<大項目> 原子力安全研究
<中項目> 原子力施設などの安全研究
<小項目> 核燃料リサイクル施設の安全研究
<タイトル>
使用済燃料中間貯蔵技術 (06-01-05-14)

<概要>
 原子力発電所の運転に伴って発生する使用済燃料は、再処理または直接処分されることとなるが、その方針は世界各国の政策によって異なるものである。
 しかしながら、現時点では再処理も直接処分も計画通りに進んでいるわけではなく、大半の使用済燃料は一時貯蔵されているのが現状である。このような情勢の中、使用済燃料の貯蔵については、世界各国において種々の貯蔵方式が開発・実用化されている。
 一方、国においては、原子力発電所の敷地内貯蔵施設において、水プールおよび金属キャスク貯蔵方式が実用化されており、他の貯蔵方式に関する様々な研究もなされている。また、青森県むつ市においてわが国初の原子力発電所敷地外中間貯蔵施設が2010年度貯蔵開始を目途に進められている。
<更新年月>
2007年09月   

<本文>
1.中間貯蔵施設の必要性
 原子力発電所の運転に伴って発生する使用済燃料は、再処理または直接処分の何れかの対策を施すことになる。世界各国における使用済燃料対策(表1参照)は、各国の政策によって、再処理または直接処分の何れかの方針が決められているが、国によっては、その両方を採用する場合もある。また、現時点では、その処理方針を決定せず、当面の間、使用済燃料を貯蔵しておく国も少なくない。表中の米国は、直接処分としているが、「国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)」構想を提案し、先進的再処理技術開発を促進するとともに、取り出されたプルトニウム等を燃やすための高速炉開発を進めることに方針変換をしている。
 使用済燃料対策方法については、各国の政策により異なるものの、現実的には再処理も直接処分も計画通りに進んでいるわけではなく、大半の使用済燃料は、原子力発電所の敷地内貯蔵施設(燃料プールを含む)または敷地外貯蔵施設において、一時貯蔵されているのが現状である。エネルギー資源の乏しいわが国においては、使用済燃料をリサイクル燃料資源として有効利用することを原子力政策の基本としている。
 わが国の使用済燃料発生量は、建設中の六ヶ所再処理施設の年間処理能力を上回っており、更に、今後の発電量増加に伴って使用済燃料の発生量が増えると見込まれていることから、長期的にみれば貯蔵する使用済燃料の量は増加(図1参照)していくこととなる。
 1998年6月の旧通産省(現経済産業省)総合エネルギー調査会(現総合資源エネルギー調査会電気事業分科会)原子力部会中間報告では、原子力発電所内の使用済燃料貯蔵施設に加えて、原子力発電所外において使用済燃料を中間的に貯蔵する施設(中間貯蔵施設)が2010年までに必要であることが示されている。平成17年10月に閣議決定された原子力政策大綱においても、中間貯蔵施設は、「使用済燃料が再処理されるまでの間の時間的な調整を行うことを可能にするので、核燃料サイクル全体の運営に柔軟性を付与する手段として重要」としている。
2.使用済燃料の貯蔵方式および貯蔵技術の動向
 使用済燃料の貯蔵は、図2に示す通り世界各国において様々な方式が採用されている。貯蔵方式は、湿式貯蔵と乾式貯蔵の2種類に大別され、湿式貯蔵では水プール貯蔵方式、乾式貯蔵では金属キャスク貯蔵方式、コンクリートモジュール方式(コンクリートキャスク貯蔵方式、サイロ貯蔵方式)およびボールト貯蔵方式などがある。
 わが国の使用済燃料貯蔵に関する研究開発は、1982年頃から、乾式キャスク貯蔵方式における確証試験(燃料被覆管の温度解析やクリープ試験等)など様々な研究が行われてきている。コンクリートモジュール方式(主にコンクリートキャスク)の研究開発も進められており、実規模大のコンクリートキャスクを用いた確証試験なども行われた。
 以下に各貯蔵方式の特徴および貯蔵技術の動向等を記述する。
