<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> インド
<タイトル>
インドの国情およびエネルギー政策 (14-02-11-01)

<概要>
 インドは、長期にわたる英国の統治を離れて1947年に独立した。以降、国民会議派による単独政権が続いたが、1990年代に入って中道改革派の「ジャナタ・ダル(人民の党)」、右派・ヒンズー教至上主義の「インド人民党」を加え、政治は三極化した。1998年の総選挙では、インド人民党によるバジパイ連立政権が成立。2004年5月の総選挙では、故ラジブ・ガンジー元首相のソニア夫人率いる国民会議派が第1党に復帰、2014年5月の総選挙ではインド人民党政権であるナレンドラ・モディ政権が誕生している。
 インド経済は、1990年代の経済自由化政策への転換により、年率3%程度の低成長から脱却して以降、情報技術等サービス産業の主導の下に年率8%の高成長を実現。台頭するインド経済が東アジア及び世界に及ぼす影響は急速に大きくなっている。今後、電力、道路、鉄道、通信、港湾等のインフラ整備が必要とされている。
 エネルギー資源としては、豊富な埋蔵量を有する石炭と天然ガスが国内資源として利用されてきた。石油は急速な内需の伸びに対して国内生産が追いつかず、輸入依存度が高い。しかし、近年石炭と天然ガス資源に関しても、国内生産が需要に追いつかず、慢性的な電力不足に陥っている。化石燃料資源の探査強化、生産性の向上のほか、地球温暖化防止政策を考慮しながら、水力、原子力及び再生可能エネルギーの利用促進を図っている。
<更新年月>
2015年01月   

