<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> ベルギー
<タイトル>
ベルギーの放射性廃棄物管理 (14-05-10-03)

<概要>
 ベルギーにおける放射性廃棄物の管理は、放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)が責任を負い、ONDRAF/NIRASの100%子会社であるベルゴプロセス社が実際の運営を行っている。放射性廃棄物の処分は発生者負担の原則の下で、民間企業シナトム社が電力会社などから資金を徴収している。原子力安全規制に関しては、1994年4月の法律に基づき、連邦原子力管理庁(FACN)が内務省の下部機関として設置され、放射性廃棄物も含め、ベルギーにおける原子力活動を検査・監督している。
 短寿命・低レベル放射性廃棄物については、2006年6月にデッセル自治体内に浅地中処分場を設置することが閣議決定され、ONDRAF/NIRAS、STORA(デッセル放射性廃棄物研究・協議機関)、MONA(モル放射性廃棄物協議グループ)、関係自治体間の統合プロジェクトにより推進されている。地質調査が既に開始され、2016年の処分場開設を目指している。また、長寿命高レベル廃棄物については、粘土層に深地層処分することが計画されており、モル・デッセル地区のブーム粘土層にある地下研究施設HADESで研究が進められている。2020年に安全性・実現可能性報告書が取りまとめられ、処分方針が決定される予定である。
<更新年月>
2010年01月   

<本文>
1.放射性廃棄物の発生源とその分類
 ベルギーにおける放射性廃棄物の発生源は、原子力産業が最大で約70%、原子力研究に伴って発生するものが約10%、医学、産業および民間の研究機関でのアイソトープ利用などから発生するものが約20%である。2001年12月に公表された安全評価・実現可能性第2次中間報告書(SAFIR2)によると、ベルギーでは図1に示すように3カテゴリ(A:短寿命低中レベル廃棄物、B:長寿命低中レベル廃棄物、C:長寿命高レベル廃棄物)に分類される。これらの廃棄物カテゴリは、さらに廃棄物クラスに細分される。カテゴリCには、TRU廃棄物に相当する放射性廃棄物、ガラス固化体、使用済燃料が含まれる。ベルギー国内で発生した全ての放射性廃棄物は、陸地処分される計画である。図2に原子力関連施設配置図を示す。
2.放射性廃棄物管理機関と法制度
 放射性廃棄物管理は1980年8月の法律に基づいて発足した放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS:National Agency for Radioactive Waste and Enriched Fissile Materials)が責任を負っている(図3参照)。ONDRAF/NIRASは、経済省・内務省・雇用省の監督下にあり、1981年3月30日に公布された国王命令によって使命と義務が規定されている。その任務は1991年1月11日に発効した法律により、濃縮された核分裂物質の監督と原子力施設のデコミッショニング(ただし原子力発電所は除く)まで拡大され、これに関する諸手続きについては、1991年10月16日の国王命令で規定された。
 放射性廃棄物管理の技術的な活動は、他のすべての原子力活動と同じく、「一般公衆および放射線作業従事者の電離放射線からの防護に関する一般規則(1963.2.28)」、「放射線防護・FANC設置法(1994.4.15)」および「放射線防護に関する王令(2001.7.20)」に従って実施される。また、原子力安全規制に関しては、連邦原子力管理庁(FACN:Federal Nuclear Control Agency)が1994年4月15日の「放射線防護・FANC設置法」に基づき、内務省の下部機関として設置された。FACNは、放射性廃棄物も含め、ベルギー内のすべての原子力活動を検査・監督する。
 なお、ONDRAF/NIRASの活動、処分事業資金などは「ONDRAF/NIRAS設置法(1980.8.8)」及び「ONDRAF/NIRAS使命・権限令(1981.3.30)」により、基金の設置と廃棄物発生者からの分担金の徴収が定められている。2003年に制定された「原子力発電所の廃止措置と使用済燃料管理のための引当金に関する法律(2003.4.11)」では、原子力発電所の許認可保有者による廃止措置および使用済燃料管理に係る引当金(バックエンド引当金)についての要件や管理体制等が規定されている。引当金の管理は民間企業シナトム社に委託されている。
