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<概要>
 東海再処理工場は、日米再処理交渉の妥結により1月に本格運転を開始した。4月に原電敦賀発電所の事故が報道された。定期環境モニタリングにより一般排水路の放射能汚染が見つかった。微量な放射能漏れにもかかわらず、1月〜3月にかけて原電が事故隠しを重ねてきたこともあって大々的に報道された。5月に原子力船「むつ」の新母港を青森県関根浜に決定した。通産省は、1975年から稼働率の向上、従業員の被曝低減などを目標に軽水炉改良標準化計画を進めていたが、次の目標として「日本型軽水炉」の完成へと第3次計画を7月にスタートさせた。原子力安全委員会は、初の原子力安全白書を10月にまとめた。4月に高速増殖炉「常陽」は1万時間の無事故運転を達成し、FBR 実用化に向けて明るい材料を提供した。米国では、初の高温ガス冷却炉フォート・セント・ブレインは7月に100%出力運転に成功したが、一方軽水炉建設計画の延期や中止が続いた。

 
<更新年月>
1998年03月   (本データは原則として更新対象外とします。)


<本文>
1.内外の原子力関係の出来事
月日 国内 国外
1981年
(昭和56年)
1/15   カーター大統領1982年度予算教書、DOE予算でクリンチリバー高速増殖炉計画ゼロ査定、廃棄物対策費大幅削減
1/17 動燃東海再処理工場、本格的運転はじめる  
1/21 科学技術庁(現文部科学省)、旭化成の化学交換法ウラン濃縮研究所施設承認。3/10地元宮崎県も承認  
1/22   米DOE、ニューメキシコ州カールスパッド近くの廃棄物隔離パイロットプラント(WlPP)計画認可
1/28 島根2号炉、第1次公開ヒアリング  
2/23 原研、仏CEAと反応度及び冷却材喪失事故下での燃料挙動の共同研究取決め結ぶ ソ連ブレジネフ共産党書記長党大会で「原子力産業の発展が必要」と報告
3/1 電気事業連合会、ウラン濃縮準備室を設置  
3/3   EC委員会、原子力開発規模予測報告の中で「原発建設のおくれで産業面にマイナス要素が続出する」の懸念を表明
3/8 福島第一原発が総発電量1000億kWhを突破  
3/9   米NRC、TMI2号除染に関する最終環境影響声明書を発表
3/10   レーガン大統領、1982年度予算でクリンチリバー計画2億5900万ドル全額認める
3/11   米NRC、病院や研究機関で発生する低レベル放射性廃棄物処分規制の緩和を決定(スソ切り実施)
3/19 中部電力浜岡原発3号炉、第2次公開ヒアリング  
3/26 電源開発調整審議会(現総合資源エネルギー調査会電源開発分科会)が柏崎・刈羽2、5号と島根2号の着手を決定。原発は2年半ぶり  
3/28 科学技術庁、全漁連に海洋処分計画を説明  
3/30 九州電力玄海2号、営業運転開始  
4/3   米DOE、「1980年において、原子カ発電量が初めて石油火カを上回った」と発表
4/14 福井県衛生研究所、原電敦賀発電所前面海域から異常放射能値を検出、波紋広がる  
4/17 高速増殖実験炉「常陽」が通算1万時間の運転記録を達成  
4/18 日本原子力発電敦賀発電所での放射能漏れ発覚(1/19、3/8にも事故を起していたことが明らかに、会社の秘匿問題化)  
4/21 衆院科学技術特別委、敦賀発電事故めぐり論議 スイスのジュネーブ州、原子炉による都市暖房を検討中と発表
4/22   仏政府、原発の周辺30km内にある工場の高圧電カ料金を最高30%割引く制度を実施することを決める
4/23 動燃、国産濃縮ウラン初出荷(濃縮度3.2%、約1トン)  
4/24   英国の電カ技師協会、TMI教訓として、原子力発電所の18項目の改善の計画を発表
5/8 原子カ安全委が敦賀事故問題で現地調査  
5/11 原発反対福井県民会議、敦賀問題で原電を告発(不起訴)  
原電、敦賀原発放射能漏出事故「顛末書」発表  
5/12 政府、むつ新母港候補地に関根浜を決定  
5/16   仏政府、ラ・アーグ再処理工場の拡張を認可(能力は最終的に年産1600トンに)
5/18 通産省及び科学技術庁、敦賀原発問題で報告書  
北マリアナ連邦共和国代表団、科学技術庁長官に低レベル放射性廃棄物の海洋処分中止を要請  
5/21   米会計検査院(GAO)、核不拡散に関する報告書を議会に提出
5/27   英、放射性廃棄物管理諮問委員会、第2回廃棄物年報を発表(高レベル廃棄物はまず50年程度貯蔵してから、その後の取扱いをきめればよい)
5/28   ENEL、今後主要炉型として、WH社製PWRを選定したと発表
6/12   米会計検査院(GAO)、使用済燃料は再処理が最善とする報告書を発表
6/17 通産省、事故を起こした原電敦賀発電所に6カ月の運転停止を命令  
東京電力福島第二原発1号臨界(BWR、110万kW)  
6/18 労働省、原電敦賀発電所の事故調査結果発表。6/19福井労働基準監督署を通じて原電側に6項目の改善指示 米NRC、TMI建屋内汚染除去計画承認
6/24 福島第一原発5号が321日間の連続運転記録を達成  
7/1   英政府、PWR原発建設促進のためのタスクフォースを設置(主査マーシャル英AEA総裁)
7/8   米NRC、高レベル廃棄物の地層処分に関する技術基準案「放射能は100年封じ込め」を発表
7/15 東京電力・GE‐日立・東芝の4社、新型 BWR 開発計画で調印  
7/16   米レーガン大統領、核不拡散と平和利用協力に関する7項目声明発表
7/17 閣議、海洋処分計画でOECD−NEA多国間協議監視機構への参加を決める  
7/23   米原子カ安全監視委、原発認可手続きの改善を大統領に勧告
7/31 四国電力伊方2号臨界(PWR、56万6000kW)  
7月 日立、原子力大型ステンレス工場完成(日立工場臨海地区)  
8/4 (財)原子力データセンターが発足(東海村)  
8/6   米TVA、原発計画のスローダウンを決定
  西独DWK、ベルギーのモルで、高レベル廃棄物ガラス固化パイロット・プラント建設に着工
8/10 通産省、海水ウラン回収モデルプラント起工(香川県仁尾町)  
8/18 原子力委ウラン濃縮国産化専門部会が報告  
8/26   スイス原子炉研究協会、原発地下立地研究報告をまとめる
8/28 東北電力巻原発、第1次公開ヒアリング  
9/2   グアムで第3回太平洋地域首脳会議、日本の放射性廃棄物海洋処分問題を議論
9/3 米WH社と三菱重工、新型PWR共同開発で契約  
9/12   IAEA保障措置を受け入れ
9/21   米で商業使用済燃料の軍事転用の可能性問題に批難集まる
9/22 動燃、高レベル放射性物質研究施設完成  
10/5 原研、IEA 核融合材料照射損傷研究開発計画に加入  
10/8   仏国民議会、ミッテラン政権の新エネルギー政策を可決
10/10 動燃(現日本原子力研究開発機構)新型転換炉「ふげん」、初の国産Puを使用した混合酸化物(MOX)燃料を装荷  
10/20 原子力安全委、初の安全白書まとめる  
10/26 第1回原子力安全功労者表彰  
10/30 通産省(現経産省)、福島第二原発(1〜4号、建設中)用燃料などの変更を認可。8×8型燃料を採用  
11/5 茨城県東海村で初の大規模防災訓練実施  
11/13   米国初の高温ガス冷却炉原型炉フォート・セント・ブレイン100%出カ(330MWe)運転に成功
11/16 原研(現日本原子力研究開発機構)、初の中性粒子入射加熱装置完成  
11/25 福島第一原発5号機で負荷追従運転始まる  
12/1 総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会)原子力部会専門委、高速増殖炉とPuリサイクルの検討開始  
12/9 北海道電力共和・泊原発1、2号炉、第1次公開ヒアリング  
12/17   米レーガン大統領、エネルギ一省廃止計画を発表


