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<概要>
 インドは、世界で6番目に大きいエネルギー市場であるが、国内のエネルギー生産は少なく、世界のエネルギー生産中、インドのシェアは2.3%にすぎない。1次エネルギー供給は480Mtoe、そのうち可燃性再生可能エネルギーと廃棄物エネルギーが41.2%を占め、石炭は33%のシェアで、商用エネルギー源としては第1位を占めている。インドには214Btの無煙炭資源があり、確認埋蔵量は84Btで、他に28Btの褐炭資源がある。生産される石炭の大部分は、一般炭で、その燃焼特性は高い灰分と水分にもかかわらず、硫黄(<0.6%)、塩素(<0.1%)と有毒な微量元素の濃度が低い等有利な点はあるが、品質は悪い。石炭需要は、1999〜2000年317Mtであった。インド政策委員会によれば、2002〜2003年には513Mtに、2006〜2007年には716Mtに、2009〜2010年には815Mtに増加すると予測されている。石炭産業の自由化が始まって民間投資もできるようになった。
<更新年月>
2004年08月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
1.インドのエネルギー概要
 インドは、アメリカ合衆国、中国、ロシア、日本、ドイツに次ぐ世界で6番目に大きいエネルギー市場である。経済と人口の大きさと比較して、国内のエネルギー生産は少ない。世界のエネルギー生産中、インドのシェアは米国21%、ヨーロッパ12%と比較して、2.3%にすぎない。英国による植民地支配下で、エネルギーの基盤はあまり開発されず、経済活動は主として非商業的なエネルギー源に依存していた。輸送と農業は、人力及び家畜の力を使ってきた。
 今日、商用エネルギー需要は、人口・経済成長、そして急速な都市化とともに急上昇してきた(図1)。発電は、1947年の4.1TWhから1998年に442TWhに上昇した。
 50万以上の町区(全体の90%を占める)は、現在電力網に接続されている。しかし、一人当たりの電力消費は、1950年の15.6kWhと比較して、1998年416kWhと世界で最も低い。インド政府の長期目標は、エネルギー供給を10億人以上の住民(その36%は貧困層)に確保することにある。
 1999年、1次エネルギー供給(TPES)は480Mtoe(石油換算100万トン)、そのうち、可燃性再生可能エネルギーと廃棄物エネルギー(CRW)が約198Mtoe、41.2%であった。可燃性再生可能と廃棄物エネルギーを含めて、石炭は、最も重要なエネルギー源で、33%のシェアであり、20%のシェアの石油と石油製品がこれに続く。図2に示すように、石炭供給の90%以上は国内生産であるのに、原油と石油製品供給の半分以上は輸入されている。国産エネルギー源はエネルギー供給の80%になるが、その約半分が可燃性再生可能と廃棄物エネルギーである。非商業的な性質とデータの信頼性に関連した問題のため、可燃性再生可能と廃棄物エネルギーを除くと、1999年、石炭は全1次商用エネルギーの56%のシェアを持つ最も重要なエネルギー源である(図3)。
・天然ガス資源量は560Mtoe以上であると見積もられており、そのほとんどがムンバイ(マハラシュトラ州)の沖合にある。国有会社は、1999年に天然ガス20.7Mtoeを生産した。しかし、パイプラインと流通システムは不適切で、生産されたガスの約5分の1を無駄に燃やしている。天然ガス消費の約3分の2が、肥料と他の石油化学産業で使われ、残る3分の1は発電に使われる。
・現在の原油資源量は760Mtoe以上である。原油と石油製品の生産は、1999年に33.2Mtoeになった。原油の46.4Mtoeと石油製品の15.7Mtoeが輸入された。国内の原油の約2/3は、ムンバイの沖合で生産される。原油回収率は世界の平均より低く、約30%である。
・1999年に、水力は約81.4TWhの電力で、全体の18%強を生産した。北部及びヒマラヤの地域は、水力開発の広いサイトを提供している。他にも適当なサイトが北東部地域にあるが、開発は遅い。南部では、雨による強い季節変動を持つ大きい資源があり、発電に使われている。
・10基の原子炉(主に加圧水型原子炉)は2225MWの容量で運転されており、8基の追加が計画されている。全発電量中の原子力のシェアは、最近の20年間、約2.5%で変わらない。
・再生可能エネルギー
 インドの再生可能エネルギープログラムは主要な再生可能エネルギー源をカバーしている。バイオガス、バイオマス、太陽エネルギー、風力エネルギー、小さい水力及び他の未来技術。非在来/再生可能エネルギー源は田園の貧しい家庭のエネルギーとして使われている。1次エネルギー供給の中で、バイオマスのシェアは、1950年代の70%から今日30%へと減少して、商用の資源による置換が増加している。
