州加圧水型炉(EPR)プロジェクトの協力強化のため、エンジニアリング業務の統合を骨子とする共同声明に署名
7/12 原電・敦賀発電所2号機で冷却材漏洩事故  
7/13   英貿易産業省のベイヤース相、原子燃料会社の民営化を進める方針を表明
7/22 自民党の電源立地等推進に関する調査会(桜井新会長)、原子力立地の促進を図るため、「原子力立地会議」の設置を求める提案を小渕恵三首相に提出  
7/29 日本原子力研究所、「ベンチャー支援制度」の第一号として、(株)環境浄化技術研究所を認定  
8/3 電源開発調整審議会、電源開発が計両している「大間原子力発電所」(フルMOXのABWR)を了承  
8/6   米DOE、ネハダ州ユッカマウンテンの高レベル放射性廃棄物最終処分場建設計画の環境影響評価を公表
8/21 総理府がエネルギー世論調査結果を発表、7割が原子力発電を容認  
8/23   韓国電力公社、政府の民営方針に応えるため、第一段階として発電部門を6分割にする計画を発表
8/27 北陸電力初の改良型沸騰水型軽水炉(ABWR)となる志賀2号機が着工  
8/29   仏のジョスパン首相、党大会で「原子力政策は国民的な議論で」と強調
9/2   米加両国政府、米ロの各兵器解体プルトニウムを利用したMOX燃料の燃焼試験をCANDU炉で行うことで合意
9/3 日本原子力研究所の光量子研究センターが関西文化学術研究都市に完成▼日本原燃、初のPWR使用済燃料を四国電力から搬入 中国保険監督管理委員会、原子力保険共同体の設立を認可
9/14 関西電力、高浜3号機用のMOX燃料で、製造元であるBNFLから品質管理データの一部に疑義があったとする報告を受けたと発表  
9/15 通産省、98年度エネルギー需給実績を発表、原子力のシェアは36.4%と過去最高を記録  
9/21   未明に台湾中部でマグニチュード7.6の地震発生。配電被害を受けたものの、原子力発電所には影響なし
9/24   インド11番目の原子炉となるカイガ2号機が初臨海
9/30 東海村の燃料加工施設ジェー・シー・オー(JCO)東海事業所で臨界事故  
10/5 小渕改造内閣が発足。首相、JCO事故を受け、中曽根弘文・科学技術庁長官兼文部大臣と深谷隆司・通産大臣の両閣僚に「原子力防災法」の検討を指示 リトアニア議会、西側諸国の財政支援を条件に、イグナリア1号機(黒鉛減速軽水冷却炉、150万kW)を2005年までに閉鎖することを承認
10/6   バーセベック原子力発電所の所有者であるシドクラフト社、ストックホルム地裁に最高行政裁の命じた1号機の11月末閉鎖を、欧州委員会による裁定が出るまで執行延期するよう申し立て
10/15 通産省、平成10年度のエネルギー需給実績を発表、原子力のシェアは36.4%と過去最高を記録  
10/19 総合エネルギー調査会原子力部会、原発1基分の投資コスト新エネでは3~30倍に達し、現実的ではないと結論  
10/20   中国とロシアの共同建設となる連雲港1号機(ロシア型PWR、100万kW)が正式着工。2004年運転開始予定
11/5 原子力安全委員会・ウラン加工工場臨界事故調査委員会(委員長:吉川弘之日本学術会議会長)、安全審査見通しなどを盛り込んだ「緊急提言・中間報告」まとめる 米DOEエネルギー情報局「米国における1998年の温室効果ガス排出量」と題する報告、を発表▼スウェーデンのストックホルム地裁、バーセベック原子力発電所1号機の閉鎖決定を欧州委員会の審査終了まで差し止めるように求めたシドクラフト社の請求を棄却
11/15 全国原子力発電所立地市町村議会議長会(会長:戸田東柏崎市議会議長)、JCO事故を受け、原子力安全員会の独立性と権限強化を求める宣言を採択、小渕首相らに提出 国際原子力機関(IAEA)、JCO事故の現地調査を踏まえ、「ヒューマン・エラー、安全基準の重大違反と設計上の不備が原因と推測される」とする報告書を公表
11/18 日本原子力産業会議、平成10年度の原子力産業実態調査結果を発表。鉱工業の売上高、2年連続減少の前年度比17%減の1兆5000億円▼東京電力、柏崎刈羽3号機でのプルサーマルを、地元の要望を踏まえ平成13年度に先延ばし決定  
11/24 茨城県、県議会でJCO臨界事故による県内被害総額は約153億円と報告▼総合エネルギー調査会原子力部会、高レベル放射性廃棄物処分費用を3兆408億円と試算  
11/26 サイクル機構、高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性をとりまとめた「地層処分研究開発第二次とりまとめ」(2000年リポート)を原子力委員会に提出  
11/30   スウェーデン政府、1980年の国民投票から約20年を経て、バーセベック原子力発電所1号機を閉鎖▼ブルガリア政府と欧州委員会(EC)、コズロドイ1,2号機の早期閉鎖で合意
12/1   BNFL、ブラッドウェル原子力発電所を経済的理由により2002年3月で閉鎖する方針を表明
12/6   仏フラマトム社と独シーメンス社、両者の原子力部門を合併することで合意
12/9 原子力産業界の安全文化醸成を目指し、電力、燃料加工、プラントメーカー、研究機関など35社・機関で構成するニュークリアセイフティネットワーク(NSネット)が発足  
12/13 原子力災害対策特別措置法と安全規制強化を定めた改正原子炉等規制法が参議院本会議で可決・成立  
12/15   米原子力規制委員会、ウェスチングハウス(WH)社が開発したAP600型炉に対し最終設計承認証を発給
12/16 通産省、電源別発電単価を発表。原子力は処分費を含め1kWh当たり5.9円。LNG6.4円、石炭6.5円、石油10.2円、水力13.6円  
12/20 長計策定会議第三分科会「高速増殖炉関連技術の将来展開」で「もんじゅ」の運転再開不可欠の指摘  
12/21 JCO臨界事故で大量の放射線を浴びたJCO社員の大内久さん(35歳)死去。国内原子力施設で初の犠牲者  
12/23   米農務省食品安全検査局、減菌を目的とした生肉、冷凍肉、肉加工食品の放射線照射を解禁
12/24 原子力安全委・ウラン加工工場臨界事故調査委員会、103項目の改善提案を盛り込んだ最終報告書を取りまとめ インド12審目の原子炉となるラジャスタン原子力発電所3号機が初臨海
12/29   BNFL、多国籍企業であるアセア・ブラウン・ボベリ(ABB)社の原子力部門の買収合意を発表