2.社会一般の出来事
月日 国内 国外
1981年
(昭和56年)
1/13 工業技術院電子技術総合研究所、超伝導素子SSDを開発(従来の40倍の高感度でマイクロ波・ミリ波を検出)  
2/18   米大統領レーガン、経済再建計画を発表。国防費の増大と他の財政支出を大幅削減
2/28 反原発・反再処理・反海洋投棄東京集会。パラオからべラウ共和国下院議員など500人参加  
8/6 香川県仁尾町の電源開発会社太陽熱発電パイロットプラント、稼働開始(出力1000kW、4m2の平面鏡807枚使用)  
9/9   仏政府、企業国有化法案を閣議で承認(5企業グループと銀行36行の国有化)10/26国民議会で可決
10/2   米大統領レーガン、核戦カ強化計画発表(MXミサイル100基配備、新型トライデント2ミサイル開発など)
10/19 福井謙一、フロンティア電子理論によりノーベル化学賞受賞  
11/15   アテネ、米軍基地撤去要求デモ、20万人参加。マドリードでもNATO加盟反対・反核デモ。11/21アムステルダムで30万人の反核デモ。欧州各地で平和運動広がる


<関連タイトル>
敦賀発電所における放射性廃棄物処理施設からの放射性廃液漏洩事故の環境への影響 (02-07-02-12)
敦賀発電所1号機放射性廃液漏洩事故関連資料(汚染範囲) (02-07-02-11)
敦賀発電所1号機放射性廃液漏洩事故関連資料(指標海産生物及び海水の放射能測定値) (02-07-02-10)
敦賀発電所1号機放射性廃液漏洩事故関連資料(海産食品及び海底土の放射能測定値) (02-07-02-09)
原子力船「むつ」開発の概要 (07-04-01-01)
東海再処理工場 (04-07-03-06)
高速実験炉「常陽」における研究開発 (03-01-06-03)
敦賀発電所における放射性廃棄物処理施設からの放射性廃液漏洩事故の概要 (02-07-02-13)


<参考文献>
1.森 一久編:原子力年表(1934-1985)、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
2.原子力委員会(企画)、原子力開発三十年史編集委員会編:原子力開発三十年史、日本原子力文化振興財団(昭和61年10月26日)
3.森 一久編:原子力は、いま(下巻)−日本の原子力平和利用30年−、日本原子力産業会議(1986年11月18日)、丸ノ内出版(発売)、中央公論事業出版(制作)
4.科学技術庁原子力局(監修):原子力ポケットブック・1996年版、日本原子力産業会議(1996年4月26日)


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