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<概要>
 原子力の安全研究のうち、一国だけでは対応が困難なものや重複を避けて効果的に成果を求めた方がよいものについては、二国間の研究協力が行われている。すなわち日米間の原子力規制・安全研究分野の技術情報交換取決め(1974年締結)や日独間および日仏間の軽水炉安全研究協力取決め(前者が1976年、後者が1979年締結)などである。
 このような二国間の研究協力体制の下で、日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)では、米国のアイダホ国立研究所やサンディア国立研究所、ドイツのカールスルーエ研究所、フランス原子力庁のカダラッシュおよびグルノーブル両研究センター等と原子力の安全性を巡る重要課題について共同研究を実施している。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 原子力の安全研究は、世界的な関心事であり、各国において積極的に推進されているが、同時に、一国だけでは対応が困難なもの又は重複を避けて効率的に成果を求めることが適切なものについて、二国間の研究協力が活発に行われている。
 軽水炉の安全研究を例にとると、日米間では、「原子力の規制および安全研究分野における技術情報交換取決め」(1974年5月締結)の下で情報交換が行われている。また、日独間では「日独軽水炉安全研究協力取決め」(科学技術庁(現文部科学省)原子力局=ドイツ研究技術省、1976年7月締結)、日仏間では「日仏軽水炉安全研究協力取決め」(科学技術庁(現文部科学省)原子力局=フランス原子力庁、1979年3月締結)の下で、それぞれ公開された情報交換のほか、このフレームワーク等の中で次のようなテーマについて研究協力が行われている。
(1) CSARP計画
 1993年9月から日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)は米国 NRC 主催のCSARP(Cooperative Severe Accident Research Program、1990年7月までは旧称SFD)計画に参加し、米国アイダホ国立工学研究所、カナダ・チョークリバー研究所、米国サンディア国立研究所の各施設を使用して、炉心損傷時の燃料挙動、FPソースタームおよび格納容器の健全性に関する研究を実施している。なお、FPソースタームというのは、炉心が損傷し、格納容器等の健全性が失われた場合、炉心からFP(核分裂生成物)が環境へ放出される可能性があるが、環境への影響を評価するために必要なFPの種類、化学形、放出量をいう。
(2) NSRR-PSF
 日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)のNSRR計画(反応度事故時の燃料挙動に関する研究)と独カールスルーエ研究所のPSF計画(冷却材喪失事故時および炉心損傷時における燃料挙動の研究)との研究協力を1984年1月から実施している。
(3) NSRR-PHEBUS
 NSRR計画とフランス原子力庁カダラッシュ研究センターのPHEBUS計画(冷却材喪失事故時および炉心損傷時における燃料挙動の研究)との研究協力を1984年1月から実施している。
(4) ROSA-AP600計画
 1992年8月、米国のAP600炉(重力による静的 ECCSおよび静的機器による長期冷却機能等を特徴とする電気出力60万kWのPWR)について、米国NRCと日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)がLSTF(日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)所有の大型非定常試験装置)を使って事故時の熱水力現象に関する共同実験を行う契約をかわした。
(5) EPRI情報交換
 日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)と米国電力研究所(EPRI)は、原子力発電の分野における研究開発に関する技術的な情報交換および協力を1985年4月から行っている。
(6) ACE計画
 1989年から日本原子力研究所(現日本原子力研究開発機構)は米国EPRI主催のACE(Advanced Containment Experiments)計画に参加し、格納容器内FP挙動およびアクシデントマネージメントに関する研究を実施している。
<参考文献>
(1) 原子力安全委員会(編):原子力安全白書 平成5年版,大蔵省印刷局(1994年3月)
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