<大項目> 海外情勢
<中項目> アジア各国
<小項目> インド
<タイトル>
インドの電力事情 (14-02-11-03)

<概要>
 近年、インドの経済成長は著しく、平均8%以上のGDP成長率を背景に、一次エネルギー消費量は石油換算524.2百万トン(2010年)、世界の一次エネルギー消費量の4.4%を占める。この需要に見合う安定的なエネルギー供給を継続的に行うエネルギーセキュリティの強化が重要な課題となっている。2006年に発表された総合エネルギー政策(Integrated Energy Policy)によれば、2032年までの25年にわたり平均8%以上の経済成長を達成し、国民すべての基本的エネルギー需要を満たすためには、発電能力と電力供給を2003年のレベルから5〜6倍にする必要があるとした。
 2009-2010年現在、インドの発電設備容量は159,398MWを有しているが、供給能力が需要の拡大に追いついておらず、深刻な電力不足を引き起こしており、これが経済成長への足枷となっている。
 インドは、農村地帯を中心に、電化率も低く、多くの貧困層を抱えている。計画経済体制への移行を開始した1951年以来、電力部門の改革、電源開発、送電網の整備を積極的に行ってきたが、送配電損失が大きいことや消費部門毎の回収できない内部相互助成金の問題など、課題は大きい。
<更新年月>
2011年12月   

