<本文>
1.原子力規制体制
英国の原子力
安全規制体制を
図1 に示す。
原子炉等の
原子力施設の規制は「1965年原子力施設法(修正法)」に基づいて行われており、商業用原子力施設の設置、運転または
解体に関し、すべて保健安全執行部(HSE)の許可を得る必要がある。また、1993年
放射性物質法に基づく放射性廃棄物の処理・処分に関する安全規制は、環境・運輸・地域省のもとにある環境庁(イングランドとウェールズの環境庁と、スコットランドの環境保護庁)が実施している。ただし、原子力施設における廃棄物業務については、HSEが責任を持つ。
放射性物質の輸送に係る規制は、環境・運輸・地域省(陸上)および、貿易産業省(空、海上)が責任を持つ。
放射線防護に関する研究および基準の制定にあたっての勧告等は、国立放射線防護委員会(
NRPB)および医学研究審議会(MRC)の管轄である。
保障措置業務は貿易産業省が、アイソトープの規制は環境省およびHSEが実施している。
図中の主な組織についてつぎに述べる。
(1) 保健・安全委員会(HSC:Health and Safety Commission)
1974年保健安全法により設立された原子力安全の規制責任を負う政府機関である。環境・運輸・地域省(DETR)の下で原子力安全諮問委員会(NuSAC)の助言を受けて規制政策の立案、全般規制にあたる。10名の委員で構成されており、委員は雇用主、被保険者、地方局等を代表する組織と協議の末、環境担当国務大臣によって任命される。保健安全法および原子力施設法とその関連規則の管理について、主務大臣に対して責任を持つ。また、保健安全規則を評価し、規則の制定、改訂に関する提案等を行っている。
(2) 保健安全執行部(HSE:Health and Safety Executive)
1965年原子力施設法が修正され、エネルギー大臣とスコットランド大臣が有していた許認可の機能はHSEへ移管された。HSEは、HSCが任命した保健安全執行官(3名)によって統括されており、1974年保健安全法を根拠とし、作業活動によるリスク管理の確保を目的に産業安全に関するほとんどすべての事項を取り扱っている。原子力では、事業者に敷地許可等許認可を与える権限を有する。
(3) 原子力安全局(NSD:Nuclear Safety Department)
1960年に設立され、1975年にエネルギー省からHSEの執行局として移管された。原子力施設の規制を担っており、原子力施設の維持・改善・放射線防護が主な役割である。原子力計画に関係するどの政府機関からも独立している。
(4) 原子力施設検査局(NII:Nuclear Installations Inspectorate)
NSDに属し、NIIの主席検査官は、原子力施設の運転者に対して安全に関する許可権を有する。保健安全法と原子力施設法の下で関連規則の執行について責任を持つ、保健安全執行官の代理として、原子力施設主席検査官と副主席検査官に権限が委任されている。
2.原子力許認可手順
英国の原子力許認可手順を
図2 示す。
保健安全法によれば、イングランド、スコットランド、ウェールズでの許可責任者はHSEで、北アイルランドでは商務大臣である。許可はサイトに対して行われる。手順はつぎのとおり。
(1) 申請者は貿易産業省(DTI)へ計画申請書を提出する。DTIは、申請書承認の是非を決定することができる。申請書を受理する前に、DTIは、地元に対する影響評価(景観、経済基盤、水供給等)のための公聴会を、地元自治体と協議し、開催することが出来る。
(2) 計画の承認が得られた後、NSDが安全性に関する審査を行う。NSDは設計、建設等の各段階で許可を発給する。
(3) NuSACは、
安全審査の原則および大綱を検討するが、個別案件には係わらない。また、英原子力公社(UKAEA:United Kingdom Atomic Energy Authority)所有の施設は、
UKAEA内の安全性・信頼性管理部(
SRD)の安全性評価グループにより審査される。
<図/表>
<関連タイトル>
イギリスの原子力政策および計画 (14-05-01-01)
イギリスの原子力発電開発 (14-05-01-02)
イギリスの原子力開発体制 (14-05-01-03)
イギリスの核燃料サイクル (14-05-01-05)
イギリスの電気事業および原子力産業 (14-05-01-06)
イギリスのPA動向 (14-05-01-07)
<参考文献>
(1) (社)日本原子力産業会議:原子力ポケットブック 2002年版(2002年11月)、p.449−451
(2) OECD/NEA(編集発行)、日本原子力産業会議(翻訳):OECD/NEA加盟国の放射性廃棄物管理計画(1999年1月) p.151−152