<大項目> 海外情勢
<中項目> ヨーロッパ各国
<小項目> イギリス
<タイトル>
原子力関係公企業の民営化と再編 (14-05-01-11)

<概要>
 政府の財政赤字削減策の一環として、英国では1980年代から1990年代にかけて国有企業の民営化が推進された。原子力部門では、まず1996年に、原子力公社(UKAEA)の商業部門であるAEAテクノロジー社が民営化されたのに続き、原子力発電会社であるニュークリア・エレクトリック社(NE)とスコティッシュ・ニュークリア社(SN)を統合したブリティッシュ・エナジー社(BE)も民営化された。ただし、マグノックス炉は民営化から外されて、ME社が設立され、後に英国原子燃料公社(BNFL)に吸収・合併された。
 続いて、このBNFLも民営化されることになったが、民営化には設備の除染や廃止費用など債務の整理が前提とされ、2005年にBNFLとUKAEAの原子力債務を管理する原子力廃止措置機関(NDA)が設立された。また、債務と同時に施設・資産もこのNDAに移管され、BNFLはDNAとの契約によって各施設を運転する会社となった。また、BNFLは部門毎に子会社化された。政府は2007年中頃までに大半の子会社を売却する方針である。2006年末現在、子会社のうち、ウエスチングハウス社(WH)がすでに売却されている。
<更新年月>
2007年01月   