<本文>
1.インドの電力需要
 インドは中国に次ぐ世界第二位の人口約12億人を抱え、また、世界第7位の国土面積(日本の約9倍)を有する。近年、インドの経済成長は著しく平均8%以上のGDP成長率を背景に一次エネルギー消費量では石油換算524.2百万トン(2010年)、世界の一次エネルギー消費量の4.4%を占め、日本を抜いて中国、米国、ロシアに次ぐ世界第4位の規模に達した。このような早いペースで増加する経済成長を支える、需要に見合う安定的なエネルギー供給を継続的に行うエネルギーセキュリティの強化が重要な課題となっている。表1にインドの発電設備容量の推移を示す。
 2006年に発表された総合エネルギー政策(Integrated Energy Policy)によれば、2032年までの25年にわたって平均8%以上の経済成長を達成し、国民すべての基本的エネルギー需要を満たすためには発電能力と電力供給を2003年のレベルから5〜6倍にする必要があるとした。2009-2010年現在、インドの発電設備容量は159,398MWを有しているが、供給能力が需要の拡大に追いついておらず、更なる経済成長率を達成する上での障害となっている。電力需要と供給量のギャップは1998-1999年で263億kWh、不足率5.9%であったが、2009-2010年には839億kWh、不足率10.1%まで上昇した(図1参照)。ピーク時出力電力も12.7%不足しており、需給ギャップは1997年以降、徐々に拡大する傾向である(図2参照)。
 インドはこのような深刻な電力不足に対応するため、第11次5ヵ年計画(2007年4月〜2012年3月)を推進中であり、GDP成長率年平均8〜9%と設定して「より早い成長(Faster
Growth)」と「包括的な成長(Inclusive Growth)」を目標に電源開発を進めている。
 また、ヒマラヤ山脈の豊富な水資源に恵まれた隣国ブータンやネパールの電源開発プロジェクトにも積極的に参加し、国際連系送電網の整備を進めながら、電力の輸入を画策している。図3に400KV以上の高電圧送電網の現状と計画を示す。
 一方、電気を使うことが出来る村落は未だインド全体の85%に過ぎない(2010年9月現在)。2009年の一人当たり消費電力量は597kWhと、世界平均の2,730 kWhより遥かに低く、日本の約7.6%、中国の約4の1程度である。また、ムンバイなど工業都市の集まる西部地域を中心に各地で停電が頻発し、電力供給が不安定な状況にある。
2.インドの電力供給
(1)電力供給設備
 2011年10月現在、インドの発電設備容量は1億8,269万kW(182,690MW)で、その構成比率は石炭が54.8%、天然ガスが9.7%、石油が0.7%、原子力が2.6%、水力が21.2%、再生可能エネルギーが11.0%である(表2参照)。インド電力省の国家電力政策においては2012年までに発電設備容量を2億kWに引き上げ、供給予備力を5%以上、一人当たりの電力利用可能電力量を年間1,000kWh以上にすることを目標に掲げている。インドの発電設備は国内の豊富な石炭資源を利用するもので、2030年までの発電所建設計画も石炭火力を中心にすえている。インドの石炭埋蔵量は6,060億トンと世界全体の約10%を占め、米国、ロシア、中国、オーストラリアに次いで第5位であるが(BP統計2011年版)、灰分含有率が40%程度で品質が落ち、炭鉱の生産効率や輸送の改善が遅れているため、国内炭より安価で高品質な海外炭の輸入が拡大する傾向にある。一方、近年の発電設備の伸び率が大きいのは再生可能エネルギーで、2001年3月末の1.2%が2011年10月末で11%に上昇。ガス火力の比率も年々伸びており、結果として、1990年前後に65%程度であった石炭火力の比率が55%にまで低下してきた。
(2)電気事業体制
 インドの電気事業の担い手は、中央政府(Central Electricity Authority:CSU)と州(State Electricity Board:SEB)の共同管轄事項であり、それに民間電気事業者(IPP)が加わる。役割分担としては、中央政府及び州の政府機関が政策立案、事業規制、監督を行い、中央と州、民間事業者がそれぞれの電気事業を営んでいる(図4参照)。
(3)電力損失率
 電力供給能力と送配電能力の強化として、高効率電力供給施設(発電所、送配電網)の整備、既存施設の効率改善、送配電ロスの低減が目標になっている。インドの送配電損失率は30%以上で非常に大きい(日本:4.7%、中国:約7%、ロシア約12%)。徐々に改善する方向で、インド全体の送電ロスは2002-2003年に32.54%、510,343.93GWhであったが、2005-2006年には30.42%、591,985.26GWh、2008-2009年には25.47%、707,885.68GWhになった。2005年の地域別データでは、北東部が最も高く(43.40%)、次いで北部(35.40%)、東部(32.25%)、西部(31.60%)、南部(22.11%)の順であり、中にはデリーのように45.82%(2002-2003年)から22.22%まで改善された地域もある。
(4)電力価格と助成金
 電力庁の最終使用電気料金は、顧客の部門によって大きく変動する。主な部門は、家庭、農業、商業活動、産業及び鉄道である。家庭と農業部門の電力料金は、内部相互助成金(cross-subsidies)があるため、実際の供給コストより低いが、その損失補てんのため、産業部門の料金は割高に設定されている。このような電力価格決定手法は、インドの発電電力量の約50%、販売電力量の約90%を担う州電力(SEB)に巨額の財政赤字を生み、海外からの民間投資を鈍らせ、大口需要家を中心に自家発電を増やす傾向がある。
 家庭顧客への総助成金の額面価格は1992-1993年から1999-2000年までに4倍の808億ルピーに、2006年には1000億ルピー(約2,480億円)に達した。農業への助成金は1999-2000年までに2270億ルピーと1992-1993年の3倍、2005年には2500億ルピー(約6,200億円)に達した。インドの農業部門の対GDP比は長期減少傾向にあり、1950年代は約50%であったが、2001-2002年は24%、2007-2008年は17.5%まで低下した。一方、インド人口の約8割が農村部に居住し、就業人口の約6割が農業に従事している。貧困層の多い農業部門での灌漑設備の導入は、電気料金への反映も難しく、回収できるのは80%に満たない。
3.電力改革
(1)電力事業の自由化と改革
 インドの電力改革は1991年7月に発表した新経済改革を契機に本格化した。インドの電力事業は、1956年の「産業政策決議」により、公共部門の独占体制が長く支配してきた。電気事業はインド憲法に基き、連邦議会と州議会の共同管轄部門として位置づけられ、事業主は19の州電力庁(SEB)と火力発電公社(NTPC)、水力発電公社(NHPC)に代表される8つの中央部門電力事業体(CSU)である。SEBは1948年の「電力供給法」に基づいて設置された発・送・配電垂直統合型の地域独占事業体で、CSUはSEBの電力供給を補完すべく1975年に設置され、発電と州間送電部門を担当した。しかし、電力の民営化が進み、「電気法」及び「電力供給法」が改定されると、1991年には発電部門に、1998年には送電部門に、民間電気事業者の参入・拡大が認められるようになった。現在では、再生可能エネルギーの分野を中心に民間電気事業者が参入している(原子力を除く)。
 また、1996年以降の電気事業の改革は電力財政の健全化(特に州電力(SEB)の健全化、料金構造の是正など)と電気事業の効率化(配電部門の改革、損失率の低減)等へ移行している。2003年には電気法が施行され、SEBの分割、水力発電を除く発電部門でのライセンス制の廃止、送電・配電系統へのオープンアクセス(系統の開放)の実施、内部相互補助の削減と撤廃、電力取引の許可、地方電化の促進、検針の徹底、不法な盗電の取り締まり強化など、電力改革の枠組みが示された。この法律をもとに2005年には国家電力政策、2006年には電気料金政策、農村電化政策等の改革が打ち出されている。
(2)電源開発計画
 インドの5ヵ年計画は1951年の計画経済体制への移行とともに始まった。第8次計画以降(1992年〜2007年まで)の電源開発の達成率は約50%である(図5参照)。現在進行中の第11次計画(2007年〜2012年)の開発方針は「より早い成長(Faster Growth)」と「包括的な成長(Inclusive Growth)」を2大戦略として掲げ、安定的な電力供給を最大の課題と位置づけた。また、低い農村電化率の改善は貧富の格差を解決する一つの課題となっている。具体的には(1)78,600MWの新規電源開発、(2)早期電力開発・改革プログラム(APDRP)の継続実施・・・配電設備の整備を進め、送配電ロス率低下(2005年度の約35%から、15%を達成する)、(3)発電効率向上、(4)需要側の省エネルギーの推進(約10,000MW)である。新規電源開発の13.8%(10,760MW)を民間資金によって賄う予定であるが、売買先となる州電力の改革を先行させる必要がある。
<図/表>
表1 インドの発電設備容量の推移
表2 インド発電設備の構成概要
図1 インドの電力需給と不足分
図2 インドのピーク電力需要と不足率
図3 400KV以上の高電圧送電網
図4 インドの電力供給体制の概要
図5 インドの電力供給計画

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<関連タイトル>
インドの国情およびエネルギー政策 (14-02-11-01)
インドの石炭政策 (14-02-11-04)

<参考文献>
(1)経済協力開発機構/国際エネルギー機関(OECD/IEA):Publications and Papers, Free Publications Database, Electricity in India Providing Power for the Millions,
(2)(社)海外電力調査会:海外諸国の電気事業 第1編(2008年)、2008年10月、p.623-666 及び インドの電気事業HP
(3)国際エネルギー機関(IEA):Erectricity in India,
(4)インド電力省:Major Transmission Network of India,
(5)インド電力省中央電力庁(CEA):Installed Generation Capacity,
(6)インド電力省中央電力庁(CEA):Annual Report 2009-10
(7)インド財務省:ECONOMIC SURVEY 2010-11 STATISTICAL APPENDIX,
(8)KPMG社:PowerSector_2010, http://www.kpmg.de/docs/PowerSector_2010.pdf
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