2.石炭資源
 インドの地質調査は、214Bt(1Bt:10億t)の無煙炭資源があると見積もっている。石炭資源は、1200mの深さにある。確認埋蔵量84Bt強は世界の確認埋蔵量の7%になる。確認埋蔵量は、現在の生産水準で約275年の供給に相当する。インドには、また、28Btの褐炭資源がある。
 東部と中心部に無煙炭の27の主要鉱区がある。主要鉱区を表1に、インドの地図を図7に示す。確認埋蔵量84Btの約85%は100m以下の深さにあるので、露天掘りができる。
 褐炭の確認埋蔵区は、南部のタミル・ナードゥ州等、西部のグジャラート州とラジャスターン州、北部のジャンム・カシミール州にある。図4に、無煙炭と褐炭の生産量の推移を示す。
(1)石炭資源の品質
 インド石炭は、南半球ゴンドワナ大陸石炭の典型的な品質を示している。石炭は、鉱物の堆積物の結合した薄層の中にある。洗炭は難しいが、効果的な工業的使用のためには必要である。原料炭の灰分を減少させるために、洗炭による無用の岩石の除去は有益なプロセスである。全確認埋蔵量の79%は蒸気用石炭(一般炭)で、大部分の一般炭は低品質である。 20%がコークス用炭(粘結炭)の品位で、第1級の品位の粘結炭は6%にすぎない。大部分の粘結炭は、ビハール州ジャリア(Jharia)で産出する。銑鉄の生産は、エネルギーを消費するスラグの形成を最小にするため、低灰分コークスを必要とする。良質の製錬用コークスは、一般に低灰分粘結炭からのみ作られる。水分は、他の石炭構成要素の熱量と濃度に影響を及ぼす。
 インド石炭(受入時)の水分は7%〜13%の間で変動する。空気乾燥(air−dry)したインドの粘結炭の水分は、固有の水分だけを含み、0.7%〜2%の範囲にある。東南アジアでは、空気乾燥の水分水準が、一般炭にもしばしば使われる。一般炭の品質分類を表2に示す。一般に使われる無選別石炭は、以下の特徴を持つ。
 80%以上の石炭は、低い鉄分と無視できる程度の有毒な微量元素を伴い、30%〜50%の灰分を持つ。水分は、4%〜7%の間にある。水分は、モンスーン月には高い値になる傾向がある。硫黄分は、低く0.2%〜0.7%。総発熱量は、3000kcal/kg〜5000kcal/kgの間にある。揮発性物質の含量は、18%〜25%の間にある。
 インドの石炭は良い化学反応性を持つので、高い灰分と水分にもかかわらず有利である。他の有利な特徴は、硫黄(<0.6%)、塩素(<0.1%)と有毒な微量元素の濃度が低いこと、高い灰融解温度(>1100℃)及び、塩基/酸の比率(0.2−0.3)である。低い硫黄分は、ブレンドで役に立つ。
 これらの利点にもかかわらず、インドの無煙炭は依然として、その品質は低い。一般炭の高い灰分は、発電所の技術的な困難とコスト高に結びつく。過剰な灰を捨てる必要、ボイラー壁のスラグ形成、ボイラー上部構造及びエコノマイザーの焼きつきである。これらの問題は、熱損失を引き起こして、全システムの破滅的な破損を引き起こすことがある。また、多くの微粒子放出対応、沈殿剤、ごみ置き場等の高い運営経費を必要とする。無選別石炭の品質上の欠点は、石粒、頁岩と鉱業プロセスから時折混入する金属の混在物の存在である。これらの不利な条件を減らし、製品を改善することを石炭生産者は殆どやっていない。石炭消費者は、ここ数年間、石炭の品質悪化を経験している。定常的な品質悪化、特に低い発熱量、増加した灰分のため、インドの石炭火力発電所の稼働率は65%にすぎない。
(2)石炭の需要
 石炭需要は、1999〜2000年の間、317Mtであった。消費は、この20年で着実に上がっていてインド政策委員会によれば、2002〜2003年には513Mtに、2006〜2007年には716Mtに、2009〜2010年には、815Mtに増加すると予測されている。次の10年間に、少し低い6%〜7%の年率で増加するとして、2009〜2010年に約690Mtとする評価もある。
 最大の消費者は、電力部門(67%)、鉄鋼産業(13%)、石炭生産者自身とセメント産業(4%)である。その他の消費者は、繊維、肥料、煉瓦産業である。2000年に粘結炭15Mtがオーストラリアから、9Mtが南アフリカから輸入されている。
・電力生産
 インドの電力の75%は石炭から生産されており、国産炭の70%が発電に使われている。1990〜と2000−2001年間で、全発電量は290TWhから500TWh強まで着実に上昇した。同じ期間に、全発電設備容量は102GWに上昇した。火力の容量は全体の約71%、水力25%、原子力3%、風力1%である。石炭火力発電所は、全体の約60%の容量である。1999年に発電に使用された燃料のシェアを、IEAの2020年度予測と共に図5に示す。発電量中に占める石炭のシェアは、発電設備容量に占めるシェアより大きい。