<本文>
 英国では1954年に、原子力発電開発計画を推進するため、政府機関である英国原子力公社(UKAEA)が設立された。UKAEAは6基の原型炉を建設、運転し、英国の原子力発電利用の基礎を築いた。1971年には核燃料部門とアイソトープ・放射線部門が分離され、英国原子燃料会社(BNFL)とアマーシャム・インターナショナル社の2社が設立された。
 一方、商業用原子力発電所の開発は、国有企業である中央発電局(CEGB)あるいは南スコットランド電力局(SSEB)が、ガス冷却炉のマグノックス炉(GCR)、その改良型であるAGR、さらには加圧水型炉(PWR)1基を建設、運転してきた。
 しかし、1979年にサッチャー保守党政権が誕生して以来、英国は経済政策の一貫として国有企業の民営化を積極的に進めるようになった。1990年の電気事業再編(図1)では、イングランド・ウエールズ地方では、CEGBが発電3社、送電1社に分割民営化されたが、原子力発電部門はニュークリア・エレクトリック社(NE)として、また、スコットランド地方では、スコティッシュ・ニュークリア社(SN)として国有企業のまま残された。
 しかし、1992年に独占・合併委員会(MMC)が、政府の財政赤字削減策の一環として、UKAEAの商業部門をAEAテクノロジー社として民営化するとともに、BNFL、NEおよびSNの民営化も提案したのを受けて、政府は1995年、「原子力レビュー」を策定し原子力部門を民営化することを決定した。
 その結果、1996年にはAEAテクノロジー社、およびNEとSNを統合したブリティッシュ・エナジー社(BE)が民営化された。ただし、NEとSNの所有していたマグノックス炉は、債務と比較して収益力が低いとして民営化から外され、マグノックス炉を運転・管理する国有のME社が設立された。ME社はその後、1998年にBNFLに吸収・合併された(図2)。
 なお、BE社は卸電力市場での競争激化の中、設備のトラブルなどが発生し、株価が急落したことなどから、2002年に経営危機に陥った。その後、政府が財政再建に乗り出し、2006年末現在、65%の株式を政府が保有している。
 BNFLについては、当初2002年の総選挙までに株式の49%を一般公開する方向で検討が進められていた。しかし、MOX燃料の検査データの改ざん問題、再処理施設THORPの業績の低下、MOX燃料成型加工施設SMPの運転開始の遅れなどにより、延期されることになった。さらに、BNFLの民営化には、マグノックス炉の廃止費用など債務の整理が必要との議論が高まり、政府は2001年、BNFLとUKAEAの原子力債務を管理する機関の設立を決定した。2004年のエネルギー法に基づき、2005年には原子力廃止機関(NDA)が設立された。その結果、BNFLの債務だけでなく大半の資産もNDAに移管され、BNFLはこれまでの自主的に施設を所有・運転する国有企業から、DNAからの委託により施設を運転・管理する国有企業へと変更された。
 また、この体制の変更に伴い、2005年にBNFLは事業再編を行った。再処理、廃止、除染などの事業をNDAから請け負うブリティッシュ・ニュークリア・グループ(BNG)社、炉メーカーのWH社、およびR&D部門のネクシア・ソリューション社を傘下に置く持ち株会社となった。
 政府はこれらの子会社を売却する方針であり、2006年にはWH社が東芝を中心とする企業(東芝77%、米国ショー・グループ20%、石川島播磨工業3%)に売却された。また、BNG社の売却を2007年半ばまでに行うこともすでに決定している。BNGは子会社として、放射性廃棄物の処理・管理を行うBNGプロジェクト・サービス社(BNGPS)、NDAとの委託契約に基づきセラフィールドの核燃料サイクル関連施設の運転、管理、廃止措置を行うBNGセラフィールド社(BNGSL)、NDAとの委託契約に基づきGCRの運転、管理、廃止措置を行うME社を抱えているが、それぞれ個別に売却される予定である。また、ネクシア・ソリューション社は、原子力研究機関に移管される予定である。
1.AEAテクノロジー社
 AEAテクノロジー社は、1990年に英国原子力公社(UKAEA)から商業部門を切り離し、同公社の一部局として設立された技術サービス会社であったが、1996年に民営化された。現在では、原子力分野よりも環境や鉄道関連中心のコンサルタントや技術サービスを行う会社となっている。2006年度(2006年3月末)総売上げ高は1億4,780万ポンド、営業利益は800万ポンドである。総売上げ高の内訳は、環境関連子会社37%、鉄道関連子会社32%、その他24%で、放射性廃棄物の管理技術などの原子力関連は7%に過ぎない。従業員は世界で約1,600人である。
2.ブリティッシュ・エナジー社(BE)
 BE社は、前述のように、1996年に旧中央発電局(CEGB)から原子力発電部門を分離し設立されたニュークリア・エレクトリック社(NE)、および南スコットランド電気局(SSEB)から原子力発電部門を分離し設立されたスコティッシュ・ニュークリア社(SN)が統合されて設立された原子力発電会社で、同じ年には政府所有の黄金株を除き株式が公開され、民営化された。BEは持ち株会社で、実際の発電所の運転は子会社であるBEジェネレーション社(BEG)が行っている。
 しかし、同社は2001年に導入された新しい卸電力取引市場制度(NETA)下で、電力会社間の競争が激化する中、設備のトラブルが発生し株価の急落に見舞われたことなどから、2002年に経営危機に陥った。そのため、政府が救済に乗り出し財政再建が行われた。2005年には再上場を果たしたが、2006年末現在、65%の株式を政府が保有している。政府は今後、株式市況を見ながら一定の株式を売却してゆく方針である。
 なお、BE社は2006年末現在、原子力発電設備955万kW(AGR14基、PWR1基)および石炭火力200万kW、合計1155万kWの発電設備を所有し、事業者による発電電力量の約19%を供給している。2005年度の発電電力量は684億kWhであった。
3.英国原子燃料公社(BNFL)
 BNFLは1971年に設立された再処理など核燃料サイクル全般に係わる国有企業で、前述のように、当初はそのまま民営化される計画であったが、NDAへの債務・資産の移管に伴い、2005年に、NDAとの委託契約によって各施設の運転・管理および廃止・除染事業などを実施する企業に変更された。
 また、このNDAへの債務・資産の移管に伴い、BNFLの組織再編も実施された。図3に示すように、BNFLは(1)NDAとの契約の元で再処理、廃止、除染などの事業を請け負うブリティッシュ・ニュークリア・グループ(BNG)社、(2)米国を拠点に原子力発電所建設・保守管理、機器の供給などを行うウエスチングハウス社(WH、1999年に買収)、(3)R&D部門のネクシア・ソリューション社、の3つの子会社に再編された。
 政府はこれら子会社を基本的に売却する方針であり、2006年にはすでにWH社が東芝を中心とする企業(東芝77%、米国ショー・グループ20%、石川島播磨工業3%)に売却された。
 また、BNG社も2007年半ばまでに売却される予定である。BNGは子会社として、(1)放射性廃棄物の処理・管理を行うBNGプロジェクト・サービス社(BNGPS)、(2)NDAとの委託契約に基づきセラフィールドの核燃料サイクル関連施設の運転、管理、廃止措置を行うBNGセラフィールド社(BNGSL)、(3)NDAとの委託契約に基づきGCRの運転、管理、廃止措置を行うME社、を抱えているが、それぞれ個別に売却されることになっている。
 ME社は1998年にBNFLに吸収された時点では、BNFLのGCR・8基、およびNE社とSE社のGCR・12基、合計20基を所有していたが、その後、12基が閉鎖され、2005年末現在、8基を運転している。今後、2006年末〜2010年にかけて、これら8基のGCRも閉鎖される予定である。
 また、ネクシア・ソリューション社は原子力研究機関に移管される予定である。
(前回更新:2000年3月)
<図/表>
図1 英国の電気事業の変遷
図2 英国の原子力発電事業者の変遷
図3 BNFLの組織図

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
イギリスの原子力政策および計画 (14-05-01-01)
イギリスの核燃料サイクル (14-05-01-05)
イギリスの電気事業および原子力産業 (14-05-01-06)
英国の電気事業の民営化と原子力発電の非民営化問題 (14-05-01-08)

<参考文献>
(1)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編1998年(1998年3月)、p.205−211
(2)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編2003年(2003年3月)p.301−320
(3)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編追補版2006年(2006年12月)、p.131−144
(4)(社)海外電力調査会:英国原子力施設の廃止措置事業をめぐる最近の動向、「海外電力」2006年11月号
(5)原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2005(2006年)、p.37−38、p.118−120
(6)原子力産業協会:原子力年鑑2007(2006年10月)、p.181−186
(7)AEA Technology Annual Report 2006、p.03−08
(8)BE Annual Report and Accounts 2005/2006、p.01
(9)Nuclear Electric Report & Accounts 1993/1994、 p.73
(10)AEA Technologyホームページ:
(11)英国原子燃料公社(BNFL)ホームページ:
(12)原子力公社(UKAEA)ホームページ:http://www.ukaea.org.uk/
(13)BE社ホームページ:
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