2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1999年
(平成11年)
1/2   米クリントン大統領、2000会計年度の国防予算を対前年度比120億ドル増の計画(今後6年間増強)を打ち出す
1/26   独、政府とエネルギー業界の間で「脱原発」で大枠合意
2/6 核兵器の開発、製造にも転用可能な精密測定機器を中国に不正輸出  
4/11 東京都知事に石原慎太郎氏  
4/30 総務庁、3月の労働力調査を発表、完全失業率は過去最悪の4.8%  
5/3 日本政府、KEDOとの資金供与協定に署名  
6/12 2000年春新卒大学生の求人倍率1倍を切る。1984年の調査開始以来初めての低さ  
6/28 筑波から素粒子ニュートリノを250km離れた岐阜県神岡の標的に命中させることに初めて成功  
9/30 茨城県東海村の核燃料加工会社ジェー・シー・オー(JCO)で、核分裂反応が自発的に継続する臨界事故が発生(国内で初めて)  

<関連タイトル>
JCOウラン加工工場臨界被ばく事故の概要 (04-10-02-03)
原子力災害対策特別措置法(原災法:2012年改定以前) (10-07-01-09)

<参考文献>
(1) 日本原子力産業会議(編集発行):原子力のあゆみ 原子力年鑑 2000/2001年版 別冊(2000年10月)
(2) 日本原子力産業会議(編集発行): 原子力年鑑 2000/2001年版(2000年10月)
(3) 読売新聞社(編集発行):読売年鑑 2000年版
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