(1)水プール貯蔵方式
 水プール貯蔵方式は、使用済燃料をプール水中に設置されたラック(金属製の枠組み)に収納して貯蔵する方式であり、プール水により使用済燃料の崩壊熱を除去すると共に、使用済燃料からの放射線遮へいする。
 代表的な施設としては、スウェーデンのCLAB中間貯蔵施設(図3参照)があり、水プール貯蔵方式としては、世界最大規模の貯蔵容量を誇る。
 水プール貯蔵方式は除熱性能に優れているため、原子力発電所等における大容量の貯蔵および原子炉から取り出して間もない、発熱量の高い使用済燃料の貯蔵に適している。
 また、水プール貯蔵方式は、国内外の原子力発電所等において長期の運転実績があり、その安全性や貯蔵技術は既に成熟されたものであるものの、施設外の中間貯蔵施設として利用しようとした場合、他の貯蔵方式と比較して、非常用電源や水冷系統の設置等、建設ならびに運転コストが高いものとなっている。
(2)金属キャスク貯蔵方式
 金属キャスク貯蔵方式は、使用済燃料等の輸送に使用してきた衝撃や火災などに耐えうる金属製の容器(キャスク)に収納して貯蔵する方式であり、金属キャスク自身が閉じ込め機能、遮へい機能、臨界防止機能および除熱機能の4つの基本的安全機能(図4参照)を有している。金属キャスクについては、キャスク内へ収納する燃料集合体数を増加させ貯蔵効率を向上させる工夫が行われている。輸送貯蔵を兼用とする場合が多いが、輸送条件を考慮しない貯蔵専用容器とし、キャスク内へ収納する燃料集合体数を増加させている例もある。また、図5に示す米国HI−STAR100キャスクのように、輸送、貯蔵および処分兼用タイプのキャニスタ(MPC:Multi−Purpose Canister)を用いた金属キャスクも実用化されている。
 金属キャスク貯蔵方式は、必要な時期に比較的容易に増設できるため、初期投資の抑制および投資計画の容易さ等のメリットがあることから、1990年以降、欧州圏を中心に採用するサイトが増加してきている。代表的な施設としては、中間貯蔵施設ではドイツのゴアレーベン(図6(1)参照)、スイスのヴューレンリンゲン、敷地内貯蔵施設では、米国のサリー発電所(図6(2)参照)などがある。
 わが国においても既に、2つの原子力発電所において金属キャスクを用いた施設が貯蔵を行っている。東京電力の福島第一原子力発電所では平成7年より9基の金属キャスクが貯蔵(図7(1)参照)されており、日本原子力発電の東海第二発電所では平成13年より貯蔵を開始(図7(2)参照)し、平成20年には使用済燃料を貯蔵中の13基に加え、新たに2基の貯蔵が行われる予定である。福島第一原子力発電所においては、平成12年と平成17年に、貯蔵容器の抜き取り調査が実施され、金属ガスケットなどの密封性および使用済燃料被覆管の健全性に問題がなかったことが確認されている。
 発電所敷地外における貯蔵については、原子炉等規制法が一部改正され、同法律に必要な政令、規則、基準等も公布され、平成12年6月、施行されている。また、原子力安全委員会は、「金属製乾式キャスクを用いる使用済燃料中間貯蔵施設のための安全審査指針」を平成14年10月策定している。
 青森県むつ市は平成12年11月、東京電力に対して使用済燃料中間貯蔵施設の立地可能性調査を要請し、これを受け、東京電力は、平成13年4月から同市において現地調査を開始、平成15年4月には、立地は可能な旨、報告するとともに事業構想を公表している。その後、むつ市並びに青森県の諸検討、諸手続を経て、平成17年10月、青森県、むつ市の立地了承を得ている。東京電力と日本原子力発電は「リサイクル燃料貯蔵株式会社」を同11月設立し、平成19年3月、リサイクル燃料貯蔵株式会社は、国に事業許可申請書を提出し、現在、安全審査が行われている。申請された貯蔵施設(リサイクル燃料備蓄センター)は、最終貯蔵規模5000t(照射前金属ウラン量)のうち、第一期工事分の約3000t(BWR使用済燃料集合体約2600t、PWR使用済燃料集合体約400t)の貯蔵能力を有し、貯蔵に用いる金属キャスクには4つのタイプがあり(図8参照)、最大288基の金属キャスクを貯蔵することとしている(図9参照)。同申請書の工事計画によれば、平成21年4月に工事を開始し、平成22年12月操業を開始することとしている。