<本文>
1.国情
 インドは南アジアに位置し、インド亜大陸の大部分を占める連邦共和国である。パキスタン、中華人民共和国、ネパール、ブータン、バングラデシュ、ミャンマー、スリランカ、モルディブ、インドネシアと国境を接する。インドの人口は、12億4,334万(IMF - World Economic Outlook Databases(2014年10月))、2021年には現在世界第1位の中国を抜いて14億に達し、2060年代初めに17億まで増加すると予想されている。多様な人種、民族、言語、宗教によって構成されるが、ヒンズー教徒が最も多い。ヒンズー教にまつわる身分差別カースト制度の影響は今でも残っており、クラス(階層)や貧富の差が非常に大きい。インドは、多民族国家の困難さを抱えながらも、議会制民主主義を堅持している。
 インドは29の州と7つの連邦政府直轄地からなる連邦国家で、総面積は328万7,469km2(パキスタン・中国との係争地を含む)である(図1参照)。1947年に英国の統治を離れて独立し、1950年制定のインド憲法によって議会制民主主義を政体とした。この独立に際して、それまでのインドは、インドとパキスタンに分裂、また、東パキスタンがバングラデシュとして独立した。
1.1 政治
 中央政府の行政府は、大統領、副大統領及び首相から構成される閣僚会議の下で運営されている。連邦議会は2院制で、上院は大統領が指名する議員と州議会が間接選挙で選出する議員で構成され、下院は国民の直接選挙により選出される。国家元首である大統領は上下両院及び州議会により選出され、大統領は下院の多数党の代表者を、行政府の長である首相として任命する。
 インドは独立から1977年に至るまで、ネルーとインディラ・ガンジー父娘の「国民会議派」による単独政権が続いたが、その後「反インディラ」派が台頭。中道改革派の「ジャナタ・ダル(人民の党)」と、右翼・ヒンズー教至上主義の「インド人民党」を加え、政治は三極化した。
 1991年5月のラジブ・ガンジー前首相の暗殺、1991年12月のヒンズー教聖地のモスク破壊等、インド各地で暴動が発生したが、当時の国民会議派ラオ政権はこれを乗り切り、小康状態を回復した。1998年2月から3月に実施された総選挙で、インド人民党が右派・バジパイ連立政権を樹立した。バジパイ政権は保守中道連合「国民民主同盟」を結成して不穏なヒンズー至上主義を抱える右派長期政権を確立した。2004年5月の総選挙で、故ラジブ・ガンジー元首相のソニア夫人率いる国民会議派が第1党に復帰、新与党連合「統一進歩同盟」を結成し、マンモハン・シン首相が誕生した。なお、2014年5月の総選挙では10年ぶりにインド人民党が圧勝してナレンドラ・モディ政権が誕生している。
 インドの外交面では、中国、パキスタンなどの近隣諸国との関係を改善し、さらにASEAN諸国や中東諸国との関係、米・露・日・EUとの関係を強化している。1974年5月及び1998年5月の核実験の影響で悪化していた欧米諸国とは、2008年に「原子力供給国グループ(NSG)ガイドライン」が修正され、2008年10月に米印原子力協定が締結されたことで改善されている。原子力協定はフランス、カザフスタン、英国、カナダとも締結され、インド政府は原子力発電開発を積極的に拡大する方針である。また、ロシアとは1990年代から関係を継続しており、2010年3月には原子力協定に署名、2014年12月には、「原子力平和利用分野における協力強化のための戦略的ビジョン」を公表し、今後20年間にクダンクラム、及びその他のサイトで少なくとも12基建設するなど、大規模な協力強化・拡大構想が維持されている。
 なお、インドは「核不拡散条約(NPT)は核保有国の特権を保護する不平等条約である」として、NPTに加盟していない。ただし、包括的核実験禁止条約(CTBT)については、CTBT発効まで核実験を行わない(核実験モラトリアムの継続)としている。また、民生用原子力施設について国際原子力機関(IAEA)と保障措置協定を締結し、保障措置の下に置かれる施設に関する追加議定書も2014年7月に批准・発効されている。濃縮・再処理等の技術を有していない国に対する技術移転を控え、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の締結に向けて他の国々と協力する用意があると宣言し、国連総会において核廃絶に向けた核兵器禁止条約交渉へのコミットメントを表明している。
1.2 経済
 インドでは長らく非効率経営の国営企業の温存、高率関税の障壁、外貨導入の規制などによって経済の高コスト体質が続いたため、1947年の独立後、実質GDP成長率が3〜4%程度の時期が続いた。しかし、1991年に当時のラオ政権がルピー平価を1割切り下げ、貿易・産業規制の自由化、国営独占事業の開放(鉄鋼、石油、重機械、通信、電力など)、赤字財政の再建、さまざまな補助金の廃止、外国投資の思い切った自由化などを相次いで実施した。以降、年率6%平均の経済成長を実現したほか、1990年代中盤には3年連続で年率7%を超える高い経済成長を達成した。その後、経済成長率は2005年に9.5%、2008年以降の世界的な景気後退の中でも2010年には8.9%を達成したが、欧州債務危機や過度のインフレに対応するための利上げ等の要因により、経済は減速傾向にある。2012年以降4.5%〜5.0%台で推移している。表1にインドの主要経済指標を示す。インドは人口の約7割が農村部に居住する典型的な農業国家であるが、農業生産性が高まり、農村部の購買力が高まったこと、さらに余剰人口が都市部へ流入し、製造業やサービス業、IT産業なども発展している。現在も労働人口の割合が増加しつつあることから、今後の消費拡大が見込まれている。
