<大項目> 海外情勢
<中項目> 北米各国
<小項目> アメリカ
<タイトル>
アメリカの使用済燃料の中間貯蔵 (14-04-01-27)

<概要>
 米国では、1970年代末から1980年代の初めにかけて、多くの原子力発電所使用済燃料の貯蔵プールが満杯に近づき始めた。各電力会社は、プールに貯蔵できる使用済燃料の量を増やすための方策として、使用済燃料の収納数を増やすことを目的とした「リラッキング」と呼ばれる方法や燃料棒の整理・統合といった方法の検討を開始した。しかし、こうした方法にも限界があるため、サイト内及びサイト外に独立した使用済燃料貯蔵施設(Independent Spent Fuel Storage Installation:ISFSI)を建設するという計画が浮上した。
 また、使用済燃料の問題に対処するため、1982年に放射性廃棄物政策法、1987年には同修正法が成立し、国としてこの問題に取り組むことになった。2002年7月23日には最終環境影響評価等の報告を踏まえ、ユッカマウンテンを最終処分場とすることが連邦議会の立地承認の合同決議で正式に決定した。エネルギー省(DOE)は、2008年6月にユッカマウンテンの最終処分場建設認可の申請を行い、2020年に操業を開始する予定であったが、2009年の政権交代で高レベル放射性廃棄物処分の戦略が再度見直されている。こうしたことから、各電力会社は中間貯蔵所の開設に向けて独自の活動を行っている。
<更新年月>
2012年01月   

<本文>
 2012年1月時点、アメリカ国内には104基(BWR:35基、PWR:69基)の原子力発電所が稼働しており、1基あたり、毎年約15〜20MTU(Metric Ton of Uranium)の使用済燃料が発生している。商用原子炉から出た累積使用済燃料は2010年12月末には65,200MTUとされ、原子力発電所のライセンス期限を40年間とした場合、2035年には87,000MTUの使用済燃料が蓄積すると予想されている。
 米国では、核不拡散の立場から核燃料の再処理を行わないワンススルー方式を採用しており、使用済燃料は最終処分されるまで発電所付設の使用済燃料プールに一時保管される。しかし、1980年代後半から使用済燃料プールの容量超過が懸念され、それを回避する緊急措置として使用済燃料の中間貯蔵施設が実用化した。燃料集合体はもともと貯蔵を念頭に設計されたものではないため、長期的な特性の変化を踏まえた上で、貯蔵期間中も健全と判断される状態が維持され、燃料被覆管の破損など過度な変形や材料特性の劣化を生じさせないことが必要である。米国の場合、中間貯蔵は1986年6月のバージニア州サリー発電所で開始されて以来、2010年11月時点で審査中を含め33州73箇所に及ぶ。
1.使用済燃料の貯蔵方式
 米国の原子力発電所サイト内では湿式・乾式の両方による貯蔵がなされている。廃止措置がなされた発電所についても、当該炉から発生した使用済燃料が廃炉後の原子力発電所敷地に乾式貯蔵されている事例は多い。
 湿式貯蔵は特に発熱量の高い使用済燃料の貯蔵に適しており、プール水中に設置されたラック(金属製の枠組み)に使用済燃料を収納する方式で、プール水により使用済燃料の崩壊熱を除去するとともに、放射線の遮へいを行う。使用済燃料貯蔵量の増加による容量超過を回避するために、間仕切りを変更するリラッキングを採用しているが、この方法での拡張には限度がある。なお、プールの増設は発電所のレイアウト面や経済面から得策とは考えられていない。
 一方、乾式貯蔵では、使用済燃料は鋼鉄や鋼鉄で強化されたコンクリートで作られた容器(キャスク)によって使用済燃料の貯蔵を行う。キャスク方式は運転・保守・点検が容易にでき、貯蔵の必要量に応じて比較的容易に増設できる特徴がある。米国原子力安全規制委員会(NRC)は密封機能、遮へい機能、臨界防止機能及び除熱機能の基本的安全機能を考慮して、これまで幾つかのデザインのキャスクを承認している。それらは大別して、以下の3種類に分けられる。(1)鋼鉄製のキャニスタの中に使用済燃料を入れて、鋼鉄で強化されたコンクリート製のバンカーの中に水平に据え付けるもの。(2)鋼鉄製のキャニスタを用いて、コンクリート製の貯蔵建屋の中に垂直に置くもの。(3)鋼鉄や強化コンクリート製の縦型のキャスクを使うもので、屋外で強化コンクリートパッドによって支えられるもの。
 使用済燃料が収納されたキャスクは不活性ガスが充填された後に密閉される。図2に米国における標準的乾式貯蔵方式の概要を示す。NRCが認可した使用済燃料貯蔵キャスクは現在16種類あり、NAC-UMS、NAC-MPC、HI-STAR 100、HI-STORM 100は輸送貯蔵兼用キャスク仕様となっている(表2参照)。標準的な認可期間は20年間であり、これを過ぎた場合には検査を受け、承認を得られた場合のみ、さらに20年延長することが可能である。
