<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> EU
<タイトル>
EUの再生可能エネルギー政策 (14-05-15-04)

<概要>
 1995年に採択された「EUエネルギー白書」(European White Paper)は、再生可能エネルギーを将来の環境保護や電力確保の重要な手段の一つとして位置づけている。さらに1997年11月の「再生可能エネルギー白書」では再生可能エネルギー源別に目標値を定めて行動計画の詳細を呈示することを求め、欧州域内の総エネルギー消費量における再生可能エネルギーのシェア6%を2010年までに12%とするための支援策を加盟各国に求めた。電力に限ってみればシェアは15%程度になるが、2010年にはこれを22%とする目標を据え、EU加盟各国はそれぞれ目標達成に向けて国別の政策を実地に移しはじめたところである。
<更新年月>
2005年10月   

<本文>
 1995年に採択された「EUエネルギー白書」(European White Paper)は、再生可能エネルギーを将来の環境保護や電力確保の重要な手段の一つとして位置づけている。さらに1997年11月の「再生可能エネルギー白書」では再生可能エネルギー源別に目標値を定めて行動計画の詳細を呈示することを求めた。EUは再生可能エネルギー導入対して、3つの主要な欧州指令が発効し、目標を設定している。
(1)2001年の「再生可能エネルギーに関する欧州指令」では、2010年までに再生可能エネルギー導入の割合を最終エネルギー供給量の12%にすること。
(2)2001年の「グリーン電力推進に関する欧州指令」では、電力について2010年までに電力供給量の22.1%を再生可能エネルギー電力で賄うこと。
(3)2003年の「バイオ燃料促進に関する欧州指令」では2010年までにガソリン、ディーゼル油の5.75%をバイオ燃料で代替とすること。
 これらの目標に対して、現状では水力、地熱、太陽電池の導入量はほぼ予想された伸びを示しているが、バイオマス、太陽熱の導入は低調で、このままでは目標の達成が期待できないが、その反面、風力導入は予想をはるかに越える勢いで伸びている。今後、各国がバイオマス、太陽熱導入を中心に、再生可能エネルギー導入政策をより強力に推進すれば目標達成は可能としている。
 EUは域外を含む世界82か国の賛同を示した国々と「再生可能エネルギーに関するヨハネスブルグ連合(JREC:Johannesburg Renewable Energy Coalition)」を形成し、世界全体や国別の再生可能エネルギーの導入目標の設定を提案するなど、国際社会においても再生可能エネルギーの議論をリードしている。一方、地域偏在性のある再生可能エネルギーの導入目標を各国に強要すべきではないなどの米、日、豪、途上国等の反対は大きい。また、2004年1月に開催された再生可能エネルギー欧州カンファレンス「European Conference for Renewable Energy −Intelligent Policy Options」では、より長期を見据えた野心的な導入目標が必要であるとし、2020年目標値が示された。
1.EUの再生可能エネルギー導入状況
 2000年のEUの最終エネルギー消費は1,455Mtoe(石油換算トン)/年、そのうち再生可能エネルギーによる供給は電力、熱利用を合わせて87.8Mtoeであり6%を占めている(表1参照)。再生可能エネルギーの構成割合は、バイオマスが62.1%、水力31.4%で90%以上を占め、後は地熱3.8%、風力2.2%、太陽熱0.4%、太陽電池はほぼゼロとなっている。
 電力について見ると、2000年の総発電設備容量はEUで578.6百万kWあり、そのうち再生可能エネルギー発電設備容量は112.04kWで19.4%を占める(表2参照)。
 発電量で見ると、EU総発電量は2,574TWh、それに占める再生可能エネルギーの発電量は388TWhで15.1%を占める(表3および図1参照)。
1.1 風力発電
 風力発電の伸びは大きく、EUの風力設備導入量は、2003年6月現在で合計24.6百万kW、世界の設備導入量の90%を占める。国別では、1位ドイツ1,280万kW、スペイン510万kW、デンマーク290万kWと続く。また、これらドイツ、スペイン、イタリア、デンマークなどの風力発電先進国では、小規模施設から大規模な施設建設、陸上から海上での施設建設にシフトが見られ、技術開発もかなり進んでいる。
1.2 太陽光発電
 太陽電池のEUの導入量は2002年で39.16万kWpとなる。国別では、1位ドイツ27.8万kWp、オランダ2.83万kWp、イタリア2.28万kWpと続く。なお、日本の太陽電池導入量は2002年で63.7万kWpとなり、世界一の座を保っている。