2.エネルギー事情
2.1 エネルギー需給の動向
 1990年代に入って本格的な経済自由化政策が導入されると、インドでは産業が活発化し、景気拡大が加速化した。こうした経済動向の下で、国民の生活水準が高まり、一次エネルギー消費量も増大した(表2参照)。一次エネルギーの消費量は1990年の1.81億TOE(石油換算トン)から年平均5.3%の割合で増加し、2005年には3.67億TOE、2010年には5.1億TOEに達した。一次エネルギー消費量は2005年時点で、米国、中国、ロシア、日本に次ぐ世界第5位であったが、2010年には中国、米国、ロシアに次いで世界第4位となった。今後インフラの整備に加え、運輸部門で自動車の大衆化が急速に進むと予想され、発電用、輸送用燃料としてのエネルギー消費量の拡大が見込まれている。
 一方、エネルギー源のうち、豊富な埋蔵量を有する石炭と天然ガスは国内生産で賄われており、石油は急速な内需の伸びに対して国内生産が追いつかず、輸入依存度が高い。インドの石油消費は1900年の5,790万トンから2013年にはほぼ3倍の1億7,525万トンに達し、インドは中国、インドネシアに次ぐアジア第3位の産油国であるが、生産量は4,200万トン前後でほぼ横ばい状態となっているため、インドの純輸入は1990年の2,377万トンから2013年には1億3,329万トンへと5.6倍に増大した。インドは地理的関係から中東産油国と密接な経済関係を有しており、石油輸入においてもサウジアラビア、アラブ首長国連邦、クウェートなど中東産油国に主に依存している。国内にはおよそ30の原油ターミナルが、多くは輸入原油を受入れるため、北西部沿岸に位置している。これらの基地及び産油地から北西部と北東部の大型製油所まで、複数の原油パイプラインが走っている(図2参照)。なお、石油生産と精製事業はインド国営石油(IOC)と石油天然ガス開発公社(ONGC)により管理運用されている。
 また、天然ガスに関しては、2014年時点の埋蔵量は1.3兆m3で、その66%がオフショアに、残り34%が内陸部に存在する。2002年にインド東部沿岸沖Krishna-Godavari海盆で大型ガス田が発見されたが、近年生産量は減少傾向にある。インドは国内生産量にあわせて消費量を制限していたが、2004年1月にペトロネットLNGのダヘジ輸入基地を開設、カタールからのLNG輸入を開始した。天然ガスは石炭・石油の代替燃料として、2000年〜2012年まで年率8%で消費量が増加、その約30%は輸入LNGに依存している。インドは2013年には日本、韓国、中国に次ぐ世界第4位のLNG輸入国になっている。また、バイオエネルギー、水力などの国内資源も存在するが、急速に増大するエネルギー需要を賄うには不十分であるため、エネルギー供給は輸入に大きく依存している。2011年のエネルギー自給率は72%で、年々低下傾向を強めている。2012年時点の一次エネルギー供給量は7億8,813万トン(石油換算)であり、電源別供給量の構成は石炭が44.9%、バイオ燃料・廃棄物23.5%、石油22.5%、天然ガス6.2%、水力1.4%、原子力1.1%、風力・太陽光等再生可能エネルギー0.39%である(図3参照)。
(1)石炭資源
 2013年のインドの石炭生産量は約6億513万トンで、中国、米国に次いで世界第3位、世界全体の生産量の約7.86%を占める。BP(英国石油)統計によるとインドの石炭確定埋蔵量は606億トン(うち褐炭は45億トン)であり、世界第5位の埋蔵量を有する(インド石炭省による確定埋蔵量1,200億トン)。炭鉱は中央部から東部にかけて複数に広がり、9割以上が露天採掘で、国営企業であるCoal Indiaが傘下企業を通じて生産を行っている。Coal Indiaグループの生産量は合計でインド全体の年間石炭生産量の約85%を占めている。中でもマディヤ・プラデーシュ州(Madhya Pradesh)及びチャッティースガル州(Chhattisgarh)にわたり炭鉱を所有するSouth Eastern Coalfields(SECL)社とオリッサ州(Orissa)のMahanadi Coalfields(MCL)社が、Coal India全体の半分近い約2億トンを生産する。州別では、Jharkhand、Chhattisgarh、Odisha州に石炭の埋蔵量が、Tamil Nadu州に褐炭の埋蔵量が多い(図4参照)。
(2)水力
 技術的に開発可能な包蔵水力は6,600億kWhと見込まれ、そのうち11%程度が開発されている。水力資源の多くはインド北部及び北東部のヒマラヤ渓谷にあり、需要地から離れていることが開発を遅らせている。
2.2 エネルギー政策
