昭和60年度原子力発電所の事故・故障 (12-01-02-07)

＜本文＞
　昭和60年度に「電気事業法」及び「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」の規定に基づき電気事業者から資源エネルギー庁に報告された事故・故障等の件数は19件であった。このため、一基あたりの年平均報告件数（報告件数を基数で割ったもの）は0.6 件（前年度0.6 件）である。表１に事故・トラブル等報告件数（法律対象）を、表２に内容別報告件数を、表３に原子力発電の事故・故障等の報告件数一覧（電気事業用）を示す。19件の内訳は運転中（営業運転中及び調整運転中、以下同じ）に自動停止したもの 4件（前年度 4件）、運転中に手動停止したもの 8件（前年度 3件）、定期検査中（調整運転中は除く、以下同じ）に発見されたもの7 件（前年度10件）である。19件の主な原因を管理要素別に分類すると、製作管理が不適切であったもの6 件、施工管理が不適切であったもの 1件、保守管理が不適切であったもの11件、その他のもの 1件であった。
　なお、以上のいずれの事故・故障等についても、原子力発電所の周辺環境への放射能の影響はなかった。
　このほか、昭和52年3月3日付け通商産業大臣（現経済産業大臣）通達に基づき報告された軽微な故障が28件（前年度28件）あった。

原子力発電所の故障・トラブル等の概要（法律対象）
発生年月日	発電所名	概要
60. 4.18	東京電力福島第二原子力発電所 2号機	調整運転中、原子炉格納容器内の圧力上昇傾向がみられたので、点検のため原子炉手動停止。
60. 5.13	日本原子力発電敦賀発電所 1号	調整運転のため、原子炉を起動し格納容器内の点検を実施したところ、非常用復水器配管蒸気側の原子炉格納容器貫通部付近に漏洩を発見。補修のため原子炉手動停止。
60. 5.23	九州電力玄海原子力発電所 1号機	定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板上面直下部及び管支持板部に有意な信号を発見。
60. 5.30	関西電力大飯発電所 1号機	定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管支持板部及び管板拡管部に有意な信号を発見。
60. 6.25	東北電力女川子力発電所 1号機	調整運転中、蒸気加減弁開度位置検出器の不調により原子炉圧力が低下したため、「原子炉水位高」により蒸気タービンが自動停止し、引き続き原子炉自動停止。
60. 7.11	四国電力伊方発電所 1号機	定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部に有意な信号を発見。
60. 7.30	日本原子力発電東海第二発電所	定格出力運転中、原子炉格納容器内床ドレン量に漸増傾向が見られたので、点検のため原子炉手動停止。
60. 8. 8	日本原子力発電東海発電所	調整運転中 2号熱交換器一次冷却系安全弁が作動。点検のため原子炉手動停止。
60. 8.21	東京電力福島第一原子力発電所 1号機	調整運転中、主蒸気管圧力検出器設置場所で、照明工事に係る作業中、誤って足場材を当該検出器ドレン配管に接触させたため、振動で当該検出器が作動し、「主蒸気隔離弁閉」により原子炉自動停止。
60. 8.23	東京電力福島第一原子力発電所 1号機	調整運転中、給水ポンプ最小流量配管の振動が、主蒸気管圧力検出配管との支持構造物共用部を介し、当該検出器検出配管に伝わったため、当該検出器が作動し、「主蒸気隔離弁閉」により原子炉自動停止。
60. 8.29	関西電力高浜発電所 1号機	定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板部、管板拡管部、管支持板部及び U字曲部に、有意な信号を発見。
60. 9. 6	関西電力美浜発電所 3号機	定期検査中、燃料取出前原子炉内点検で、燃料集合体部品及び制御棒クラスタの損傷を発見。
60. 9.24	東京電力福島第一原子力発電所 5号機	定格出力運転中、原子炉格納容器内機器ドレン量に漸増傾向が見られたので、点検のため原子炉手動停止。
60. 9.28	東京電力福島第二原子力発電所 3号機	定格出力運転中、蒸気タービン駆動原子炉給水ポンプ（A）の駆動用蒸気加減弁制御リンク機構の不調により、当該蒸気加減弁が閉止したため、原子炉への給水流量が少なくなり、「原子炉水位低」により原子炉自動停止。
60.10. 4	関西電力美浜発電所 3号機	定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部、管板拡管境界部及びU 字曲部の振れ止め金具取付部に有意な信号を発見。
60.10.25	関西電力大飯発電所 2号機	定期検査中、蒸気発生器伝熱管の渦電流探傷検査の結果、管板拡管部及び管板拡管境界部に、有意な信号を発見。
61. 2. 9	東京電力福島第一原子力発電所 4号機	定格出力運転中、原子炉格納容器内機器ドレン量に漸増傾向が見られたので、点検のため原子炉手動停止。
61. 3. 7	関西電力高浜発電所 1号機	定格出力運転中、原子炉格納容器内床ドレン量に漸増傾向が見られたので、点検のため原子炉手動停止。
61. 3.29	日本原子力発電敦賀発電所 1号機	定格出力運転中、蒸気タービン主蒸気管ドレン配管のオリフィス取付け用フランジ継手部からの水滴が見られたので、点検、補修のため原子炉手動停止。

＜図／表＞

＜参考文献＞
（1）原子力安全委員会編（1986）:昭和60年度の原子力発電所における事故・故障等の概要、昭和61年版原子力安全白書、276-281.
（2）（社）火力原子力発電技術協会（1986）: 事故・故障の状況、昭和60年度原子力発電所運転管理年報、183-298
（3）科学技術庁原子力安全局（1987）: 昭和60年度の原子力発電所における事故・故障等について、原子力安全委員会月報 6月号、通巻第93号、36-37.