 電力供給は、都市化と工業化に起因する需要増大に応ずることができない。発電量は年率5%〜9%で上昇したが、需要は供給を上回って、急速に増加すると予測されている(表3)。
 無選別石炭の広範囲にわたる使用のため、インドの発電所の多くは低い稼働率で、国際的基準85%〜90%と比較すると、平均66%と低い。低い発電所稼働率の主な原因は、一般炭の変動する品質と平均約40%という高い灰分である。稼働率の改善は、洗炭、プラント管理、石炭品質に合った燃焼条件の管理によって達成できる。一部の操業者は、若干のプロセス部品を近代化することによって本来のプラント効率を維持するという専門知識が不足している。
・粘結炭
 粘結炭は銑鉄・鋳造部門、鉄合金・化学製品部門、統合鋼鉄プラント部門及び2次鋼鉄部門の3部門で消費されている(図6)。これらの部門全体の年間需要は、約19.5Mtである。しかも、粘結炭の需要は3つの主要部門の中でも、また、異なる地域の中でも平等に分配されてはいない。
 他の産業では、肥料生産は1995年4.5Mtを消費した。電気とプロセス蒸気を生成するための自家発電所を持つ一部の製紙業は、毎年500万トンの石炭を消費する。繊維産業は、電力と蒸気を生成するため約500万トンの石炭を消費する。これらの産業の石炭消費は12%に達するが、過去20年間増加しなかった。
 2007年までに116GWの石炭火力発電の追加が計画されているので、全体の石炭需要は2007年まで年率7%で上昇すると政府筋は予測する。もし、成長がこの規模で進むならば2007年には133Mtの供給不足が予測される
(3)規制と構造改革
 石炭産業の自由化は始まったが、発電所と鋼の生産者のような中心市場への石炭の流通は、石炭鉱業省によって管理されるままである。民間の投資は、現在特定の消費者に供給している「専属(captive)」鉱山で許される。「専属」または専用の採炭は、主な石炭ユーザーを供給の特定源に結びつける、現在発電業、鉄鋼製造業、セメント・プラントと洗炭場を含む民間−公共部門に対して可能となっている。この「石炭連結(Coal linkage)」は、義務的な、法的強制力のある契約によって支配される。最初の自由化期間に、政府は石炭ブロックを「専属」採鉱に割り当てるために石炭鉱業省の下に適格審査委員会を指名した。18Btの全石炭埋蔵地で、50ブロックが確認され、いくつかの会社はそれらを採鉱する許可を与えられた。
 大量の設備投資が新しい鉱山を開くに必要な所で、民間企業は既存の石炭会社とともに合弁事業を始めることができる。ほとんどの場合、民間の投資家は、利用地の近辺の石炭を採炭し、輸送コストを下げることができる。外国の投資は、ケースバイケースで許される。
 二酸化硫黄または窒素酸化物排出に対する制限はない、しかし、政府は対策の一覧を用意し、温室効果ガス及び微粒子と同様にこれらの排出を制限するようにした。
 図7にインドの地図を示す。
<図/表>
表1 無煙炭の主要な鉱区
表1  無煙炭の主要な鉱区
表2 インドの一般炭の品質分類
表2  インドの一般炭の品質分類
表3 インドの発電量と発電設備容量
表3  インドの発電量と発電設備容量
図1 1次エネルギー供給、発電量、GDPの推移
図1  1次エネルギー供給、発電量、GDPの推移
図2 エネルギー源の輸入割合(1999年)
図2  エネルギー源の輸入割合(1999年)
図3 商用エネルギー供給中の各燃料のシェア
図3  商用エネルギー供給中の各燃料のシェア
図4 無煙炭と褐炭の生産量の推移
図4  無煙炭と褐炭の生産量の推移
図5 発電に使用される燃料のシェア
図5  発電に使用される燃料のシェア
図6 粘結炭需要−主要購買部門
図6  粘結炭需要−主要購買部門
図7 インドの地図(州名)
図7  インドの地図(州名)

<関連タイトル>
インドの国情およびエネルギー政策 (14-02-11-01)

<参考文献>
(1)OECD/IEA Home:energy information center、coal、Coal in the Energy Supply of India
(2)資源エネルギー庁 資源・燃料部(監修):コール・ノート2003年版 資源産業新聞社(2002年3月),p.232−233,p.251
(3)小竹 昇:エネルギー源の主役石炭生産は世界第3位、エネルギーレビュー2002、3月号(2002年2月20日),p.16−19
(4)OECD/IEA Home:Publications and Papers、Free Publications Database、Electricity in India Providing Power for the Millions
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