1.3 バイオマス
 バイオマスはEU最大の再生可能エネルギーであり、2000年の供給量54.5Mtoe/年のうち78.7%の42.9Mtoeは熱利用で占める。バイオマスは、熱利用のための直接燃焼、ガス化発電やコジェネレーション用燃料、また、バスなどの輸送機器用の液体バイオ燃料など利用は多岐にわたる。国内の再生可能エネルギーの構成割合でバイオマスの比率が高い国はフィンランド、スウェーデン、オ−ストリアなどである。また、液体バイオ燃料生産は2000年で0.9Mtoe/年であり、ドイツ、フランス、イタリアが上位生産国である。
 2003年5月には「バイオガソリンの利用促進のための指令」がEU官報に発表され、発効した。指令の中心的内容は、自動車燃料市場において2005年末までに2%、2010年時点に5.75%のバイオガソリン利用をシェア目標として設定し、目標達成努力に関してメンバー国が欧州委員会に対して報告することを義務づけている。
1.4 水力発電
 水力は2000年の容量89.8百万kWのうち小水力(1万kW以下)が約9.4百万kWあり、10.5%を占める。小水力利用の上位国はイタリア、フランス、スペインである。
1.5 地熱発電
 地熱の2000年の供給量3.32Mtoeのうち発電利用が2.66Mtoeと80.1%を占め、残り19.9%が熱利用である。地熱には土中熱ヒートポンプによる熱利用が含まれておりスウェーデン、ドイツで進んでいる。地熱利用の上位国はイタリア、アイスランドである。
1.6 太陽熱利用
 太陽熱利用の上位国はドイツ、ギリシャ、オーストリアであるが、導入が進んでいない分野である。
2.2020年の再生可能エネルギー導入目標と効果
 2004年1月に開催された再生可能エネルギー欧州カンファレンスにおいて、EREC(European Renewable Energy Council)のZervos会長からスタディーレポートが報告され、「最大限の政策的行動がとられるならば、EU15か国で2020年には少なくとも最終エネルギーの20%は再生可能エネルギーで供給可能」と発表された。ERECとは、欧州再生可能エネルギー評議会で、欧州風力協会(EWEA)、欧州太陽電池工業会(EPIA)、欧州小水力協会(ESHP)、欧州太陽熱工業連盟(ESTIF)、欧州バイオマス工業会(EUBIA)、欧州リニューアブルリサーチセンター(EUREC AGENCY)による評議会である。
 再生可能エネルギーの供給量を2000年の87.8Mtoeから2020年には3.6倍の316Mtoeに引き上げる。その内訳として、バイオマスを3.8倍に増加させ、風力は19.8倍の増加を狙う。水力は横ばいで1.2倍、太陽電池は360倍と大幅増ではあるものの事実上少ない目標値となっている。太陽熱利用は63倍の大幅増であるが、達成が一番難しいとされている。
再生可能エネルギー構成割合は、バイオマスが64.9%、風力12.0%、水力10.4%、太陽熱7.6%、地熱3.9%、太陽電池1.1%となっている(表1参照)。
 発電設備容量で見ると、2020年のEU総発電設備容量85,500万kWに対して再生可能エネルギー発電設備容量は38,000万kWで44.4%を占める目標になる。再生可能エネルギー設備を2000年の11,204万kWから2020年には3.4倍の38,000万kWにする。なかでも風力の設備導入量は18,000万kWに達し、現在の約7倍の規模である。水力は横ばいで10,900万kW、バイオマスは熱利用が大きいので発電は5,400万kWとやや少なくなる。太陽電池の目標は3,500万kWである(表2参照)。
 発電量で見ると、総発電量3,450TWhに対して再生可能エネルギー発電は1,166TWhで33.8%を占める目標となる。再生可能エネルギー発電量を2000年の388TWhから3倍の1,166TWhにする。最大は風力の444TWhで、水力の384TWh、バイオマス282TWhと続く(表3参照)。
 また、2020年目標達成の成果として以下のことが期待できるとしている。
(1)2020年に20%の再生可能エネルギー導入により、1990年レベルに比べて728Mt/年の二酸化炭素の低減が図られる。これはEUの1990年ガス排出量の17.6%低減に相当する。
(ちなみに京都議定書での温室効果ガス削減目標はEUが8%、日本は6%)
(2)200万人の新規雇用が創出される。
(3)2020年までの投資は4,430億ユーロ、化石燃料コスト節減は1,158億ユーロ、温暖化対策を取らない場合に発生する外部コストの削減は1267〜3239億円ユーロとなる。
3.EU諸国の各国の取り組み
