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<概要>
 平成元年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された故障・トラブル等の件数は22件であった。
 22件の内訳は、運転中(試運転中及び定期検査における調整運転中を含む)に自動停止したもの 1件、運転中に手動停止したもの10件、原子炉停止中に発見されたもの10件、その他のもの 1件となっている。
<更新年月>
1998年05月   (本データは原則として更新対象外とします。)

<本文>
 平成元年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき、電気事業者から資源エネルギー庁に報告された故障・トラブル等の件数は22件であった。
 一基当たりの報告件数は 0.6件であった。
 22件の内訳は、運転中(試運転中及び定期検査における調整運転中を含む)に自動停止したもの 1件、運転中に手動停止したもの10件、原子炉停止中に発見されたもの10件、その他のもの 1件となっている。
 なお、いずれの事象についても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。
 平成元年度の原子力発電所における故障・トラブル等の概要(法律対象)を下表に示す。

発生年月日発電所名概要
H元. 4.10中国電力(株)島根原子力発電所2号機定格出力運転中、原子炉再循環ポンプ(A)の回転数が低下したため、原子炉手動停止。原因は、原子炉再循環流量制御系の1つのリレーに接触不良が生じたため。
H元. 4.13関西電力(株)大飯発電所1号機発電再開準備中、1台の蒸気加減弁に動作不良が認められたため、原子炉手動停止。原因は、摩耗により、弁体とシールリングのはめ合いが不良となったため。
H元. 4.27九州電力(株)玄海原子力発電所1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に有意な指示を発見。
H元. 4.28東京電力(株)福島第二原子力発電所4号機定格出力運転中、循環水ポンプ1台のモータ軸受温度に上昇傾向が認められたため、原子炉手動停止原因は、モータ軸受の温度検出器用電線の絶縁低下により、誤った温度指示が出たため。
H元. 6. 3東京電力(株)福島第二原子力発電所2号機定格出力運転中、原子炉冷却材浄化系再生熱交換器付近からの漏えいが認められたため、原子炉手動停止。原因は、配管の溶接施工不良に起因する割れが発生、進展して貫通したため。
H元. 6.12四国電力(株)伊方発電所1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部に有意な指示を発見。
H元. 6.21関西電力(株)美浜発電所1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部に有意な指示を発見。
H元. 6.28日本原子力発電(株)敦賀発電所2号機発電再開準備中、「蒸気発生器水位異常低」の信号により、原子炉自動停止。原因は、主給水系統の動作確認の際、電気回路の一部を短絡させたことにより、電動主給水ポンプが停止したため。
H元. 9. 6中国電力(株)島根原子力発電所1号機定格出力運転中、原子炉再循環ポンプ(B) の振動大の警報が発生したため、原子炉手動停止。原因は、振動検出器の動作部に異物が付着し、検出感度が変化して誤動作したため。
H元. 9.19中部電力(株)浜岡原子力発電所3号機定格出力運転中、主蒸気隔離弁の作動試験において、1台の作動状況が確認できなかったため、原子炉手動停止。原因は、弁体摺動ガイドの摩耗により、弁体と弁体摺動ガイドの引っかかりが生じていたため。
H元.10. 4関西電力(株)高浜発電所1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、U字管部、管支持板部、管板クレビス部、管板拡管部及び管板拡管境界部に有意な指示を発見。
H元.10.20九州電力(株)玄海原子力発電所2号機定期検査中、非常用ディーゼル発電機の機能試験において、1台の発電機が自動停止。点検の結果、固定子巻線の一部に焼損を発見。原因は、固定子巻線の渡り線の固定が不十分であったため、運転中の振動により絶縁が劣化したため。
H元.10.25関西電力(株)美浜発電所3号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部及び管板拡管境界部に有意な指示を発見。
H元.11.14関西電力(株)大飯発電所1号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管支持板部、管板拡管部及び管板拡管境界部に有意な指示を発見。
H元.11.29関西電力(株)高浜発電所3号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、振止め金具部に有意な指示を発見。
H元.12.11日本原子力発電(株)東海第二発電所定期検査中、所内電気設備配電盤の点検作業において、短絡による火花により、従事者1名が顔と手に軽度の火傷。
H元.12.27東京電力(株)福島第二原子力発電所1号機調整運転中、タービン系統制御油の漏えいが認められたため、原子炉手動停止。原因は、タービンバイパス弁用制御油の蓄圧槽と配管を接続しているフランジ部の取付け不良のため。
H 2. 1. 2東京電力(株)福島第二原子力発電所1号機調整運転中、原子炉再循環ポンプ電動機下部軸受の油面高を示す警報が発生したため、原子炉手動停止。原因は、油面検出器が誤動作したため。
H 2. 1. 5日本原子力発電(株)敦賀発電所1号機定格出力運転中、高圧注水系の機能試験において、高圧注水系ポンプ駆動用ディーゼル機関が自動停止。点検の結果、ディーゼル機関と高圧注水系ポンプを接続している増速機に損傷が認められたため、原子炉手動停止。
H 2. 2. 3日本原子力発電(株)東海発電所運転中、燃料取替作業時、燃料がつかめない状態が発生したため、原子炉手動停止。原因は、燃料体の取手部がはずれたため。
H 2. 2.28関西電力(株)大飯発電所2号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、振止め金具部、管板拡管部及び管板拡管境界部に有意な指示を発見。
H 2. 3.13関西電力(株)高浜発電所4号機定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、振止め金具部に有意な指示を発見。

<関連タイトル>
日本の原子力発電所における事故・故障・トラブルの推移(2005年度まで) (02-07-01-01)
日本におけるBWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-02)
日本におけるPWR原子力発電所の主要な事故・故障・トラブル(2005年度まで) (02-07-01-03)
平成元年度試験研究用原子炉における事故・故障 (12-03-01-10)
平成元年度放射性同位元素等取扱施設における事故・故障 (12-06-01-10)

<参考文献>
(1) 科学技術庁原子力安全局編(平成2年):平成元年度の原子力発電所における故障・トラブル等について、原子力安全委員会月報、通巻第 139号、11-17.
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