2.使用済燃料貯蔵施設に関わる許認可システム
 現在、米国では使用済燃料の最終的な処分方法が決定するまで独立使用済燃料貯蔵施設(Independent Spent Fuel Storage Installation:ISFSI)で貯蔵されるケースが多い。ISFSIの安全審査はNRCが中核的な役割を果たし、認可に必要な手続き及び条件、技術要件、管理要件等は、連邦規則コード10CFR Part72「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の独立貯蔵に関する認可要件(Licensing Requirements for the Independent Storage of Spent Nuclear Fuel and High Level Radioactive Waste)」で規定される。また、乾式貯蔵施設は、NUREG-1536「乾式キャスク貯蔵システムの標準審査指針(Standard Review Plan for Dry Cask Storage Systems, NUREG-1536)」及びNUREG-1567「乾式キャスク貯蔵施設の標準審査指針(Standard Review Plan for Dry Cask Storage Facilities, NUREG-1567)」に基づいて審査される。図1にISFSIの設置状況の推移を、また、表1-1表1-2及び図3にその詳細を示す。なお、認可に当たっては以下に示す2つの手順がある。
(1)サイト固有認可(Site Specific License)
 NRCが申請を受理した後、基本的には公開となり一般公衆が検閲でき、また公聴会の開催を要求できる。認可は最大20年までとしているが延長も可能である。連邦規制コード10CFR Part72、NUREG-1567に基づく。サイト固有認可の例として、アイダホ国立研究所(Idaho Nuclear Engineering and Environmental Laboratory:INEEL)や民間燃料貯蔵施設(Private Fuel Storage Facility:PFSF)がある。
(2)一般認可(General License)
 10CFR Part50に基づき原子炉としての認可を受けているサイト内において、その炉から取り出された燃料をNRCの認可を受けているキャスクを使用して貯蔵する場合には、10CFR Part72サブパートK(発電用原子炉の設置場所での使用済燃料の貯蔵にかかる一般認可)の規程により、申請者は申請書の提出なしに事前届だけで認可される。安全解析書(SAR)や安全評価書(SER)を必要とせず、パブリックコメントの期間を設けていない。これは申請者の許認可手続きの時間と費用を軽減するため、10CFR Part72の1990年改正で取り入れられた認可の方法であり、NUREG-1536に基づく。
 上記のとおり、使用済燃料の中間貯蔵は一般に20年の年限を付して許可されており、貯蔵期間を延長する場合は再許可手続(re-license)が行われる。今日までに、SURRY発電所(2004年)及びH.B.ROBINSON発電所(2005年)においてそれぞれ再許可手続がなされ、いずれも40年の貯蔵年限延長が認められている。
3.敷地外使用済燃料貯蔵施設の動向
 米国では民間企業PFS(Private Fuel Storage LLC)社により、敷地外乾式使用済燃料貯蔵施設PFSF(Private Fuel Storage Facility)の建設が、ユタ州トゥーエル郡のゴシュート・インディアン居留地、スカルバレー(Skull Valley)で計画され、1997年6月にNRCへサイト固有認可が申請されている。PFS社は電力会社8社(Xcel Energy 社、Genoa Fuel Tech社、American Electric Power社、Southern California Edison社、Southern Nuclear社、First Energy社、Entergy社、Florida Power and Light社)のコンソーシアムである。PFSFの設備容量は40,000t(コンクリートキャスク約4,000基分)の使用済燃料の貯蔵が可能である。図4に概略を示す。使用済燃料は原子炉サイトで金属製の輸送貯蔵兼用キャニスタに封入され、輸送貯蔵兼用コンクリートキャスク(Holtec International社製のHI-STORM100)に装荷されて、各発電所からPFSFへ搬出される(図5図6参照)。