3.放射性廃棄物管理方針とその経過
 ベルギー国内で発生したすべての放射性廃棄物は、陸地処分される方針である。1995年6月のベルギー政府の決定に従い、短寿命の低レベル放射性廃棄物(カテゴリA)については、地表で長期貯蔵を延長するというシナリオで、(1)浅地層処分、(2)粘土層への深地層処分の2つのオプションの調査が行われた。また、長寿命の高レベル廃棄物(カテゴリBおよびC)は、粘土層に深地層処分されることが計画されている。
3.1 浅地層への短寿命の低レベル廃棄物処分
 短寿命・低レベル放射性廃棄物は、中間貯蔵施設の立地するデッセル自治体で貯蔵されているが、処分に関して「浅地層処分は適切」とする報告書が1994年4月に取りまとめられ、政府に提出された。1998年1月、ベルギー政府はONDRAF/NIRASに対して、この短寿命・低レベル放射性廃棄物の処分に関する恒久的、段階的、可逆的な解決策を見つけることを委託した。ONDRAF/NIRASは、デッセル、モル、フルール、ファルシネの各自治体と、デッセル低レベル放射性廃棄物調査・協議グループ(STOLA-Dessel)、モル放射性廃棄物協議グループ(MONA)、フルール・ファルシネ地域パートナーシップ(PaLoFF)の形で連携し、処分場サイト選定を進めた。2006年6月にはアントワープ州デッセル自治体内に浅地中処分場を設置することが閣議決定されている。浅地中処分に関するプロジェクトは、ONDRAF/NIRAS、STORA(デッセル放射性廃棄物研究・協議機関、STOLA-Desselに代って2005年4月に設立)、MONA、関係自治体間での協力・協議による統合プロジェクトとして共同で推進することが2007年11月に合意された。なお、デッセルとモルの自治体の首長が諮問機関的役割を担う。2007年〜2008年まで資金調達など細目が検討され、計画では2007年〜2011年に処分場の設計を行い、2012年〜2016年に処分場の建設、2016年以降操業を行う。2008年から地質構造、地下水流の動き、処分場施設の荷重に対する地耐力など、地盤特性を明らかにする地質調査が開始されている。
3.2 深地層への長寿命の高レベル廃棄物処分
 カテゴリのうち、BとCの一部が長寿命放射性核種(主としてTRU核種)を多量に含有し、深地層処分の対象となる。SAFIR2では、原子炉の運転期間を40年と想定し、(1)全量再処理オプション:ガラス固化体3,915本、MOX使用済燃料67tHM、(2)直接処分オプション:ガラス固化体420本、使用済燃料4,230tU、MOX使用済燃料67tHMの2つのオプションにおける処分量が見積もられた(いずれも重金属換算4934t)。なお、ベルギーの使用済燃料は、1966年〜1974年までユーロケミック社のデッセル工場で再処理されたが、1978年〜2015年までシナトム社とCOGEMA社の間で結ばれた協定によりフランスで再処理する方針であった。しかし、1998年12月の核燃料サイクル政策の見直しにより、再処理契約が破棄され、現在は、ガラス固化体を含めた直接処分管理オプションの評価がONDRAF/NIRASを中心に行われている。
 研究開発段階にある地層処分計画では、第1段階が1974年〜1989年に実施され、1989年に安全評価・実現可能性中間報告書(SAFIR)が取りまとめられた。第2段階は1990年〜2000年に実施され、2001年に安全評価・実現可能性第2次中間報告書(SAFIR2)が取りまとめられた。現在は第3段階の研究開発が進められている。2020年には地層処分の安全性・実現可能性報告書をまとめる予定となっている。高レベル放射性廃棄物の処分方針はこれらの研究成果を踏まえて決定、処分場の建設は2025年以降とされている(表1参照)。
 なお、処分の実施主体であるONDRAF/NIRASと研究機関のSCK・CEN(ベルギー原子力研究センター)により、1995年にPRACLAYプロジェクトが開始された。プロジェクトの目的は、Boom粘土層(モル・デッセル地区)での地層処分の実現性を示すことである。このグループが発展して2000年12月にEURIDICE(European Underground Research Infrastructure for Disposal of radioactive waste In a Clay Environment)が結成され、新たな実規模実証プログラムを計画・推進中である。地下225mに建設された地下研究施設HADES(High Activity Disposal Experimental Site)では、1984年以来、原位置試験が実施されている(図4参照)。
