<大項目> 海外情勢
<中項目> 中南米各国
<小項目> メキシコ
<タイトル>
メキシコの原子力開発体制 (14-08-01-01)

<概要>
 メキシコでは現在、ラグナベルデ1、2号機(BWR、80万kW)の2基の原子力発電所が運転中で、メキシコ憲法の規定により、原子力の利用は平和目的に限定されている。エネルギー省が原子力開発や安全規制の主要機関となっており、その傘下に、原子力安全・保障措置委員会(CNSNS)、連邦電力委員会(CFE)、原子力研究所(ININ)がある。
<更新年月>
2015年10月   

<本文>
1. はじめに
 メキシコでは、1960〜1970年代に積極的に原子力導入が計画され、2015年現在、ラグナベルデ原子力発電所において米ゼネラル・エレクトリック社(GE)製の2基の原子炉(BWR、各80万kW)が稼働中である(図1参照)。同発電所はエネルギー省傘下の連邦電力委員会(CFE:Comision Federal de Electricidad)によって所有・運転されている。
 なお、2014年の原子力発電電力量は93億1161万kWh、総発電電力量に占める原子力発電の割合は5.64%である。CFEは2010年5月に電源開発計画を発表し、2019年から2028年までに新設される発電所の設備容量に関して10基の原子炉の建設を含む4つのシナリオを提示し、低炭素シナリオとして原子力発電や風力発電への大規模な投資の計画を示した。しかし、2011年11月にメキシコ湾で新たなガス田が発見されたことを受け、発電コストが高く、リードタイムが長い原子力発電所建設計画を放棄する方針を発表した。
2. メキシコの原子力開発
 メキシコの原子力開発は、1984年原子力法に基いて実施されている。この原子力法は1978年原子力法を改正したもので、原子力が平和目的に限定して利用されることや、連邦政府が放射性物質や原子力エネルギーの利用について規制することを規定している。具体的な活動には、(1)エネルギー生産に関連した活動、(2)核燃料資源の採掘・製錬、(3)核燃料の製造に関連した活動、(4)使用済燃料再処理、(5)使用済燃料あるいは使用済燃料の再処理によって発生した廃棄物の輸送、貯蔵、処分などがある。
 メキシコの原子力開発に関する最高機関は連邦政府であり、連邦行政組織法に従って、エネルギー省が原子力開発計画の企画、実行および調整を進める。原子力開発の主な機関として、原子力委員会(CNEN、1972年廃止)、原子力安全・保障措置委員会(CNSNS)、連邦電力委員会(CFE)、原子力研究所(INEN)、ウラン公社(1985年解散)がある(図2参照)。以下、各組織の詳細を示す。
(1)原子力委員会(CNEN)
 原子力委員会(CNEN)は、原子力の研究、開発および利用に関する国の計画および遂行の調整をはかることを目的に設立された。この委員会は、エネルギー大臣を委員長とし、原子力の研究、開発および利用に関する計画策定にかかわる政府機関の代表で構成されていた。原子力委員会は、1956年にはメキシコにおける原子力開発計画をスタートし、1960年代にはメキシコ電力委員会とともに原子力発電所の立地候補地の選定作業をすすめ、1969年には国際入札を招請している。
 原子力委員会(CNEN)は1972年1月廃止され、代わってその機能を果たす組織として、原子力研究所(INEN)が設立された。この原子力研究所は、5年後に、燃料サイクルに責任を持つウラン公社(URAMEX)、原子力安全規制を担当する原子力安全・保障措置委員会(CNSNS)、そして原子力の研究開発を行う原子力研究所(ININ)の3機関に分割された。これらの3機関は、すべてエネルギー省(SEMIP)の付属機関である。
(2)原子力安全・保障措置委員会(CNSNS)
 原子力安全・保障措置委員会(CNSNS:Comision Nacional de Seguridad Nuclear y Salvaguardias)は、エネルギー大臣に対して直接責任を負っている。同委員会は、(1)一般住民の安全を保障するための基準の作成、(2)安全に関する法令の遵守に関する監視、(3)原子力施設の設計、建設、運転、改修および記録、廃止措置に関する基本的事項の審査と認可などを行う。なお、CNSNSは国内外の原子力緊急事態に係る所轄官庁であり、原子力施設等の原子力防災体制を管轄する。図3にCNSNSの組織構成図を示す。なお、メキシコの緊急時対応体制は米国NRCの体制(NUREG-0654/FEMA-REP-1)をベースにして構築されているが、オフサイトの緊急時計画実施体制の統括は内務省にある。
(3)連邦電力委員会(CFE)
 連邦電力委員会(CFE:Comision Federal de Electricidad)は、原子力発電を行う資格が与えられている唯一の組織である。公共部門や大学、研究所などは、原子炉の発電などのエネルギー生産以外に使用する資格が与えられている。図4にCFEの組織構成図を示す。
(4)原子力研究所(ININ)
 原子力研究所(ININ)は、原子力に関する科学技術分野における計画およびその実施、ならびに原子力の平和利用および技術の普及促進を目的としている。原子力研究所の理事会は、エネルギー省次官を長とし、CFE、国家科学技術評議会、国立技術研究所およびメキシコ国立工科大学とサカテカス州立自治大学の学長等で構成されている。ININは1968年からトリガ型研究炉(MARK-III、1000kW)を、サカテカス州立自治大学は1969年からシカゴ型未臨界炉を持つ。
(5)ウラン公社
 ウラン公社は、放射性物質の探査、開発、精錬、加工、販売ならびに核燃料の輸出を独占的に行う。ウラン探査活動は1983年5月に終了し、ウラン公社は1985年に解散した。権限の一部は鉱物資源委員会に引き継がれたが、研究用核分裂物質は原子力研究所、原子力発電所の使用済燃料についてはメキシコ連邦電力委員会の専管とされている。なお、放射線以外の環境規制は環境・天然資源・漁業省(SEMARNAP)が責任を負っている。
(前回更新:2003年1月)
<図/表>
図1 ラグナベルデ原子力発電所の概要
図2 メキシコのエネルギー関連組織図
図3 メキシコ連邦原子力安全・保障措置委員会(CNSNS)の組織構成図
図4 メキシコ連邦電力委員会(CFE)の組織構成図

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<関連タイトル>
メキシコの原子力発電開発 (14-08-01-02)
メキシコの電気事業と規制・監督 (14-08-01-03)
メキシコの核燃料サイクル (14-08-01-04)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業会議:原子力年鑑 2003(2002年11月)、メキシコ
(2)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑 2015(2014年10月)、メキシコ
(3)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2015年版(2015年4月)
(4)メキシコ・エネルギー省:Energy Secter,
(5)(社)日本原子力産業会議:OECD/NEA加盟国の放射性廃棄物管理計画、原子力資料No.299(1999年1月)
(6)メキシコ・エネルギー省:NATIONAL REPORT PRESENTED BY THE UNITED MEXICAN STATES TO MEET THE REQUIREMENTS OF THE CONVENTION ON NUCLEAR SAFETY 2010-2012(2013年8月)
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