(3)コンクリートモジュール方式
 コンクリートモジュール方式には、コンクリートキャスク貯蔵方式およびサイロ貯蔵方式などがあり、両者とも、使用済燃料を収納したキャニスタ(ステンレス鋼製の円筒状の密封容器)をコンクリート製の遮へい構造物内に貯蔵する方式である。
 コンクリートキャスク貯蔵方式の代表的な施設としては、発電所敷地内の貯蔵施設である米国のパリセード(図10参照)、カナダのピッカリングなどがある。米国においてPFS社(Private Fuel Storage)がユタ州スカルバレーに計画中の敷地外の中間貯蔵施設でもコンクリートキャスク貯蔵方式を採用する計画であり、2006年2月建設、操業の許可が得られ、同年5月には最終安全解析書が提出されている。その貯蔵規模は、最大40000tとされている(図11参照)。
 サイロ貯蔵方式の代表的な施設としては、何れも発電所敷地内の貯蔵施設であるが、カナダのジェンテリーPS2(縦型サイロ)、米国のオコニー(横型サイロ)(図12参照)などがある。コンクリートモジュール方式は、北米大陸を中心に実用化が進んでおり、貯蔵建屋を設置しない屋外貯蔵としている例が多い。
 同方式については、軽水炉燃料用として開発された横型サイロのNUHOMS(図13(1)参照)およびコンクリートキャスク貯蔵方式のVSC24(図13(2)参照)以降、更なる燃料の高燃焼度化に対応した貯蔵容器の開発が行われている。また、容器単位の拡張性を持っていることがメリットとして挙げられるが、容器単位であるが故に貯蔵密度が低くなってしまうことから、ボールト貯蔵施設と類似の連結タイプとすることにより、貯蔵密度を高めたタイプの開発が進められている。また、フランスにおいては、より、長期の貯蔵が可能となるよう燃料集合体1体を内部コーティングした小型キャニスタに収納し、更に同キャニスタ複数を大型キャニスタに収納する方式を用いた貯蔵システムの開発・研究が行われている。
 わが国においても、コンクリートキャスク貯蔵方式の採用に向け、平成18年4月、原子力安全・保安院は「コンクリートキャスクを用いる使用済燃料貯蔵施設(中間貯蔵施設)に係る技術要件について」を制定し、また、原子力学会においても民間基準である「使用済燃料中間貯蔵施設用コンクリートキャスクおよびキャニスタ詰替装置の安全設計および検査基準」を平成19年6月制定している。わが国の中間貯蔵施設は、港湾近傍に設置されることとなるため、ステンレス製のキャニスタ表面への海塩粒子付着に起因する応力腐食割れを貯蔵期間中にわたり如何に防止するかが重要になっている。
(4)ボールト貯蔵方式
 ボールト貯蔵方式は、使用済燃料を収納したキャニスタをコンクリート製の貯蔵ピット内で貯蔵する方式である。代表的な施設としては、米国のフォート・セント・ブレイン(図14参照)、ハンガリーのパクシュなどがあり、何れも発電所敷地内の貯蔵施設でパクシュの貯蔵施設は、貯蔵モジュールを数期に分けて増設する方式を採用している。
 ボールト貯蔵施設は、貯蔵効率が良く、大容量の貯蔵に適した方式であるが、その分貯蔵密度が高くなるため、冷却方法に工夫が必要となる。金属キャスクやコンクリートモジュール方式では、自然空冷により使用済燃料からの崩壊熱を除去しているが、ボールト貯蔵方式では自然空冷が主流になりつつあるものの、ドイツやスイスでは、ヒートパイプ方式を採用する強制冷却方式についても開発が進められている。
 今後の方向性としては、MPCを用いたボールト貯蔵施設の開発および冷却機能を維持しつつ、高い貯蔵効率を有する施設の開発などが進められていくものと考えられている。
3.まとめ