 2001年12月に最終修正安全評価書(SER)が、2002年1月に最終環境影響評価書(EIS)がNRCから発行され、安全審査が開始された。2003年3月、原子力安全認可委員会(Atomic Safety and Licensing Board:ASLB)から、F-16戦闘機の墜落事故を想定した安全影響評価の追加を求められたが、貯蔵キャスクに損傷を与える確率は1/106未満であるとして、NRCは2005年2月にPFSFの建設・運転認可の発行を認めることを決定した。これと並行して、NRCは国家歴史保存法(National Historic Preservation Act)に基づいた遺跡調査と保護に関して歴史保存諮問委員会から合意を得て、2006年2月にPFS社に対し最終的に認可を与えた。しかし、実際の計画は立地や輸送面での調整、資金調達などが必要で依然不透明である。
 なお、使用済燃料の問題に対処するため、1982年に放射性廃棄物政策法が、1987年には同修正法が成立し、国としてこの問題に取り組むことになった。2002年7月23日には最終環境影響評価等の報告を踏まえ、ユッカマウンテンを最終処分場とすることが連邦議会の立地承認の合同決議で正式に決定した。エネルギー省(DOE)は、2008年6月にユッカマウンテンの最終処分場建設認可の申請を行い、2020年に操業を開始する予定であったが、地元ネバダ州知事の反対や2009年の政権変更で高レベル放射性廃棄物処分の戦略が再度見直されている。一方、これと並行して行われていた監視付回収可能貯蔵施設(MRS)の建設計画も進展しなかったため、各電力会社は中間貯蔵所の開設に向けた独自の活動を行っている。
(前回更新:2004年2月)
<図/表>
表1-1 原子力発電所の使用済燃料貯蔵の現状(1/2)
表1-2 原子力発電所の使用済燃料貯蔵の現状(2/2)
表2 米国NRCが認可した使用済燃料貯蔵キャスク
図1 米国における独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)の設置状況の推移
図2 米国における標準的乾式貯蔵方式の概要
図3 米国における独立使用済燃料貯蔵施設(ISFSI)の設置マップ
図4 PFS社中間貯蔵施設の概略図
図5 ホルテック社のHI-STORM貯蔵キャスク
図6 PSF社の参加企業が所有する原子力発電所

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
使用済燃料の貯蔵施設 (04-07-03-15)
使用済燃料の乾式貯蔵に関する研究 (06-01-05-08)
使用済燃料中間貯蔵技術 (06-01-05-14)
アメリカの原子力発電開発 (14-04-01-02)
アメリカの核燃料サイクル (14-04-01-05)
ユッカマウンテン処分場の調査状況(2003年) (14-04-01-14)
高レベル放射性廃棄物対策の現状(MRSの立地可能性調査状況) (14-04-01-18)

<参考文献>
(1)(社)日本原子力産業協会:原子力年鑑2011年版(2010年10月)、p.182-184
(2)(社)日本原子力産業協会:世界の原子力発電開発の動向2011(2011年5月)、p.120-131、p.170-180
(3)米国電力研究所(EPRI):Industry Spent Fuel Storage Handbook,
(2010年7月)
(4)米国原子力規制委員会(NRC):
Storage of Spent Nuclear Fuel(http://www.nrc.gov/waste/spent-fuel-storage.html)、
Spent Fuel Pools(http://www.nrc.gov/waste/spent-fuel-storage/pools.html)、
Dry Spent Fuel Storage Designs(http://www.nrc.gov/waste/spent-fuel-storage/designs.html
及び U.S. Independent Spent Fuel Storage Installations
(5)米国原子力規制委員会(NRC):PFSFの建設・運転のための最終環境影響評価書(EIS)(NUREG-1714, Volume 1)
(6)アイ・イー・エー・ジャパン:米国原子力情報サービス(2000年10月)、p.37-52
(7)米国原子力安全規制委員会(NRC)使用済燃料貯蔵・輸送部:Dry Cask Storage of Nuclear Spent Fuel
JAEA JAEAトップページへ ATOMICA ATOMICAトップページへ