 再生可能エネルギーの普及促進は、EU諸国で積極的・精力的に取り組んでいるが、経済性を克服するには需要拡大が不可欠であり、再生可能エネルギーは地域共生型であることが多いため、各国独自の促進方策を考える必要がある。再生可能エネルギーは量的には多くを期待できないが、より長期にわたって化石エネルギーを活用でき、持続可能なエネルギー需給構造を構築する可能性がある。また、再生可能エネルギーの導入は化石エネルギーから排出される温室効果ガス削減のためには不可欠な要素である。
 欧米諸国での再生可能エネルギーが一次エネルギー総供給量に占める割合は、2002年度実績でEU25か国平均で5.2%、オーストリア、フィンランド、フランス、ラトビア、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデンが平均を上回る(表4参照)。
 多くの先進国ではエネルギー市場自由化を進める中で、再生可能エネルギーに高い導入目標を設定し、目標達成のため様々な政策的措置を講じている。デンマーク、英国などでは、再生可能エネルギーを含む特定電源から固定価格で全量購入を義務付ける制度から、最近では電力会社や最終消費者の再生可能エネルギーの導入量に一定の枠を設定し、取引可能なグリーン証書やクレジットを導入する制度(RES制度)へと移行が進んでいる。EU諸国の主な政策手段の概要を表5に示す。
 英国では2004年だけで22か所、前年度の4倍に相当する風力発電施設が完成した。発電能力は2005年末までに100万kW増加し、全体で150万kWを越える。英国の総発電容量のうち、再生可能エネルギーが占める割合は3%、風力は0.5%に過ぎないが、これらの風力発電施設完成に伴い比率は1.3%まで上昇する。英国政府は2003年2月に発表したエネルギー白書の中で、再生可能エネルギーが総発電量にしめる割合を2010年までに10%、2020年までに20%に引き上げるとした。今後4年間で6,000万ポンド(120億円、1ポンド=200円)規模の支援プログラムを予定し、研究開発には3億5,000万ポンド(700億円)を投資する計画で、将来的には廃材やバイオマス方式の普及も視野に入れている。英国は政策手腕が効を奏しているように思われる。
 以上、欧州各国の再生可能エネルギーへの取組みは、EUレベルで設定された目標を目指して、EU指令等に基いた加盟各国の国内環境法制の定めに従って、再生可能エネルギーの普及促進は着実に進展している。
<図/表>
表1 EU15か国における再生可能エネルギー導入目標
表2 EU15か国における再生可能エネルギー発電設備容量
表3 EU15か国における再生可能エネルギー発電量
表4 EU25か国のエネルギー消費量と炭酸ガス排出量(2002年)
表5 再生可能エネルギー普及促進に向けての政策手段の概要
図1 EU15か国における再生可能エネルギー発電量の推移

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<関連タイトル>
欧州連合における環境対策 (01-08-01-17)
京都議定書(1997年) (01-08-05-16)
EUのエネルギー政策(エネルギーの安全保障) (14-05-15-03)

<参考文献>
(1)EUROPEAN COMMISSION:EU再生可能エネルギー白書(ENERGY FOR THE FUTURE:RENEWABLE SOURCES OF ENERGY−White Paper)
(2)European Renewable Energy Council:Renewable Energy Target for Europe 20% by 2020
(3)Statistics in Focus, Environment and − Environmental Protection Expenditure in Europe.Theme 8−7/2001)”,Eurostat、Statistics in Focus, Environment and − Environmental Protection Expenditure in Europe.Theme 8−14/2002)”, Eurostat

(4)エネルギー情報局:”Regional Indicators:European Union (EU)”
(5)(財)日本エネルギー経済研究所:日本における新エネルギー政策と日本における新エネルギー政策とRPS制度の位置付け、IEEJ(2003年6月)、http://eneken.ieej.or.jp/data/pdf/684.pdf
(6)(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構:NEDO海外レポート、No.930(2004.4.28)
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