 わが国においては、原子力発電所の敷地内施設として、プール貯蔵方式と金属キャスク貯蔵方式が実現している。また、敷地外貯蔵施設として、リサイクル燃料貯蔵株式会社は、金属キャスク貯蔵方式の3000t規模貯蔵施設の事業許可申請を行っており、平成22年に貯蔵を開始したいとしている。また、コンクリートキャスク貯蔵方式についても技術要件等が制定されるなど、実現に向けた環境が整備されつつある。中間貯蔵施設は、使用済燃料の放射能が十分減衰した状態で、密封して静的に貯蔵する施設であり、その安全性は極めて高い。この安全性を維持したうえで、貯蔵効率の向上による建屋建設費等の低減、モジュール化による初期投資の抑制等、貯蔵コストの低減を図りつつ、サイロやボールト方式も視野に入れ、わが国に適した貯蔵技術の改良、適用が望まれる。
(前回更新:2001年10月)
<図/表>
表1 各国の使用済燃料対策
図1 使用済燃料の発生量と再処理工場等への搬出量
図2 世界各国で採用されている貯蔵方式の割合
図3 CLAB中間貯蔵施設(スウェーデン)の概要
図4 使用済燃料貯蔵施設[金属キャスク方式]の安全機能
図5 輸送貯蔵兼用キャスクの構造(U.S.A:HI−STAR100)
図6 中間貯蔵施設の金属キャスクの例
図7 わが国の原子力発電所の金属キャスク貯蔵施設
図8 リサイクル燃料備蓄センターにて使用予定の金属キャスク
図9 リサイクル燃料備蓄センターのイメージ
図10 PFS社中間貯蔵施設のイメージ
図11 パリセード原子力発電所(米国)のコンクリートキャスク
図12 オコニー発電所(米国)の横型サイロ貯蔵施設
図13 横型サイロおよびコンクリートキャスクの概念
図14 フォート・セント・ブレイン原子力発電所(米国)のボールト貯蔵施設

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
使用済燃料の受入、貯蔵 (04-07-02-01)
原子力発電所からの使用済燃料貯蔵の現状と見通し (04-07-03-16)
海外諸国の使用済燃料貯蔵の現状 (04-07-03-17)

<参考文献>
(1)三枝利有、白井孝治:リサイクル燃料資源の安全備蓄、月刊エネルギー、Vol.34、No.10、33−46(2001)
(2)柳下拓也、三枝利有、伊藤千浩、小松進一、吉村英二:諸外国における使用済燃料中間貯蔵技術の動向、日本原子力学会誌、Vol.42、No.11、64−78(2000)
(3)日本原子力産業会議(編):放射性廃棄物管理−日本の技術開発と計画、p.190−202
(4)資源エネルギー庁:総合エネルギー調査会原子力部会中間報告(1998年6月)
(5)原子力委員会:原子力政策大綱(2005年10月)
(6)資源エネルギー庁:使用済燃料貯蔵施設(中間貯蔵施設)に係る技術検討報告書(2000年12月)、p.4−8
(7)資源エネルギー庁:使用済燃料の中間貯蔵について(パンフレット)(1999年6月)
(8)東京電力:リサイクル燃料備蓄センターのあらまし(パンフレット)(2001年11月)
(9)資源エネルギー庁:使用済燃料中間貯蔵施設(5)Q&A(パンフレット)(2006年)
(10)リサイクル燃料貯蔵:リサイクル燃料備蓄センター使用済燃料貯蔵事業許可申請書(2007年3月)
(11)リサイクル燃料貯蔵株式会社ホームページ:http://www.rfsco.co.jp
(12)Private Fuel Storage,LLC:Response to Questions about the Operation of the Private Fuel Storage Facility(February 2001)
(13)Nuclear Energy Research Initiative:
(14)SKB R&D−PROGRAMME 89(Handling and final disposal of nuclear waste)
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