4.放射性廃棄物の処理と貯蔵施設
 低レベル固体廃棄物は、1994年5月に操業を開始したシルバ(CILVA)施設で、焼却あるいは圧縮減容され、化学的な凝縮・沈澱処理が行われた後、400リットルドラム缶にセメントやアスファルトを用いて封入されてから貯蔵施設で保管される。
 中レベル廃棄物とα廃棄物は化学処理が行われた後、400リットルドラム缶にセメントとアスファルトを用いて封入され、その後、放射線遮蔽が施された貯蔵施設で保管される。
 フランスのラアーグ再処理工場の再処理に伴って発生した高レベル廃棄物と極高レベル廃棄物は、セメント固化またはガラス固化された後、貯蔵施設で保管される。この施設は、壁面と天井が厚さ1.2〜2.0mのコンクリート製で、鉛遮蔽や強制換気、遠隔操作機器、貯蔵ピット(空冷)などを備えた特別な設計となっている。最初の貯蔵区画(バンカー)は1991年から操業を開始しており、ベルゴプロセス社のサイトで発生した高レベル廃棄物215m3、旧ユーロケミック再処理施設から発生した1000m3がガラス固化されている。
 なお、ベルギーでは、(1)ユーロケミック社の旧プラント、(2)SCK/CENの旧廃棄物部門、(3)SCK/CENの複数の施設(特にBR3炉)の3つのデコミッショニング計画が進んでおり、実施に伴って発生した廃棄物は通常の原子力施設からの廃棄物と同じ方式で処理されている。これらの活動は中間貯蔵施設が集中立地しているモル・デッセルサイトのベルゴプロセス社(ONDRAF/NIRASの子会社)の施設で行われている(表2参照)。廃棄物は最終処分されるまでの間、ここで管理され、貯蔵される。
<図/表>
表1 ベルギーの処分事業の動き
表2 ベルゴプロセスの放射性廃棄物の中間貯蔵施設
図1 ベルギーにおける放射性廃棄物の分類
図2 ベルギーにおける原子力関連施設配置図
図3 ベルギーの放射性廃棄物管理体制
図4 HADES地下実験施設

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
外国における高レベル放射性廃棄物の処分(2)−ベルギー、スイス、カナダ編− (05-01-03-08)
フランス、ベルギー、スイスに於ける放射性廃棄物処理・処分の動向 (05-01-03-26)
ベルギーの原子力政策・計画 (14-05-10-01)
ベルギーの原子力発電開発 (14-05-10-02)
ベルギーの核燃料サイクル (14-05-10-04)

<参考文献>
(1)日本原子力産業会議:「OECD/NEA加盟国の放射性廃棄物管理計画」ベルギー、原子力資料、No.299(1999年1月)、p5-14
(2)原子力環境整備促進・資金管理センター:諸外国の高レベル放射性廃棄物処分等の状況
(3)原子力環境整備促進・資金管理センター:諸外国の高レベル放射性廃棄物処分について(2009年2月)
(4)電気事業連合会・核燃料サイクル開発機構:TRU廃棄物処分技術検討書(2005年9月)
(5)放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS):SAFIR2,NIROND 2001-05 E.(2001年12月)
(6)放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS):
(7)ベルゴプロセス(Belgoprocess):http://www.belgoprocess.be/index.php?option=com_content&view=article&id=54&Itemid=60
(8)原子力環境整備促進・資金管理センター:諸外国の高レベル放射性廃棄物処分等の状況、ニュースフラッシュ
(9)ベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS):プレスリリース
(10)ESV EURIDICE GIE:Use of cementitious materials in the PRACLAY experimental programme (2009)
(11)ESV EURIDICE GIE:HADES,
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