 インドは初の包括的なエネルギー政策として、2006年8月に総合エネルギー政策(Integrated Energy Policy 2006)を発表した。政策はエネルギー分野における長期目標を統括して提示しており、資源の持続可能性、エネルギーの使用と供給、安全保障、アクセシビリティーと可用性、価格設定、効率性、環境問題等の項目に言及している。総合エネルギー政策では、2032年までの25年間で平均8%以上の経済成長を達成し、インド全体の発電設備容量を2006年の160GWから、2032年までに約5倍の800GWまで拡大させる方針で、全国の電力需要を満たす目標を設定している。
 なお、インド連邦政府のエネルギー行政は、電力省、石炭省、石油・天然ガス省、新・再生可能エネルギー省、原子力庁の5分野に分かれ、それぞれの省庁が5カ年のエネルギー計画を策定し、事務局である計画委員会が実行している。電力部門に関しては、憲法によって中央政府と州政府が共同で管轄している。中央政府は主に複数の州にまたがる発電・送電事業を管轄し、州政府は州内に供給する発電・送電及び配電事業をそれぞれ管轄する。大型火力・水力、原子力の開発は連邦政府が、中小規模クラスの火力・水力の電源開発は州政府が担当する。5カ年計画の開始は1950年代に遡り、パキスタン戦争や天災等で一時中断されたものの継続して策定され、長期的なインドの戦略目標となっている。
 現在、世界経済の低調を踏まえた第12次5カ年計画(2012年4月〜2017年3月)が進行している。計画では経済成長率を年平均8.2%、最終9%まで引上げる方針である。電力部門ではエネルギー需要が年率6〜7%で上昇すると見込んでおり、発電コストは減少するものの、エネルギー輸入依存度は第11次計画の76%から80%に上昇すると予想している。原油輸入が経常収支悪化を招いていることから、政府は石油、天然ガスの国内探査や生産の増強に加え、天然ガスや石炭の輸入増大を図っている。発電では、大規模石炭火力の建設に加えて、原子力開発、再生可能エネルギー(再エネ)開発も推進する方針である。第12次計画では、インフラ整備への投資額56兆ルピー(1ルピー=1.8円)のうち、電力・再エネ部門には約3分の1の18兆ルピーを投じ、5年間で石炭火力6,928万kW、再エネ3,000万kW、原子力530万kWなど合計1億2,000万kWの電源を開発する計画である。
2.3 地球温暖化防止政策の動向
 インドの2010年の温室効果ガス(GHG)排出量は17.4億トンで、世界のGHG全排出量の5.6%を占め、世界第3位である。2035年には、排出量が2倍以上に増大すると予想されているが、インドは人口が非常に多いため、一人当たりでみた排出量は1.4トン程度である。BRICs諸国の中では最も少なく、世界平均の3分の1の水準に留まる。インドは地球温暖化防止政策に関し、先進国と途上国の「共通だが差異ある責任」として、2020年までに2005年比で20〜25%削減するという自主目標を表明している。2012年に新・再生可能エネルギー省が発表した5カ年計画では、風力15GW、太陽光10GW、バイオマス及びバイオ燃料2.7GW、小水力発電2.1GWの発電設備を増設して、2012年時点の23GWから、5年間で30GW増やす計画で整備を進めている。
(前回更新:2006年11月)
<図/表>
表1 インドの主要経済指標
表2 インドにおける一次エネルギー需給バランス
図1 インドの行政区分
図2 インドの主要原油・天然ガスパイプラインマップ
図3 インドにおける一次エネルギー供給量の推移
図4 インドの石炭資源マップ

・図表を一括してダウンロードする場合は ここをクリックして下さい。


<関連タイトル>
インドの原子力開発と原子力施設 (14-02-11-02)
インドの電力事情 (14-02-11-03)
インドの石炭政策 (14-02-11-04)

<参考文献>
(1)外務省・各国・地域情勢インド:http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/india/
(2)(社)海外電力調査会(編):海外諸国の電気事業 第1編 追補版2、(2011年12月)及び 第1編(2003年3月)、インド
(3)BP統計ホームページ:BP-Statistical_Review_of_world_energy_2014_workbook.xlsx,

(4)日本貿易振興機構(JETRO):インドのデータ基本的経済指標、

(5)日本エネルギー経済研究所:インドの電力政策の課題:構造的電力不足と最近の大停電、2012年9月、http://eneken.ieej.or.jp/data/4523.pdf
(6)Maps of India.com:India Coal Reserves Map、
など
(7)国際エネルギー機関(IEA):Total primary energy supply India、
http://www.iea.org/stats/WebGraphs/INDIA5.pdf、及びIndicators、Balancesなど
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